6 holic
- 1 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/05/29(金) 21:57
- 6 holic
- 2 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/05/29(金) 21:57
- 今日も朝から舞台のお稽古。
日を重ねるごとに、お稽古の中身もかなり濃くなってきてる。
稽古場に現れたメンバーはそれぞれストレッチを始めていたけれど、
我らがリーダー、高橋愛は、稽古場の隅のほうで気の抜けた顔でぼんやりしてた。
「…なんか、心ここにあらずって感じ」
「そうだねえ」
さゆの言葉に頷きながら一緒に愛ちゃんのもとへ近づくと、こっちに気づいた愛ちゃんが覇気なく笑った。
へらっ、と緩んだ口元がなんとなく痛々しい。
- 3 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/05/29(金) 21:58
- 「おはよー」
ありゃりゃ。
声まで元気ないよ、そうとう重症?
「なによー、愛ちゃん、腑抜けた顔してー」
「腑抜け?」
さゆの言葉に首を傾げるその仕草もなんだか壊れた人形みたい。
「元気なさすぎ」
「そぉかあ?」
そうですとも。
この舞台が決まったときのアナタのテンション、やたら高かったじゃないですか。
ブログも、コンサートツアー中の日記は全然書かなかったくせに、嬉しそうに書いちゃってさー。
…と。
この件で責めるのは絵里のほうが立場弱いからあんまりしないけど。
- 4 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/05/29(金) 21:58
- さゆとふたり、無言で愛ちゃんを見つめたからか、へらへら笑ってた愛ちゃんは、気まずそうに唇を歪めて眉尻を下げた。
そのままがっくり肩まで落ちて、元気なく俯いてしまう。
「おお…」
わかりやすい反応。
思わず声が漏れた絵里の腕をさゆが軽く叩く。
黙ってろって合図だ。
「どうしたの?」
さゆの優しい問いかけに、愛ちゃんはゆっくり自分の両膝を抱えた。
「…ガキさんからメールない」
「は?」
「…もう3日も音信不通」
言ってすぐ、愛ちゃんは大きく溜め息をついた。
思わずさゆと顔を見合わせる。
たぶんきっと、思ったことは一緒だな。
- 5 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/05/29(金) 21:59
- リーダーが、サブリーダーにめろめろなのは結構有名な話。
つっても、メンバーと、あと、ごくごく限られた知り合いだけの間でだから、有名、っていうのともちょっと違うか。
で。
サブリーダーもなんやかやとリーダーに甘いし、要するに、ふたりはイイ関係なわけ。
まあ、公認の仲ってこと。
ただ、ちょっとリーダーのほうが盲目的というか。
…たった3日で音信不通とか、大げさすぎるでしょ。
「えーと…」
さゆが場を取り繕おうと言葉を探してる。
絵里は、正直、こういうときの愛ちゃんがちょっとめんどくさい。
気になるなら自分からメールとか電話すればいいじゃん。
なんで受け身で待って、連絡ないって落ち込むんだろ。
「ガキさんも忙しいんだよ、きっと」
「今のガキさんあんまり仕事ないから、そんなに忙しくないはずや」
おいおい。
アンタがそれ言っちゃダメだろ。
- 6 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/05/29(金) 21:59
- 「こっちに気を遣ってくれてるんじゃない?」
めげずにさゆが続けると、それは思いつかなかった、と言いたそうにパッと顔を上げる。
「…そう、かな?」
「うん、きっとそうだよ。ガキさん、すごく気を遣う人だし」
「…それなら、初日迎えるまで会えへんってことか?」
いやいや、それまでにも普通にお仕事あるから会うでしょーが。
どんだけ目先しか見えてないのさ。
自分で言って自分で凹んだらしく、またがっくり肩を落とす。
ああ、見てらんない。
見るからにゲッソリしちゃってさあ。
肌とかも潤いなくなっちゃってガッサガサじゃん。
なんか、ニキビっぽいのもあるし。
たかが3日連絡なかっただけで、こんなに落ち込めるのも羨ましいよ。
思わず溜め息が出た絵里に、愛ちゃんがちらりと視線を寄越す。
それがなんだか羨ましげな目に見えるのは…、なんで?
- 7 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/05/29(金) 21:59
- 「絵里は、ええよな」
「ほぇ?」
「ガキさんとラジオやってるから、週一で絶対会えるしな」
ああ、そっち。
そんなのしょうがないじゃん。
今更そんなことで嫉妬されちゃっても、ガキカメでラジオやるって決めたのは上だし。
小さいこと気にするリーダーだなあ。
てか、普段そうでもないのに、ガキさんが絡むとこうだから、余計めんどくさい。
そんなふうに思ってたら明らかに呆れを含んだ溜め息が出て、さゆにまた叩かれた。
するとそれと同時に、それまで俯き加減だった愛ちゃんの頭が勢いよく上がった。
カラダも微妙に前傾姿勢で、なにか文句でも言われるのかと思わず身構えた絵里に、
愛ちゃんは目をキラキラさせて、そのうえ表情まで明るくさせた。
「…ん?」
愛ちゃんは、どう見ても絵里を見てなかった。
絵里のうしろのほうを見てた。
なんだろう、と思って振り向いたそこは稽古場の出入り口。
はて?
- 8 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/05/29(金) 21:59
- 「…ガキさんや…」
「えっ?」
いきなり何を言い出すんだ。
会えない時間が長すぎて(たかが3日だけど)幻影でも見えちゃったんだろうか。
「ガキさんの匂いする…っ」
ちょ。
アンタは犬ですか。
とはいえ、入口付近には人の気配はない。
でも、あんまりにも愛ちゃんが目をキラキラさせてるから、まったくの嘘とも思えない。
もう一度振り返って、一瞬前まで見えなかったはずの人影が今はあることに、絵里は顎が外れそうになった。
「…って、ホントにいるしー!」
絵里のみっともない声が稽古場に響く。
手土産らしいものを持参でひょっこり顔をのぞかせたガキさんが、絵里の声に驚いたように目を丸くしている。
「ガキさーん!」
呼ぶより早く、愛ちゃんが立ち上がって両腕を広げながらガキさんに駆け寄っていく。
- 9 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/05/29(金) 22:00
- すごい。こりゃマジすごいわ。
うちのリーダーの嗅覚、本気で犬並み。
でもきっとガキさん限定。
ガキさんはちょっと恥ずかしそうに駆け寄ってきた愛ちゃんを抱きとめて、
それから絵里とさゆを見て、持ってきた手土産を軽く持ち上げた。
「おはよーございまーす、陣中見舞いでーす」
ガキさんの声に稽古場にいた面々から歓声が上がる。
わらわらとみんながガキさんのいるところへ近づくけど、愛ちゃんはまだガキさんから離れようとしない。
恥ずかしいリーダーだ。
ガキさんは苦笑いしつつ、抱きついたままの愛ちゃんを剥がすこともしないで、持って来た手土産の説明をしてる。
差し入れは見た目にも涼しそうなフルーツゼリー。
お稽古の前だから、さすがに今はちょっと我慢、ってことで、スタッフさんに冷蔵庫にいれといてもらうことになった。
が。
うちの恥ずかしいリーダーはまだガキさんから離れない。
さすがにガキさんも困ってるようで、こりゃいかん、と、さゆと助けに向かったら、
半径一メートルほど近づいたところで、愛ちゃんが恨めしそうに振り向いた。
おお。
珍しく睨まれてしまった。
- 10 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/05/29(金) 22:00
- 「ねえ、お稽古ってもう始まるの?」
思わず足が止まったうちらに、ガキさんは苦笑いのまま尋ねた。
「ううん、まだだよ。まだ全員揃ってないし」
きょろきょろと周囲を見回しながらさゆが答える。
「そっか。…じゃあ、すぐ戻るからさ、ちょっとだけ愛ちゃん借りてくね」
「えっ?」
「すぐ戻るから」
そう言って、ガキさんに抱きついたままの愛ちゃんをほとんど引きずる状態で、ふたりは稽古場から離れた。
「…なんだろ」
「…まあ、なんとなく想像はつくけど」
呆れながら言った絵里にさゆが不思議そうに振り向く。
絵里が人差し指で自分の唇を軽く押してみせると、何かを察したように、さゆはちょっとだけ顔を赤くした。
「…なるほど」
「不謹慎なふたりだ、まったく」
「アンタが言うな」
- 11 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/05/29(金) 22:00
-
ガキさんが愛ちゃんを連れ出してから20分ほどが過ぎた。
さすがにもう全員揃っていて、今は愛ちゃんが戻ってくるのを待っている。
スタッフさんが少し苛立ち始めてる。
ちょっとマズくないかな、と思っていたら、ずいぶん軽やかな足取りと爽快な声で愛ちゃんが戻ってきた。
「お待たせしましたあ!」
でも戻ってきたのは愛ちゃんひとりだけで、思わずさゆと顔を見合わせる。
それから出入り口のほうにもう一度目を向けると、
なんだか疲労困憊、としか言えない状態のガキさんが、疲れたように溜め息をつきながら壁に凭れるのが見えた。
「うわあ、ガキさん、なんかめっちゃ疲れてるっぽい、かわいそー」
「…そ、それより、愛ちゃん見てよ」
ガキさんに気をとられていた絵里の腕を上ずった声のさゆが引っ張る。
言われるままにスタッフさんのほうに向かっていく愛ちゃんを見て、さゆの声が裏返った理由を知る。
- 12 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/05/29(金) 22:01
- 「…うっそお!」
「お肌つるつる…。なんなの、あのぴかぴかした笑顔は」
「ついさっきまでガッサガサだったじゃん。ニキビだってあったはずだよ」
「そんなの全然なさそうですけど」
眩しいくらいの潤った肌。
羨ましいまでのつるつるほっぺ。
落ち窪んで見えた目の下のクマまでなくなってる。
呆然と見ていたら、こちらに気づいた愛ちゃんが満足そうに、でもどこか不敵そうにニヤリと笑った。
そこにいるのは、ついさっきまでガキさんと連絡が取れないと弱気になってたリーダーじゃなくて、
妙に自信ありげな、頼もしい、カッコいいリーダーだった。
……ちょっと前までのヘタレな愛ちゃんはどこ?
「…あの復活の早さ…、もしや愛ちゃん、人間じゃないな」
「たった20分の間にいったい何が…」
さゆと顔を見合わせる。
きっと思ったことは同じはず。
- 13 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/05/29(金) 22:01
- おそるおそるガキさんを見る。
疲労感を漂わせながらも、目が合った絵里たちに律義に手を振ってくれる。
でも、さっき見たときはなかったはずの肌荒れが、くっきりはっきりしっかり見えた。
「…すごすぎる」
「…てか、ありえなくない?」
さゆの顔色が青い。
まあ確かに尋常じゃないもんね。
いったいどんなことしたんだ、って思うよ。
ただのカミカミエロリーダーってわけじゃなさそう。
明らかにガキさんの生気吸い取った感じだし。
そもそもガキさん、それをわかってて愛ちゃん連れ出したのかな。
「……効き目って愛ちゃんだけなのかな」
「は?」
「今度、絵里も試してみようかなあ」
「…冗談でもやめて」
真顔で言った絵里に、さゆは呆れた顔でデコピンしてきた。
おわり
- 14 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/05/29(金) 22:01
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- 15 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/05/29(金) 22:01
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- 16 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/05/29(金) 22:01
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从*` ロ´)<ちょ、れなの出番は!?
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