41 箱かづき娘。

1 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/08(火) 23:16
41 箱かづき娘。
2 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/08(火) 23:18
「突然ですがモーニング娘。第九期メンバーを発表します」
3 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/08(火) 23:39
2008年春コン初日、現リーダー高橋愛の発表に会場は一瞬静まり返り、すぐに喧騒に包まれた。
期待を持って見つめる者、卒業発表でなく安堵している者、またかという冷めた目の者、
多種多様な想いが辺り一帯を満たしていく。
だが、今回は事前情報どころかオーディションもなくまさに突然降って湧いたような発表であり、
その場にいる観客にとっては何はともあれ、どんな人間が登場するかということについて皆一様に興味津々だった。

「新メンバーは……今は名前を言えません。とりあえず登場してもらいましょう」

その風変わりな紹介に会場のボルテージは上がる。
噂レベルでは九期は有名な芸能人を入れるという情報が出回っていたからだ。

高橋が一歩横にずれると、舞台の中央から台がせり上がってくる。
観客は固唾を飲んで現れる人物を待ち続けた。

そしてスポットライトに照らされて、一人の少女が出現した。
いや、一見でその人物を少女と判別するのは難しいことだったかもしれない。
何故なら、小柄でメンバーと同じ舞台衣装に身を包んだ姿だったとはいえ、
彼女は無造作にダンボール箱を頭に被っていたからである。
4 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/08(火) 23:41
どうみてもその辺に置いてあったみかん箱を被っただけの少女の姿に会場は騒然となる。
演出か冗談か、またはただの手違いか、妙な空気が辺りを支配していく。
その雰囲気を嫌ったのか、田中れいなが口火を切って説明を始め、その後に道重さゆみ、亀井絵里と続けて声を出していった。

「えーと、これはそのサプライズ? ていうか中身はしばらくお楽しみということで」
「今日のところはほんの顔見せでーす。って顔見えないけどアハハハ」
「というわけで正体は今のところ秘密です。とりあえずハコちゃんと呼んでくださーい」

次々とメンバーから告げられる衝撃の発表。
軽くざわめいている程度だった観衆は、冗談ではなく本当に箱を被った少女としてのメンバー発表だと納得した途端、
収拾のつかない大騒ぎへ発展し、ライブは一時中断、その日はついに最後まで新メンバーは再度登場することはなかった。

『つんくついに狂ったな』
『ありえないありえないありえない』
『俺のハコぼおおおおおおおおおん!!!』

その頃ハロプロ@2ch掲示板こと狼において新メンバーは箱。という書き込みが真実と伝わるまで実に二時間以上必要とし、
それから怒涛のアクセス過多による負荷により一時的にダウンした。
これはアクセス数が順調に減少しているその頃としては非常にまれな出来事であった。
5 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/08(火) 23:42
箱娘。こと通称ハコちゃんがその当日行ったことはリーダーの問いかけに首を縦に振ったことと、
会場のファンに向けて手を軽く左右に振ったことだけである。

たったそれだけのことだが、芸能ニュースとしてはそれなりの扱いで報道された。
多くはその奇抜さを挙げ迷走するハロープロジェクトという結論を出しており、好意的な記事は数少なかった。
しかし、その中で写真入りの記事は一つも存在しなかった。
これは事前にマスコミに情報を流していなかったせいでもあるが、情報規制を布いたせいとも言われている。
しかしその割りには公式ホームページの更新は遅く、UFA内部でも混乱しているのではないかという意見も見られた。

この件について当然のように最も多くの質問が殺到したつんく♂は、このようにコメントを残している。

『今回は第九期メンバーということでキリのいい数値ですから、新メンバーのプロデュースについては
全部現メンバーにお任せしました。もちろんメンバーの選出にあたっては僕も混じって意見を出しましたが、
基本的には彼女たちの意見やアイデアを尊重しています。そのおかげで中々ビックリなサプライズが出来たと思います。
今後ともモーニング娘。共々ハロープロジェクトをよろしくお願いいたします』
6 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/08(火) 23:44
その頃狼においては、幾度のアクセス不能を乗り越えて未曾有の祭りが勃発していた。
普段どこにこんなに人がいたのかと思うほどスレとレスが飛び交い、またたく間に総投稿量はVIPを抜き去り一位に返り咲いた。
ハコスレは当然のようにファンスレアンチスレネタスレも含め雨後のタケノコのように乱立した。
どさくさに紛れてX箱360のスレも乱立した。ティッシュ箱やマッチ箱、箱庭療法、箱根細工のスレもそこそこに立った。
ポリゴンやメカぼん、おでんマンのスレも何故かあった。

顔文字については長い議論が行われた結果、( ‘ロ‘)と( ´コ`)の二つに候補が絞られた。
どちらもベースになっている顔文字が存在し、明らかに似せて作られているのだが顔の詳細が一切わからない状況では、
これ以上どのようにすることもできず半ば痛みわけのような形で両方とも併用するという結論に至った。
この時の論争は久住小春の顔文字を決める時のものより壮絶なものであったと伝えられている。
顔文字が暫定的にでも決定するや否やハコを中心とするネタスレが活況を呈した。
昨今ではキッズ方面に完全にシフトしていたかに見えたネタスレ界が、本体のメンバーで盛り上がるというのも実にヒサブリのことであった。
7 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/08(火) 23:45
かくしてモーニング娘。史上最も謎に包まれた新メンバーの活動が始まった。
しかし、当初は公式の更新もなく、ハロモニ@にも何の情報も流れず、ライブもほとんど顔を出さない有様だったので、
本当に活動しているのか、または本気で新メンバーとするつもりであるのかかなり危ぶまれた。
その焦らしっぷりは狙っているのか、または本当に行き当たりばったりなのか判別しかねた。
そのいつまでも新しい情報が出ずかなり煮え切らない状況で、春コンの中盤に差し掛かってようやく彼女の出番がやってきた。
それまでライブの合間合間にちょろちょろと顔を見せるだけの言わばマスコット的存在だった彼女が、
突如として公開された新曲のセンターに立つことになったのである。

静かな立ち上がりから一転、爆音とともに箱の中から現れるハコ。
始めて明らかになったハコの声は、強烈なエフェクトがかかっていて地声がどんな感じであるのか窺い知れなかったが、
豊かで素直に伸び、始めて聴く者の心をどこか掴み取るような何かに満ちていた。
その曲においては他のメンバーは全て彼女のサポートに周り、ハコを目立たせ際立たせるために存在していた。
その援護を受け、キラキラな衣装に合わせた輝く流線型のボックスを被った彼女は、最初から最後まで堂々とした立ち振る舞いを披露した。

その曲調は以下の二つに集約される。
情熱的なダンス。
キッチュだけど底抜けに明るいメロディ。

どうみてもかのラブマの再来を狙ったとしか思えないその曲の名は『ラブイズボックス』、通称LIBという。
とある名無しがスレに書き残した『LIBの熱さなら、この寒さを乗り切れる』というレスはこの曲の勢いを端的に表していた。
8 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/08(火) 23:46
新情報に飢えていたファン層は一も二もなくLIBに心酔した。
小規模ではあるが、突発的にハコ人気が急上昇した。
今まで散々イロモノだと叩いていた部類の人たちも気づけばファンスレへ足を運んでいた。
その一方で、エフェクトを掛け捲った声が初音ミクやPerfumeのパクリではないかという意見が噴出した。
まとめサイトやパクリ糾弾サイト、または本当の声解析サイトなど様々なページが数多く生まれ、
それらの多くは狼住民以外の非ヲタ層によるものであった。
その状況を受けて蘇った戦闘民族として名高いハコスレ住民は、VIPやPerfumeスレに戦争を挑んだ。

その結果数多くの軋轢、アクセス不能という名の鯖落ち、死屍累々のアク禁など様々な被害を撒き散らした挙句、
日中昼夜を問わず泥沼の状態がしばらく続いた。

最終的に、結局この騒動はどちらがどうとも決着が付かなかったが、ハコの認知度が上がってくるに従って、
不思議と軋轢は徐々に減少していく傾向にあった。
だが『ハッコハコにされた』人々が多少なりとも狼に流入し、狼側としてはより一層勢いと混迷を増した。
9 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/08(火) 23:47
そしてハコはついにテレビにも登場した。
初回の登場はハロモニ@で、幕間にキャベツの代わりに一瞬だけ映るという非常に微妙なものだった。
しかし二度、三度と出演を繰り返すにあたって、毎回出方や切り口などを変え徐々にハコがいることが当たり前のようになってきていた。
そのうちタイトルロールにも出現するようになり、いつしか赤チン国王の代理として前面に配置されることが多くなっていた。

そして新曲の発売前には当たり前のように歌番組のトークにも出演していた。
そのトークでは娘。史上かつてないほどボケとツッコミの役割分担が明確に表れていて、
ハコを中心としたトークがかなり効果的であると世間に知らしめ、好印象を与えた。
また、話を振る側もハコを中心に弄っていけばいいので、トークの起点を掴みやすかった。
ハコはボケもツッコミも両方うまくこなせた(両方ともすべて身振りのみで行われた)
その絶妙な合いの手とツッコミは時に神がかり、お茶の間の話題を独占し、一躍時の人に駆け上がった。

その過程で娘。の面々の顔つきも次第に変わってきたように見えた。
同じ秘密を共有しているということで、結束と悪巧みをする楽しさが自然と溢れ出ていた。
長らく娘。を目にしていなかった一般大衆は、突如また再び見ることになった彼女らを揶揄したり叩いたりするものもいたものの、
大多数は好意的な目で見ていた。
それは娘。達がいつもまるでいたずらっ子のように目をキラキラさせていたのと、
教育係のジュンジュン、リンリンの活躍が大きかったと言われている。
普段からあまり物怖じのしない二人は大げさな立ち振る舞いでハコのツッコミのための格好のフリを作った。
このフリを無言ながら雄弁に突っ込んでいくスタイルは言わばハコのお家芸でもあり、何度も繰り返された一発芸でもあった。
10 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/08(火) 23:48
その頃、現場では箱を被ってヲタ芸にいそしむ人々が出現しだした。
当然のようにハコヲタと呼ばれ、一時期猛勢を振るうことになった。
この現象の最大の利点は、普段ライブに行けないシャイな人やライトヲタも箱を被って参加するようになったことが挙げられる。

また箱を被るという点においては次々と新しい試みが繰り広げられていった。
一つにはハコの箱の表面には、F1レースの車のような宣伝を入れたことである。
ライブの時限定だったが、ハコのDVDでの扱いの良さや破格の掲載料であったことから結構な数の宣伝が常に貼られることになった。

さらにダンボール箱メーカーの中では箱に持ち手だけでなく、被った時に目穴として使えるような切れ目を入れるところも出てきた。
もっともそれだけでは被って運動するとすぐに脱げてしまうので、簡単に付けられるストラップも販売された。

頬を染めたようにうっすらと赤くなる箱などハイテクな箱も開発された。
これは一部のヲタ層には非常に好評だったが、自然じゃないとかやり過ぎだという声も多く長く使用されることはなかった。

ハコが常日頃被っていた箱は実に物凄い数が存在していたが、基本的に箱の修繕なども自分で行っていたし、
穴が開いたらメンバーが自分達で繕っていた。
その辺りはエコモニ。としての活動も前面に押し出していった。
飛び入り参加メンバーとなったハコは各地を巡り箱のリサイクルを中心とした活動を積極的に行っていた。
この活動は主に小学生や幼稚園児など低年齢層に受けがよく、子供たちが空き箱をリサイクルして遊んだり、
遊んだ後でその残りを回収業者に持っていく姿などがあちこちで見られるようになった。
11 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/08(火) 23:49
その他日替わりのように行われた娘。のサプライズは以下のようなものがあった。

モーニング娘。の最後の。がいつの間にか小さなロになっていた。
ジュンジュンとリンリンの通常服がいつの間にかチャイナドレスになっていた。
光井愛佳がぐろっさんと入れ替わっていた。
久住小春と月島きらりが二人同時にステージに立っていた。
六期三人が三馬鹿トリオになっていた。
新垣里沙が突如クーデターを起こして一週間ほど独裁体制を布いた。
高橋愛が金髪にして街中で単独ゲリラライブを行った。
つんく♂が半日だけメンバーに加入して伝説的に卒業した。

などなど至るところでおかしなことをやらかして、それをマスコミがハコとともに大げさに報道するのがお決まりのようになってきていた。
彼女らにタブーはなく、様々な変化はこのように至る所で発生しており、最早止めることの出来ない一大ムーブメントになっていた。
12 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/08(火) 23:51
時を同じくして、新メンバー公開当初から囁かれていた一つの噂が爆発的な勢いで広まった。
それは、ハコの中身は加護亜依ではないかというものである。

LIBも愛の箱ということで露骨すぎるタイトルと言えばそうなのだが、その次に発売になった『藍色の啓示』もまたベタなネーミングであり、ハコぼん派は狂喜乱舞した。

確証の無い噂はありとあらゆる方面で広がり、噂が噂を呼んで加熱状態になっていた。

原宿をハコちゃんが激走していた、
下町を小さい二人の少女が変なコスチュームで散策していた、
ハコはどこかのお屋敷でメイドをやっていた(メイド姿で舞台に上がったことはあった)

しかし通常ずさんと思われていたUFAの情報管理能力は奇跡的にいかんなくこれを発揮し、ハコの正体がバレることは最後までなかった。
ここには娘。メンバーの尋常ならざる努力が垣間見える。
ハコの周囲には常にメンバーの誰かが四六時中一緒にいた。
それだけでなくハコの素顔をどうにかして暴こうとしたマスコミによれば、メンバーだけでなくOBも大多数がその警護に参加し、
一説にはハロプロを離れたとされている後藤真希や、活動休止中の小川麻琴らの姿も見られたという。
しかしそれらの周囲の状況ですら決定的な証拠は何一つとして上がってはこなかった。

ワッチ音源でメンバーがハコのことをハコぼんと呼んでいるものが出回った時は確定的な証拠として狼は揺れに揺れ、
ついに新しい鯖へ移転するきっかけとなった。
しかしこれはメンバーがわざとマイクの電源を入れて喋ったのではないかという意見も見られ、最終的な決め手にはならなかった。
13 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/08(火) 23:52
時の勢いに乗ってハコが参加後のセカンドシングルである『藍色の啓示』はドラマの主題歌に採用される事になった。
そのドラマはいつもは朴訥としている刑事が藍色の女が現れるとともに神の如き閃きを得て事件を解決するというもので、
馬鹿馬鹿しい内容ながらもそれなりに高い視聴率を獲得していた。

そしてその期待された売り上げは最初の一週間で10万枚を突破し、その週のシングルチャートにて堂々一位を獲得した。
モーニング娘。はついに名目ともに表舞台に舞い戻ったのである。

そして公的なモーニング娘。結成日とされる九月七日、ついにハコの正体は明らかにされることになったのであった。
14 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/08(火) 23:53

「……であった。と」
「オイオイ圭ちゃんさあ、まだパソコン向かってんの? もうそんなに頑張って工作しなくても大丈夫じゃんよ」
「あたしゃこの半年近くかなりの時間をPCの前で過ごしたわよ。それに比べたら今書いてるのなんてどうてこと無い無い」
「その前から圭ちゃん結構引き篭もりじゃなかったっけかあ?」
「んっ、ん。にしてもまあ随分馬鹿なことやってきたわねえうちら」
「本当だよオイラもさあ最初に聞いた時はビックリしたもん。バッカだなあこいつらって」
「まあバカバカしいことだからこれだけの勢いが出たし、皆もノリで頑張れたしね」

二人の後ろには、ハコやメンバーを徹底的に指導し鍛え上げてきた面々が勢ぞろいしていた。

中澤裕子や安倍なつみなどオリメンの中には思わず目に涙を浮かべているものもいた。
楽屋の端の方で何故か福田明日香と藤本美貴が意気投合していた。
市井紗耶香と石黒彩と飯田圭織は子育て談義に夢中だった。
吉澤ひとみと石川梨華は相変わらずいちゃいちゃしていた。
活動の途中から参加した小川麻琴は紺野あさ美としばらく喋っていたが、途中で根本的なことに気づき質問を投げる。

「ねえこれって結局誰が言い出して始めたの?」

その返答にはそこに居合わせた皆の声がビックリするほどぴったりと揃った。

「そりゃあ言いだしっぺは辻に決まってるじゃない」
15 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/08(火) 23:55
ハコこと新メンバー相生葉子が深々と観客に向かって素顔を晒した後、頭を深々と下げ今まさに大歓声に迎えられているその頃。

舞台の袖で二人の少女がぼうっとその光景を眺めていた。

「これ本当はあいぼんのための企画だったんだよ。マジでさ」
「うちにはもう色々と眩しすぎてさあ」

加護亜依は本当に眩しそうに目を細めて舞台の上で観衆の声援を一身に浴びている人物を見つめている。
その表情には複雑な感情が宿り、彼女がどんな想いで今そこにあるのか窺い知ることは出来そうにない。
辻希美はしばらくその横顔をじっと見ていたが、やおらよいしょと立ち上がり、脇に抱えていたものを加護に突き出した。

「ホラこれ特製黒箱。これ被ってれば誰だってわかんないしさあ、しかもね」

ここで辻希美はいたずらが企みどおり運んだ少女のような笑みで加護亜依の耳元にこう告げた。
「実はね今日みんな来てるんだよ。みんなっていったらみんなだよ。そんでこれ被って出るんだってさ」
16 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/08(火) 23:56
かくしてその日モーニング娘。はたった一度の全員集合を成し遂げたのであった。
17 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/08(火) 23:57

18 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/08(火) 23:57

19 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/08(火) 23:57


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