30 ミミック
- 1 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/07(月) 20:33
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30 ミミック
- 2 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/07(月) 20:33
- 私はこのつまらない日常が大嫌いだった。
世界を変えたかった。もしくはこの世界ではない違う世界に行きたかった。
日々それを思い就寝する、いつもの事だった。
…のだが。
「………ハコ」
鳴り続ける目覚まし時計に手を伸ばし、目を開けると枕の横に箱が置いてあった。
その箱は両手の上に乗る位でそんなに大きいものではなく重い物でもなかった。
サンタさんありがとうクリスマスプレゼントね、と素直に言いたかったが、もうクリスマスも過ぎて年も越してる。
誕生日と言うわけでもない。そもそも私は一人暮らしで就寝する時は戸締りをきちんとしてる。
自分で置いた覚えも無いこの箱は、誰かが置いていったとしか考えられないのだが
なんとも気持ちの悪い話だ。
- 3 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/07(月) 20:34
- 丁寧にリボンが巻かれていてその箱の様子をまじまじと見ているとパサっと音と共に何かが落ちた。
メッセージカードだった。
それを開くときったない文字で「あけるなきけん」と書いてあった。
開けて欲しくないのならば置いていくな、と内心思ったが、
多分これは「あけるな」と言ってるけど「本当は開けて欲しいの」と言う意味だろうと
勝手に解釈をしてリボンを引っ張った。
包装紙をビリビリ破ると中から黒い箱が出てきた。
カラフルな包装紙にこんなものを包むとはとても趣味がいいように思えない。
びっくり箱的なものかもしれないので用心しながらゆっくりと開けた。
「…なんもないな」
中を見ると箱の中側まで黒く、中身は何も無かった。
なんと言う嫌がらせだろう。
枕元にプレゼントが置いてあり、気味が悪いのもあったがちょっと嬉しくもあったのに結局何も無い。
- 4 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/07(月) 20:34
- がっかりしていると箱は急に動き出し、私の右手を食べ始めた。
「ちょ」
箱は私の肩の付け根まで来てとまった。
びっくりだ。右手が無い。確かに危険なものだった。
だけど私には恐怖が無かった。
この世界にうんざりしていた私はいつ死んでも悔やむ事もなかったからだ。
かといって、この姿はあまりにも気持ち悪いと共に肩に箱なんかつけちゃって恥ずかしい。
左手で引っ張ってみたものの吸い付いてるみたいで取れない。
仕方が無いので援護を呼んでみた。
- 5 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/07(月) 20:34
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◇
- 6 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/07(月) 20:35
- 「何してんのミキティ」
「箱に喰われてる」
現れた友人吉澤ひとみは上下スウェットで飴を舐めながらこちらの様子を伺っている。
この状態に何も動じていないようだ。
「それでどうすりゃいいの?」
「いや、なんかどうしたらいいかわからなくてとりあえず呼んでみた」
「じゃ、とりあえず助けてみるね」
思いっきり引っ張ってもらうと思ったよりあっさり箱は取れた。
だが右手は白い鳥の翼に変わっていた。
「ゲ、ちょっとグロイ」
「カッケーじゃん、左手もやろうぜ」
手に持っていた箱を強引に私の左手にかぶせるとズブズブと又吸い込まれるように左手は消えた。
- 7 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/07(月) 20:35
- 「えいっ」
思いっきり箱を引き抜くと左手も白い翼に変わっていた。
「どーすんのこれ、何にも出来ないじゃんよ。ペンも持てねー」
「また箱の中に入れて出せば治るんじゃね?」
安易な言葉にだまされてもう一回試すと翼はそのままだが少し小さくなった。
「体の比率と合わなくなって余計キモくなったじゃん」
「おかしいなー」
と言いながら友人はニヤニヤしながらその箱を私の顔にかぶせた。
「…オイオイ」
「まぁまぁ」
えいっと箱を取った友人は私を見て絶句していた。
「やべぇ超キモイ。鳥人間だよミキティ。鏡は見ないほうがいいよ」
大体なんとなく予想がついたので自分の今の姿を考えるのはやめた。
ここまで来たらどうにでもなれと両足も入れてみた。
思ったとおりの鳥足だ。しかも入れて抜くたびに小さくなる。
それを利用して胴体も入れてみたら完全に鳥になった。
- 8 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/07(月) 20:36
- 「鳥人間に比べれば数倍かわいくなったよ」
「ありがとよ」
私はこれを望んでいたのかもしれない。
自由に羽ばたけるこの翼で空を舞い、今の世界から脱出して見せよう。
こんな世界は人間ではありえないことだし。
「よっすぃー、美貴は新しい世界へ飛び立つよ」
「おー、いってらー」
羽を広げて思い切り動かす。
ばさばさと音をたて乗っていたテーブルから飛んだ。
ばさばさばさ……ポテ。
ばさばさばさばさばさばさ…………。
「…もしかして飛べない鳥?」
「…………」
- 9 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/07(月) 20:36
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◇
- 10 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/07(月) 20:37
- 「ミキティご飯だよー」
「………うん」
私は前よりももっとつまらない世界にいる。
狭い鳥かごの中で友人の家に居候。
開けてはいけない箱は本当に開けてはいけなかったのだ。
「そういえばさ」
「……何」
「あの箱捨てる時に裏面見たら白い文字でなんか書いてあったんだよ」
「…なんて?」
「The wish does not come trueって」
「………」
「どういう意味?」
友人の言葉に返す事もなく私は目を閉じて眠った。
- 11 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/07(月) 20:37
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- 12 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/07(月) 20:37
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- 13 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/07(月) 20:38
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