29 箱根温泉でのお話

1 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/07(月) 04:45

29 箱根温泉でのお話
2 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/07(月) 04:46
舞美はすっかり疲れ果てていた。
悪夢のように繰り返されるファンとの握手会。
自分でもイマイチかなと思いつつある冒頭のセリフへの非難。
そしてそれらで心身に受けた傷を癒す場所であった楽屋が
今やテロ集団の手によって破滅的な状況となっていた。

テロを指揮しているのは萩原舞。通称まいまい。
若干11歳ながらその研ぎ澄まされた頭脳は
時に高校生の舞美を上回るほどだった。

ご飯に砂糖なんてのは朝飯前だ。
昼飯だろうが夕飯だろうが関係なく飯に砂糖を混ぜてゆく。
それならばと舞美はご飯を食べるのはよしてパンを食べる事にした。
駄目だった。パンには砂糖を混ぜたご飯が振りかけてあった。
見るからに怪しかったが舞美は食べてみた。やはり甘かった。
一番幸せになれる食事の時間なのに落ち着いて食べられない。
これは食べ盛りの舞美にはかなりのダメージとなった。
3 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/07(月) 04:49
やがてスパゲッティにまでまいまいの魔の手は及んだ。
ペペロンチーノにチーズと砂糖がかかっていたのだ。
許せない。ついに舞美は復讐を誓ったのだった。

「って事で舞ちゃんに復讐しようと思うから手伝って」
最近太り気味だから5キロくらい走ろっか。
みたいな軽い口調で舞美は言った。
栞菜は出しかけた溜息を飲み込んだ。
慰安旅行の時くらいゆっくりさせて欲しいもんだ。

「復讐って具体的に何をする気なの?」
「ちょっと舞ちゃんのお風呂の写真を撮ろうかなって」
なるほど。舞美が言うと妙に爽やかで些細な悪戯に聞こえる。
しかしこれは立派な犯罪行為だ。
栞菜は本来なら止めるべきだった。
がもちろん止めなかった。
だって舞美が好きだし舞の盗撮写真も欲しい。
舞美とだったらたとえ豚箱に入る事になっても構わない。
4 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/07(月) 04:49
作戦を円滑に進めるために舞美と仲良く手を繋ぎながら
お風呂に向かうと愛理が居た。
敵か?味方か?思わず身構えてしまう。
「愛理、準備できた?」
「う、うん。問題ないと思うけど…」
どうやら愛理は味方らしい。

浴室は家族で入るにはちょうどいいくらいの大きさで
湯船には5人くらい入っても余裕がありそうだ。
全体に和風で石や木や竹を使っていて風情のある。
「凄い良さそうなお風呂」
「うん。リウマチに凄く効くんだって」
なんでも源泉かけ流しらしい。
お湯は白濁のにごり湯で確かに効きそうな感じだ。
5 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/07(月) 04:50
栞菜はお風呂をじっくり観察してみた。
脱衣所と浴室の出入り口に鍵がかけられるようになっていて
不意を突いて侵入して撮影というのは難しそうだ。
となれば先に中に潜むか。
でも中には人が隠れられるほどの場所はなさそうだ。
そうなると方法は限られてくる。
「準備って何したの?岩場にカメラとか?」
栞菜の言葉を聞いて舞美は軽く笑った。
「そんな卑怯な事はしないから。えっとね。えーと愛理説明して」
愛理はちょっと待ってねと言ってしばらく考えた。
わかりやすく説明しようとしているのだろう。

「このお風呂場を箱だと思って」
箱?確かに四角いから箱だと言えなくもない。
「うん。それで?」
「ちょっとこっちに来て」
愛理に先導されて廊下に出てロビーの前を通り過ぎた。
どこに向かうのかと思ったら外だった。
「どこに行くの?」
「もう着くから」
ぐるりとまわって着いた先は人気のない建物の裏だった。
ボイラーなどのお風呂の設備があるだけで他には何もない。
6 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/07(月) 04:51
「そこの壁なんだけど栞菜見える?」
目を凝らすと白い壁から白いロープが垂れ下がっていた。
うまく保護色になっていてよく見ないと見えない。
話の流れからするとこれが愛理の行った準備のようだったが
栞菜にはこれがどういうものなのかわからない。
「もしかして壁を登るの?」
栞菜が近づいてロープに触れようとしたらふたりが慌てて制した。
「駄目駄目。壁が倒れちゃうから」
「え?なにそれ?」
「ケーキの箱みたいにパカッと横から開くの」
「それわかりにくくない?」
「そう?」
なんとなくだが話がわかってきた。
ようするにこの壁はこのロープを引くと倒れるのだ。って事は…

「ねえ愛理?もしかしてこれ結構お金かかったんじゃ…」
栞菜が問い掛けると愛理の表情が曇った。
「だって…舞美ちゃんがどうしてもって言うから…」
「愛理ありがとうね。絶対舞ちゃんビックリしてくれるよ」
よく見ると壁の色がこの辺りだけ妙に真新しい。
栞菜は身体がブルブルと身震いするのを感じた。
それは寒さのせいなんかじゃなかった。
舞美という女の豪快さ恐ろしさに対してだった。

まいまいの入浴姿を撮影する。
そのためにだけに舞美はわざわざ壁を改造したのだ。
7 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/07(月) 04:51
「愛理のお父さんよくお金出してくれたね」
「違うよ。こんなの愛理のお小遣い程度だよ。ね」
「…うん。今まで貯めたお年玉程度だから」

じゃあ大した額じゃないか。
と一瞬栞菜は思いかけたが相手は愛理だ。
お年玉のスケールが違うはずだ。
栞菜は怖いので正確な金額は聞かない事にした。

「うー。それにしても今日は寒いね」
確かに寒い。息が白くなっている。
「うん。もう中に戻ろうよ」
「寒いしちょっとお風呂入ろうっか」
「あ、わたしはいい」
「えー。愛理付き合い悪いよ。栞菜は?」
栞菜は一瞬考えたが舞美とふたりっきりで
お風呂に入れるなんて夢のようなので入る事にした。
8 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/07(月) 04:52
浴場には霧のような湯気が漂っていて
本当に夢の中みたいな感じだった。
浴衣をバサっと脱ぎ捨てると舞美は颯爽と浴室に入った。
ちょっと待ってよと言いながら栞菜は慌ててその後を追った。
かけ湯をしないでお風呂に入りそうだからだ。
「舞美ちゃん。かけ湯」
「あ、忘れてた」

相変わらず天然だなあ。
人はここまでうっかり出来るものなのか。あ。
栞菜は危なく大事な事を忘れていた。
入口の鍵をかけ忘れていたのだ。
入浴中は完全に無防備な状態になる。
こんなところまいまいに襲われたらお終いだ。
恐らく愛理はその事を考えて一緒にお風呂に入らなかったのだろう。
9 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/07(月) 04:53
とりあえずふたりは先に身体を洗う事にした。
風呂椅子に並んで座る。
「舞美ちゃん背中流してあげる」
「いいの?じゃあお願い」
舞美の引きしまった背中には汗がにじんでいた。
舐めたい。栞菜は思ったが匂いを嗅ぐだけにした。
栞菜のいやらしい鼻が舞美の肌にそっと触れた。
「あっ」
その瞬間、舞美が官能的な声を漏らした。
わけではなく間の抜けた声を出した。
「ねえ、今ふと思ったんだけどさ。逆に舞ちゃんに襲われちゃったりして」
「え?鍵はちゃんとかけたよ。あっ」
突然、栞菜は艶めかしく喘いだ。
わけではなく思い出したのだ。
このお風呂の壁に無駄に大がかりな細工がされている事を。

まずい。栞菜が慌てて立ち上がった時だった。
思ったよりもゆっくりと壁が倒れていった。
「ふははははは」
しまった。どうやら作戦に気付かれていたようだ。
舞と千聖が冷たい風と共に中に飛び込んでくる。
そして稲妻。違う。カメラから発するストロボの光だ。
10 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/07(月) 04:53
栞菜は入口から逃げようとしたが扉が動かない。
動かないように何か物が置かれているようだ。
もはや袋の鼠。どうやら逃げ場は無いようだ。
「栞菜!お風呂!この中に逃げて!」
舞美とお風呂に飛び込む。
にごり湯だから肩まで浸かればまともな写真は撮れない。
と思ったが肩まで浸かれない。
意思に逆らうように体が浮いてくる。
浮き上がったお尻を容赦なく撮影される。
まさかと思って舞美は温泉のお湯を飲んでみた。
またしても砂糖だ。これまで味わった中で一番甘かった。
11 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/07(月) 04:54
12 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/07(月) 04:54
13 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/07(月) 04:54

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