27 NNNN
- 1 名前:27 NNNN 投稿日:2008/01/04(金) 18:03
- 27 Nacci Nicci Necci Nocci
- 2 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/04(金) 18:04
- 氷付けの体のはずなのに目が覚めた。1000年間の予定なのに天井の時計は
170年の時しか告げていない。時計が壊れたのか、他の何かが壊れたのか。
時計以外は以前とと同じように作られた住居だ。1000年後の『近代化』した生活様式に
徐々に慣れるために、生活空間はそのまま残して置くのだと教えられた。
冷凍仮眠装置に入ったのが昨日のように思われる。当然のことだ。起きるまで
夢さえ見ていなかったのだから。
それは金属でできた円筒型の装置だった。いかにも冷たそうな光沢が不気味
だった。最年少のNocciが収められる瞬間がもっとも不安だった。
「幼いNocciよりも私が先に・・・」
「大丈夫、失敗なんてありえないよ、Nicci。」
そんな技術者との会話を思い出す。この男が最初のスイッチを押すとNocciの
入ったカプセルが装置の中に入っていった。透明なカプセル越しにNocciの
はしゃぐのが見えた。不安が癒されるのを感じた。私は技術者の男を促した。
「良い旅を。」
男はにっこりと笑って私のボタンを押した。彼はもう死んだだろう。幸せな生涯を
過ごしたのだろうか。
- 3 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/04(金) 18:04
-
現在を生きる人間は誰も私の覚醒に気づいていないのか?待ってみても誰も来ない。
そういえば眠ったときに入っていたカプセルが周りにない。なぜだ?とにかく外に
出てみる必要があるかもしれない。他のメンバーも起きているのだろうか?
部屋の密閉性をまず確かめる。窓がある。あまり気密ではない。ということは
外に出ても大丈夫だ。これなら外に出て死ぬようならとっくに死んでいるはずだ。
窓を開けて外を見る、一瞬バランスを崩したような感覚がした。地面が一定の
角度で傾斜している。どうやらここは坂の上に建てられた部屋らしい。さらに驚いた
のはその土地の広さだった。いったい地球のどこにこんな土地があったのかと言う
ほどの広い、しかも一定の傾斜の土地がそこに広がっていた。
双眼鏡があるかもしれない。そう思って、普段置いていた部屋に行ってみる。
双眼鏡はもとのまま置かれていた。それを持ってもう一度窓からのぞくと、この近くに
だけは自然の土や草を模した地面が用意されているものの、他の地面は人工的な
一様な色調の地面だと言うことがわかった。それはますます驚くべきことだった。
まるで地球の大部分が舗装されているようなものではないか。普通の地面はもはや
私たち過去の人間に対する配慮としてしか残されていないのだ。
- 4 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/04(金) 18:04
-
外に出ると車輪のないスクーターのような機械があった。これならNocciでも運転
できるかもしれない。傾斜は思った以上には急だった。部屋と比べると10度くらい
傾いている。マシンを起動させるスイッチを押すと機体は少しだけ地面から浮いた。
恐る恐る乗る。モニタに4つの点が表示されて、1つは中央にある。この点がそれぞれ
メンバーの部屋を表しているようだ。とりあえず一番近いところに行くことにする。
人工土の領域は思ったよりに広かった。しかしそこを過ぎてしばらくしても画面上の
4つの点は一向に動こうとしない。どうやらものすごく遠いらしい。燃料のメーターらしき
ものがどれかは見当をつけている。それが半分になったところで引き返すことにして、
スピードをあげた。時速100km。このマシンにとってはまだまだ余裕という感じだったが、
これ以上出すことは何だか躊躇われた。自分はつくづく過去の人間だと思う。
それでも新しい人工地面にたどり着くまで1時間かかった。例の傾斜は段々と緩やか
になり、つく頃にはもう平坦になっていた。それでも景色は一向に変化する様子を
見せずただただ広い平野のような風景があるだけだった。一体ここはどこなのか。
100Kmも続く傾斜と人工地面と私たちの部屋以外には何もない土地なんて。
- 5 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/04(金) 18:04
-
建物には3機のスクーターが寄せてあった。他の皆はここに集まっているに違いない
と期待に胸を躍らせる。戸を叩く。一瞬、得体もしれない未知の生物が出てきたら
どうしようと思ったが、それをかき消すようにNacciさんの明るい声がした。
「あ!Nicci?!」
そして開く扉。Nacciさんが笑っている。Necciさんもいる。そしてNocciも。
「みんなここにいたんですね。」
「うん。Nicciのところだけ遠いから、一番近いここでみんなで待ってみることにしようって。」
確かにスクーターの表示ではそんな感じだった。冷静な判断に感心する。部屋に入ると
Nocciが巨大な画面を食い入るように見ていた。部屋の様子からここは前に訪ねたことのある
Nacciさんの住居だと分かったが、あの大きな画面は前はなかった。
「お久しぶり、です。」
「昨日あったよぉ。」とNocci。
「そうだね。でも昨日は1000年前だったんだよぉ。」とNecciさん。
「そうなの?」
「Nocciはちゃんと分かってるのかなぁ。」とNacciさんが悪気のない笑顔で言う。
「それなんですけどNacciさん。今、170年後じゃないですか?」
「え?嘘?」
「時計は見ました?」
「ううん、みてない。てっきり1000年後だと。ねぇ、Necci?」
「え?私たち寝過ごしたってこと?逆?170年しか経ってないの?」
「時計、天井についてますよ。」
すると、NacciさんとNecciさんは同時に天井を見る。Nocciは画面をじっとみたまま。
「本当だ。2178年って表示されてる。これって私の部屋にもついてるの?」
「えぇ、1000年後に暮らす住居にはみんなついているって。そう説明ありませんでした?」
「Nacci聞いた?」
「聞いたかなぁ。そういうのはNicciが聞いてると思って聞き逃したかも。」
- 6 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/04(金) 18:05
-
「ねぇ、Nicci。」と画面をさしてNocci。「これ地球なんだよ。」
そう聞いて画面をみると、確かに大画面に青い地球の映像が小さく映っていた。
「そうだね。よく知ってたね、Nocci。」
「あのね、Necciに教えてもらったの。」
Nocciよりも得意顔のNecci。
「Nacciさんの家にこんなのありましたっけ?」
「ううん。未来の人が置いてくれたのかな?Nicci聞いてないの?」
「これは聞いてないです。」
「じゃあNacciのところだけ特別なのかな。」
テレビ一台施設が違ったところで驚いたりしない。Nacciは特別だ。1000年後の地球に
文化を伝える大使なのだから。
「他のチャンネルはないんですか?」
「っていうかボタンがついてないの。」
「じゃあこれは地球の映像専用なのかな?でも何のためでしょうね?」
「そんなことよりさ。」Necciが割って入る。「食料はどうする?少しなら各自の冷蔵庫に
あるみたいだけど。」
「さすがにそれまでには誰か来るんじゃない?」とNacci。
「もし来なかったら?」
「私、辺りを探してきましょうか?人間か食料のどちらかを。」と私。
「そうだね。私も一緒に行くよ。」
「いや、Necciさんは待っていてください。何かあったらNacciさんとNocciだけじゃ心配だし。」
- 7 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/04(金) 18:05
-
そう言って私は部屋を出たものの、どこに向かっていいのか全く見当がつかない。
とりあえず、自分の部屋と反対の方向に進んで見ることにした。人工土がなくなる頃から、
ここでも地面が緩やかな坂になっていることに気づいた。どうやらNacciさんの部屋は
丘の頂上になっているらしい。しばらく走っていると丘と言うよりは畑の畝のような形だと
わかった。その方向に平行に走れば斜面の角度は変わらないが、離れれば離れるほど
斜面は傾いていく。
この地形は明らかに人工的に作られている。でもどうして?なぜこんな形にする
必要があるのか?それにスクーターのモニタには常に4つの点しか表示されない。
この膨大な土地が私たち4人のためだけに用意されているということだろうか?
そのような贅沢が許されるということはここは地球表面ではないのかもしれない。
例えば地下室のような。そういえばここの空はまるで曇りの日の空のように暗い白色をしている。
もしここが広大な地下室だとすれば青い空を見ることができなくても不思議ではない。
単調な風景が注意力を散漫にしていたらしい。我に返るとそこは急斜面だった。
Nacciさんの家から離れれば離れるほど急になっていく斜面。これ以上急になっては
危険だ。慌てて旋回する。結局人工物も天然物も、私たちと私たちの部屋以外は
見つからない。なんだか体が重い。どっと疲れが来たのだろうか。いや、違う。本当に
体が重くなっている。重力異常?いや人間が奇妙に感じるほどの大きな重力異常が
地球上にあるはずはない。
「もし地球でなかったら?」
そんな考えが頭に浮かぶ。そういえばNocciが見ていたのは地球の映像だった。
地球外にいるからこそ、地球の映像ばかり映しているのではないか?そうだとすれば
ここは一体宇宙のどこなのだろう?もしかして他の惑星?
その時、私の心に1つのアイディアが浮かんだ。
- 8 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/04(金) 18:05
-
箱。
そうだ。それにちがいない。宇宙空間を箱のようなものがくるくると回っていて、
私たちはその中にいる。ずっど重力だと思っていたものは遠心力と考えれば、
この形状は説明できる。遠心力は中心軸から遠ざかる方向に働く力だ。箱の底の
真ん中にいれば床と遠心力の方向は垂直になる。しかし中心軸から離れれば
離れるほど力の向きは箱の面から見れば傾いていく。地面と重力の方向のつくる
角度はもはや90度ではなくなってしまう。地面と重力の方向が直角でないとき、
人はそれを坂と呼ぶ。
だとすれば、この箱はなんて大きいんだろう!
全体の大きさは、中心からの距離と坂の傾きから計算できる。確か私のいた
部屋は、Nacciさんの場所から100kmくらいのところ、角度は10度だった。
タンジェント10度はいくつだ?!およそ、10度をラジアン単位に変換した大きさ
くらいだと考えていいだろう。3.14÷180×10…ええい!わたしはゆとり世代だ!
もう1/6でいい!と言うことは1200km!なんと全長1000kmの箱?一体だれが
なんのためにそんなものを作って私たちをそこに閉じ込めたんだ?!
「そんな!なんで!私たちが!」
私は大声で叫んだ。頭が混乱している。冷静になれる場所が必要だ。スクーターの
モニタでは私の部屋が一番近い。いつの間にそんなに走り回ったのだろう?
しかし好都合だ。今は1人になりたい。
「そんな なんで わたしが。」
もう一回、今度はつぶやいてみる。スクーターの速度を上げる。フルスロットル。
スピードを上げられるだけあげてやる。夢中になっている。いきすぎた。なにをやって
るんだ。おちつけわたし。そんな。なんで。わたしが。そんな、なんで、わたしたちが、、、。
- 9 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/04(金) 18:06
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- 10 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/04(金) 18:06
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自分の部屋のベッドに横たわったのは覚えているが、眠るつもりはないのに眠って
いたらしい。まずい。きっと3人が心配しているだろう。結局考える暇もなかったが、
とにかくNacciさんの所に戻ろう。1人になりたければまた戻って来ればいい。その前に
体重計に乗ることにする。重力の変化を確かめるためだ。そのためには他の場所でも
量る必要がある。Nacciさんは体重計を持っているだろうか?まぁいい。なければここに
帰ってくる口実になる。
スクーターにまたがる。あれだけ走ったのにメーターが全く減っていない。いったい
エネルギーをどこから得ているのだろう。大きな電池でも入っているのだろうか。
そういえば箱の回転エネルギーをどこから得ているのかも不明だ。だが私たちの時代
からもう170年も経っている。それを聞いたとしてもテクノロジーが進歩しすぎて私では
理解できないかもしれない。
彼らにとって、私たちは一体何者なのか。邪魔者か、それとも保護の対象なのか。
冷凍人間を殺すことは容易だ。それは私たちを目覚めさせる必要すらない。ならば
我々は守られているのか?それならなぜ食料すらまともに残されていないのだ。
しかも170年と言う短い期間で目覚めさせられた。凍っている間は食事をする必要は
ないのに。冷凍装置にトラブルがあったということなのか?ならばどうして私はカプセル
に入っていないのか。これは夢なのか?まさか。スクーターを降りたらほっぺたでも
つねってみようか。
道が平坦になり、人工土が現れてきた。スピードに慣れたおかげであっという間に
ついた。スクーターを止めてさっそくほっぺたをつねってみる。痛い。
- 11 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/04(金) 18:06
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「Nicci!よかった!」扉を開けるとNacciがそばにいた。「どこにいたの?」
何から話して良いか戸惑う私。
「探すのに疲れたみたいで、ちょっとだけ寄るつもりだった自分の部屋で寝てしまったんです。
結局食べ物は見つかりませんでした。ごめんなさい。」
「そう。大丈夫。なんとかなるよ。」
「あの、体重計はありますか?」
「体重計?あるよお風呂場に。」
私は隣のバスルームに入った。不思議そうにNacciさんが見つめていた。私は深呼吸して
体重計に乗った。100g単位で表示される体重計なので精度は微妙だが確かにさっき量った
時よりも何百グラムか軽い。このことは遠心力は回転軸の距離が短いほど小さいことと一致する。
「やっぱり。」
「どうしたの?Nicci?」
「わかったことがあるんです。」
私は一呼吸置いてみたが、それでも興奮は抑えられない。
「ここは宇宙空間で、地球じゃないんです!」
「……そうなんだ。」
Nacciは意外と冷静だった。
「地球の映像が映ってるから『そうかもね』ってNecciと話してたんだ。」
「NecciさんとNocciは?」
「部屋でテレビ見てる。」
- 12 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/04(金) 18:06
-
「あ、Necci。おかえり。心配してたんだよ。」とNecciさん。
「すみません。心配かけて。」
Nocciはじっと地球を見ていた。画面の地球は大きくなっていた。
「あの、実はわかったことがあるんです。」
「うん。聞こえてた。でもどうして…あ、いいや、多分説明聞いてもわからないし。」
「地球大きくなってませんか?」
「あ。そうだね。なんでだろう?地球に向かってるのかな?」
「単にズームしただけかもしれませんね。」
「そうかもしれないけど。いちいちズームする理由がわからない。」
「そうですけど。私たちがこうやって起こされた理由もわからないですよ。」
「地球に到着するからかな?楽観的過ぎる?」
「いや、そのうち『シートベルトをお締めください』ってアナウンスがありますよ。」
「はは。機内食も出さないなんて、どんな格安チケットだろう。」
「私たち1円も出してないですよ。」
「そうか。じゃあ、地球に着くまで我慢だね。」
「ねぇ、Nicci。私たちここに住んでるんじゃないの?」と地球を指差してNocci。
言葉につまる私。代わりにNecciさんが答える。
「そこに住んでたことは確かよ。」
「とってもきれい。」
「そうね、とてもきれいね。」
するとポケットに手を突っ込んで何かを取り出すNocci。
「これみたい。」
どこで見つけてきたのか、手には青くてきれいなガラス玉。
- 13 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/04(金) 18:07
- ガラス玉は蛍光灯に反射して青く光る。人工の地球と人工の太陽みたいだと思う。
「このビー玉どうしたの?」
「Nacciにもらったの。」
「Nacciさんに?」
「うん。『地球のこと覚えててね』、って。」
「え?」
まるで地球がなくなってしまうような言い方だ。Nacciさんは何か知っているのだろうか?
「あ!」
Necciが叫んだ。その視線の先を見ると画面には先ほどの何倍にも膨れ上がった地球が
あった。その色はもはや青ではなく赤く暗い色になっている。
「Nacci!!大変だよ!!」
「え?どうしたの?Necci?」
隣の部屋から入ってくるNacci。画面をみた。目を丸くして見つめている。画面では地球が
膨張を続けている。あっという間に大画面を埋め尽くさんばかりに大きくなった。そして黒い
空間が中心にできたかと思うといくつかの断片に分かれて八方へ飛び去っていった。
地球は崩壊したのだ。
- 14 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/04(金) 18:07
- しばらくの間、誰も、なにも言わなかった。というより、なにも言えなかった。
「これを見せるために…私たちを起こしたんだ…」Necciが言った。「私たちを地球から
避難させて…でも…最後の瞬間だけは見られるように。」
それは筋が通っている。咄嗟にさっきの出来事を思い出した。
「…Nacciさん、なにか知ってるんですか?」
「私はなにも知らないわ。でも…予感がしていたの。」
「予感?」
「えぇ。それがきっと…私がこの使者に選ばれた理由。」
「Nacciさん……あなたはエスパーなんですか?」
「わからない。」
再び沈黙が支配する。私はもはやなにを考えていいのかすらわからなくなった。どれだけ
時間がたったのかすら覚えていない。
「ねぇ。」沈黙を破ったのはNocciだった。「寒いよ。」
NecciさんはNocciを抱きしめた。確かに寒くなった。なぜだ?その答えはすぐにわかった。
再び私たちは冷凍されるのだ。さっきNecciが言ったことが正しければ、私たちは特別な理由で
起こされただけなのだ。これから830年間、もう一度氷付けにされるに違いない。だがわかっても
仕方のないことだった。もう身動きが取れない。もう一度目覚めることができるだろうか?
私は不安だった。そこへNocciの握り締めていたガラス玉が転がってきた。Nocciはもう凍ったらしい。
私ももうだめだ。神様……
その時、ガラス玉がきらりと光った。
■
- 15 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/04(金) 18:08
- そんな
- 16 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/04(金) 18:08
- なんで
- 17 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/04(金) 18:08
- わたしが
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