22 VERY BEAUTY
- 1 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/02(水) 11:22
- VERY BEAUTY
- 2 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/02(水) 11:22
- はいこれ、と安倍さんが私に箱を差し出した。
「何ですか?」
「よろしくねのプレゼント」
「わぁ。ありがとうございます。開けていいですか?」
「ダメ」
えっ?
まさにリボンをほどこうとしていた指を止めて
私は安倍さんの顔を見つめる。安倍さんは意味深な
笑顔で「困った時に開けなさい」と言った。
- 3 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/02(水) 11:22
- ■□
「もしもし、私だけど」
「あいあい」
この話の時私は愛理を頼ってしまう。愛理以外はこの話題に
ちょっと冷たいから。
「じつはね。安倍さんとこれこれこういうことがあって」
ひとしきり話を聞いたあと愛理は「あたしそれ知ってる」と
言った。
「知ってる、とは?」
「それね、同じような小説があるんだよ」
「どんなラスト?」
「忘れちゃった」
「じゃあ私読むよ。なんてタイトル?」
「それも忘れた」
「おい」
でもそれはきっとさ、と愛理はいつものえへえへ声で言う。
安倍さんは舞美ちゃんを気に入ってるからだと思うよ。
- 4 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/02(水) 11:23
- ■□
℃-uteでの仕事が終わった後、みんなにバイバイ言って
私だけスタジオに残る。
天井のライトを見つめていると安倍さんが来た。
「何してるのさ」
私が「ライト見てました」と正直に言うと、安倍さんは
口に手をあててきゃはーっと笑った。
「まいみんは不思議な子だねぇ」
まいみんとは安倍さんが私につけたあだ名。
絶対流行らないというか安倍さんさえすぐ忘れると思う。
撮影が始まった。
私は制服を思わせる清純な白のブラウス。安倍さんは
大人をイメージさせる黒のロングのフレアー。
椅子に座る私の肩に安倍さんが手を添えて立つ
お決まりのポーズ。
私のほうが背が高いから立つわけにいかないのだ。
- 5 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/02(水) 11:23
- インタビュー。安倍さんはじっくり時間をかけて言葉を
選んで答えていた。私は自分を変えなきゃと思う。
昔は紙に書いた答えを読むような答え方だった。学校と
仕事の両立、そして若さからそれが許されたが、次第に
そうはいかなくなってくる。
心から思ってることを伝えなくてはいけない。
そしてそう頑張ったとき、終わった後で安倍さんは必ず
「まいみんさっき可愛かったよー」と頭をぽんぽんして
くれる。私は笑う。単純だけど、それ嬉しい。
- 6 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/02(水) 11:23
- ■□
「ねぇねぇまいみん」
仕事が終わって着替えてる途中、まだ撮影の衣装の
ままの安倍さんが話しかけてきた。
「ご飯食べて帰らない?」
焼肉がいいなーなんて思ってた私を乗せた安倍さんの
車はぐにゃぐにゃとあちこち曲がった末、とある
マンションの前で止まった。
「ここどこですか?」
「ん。なっちん家」
固まった。
「車庫入れてくるからエントランスで待ってて」
- 7 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/02(水) 11:24
- きれいなエントランスとロビーを通り
「ウェルカ〜ム♪」と通された部屋はまるで雑貨屋。
モノ、モノ、モノ。モノで溢れてる。
「なっちがねぇ、今からまいみんのために」
その言葉に視線を部屋から安倍さんに移す。安倍さんは
後ろ手にエプロンをしめているところだった。
「スッペシャルな料理つくったげる」
15分で出てくるとは思わなかった。おっきな皿に
山盛りのレタスチャーハン。頂上には国旗がある。
安倍さんはスプーンを私に差し出して「これに
ふたりでこのままスプーンさして食べるから」
また固まる。
「で、国旗を倒したほうが負け」
チャーハンはとても美味しかった。
「聞いてたけどほんとにまいみんよく食べるねぇ」
「私ご飯大好きなんですよ。ははは」
国旗を倒したのは私で、罰ゲームとして皿洗い。
皿とスプーン以外に洗うものはなかった。鍋とか包丁とかは
すべて作りながら洗ってたみたい。さすがだ。
- 8 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/02(水) 11:24
- 「いやぁ〜」
洗いものをしてると後ろから声がする。
「あんなちっちゃかったまいみんがねぇ家事だなんて」
「ちっちゃいたって安倍さんと変わらない身長でしたよ」
家に送ってもらいながら、私達はいろんなことを
振り返った。振り返る話が尽きないのは、℃-uteと
安倍さんはつきあいが長く深いから。
もうすぐ私の家。言おうかな、どうしようかな。
「実はですね」
言っちゃおうかな!
「今回事務所からユニット組むぞーって言われたじゃないですか」
「うん」
「だから許されたって感じですけど」
なんか心臓どきどきしてきた。
「℃-uteの中では安倍さんの隣は不可侵って不文律が」
「あったの?」
「今もあります」
言っちゃった。
- 9 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/02(水) 11:24
- 安倍さんが緩やかにハンドルを切り、私の体はやや左へと。
安倍さんは前から視線をそらさないまま「めぐちゃん?」と
聞いた。はい。安倍さんの隣は昔からずっと。
「はい」
「みんなほんと仲良いよねぇ」
「ありがとうございます」
安倍さんはハンドルを持ちながらくすくす笑ってる。
私もあははっと笑った。あぁ、私達。
もっと深くなれた。
見慣れた景色が流れて私は「もうここでいいです」と言った。
「何言ってんのさ。お家の前までいかないと危ないでしょう?」
「いやでもこの辺の人みんな知ってますから」
「あそっか。実家なんだもんね」
美味しかったですありがとうございました、と告げる
私にどういたしましてめぐちゃんによろしくと安倍さん。
私は携帯を取り出して操作する。1通のメールを安倍さんに
見せた。めぐからのメール。
「めぐ、このユニットのこと楽しみにしてくれてます」
安倍さんは「いっぱい頑張らなきゃね」と微笑んだ。
安倍さんの車のライトが夜の中に消えていくまで、私は
そこで小さく手を振っていた。
- 10 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/02(水) 11:25
- ■□
重い悩み。
あの告白した日からしばらく経った今、私はずっと
考えていることがある。湯船の中に肩まで沈めながら今。
なぜ、私なのか?
安倍さんとのユニットを組むことが伝えられたとき、
嬉しさと責任とめぐの居場所を取ってしまう罪悪感で
頭が真っ白になっていたとき、言われた言葉。
『安倍とユニットを組む、という意味をよく考えるんだ』
家族や友達は期待されてるのよと喜んでくれた。
それは、解る。
モーニング娘。だけじゃなく今やハロー!プロジェクトの
mothership とさえ称される安倍さん。
安倍さんと並ぶことでどのような成長を期待されている?
思い浮かぶのはハローを卒業した偉大なる先輩。
Berryzにも℃-uteにも憧れている子が多かったあの人。
安倍さんと並んでハローの片翼だった。
でも、と私は思う。
私がそこへ行けるのか。愛理なら行けるかもしれない。
いやめぐなら絶対――。
私は頭のてっぺんまで湯船に沈んだ。もう!もやもやする!
- 11 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/02(水) 11:25
- パジャマを着て濡れた髪をタオルで包む。自分の部屋へ
戻り鏡の前に座ったところではっと思い出した。
あの箱。
いまこそ開けるときじゃないの?
保湿もそこそこに私は安倍さんから貰った箱を取り出し
リボンをほどいた。えっ?
お花のにおいのついた入浴剤と1枚のメモ。
『Dearまいみん お風呂に入るとリラックスするよ♪ なちみ』
今さっきまで入ってました。
がっくりうなだれると頭に巻いていたバスタオルが落ちた。
- 12 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/02(水) 11:26
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できあがったばかりの私の2冊目の写真集が届いた。
見ていると、後ろから他の℃-ute6人が覗き込んでくる。
「舞美ちゃんきれいー」
みんな口々にそう言ってくれて、私は「照れるなぁ」なんて
頭をかいてみたり。
16歳の私はここに記録として残された。10年後の26歳の時に
きれいということ、美しいことはとても素敵なこと。
休憩時間に私はひとり「散歩する」と外に出た。思い切り
深呼吸すると、まだ春には早いけどお花のにおいがする。
よし、と伸びをする。とりあえずは、私なりに。
- 13 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/02(水) 11:26
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- 14 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/02(水) 11:26
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- 15 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/02(水) 11:26
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