26 ライカによろしく
- 1 名前:26 ライカによろしく 投稿日:2007/07/08(日) 23:17 ID:/0Z.3sdg
- 26 ライカによろしく
- 2 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/07/08(日) 23:18 ID:/0Z.3sdg
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困った。
――全然、進まん。
「なーんか、しっくりこないの」
「だからさー、コレ、コレコレ、コレもうちょっと足してさ」
「あぁっ、ちょっとー、勝手にやんないでって!」
「ほらほら、良くない? 良くない?」
「もー、こういうんじゃなくって、もっと淡い感じにしたいの」
「えー、絵里、コレ好きだけどなー。良くない?」
「良くない」
隣できゃいきゃいとかしましい声も、耳には入らない。
綺麗に晴れた空の下、木組みの簡素な椅子に腰掛け、れいなは顔を顰めた。
彼女の目の前には、まっさらなキャンバスが立てかけられている。麻布が張られた
四角い面の下半分には、いくらかの線が引かれ色も塗られていた。だが、上半分は
何も手がつけられていないような状態だ。
くすんだ青いつなぎの袖を捲くったり戻したりするだけで、時間が過ぎていく。
鉛筆を持ったり、それを筆と持ち替えたりするけれど、一向に進まない。
- 3 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/07/08(日) 23:18 ID:/0Z.3sdg
- 「……で、れーなは何でまた描いてるの? こないだ提出しなかった?」
傍らの話題が、黙ってキャンバスを睨み続けていたれいなに及んだ。
れいなは何も答えるつもりはなかったが、
「そうそうそう。それがね、れーなね、再提出になったらしいよー」
「ええっ、そうなの?」
「きっと適当に描いたのがバレたんだねぇ」
「絵里!変なこと言うなー!」
堪らなくなって、れいなは吠えるように会話に割り込んだ。その声に、隣にいた
少女二人がくるっとれいなのほうを向く。
れいなは、適当なことを言う彼女――絵里を睨みながら、
「それに、適当になんて塗ってない。ちゃんと本見て描いたとよ!」
「風景画でしょー? 本見たって意味なくない?」
「だって、空の色なんて知らんもん」
「あるじゃん、空」
- 4 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/07/08(日) 23:19 ID:/0Z.3sdg
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絵里はすいっと、天井に向かって指をさした。
れいなは憮然とした表情で首を振る。
「ホントの空じゃ、ないやん」
「そうだけどぉ。綺麗じゃない?」
「そりゃ……綺麗やけど」
れいなは自身のキャンバスと空を見比べる。
れいなの言葉の通り、この空は本物ではない。室内に作られた、人工的な空だ。
擬似太陽光なるものを時間ごとで調節し、室内に作られた環境――作物や土などを
保持しているらしい。れいなにはよく理解できなかったが。
絵里の隣にいる少女――さゆみは何気ない顔で筆を走らせている。彼女もれいなと
同じつなぎを着ているが、更にその上にエプロンをしていた。エプロンにはたくさんの
色が付着している。れいなのつなぎは綺麗なままだ。
ふと、さゆみのキャンバスを覗き込み、れいなは愕然とした。
空が一面、ピンク色なのだ。
一つため息をついて、れいなは筆を置く。
「……ちょっと、先生のとこ行ってくる」
キャンバスを持って立ち上がる。
部屋の入り口の前まで、すたすたと土の上を歩く。緑あふれる敷地内とかけ離れて、
その扉はとても硬質な造りだった。
扉の取っ手に片手をかける。がたん、と引き上げ、重たい扉を肩を使って押し開けた。
- 5 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/07/08(日) 23:19 ID:/0Z.3sdg
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一歩外に踏み出した途端、そこには薄暗くくすんだ世界が広がっていた。先程の
平和でのどかな風景とは、まるで真逆の雰囲気だ。
窓から見える空が、昏く煙っている。濃灰色の雲が上空で幾層にも重なって、ずっと
遠い所まで広がっていた。
雲は途切れる事なく、どんよりと流れている。所々で澱んだり揺らいだりしている
けれど、決して隙間を作ることはなかった。そして、その暗い空の下では、惨憺たる
荒野が広がっている。岩肌と砂地ばかりが目立つ寂しい景色だ。長い間乾いた
風に晒された町が、崩れた瓦礫のようにひっそりと佇んでいる。
廊下の窓から黒々とした空を見つめ、れいなは口を尖らせる。
ずかずかと大股で、薄暗い廊下を歩く。不平や不満や苛立ちからか、あどけない
その顔がぴりぴりと引き吊っている。
れいなたちは、本当の空を見たことがない。
黒々と天を覆い尽くす雲の向こうを、一度として目にしたことがないのだった。
- 6 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/07/08(日) 23:20 ID:/0Z.3sdg
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「先生はホントの空、見たことあるんですよね?」
れいなは椅子に座って足をぶらぶらと揺らしながら、簡易キッチンに立つ女性に
問いかけた。
「それがねー、あんまり覚えてないのよ」
「ええー」
「だって、本当に小さい頃だったし」
そう言いながら、彼女はとんとんと包丁で何かを刻んでいる。
れいなは面白くなさそうに、テーブルにへばりついた。
テーブルの中央には透明な四角い虫かごが置いてあり、中では小指大の黒っぽい
虫が二匹だけ寄り添っていた。
「空なんて……」
指先で虫かごを軽くノックしながら、れいなはぼやく。
絵里はすでに提出し終えている。聞くところによると、青い空を描いたらしい。
三人が絵を描いていた部屋のような、作り物の鮮やかな青空を。
さゆみは何故かピンク色に塗っているし、何でもありか、とすら思ってしまう。
れいなだけ、どう描けばいいのかわからず迷っている。
- 7 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/07/08(日) 23:20 ID:/0Z.3sdg
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先生から再提出を言い渡された際、もちろんれいなは食って掛かった。
何で駄目なんですか、と。
何故なら没にされたのは、絵里と同じ青い空の風景画だったから。
それに対して、先生はおっとりとこう答えたのだ。
『そうねぇ。田中が自分の目で見て、決めたやつじゃないからかな』
れいなは、その言葉をきちんと理解できていない。だが、納得がいかないのも事実。
その時のことを思い出しかけて、れいなは頭を振った。
腹を立てても絵は描けない。不貞腐れるのもお終いにしなくては。
「あぁ、でも」
れいなが何度目かのため息をつこうとした時、キッチンの後姿が声を上げる。
「その、虫みたいな、空だった気がするな」
「虫ぃ?」
眉も語尾も跳ね上げて、れいなはテーブルから体を起こす。
先生は笑いながら、そっと付け足した。
- 8 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/07/08(日) 23:21 ID:/0Z.3sdg
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「その虫、お尻のところが光るでしょ? その光に似てるかなぁ」
僅かにうなって、れいなはじっとその虫を見つめる。羽の下に発光する部位が見て
取れるが、しばらく見ていても光る気配はなかった。
仕方がない。まだ夜ではないし、野生でもないのだから。
諦めて、れいなは立ち上がる。
「ていうか、先生はさっきから何作っとうと?」
「ん? 今、なんか町外れに旅の人が来てて……何もいらないって言うんだけど、
せめてこれくらいはねぇ」
「何か、手伝います?」
「いいのよ。田中は宿題がんばりなさーい」
声には出さず、うわぁ、と思った。
振り返った先生の顔は、優しく微笑んでいた。
「どんなのか、楽しみにしてるからね」
「……はい」
れいなは頷いてみたけれど、その顔はあまり芳しくない。
虫かごをこんと最後に叩き、キャンバスを持ってその部屋を後にした。
顔を上げれば、窓の向こうに黒々とした世界が見える。
しばらく立ちすくんでいると、突然、ある事を思いついた。
- 9 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/07/08(日) 23:21 ID:/0Z.3sdg
- 夜を待って、寝室を抜け出す。
室内を横切る際、眠っている絵里やさゆみを踏まないように歩くのが一苦労だった。
扉を静かに静かに閉めると、そっと駆け出す。暗い廊下に、れいなの足音が小さく
反響して消えた。
建物の入り口を押し開いて外に出ると、冷えた外気がびゅうと肌を撫でてくる。
念の為につなぎの上からジャンバーを羽織ってきたが、やはり寒い。凍える体に
活を入れ、れいなはまた走り出した。
れいなが思いついたことは、とても単純なものだ。
空を見たことがない。虫の光は本物の空に似ている。
――ということは、虫がたくさん光るところを、見ればいい。
それを参考にすれば、キャンバスを染め上げられるのではないかと考えたのだ。
町外れに広がる峡谷のような岩石地帯に、あの虫は生息していると聞いた。
危険だから近寄ってはいけないと言われているけれど、少しなら大丈夫だろう。
小石を蹴飛ばす音にもびくびくしながら、れいなは体を小さくして走る。
途中、見たこともない大きな車を見つけた。一見すると戦車のような、船のような、
重厚で頑丈な造りだった。
暗い空の下で難破してしまったかのように、ぼろぼろの車体が腰を据えている。
恐らく、『旅の人』の乗り物だろう。燃料などを補給する為に立ち寄ったと思われる。
車体の縁の部分に、白い文字で『Kudryavka』と乱暴に殴り書きされていた。
(く……くどりゃ……?)
れいなはその車体を上目気味に窺い、首を傾げてその脇を通り過ぎた。
- 10 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/07/08(日) 23:22 ID:/0Z.3sdg
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程なくして、目的の岩石地帯に辿り着く。息も切れ切れだったので、ここからは歩く
ことにした。
岩石地帯と言っても、大小さまざまな岩が点々としているわけではない。崩れた
コンクリート片のような巨大な岩がいくつも折り重なって、激しい起伏を作り出して
いるのだ。高いところでは、十数メートルにもなる。ロッククライミングをしている
気分になる程だ。
そしてあの虫は、この奥に住んでいる。
「よっ、と」
手近な岩のくぼみに足をかけて、登り始める。手を切らないように気をつけながら、
なるべく低いところを進んでいった。
まるで森のように岩石が積み重なっている。谷のように裂けていたり、山のような
急勾配だったりするのだから、なかなか恐ろしい。
途中、靴の裏が岩肌を滑って、危うく足を踏み外しかけた。四肢を突っ張って、
何とか体を支える。
岩の隙間から見えるれいなの町が、ちょっと低い位置にある。気付かないうちに、
結構な高さまで登ってきていた。
ふと、足元を見下ろす。
切り立った崖のような斜面。足元に裂け目があるが、一メートル下は闇に埋もれて
底が知れない。所々突き出ている石が、ナイフのように尖っている。
- 11 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/07/08(日) 23:22 ID:/0Z.3sdg
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「うわ、っ……」
背筋に薄ら寒いもの感じた。どっと冷や汗が出て、頬が強張る。
どうしよう。下なんて見るんじゃなかった。
怖くて仕方がない。足を滑らせ落ちてしまったら、どこまでも落ちていきそうな気が
してきた。手足が動かなくなる。まるで、岩にぴったり貼り付いたかのようだった。
恐怖から震える体を必死に抑えて、いよいよ進退窮まった時――
「……何してんの?」
ぶっきらぼうで怪訝とした声に、れいなの喉がひっと鳴る。危うく滑り落ちそうに
なった。
恐る恐る振り返る。
そこには見知らぬ女の人が、大きな毛布を羽織って岩べりに引っ付いていた。
- 12 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/07/08(日) 23:23 ID:/0Z.3sdg
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鋭い目つきと、気だるい雰囲気が印象的な人。先生が話していた『旅の人』は、
どうやら彼女のことらしい。
彼女に乱暴にせっつかれながらも、かろうじて岩石地帯の一山を越えられた。
ちょっと開けた丘のようなところで、小休止。毛布にくるまって空を見上げている
旅人から、ちょっと離れた所にれいなは腰を下ろした。
あの虫の詳しい生息地は知らないので、ここからは手探りで進むことになる。
ちらりと、旅人を窺う。黒い空を何とはなしに見つめているようだった。
不思議な沈黙。吹き付ける風は空気を混ぜっ返すだけで、二人の間の雰囲気を
散らしてはくれなかった。
何か会話をしなくては、と思い、れいなは口を開いた。
「あの……、田中れいなって、いいます」
「あっそう」
興味無さげに、あっさりと。
それでもれいなは頑張って、会話を続けようと試みた。
「あの、何て、名前なんですか?」
「教えない」
またもやばっさりと、れいなの努力は切り捨てられた。
二度も会話を切られては、流石に黙らざるを得ない。
れいなは口を閉じて、旅人から視線をはずした。
冷えた夜風に、れいなは膝を抱え直して体を丸める。多少動き辛くとも、コートに
するべきだったと後悔した。
- 13 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/07/08(日) 23:23 ID:/0Z.3sdg
-
「……寒い」
唐突な、彼女の言葉。
れいなは慌てて顔を上げた。
「寒い、ですね」
ふと気付くと、旅人の目がれいなをじっと見つめていた。
何故かため息を吐かれた。
「で、何してたの?」
「え?」
「何か走ってたし、気になって追いかけてみたら、挟まってるし」
「あぁ……」
それが出会い頭の会話の続きだということに、一瞬気付かなかった。
彼女から話しかけてきてくれた事に、少しばかり安堵する。
「ここに住んでる虫を、探しにきたんです」
「虫? 何で?」
「えーと……」
れいなは宙空に視線をさ迷わせる。何から説明したものか、と考え、
「……宿題で、絵を描かなくちゃいけないんですけど、ホントの空の色がわからんくて。
その虫、 光るんですよ。その光が空の色に似てるって聞いたんで、だから」
「ふぅん」
素っ気無い返事に、伝わっているのかどうか心配になる。
れいなのそんな気持ちは知らず、旅人はまた空を見上げていた。
そして、ぽつりと漏らす。
「変なの」
「……変ですよね。わざわさ見に来るなんて」
- 14 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/07/08(日) 23:24 ID:/0Z.3sdg
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俯き、れいなは指先に息を吹きかけて擦り合わせた。
わざわざ苦労してここまで来なくとも、虫なら先生の部屋でも見れる、ということは
気付いていた。
それでも、れいなが求めてたのは、別のもの。
室内では得られない、何かが見たかったのだ。
思いついた時は止められなかった。
旅人は首を横に振る。
「違う違う」
「え、違うんですか?」
れいなはきょとんとする。
旅人は続けて、こう言った。
「虫なんか見なくたっていいじゃん」
「は?」
「見に行きゃいいじゃん。あの雲の向こう」
くいっと顎先で、彼女は空を示す。真っ黒な空を。
れいなは目を丸くして、空を見上げた。
あの雲の向こうを、見に行く。
- 15 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/07/08(日) 23:25 ID:/0Z.3sdg
- 「……そっか」
それこそ、思いつかなかった。
重たく圧し掛かってくるような、あの黒い雲の向こう側を、直接見に行くなんて――。
そうだ。そうすれば、キャンバスに何を塗るかなんて悩む必要もない。
何故気付かなかったのだろう。
胸のうちに、炎がぽっと灯ったようだった。
内心で揺らいでいたぬるま湯の下から、こんこんと熱いものが湧き上がって来る。
興奮を抑えきれず、れいなの表情に自然と笑みが浮かんだ。
旅人を見ると、「うー、さぶ」などと言いながら毛布の中で小さくなっていた。
その姿が何故かとても可愛らしくて、れいなの顔が綻ぶ。
「あの、何で、旅してるんですか?」
世間話の気安さで、問いかけることができた。
旅人は雲の隙間を探すように空を見て、答えた。
「んー。実験」
「実験、ですか?」
れいなの問い返す言葉に、旅人は何も答えない。
また口を閉ざしてしまった彼女に、れいなはもう一度、
- 16 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/07/08(日) 23:25 ID:/0Z.3sdg
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――。
- 17 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/07/08(日) 23:26 ID:/0Z.3sdg
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れいなは開きかけた口を慌てて引き結んで、そっと息を潜めた。
衣擦れの音一つも立てないよう細心の注意を払いながら、暗い世界に目を凝らす。
旅人も声を押し殺して、周囲の様子を窺っているようだ。
二人して、耳を澄ます。
岩肌を撫ぜゆく風に混じって、小さな小さな音が聞こえる。
硬いものが擦れあうような音が、僅かながらに響いている――羽音だ。
虫の羽音が聞こえる。
絶えず吹き続けていた風が、徐々に徐々に凪いで行った時。
半歩先も不確かだった世界が、ほの明るく照らし出された。
(わ……!!)
白く光って、飛び回る小さな虫たち。
風が止む頃を岩の陰で待っていたのか、たくさんの虫が二人の頭上で飛んでいた。
黒々とした空を背景に、ぽつぽつと灯った小さな白い光。
うっすらと緑がかって、優しく岩の森を照らしている。
空中で螺旋を描いたり、てんで無作為だったり、かと思えば寄り添いあって留まる
光もあった。
暗い世界で、自由に動き回る小さな光、光、光。
二人はしばらく天を仰いで、その光景に見惚れていた。
言葉を交わすことも無く、ただじっと、見つめていた。
綺麗だった。
- 18 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/07/08(日) 23:26 ID:/0Z.3sdg
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イーゼルを用意して、描きかけだったキャンバスを立てかける。
木組みの椅子に腰掛けて、つなぎの袖をぐいと捲り上げた。
プラスチック製のパレットに、絵具を搾り出す。
そして、れいなは絵筆を持つ。
偽物の空が、明けようとしている。
紺碧の夜が、端からゆっくりと明るくなっていく。
れいなは一心にキャンバスを染めていく。
室内で茂る樹木や草が、照射され始めた擬似太陽光でつやつやと光っていた。
旅人は、早朝にこの街を発つと言っていた。おそらく、もうすぐ彼女はいなくなる。
最後まで旅人は名前を明かさなかった。
その代わり、車の名前を教えてくれた。
- 19 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/07/08(日) 23:27 ID:/0Z.3sdg
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『クドリャフカ』
『クドリャフカ?』
『そう。いい名前っしょ?』
『……また会えますか?』
『会いに来なよ。待ってないで』
雲の向こうで待ってるよ、と言って笑った旅人の顔が、忘れられない。
- 20 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/07/08(日) 23:27 ID:/0Z.3sdg
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「……ふぅ」
息をついて、れいなは筆を置く。
集中して一気に描き上げたせいか、どっと疲労が押し寄せてきた。
だが同時に、達成感もある。一睡もしていないのに、久しぶりに爽快な気分だった。
緊張していた体をほぐすように、両手を上げて伸びをする。と、見上げた暁の空が、
ピンク色なことに気付く。
れいなは思わず、腹を抱えて笑ってしまった。
ピンク色した朝焼けは、やがて透き通るような青い空に。
そして、静かに佇む町の上でゆっくりと暮れ、満天の星空を描くだろう。
あの虫の光のように。
- 21 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/07/08(日) 23:27 ID:/0Z.3sdg
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- 22 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/07/08(日) 23:27 ID:/0Z.3sdg
- 川VvV) < へたくそ
- 23 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/07/08(日) 23:28 ID:/0Z.3sdg
- Σ 从;´ヮ`) < へたじゃないです!
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