15 ロッキーズ・クエスト

1 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/01/10(水) 01:37 ID:GJTKNvFQ

15 ロッキーズ・クエスト
2 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/01/10(水) 01:38 ID:GJTKNvFQ

重々しい雰囲気の扉の前に立っている3人。れいな、絵里、さゆみの3人組である。

「この戦いに勝てば……世界に平和が訪れるね。」
「…うん。この扉の奥にいるっちゃね……魔王………………えーっと…」
「ミキ=サーマ。何?大魔王の名前も忘れちゃうくらい緊張してんの?」
「お、覚えてるに決まっとーやろ!覚えてるけどちょっと忘れてただけやけん!」
「何わけのわかんないこと言ってんの…」

大魔王の名をど忘れするという離れ業をやってのけたれいなと、呆れる絵里。
大魔王との決戦前なのに、いつもの調子である。


「さ、さゆ……準備はいいと?」

何も言わないさゆみを振り返ってれいなが訊ねる。

「いいよ〜」

鏡を見ながら髪を整えていたさゆみが、顔をあげてにっこり微笑む。さゆみは心の中で、決まった、とガッツポーズ。
大魔王との決戦を前に緊張しているのは、どうやられいな1人だけのようだった。
3 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/01/10(水) 01:39 ID:GJTKNvFQ
れいなが震える手で扉を押す。ギギギギ…という音とともに扉はゆっくりと開いた。

絵里とさゆみが、とっさにれいなの後ろに隠れた。扉が開いた瞬間にミキ=サーマが「凍える吹雪」か何かを吐き出したりしたらたまらない。

…何も来ない。2人がれいなの陰からそーっと顔を出すと、ミキ=サーマは笑みを湛えながら玉座に腰掛けていた。


「…よくぞここまでたどり着いたな。」


さゆみはピン、と来た。ゲームのラスボスにありがちな、必要もない前置きだ。

「れいな、絵里、今のうちに先制攻撃なの!!」

れいなと絵里がハッとして構えをとる。チッ、と舌打ちするミキ=サーマ。
4 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/01/10(水) 01:39 ID:GJTKNvFQ
※ミキ=サーマがあらわれた!


「ラリホー!!」

右手を突き出し、さゆみが真っ先に呪文を唱えた。

「ぐ…おのれ……zzz」

「よしっ、れいな!!」
「くらえええっ!!」

れいなが爆裂拳を繰り出す。4発、5発、6発。そして7発目を繰り出そうとしたその時、ミキ=サーマが早くも目を覚ました!
目を開けたミキ=サーマは再び舌打ちする。

「さわんなよオルァ!!」
「ぎゃっ」

れいなはいとも簡単に吹き飛ばされ、壁に体を強打した。
5 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/01/10(水) 01:40 ID:GJTKNvFQ
「れいな!!」

さゆみがれいなに駆け寄り、すぐにベホイミをかける。

「スクルト!」

続いて絵里が呪文を唱えた。まずは身の守りを強くしてから闘おうという作戦だ。

フン、と鼻でひとつ息をしたミキ=サーマが、右手を突き出す。凍てつく波動が迸った!スクルトの効果がすぐに打ち消される。

「さあ、今度はこっちから行くぞ!」

ミキ=サーマがもう一度右手を突き出す。


ドーーーン!!


大爆発が何度も何度も起こる。イオナズンだ!

爆発が止み、ミキ=サーマの視界に3人が映る。全員が立ち上がれないほどの傷を負っていた。
ミキ=サーマがニヤリと笑った。
6 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/01/10(水) 01:40 ID:GJTKNvFQ
「…ベホ…マラー…!」

さゆみが苦しそうに叫ぶ。…3人の傷が癒え、ミキ=サーマの表情が不快そうに変わった。


絵里が立ち上がり、体を動かし始めた。


―――死の踊り…!


急いで絵里から目を離すミキ=サーマ。しかし、体から何かを吸い取られる感覚を感じた。
魔法力を吸い取る踊り、不思議な踊りだ!


しかしミキ=サーマの高笑いが響き、絵里が踊りをやめた。

「私のMPは何千何万とあるのに、不思議な踊りで10程度奪って何になる!!」


絵里が一瞬、あっという表情になった後、ウヘヘと可愛く笑った。れいなとさゆみがガクッとなる。
7 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/01/10(水) 01:41 ID:GJTKNvFQ
ミキ=サーマが何やら呪文を唱え始めた。ハッとなって耳を塞ぐ絵里とさゆみ。正確に全て聞き取ろうと試みるれいな。


…やがて、れいながパタリと倒れた。死の呪文「ザラキーマ」だ!
大きくため息をついてから、「ザオリク」とさゆみが吐き捨てるように唱える。れいなが復活した。


すぐにさゆみはミキ=サーマのほうを向き、紫色のものを吐き出した。強烈な猛毒の霧だ!しかしミキ=サーマには全く効いていない!


次にさゆみはミキ=サーマをじっと見つめ、不意に両手を頭のところへ持っていった。ミキ=サーマが身構える。


「うさちゃん、ピース!」


それを見た誰もがさゆみに見とれ、攻撃も防御も忘れてしまう「うさちゃんピース」。さゆみはこの技に絶対の自信を持っていた。前に1度だけスライムに試したことがあり、成功率100パーセントなのだ。
8 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/01/10(水) 01:42 ID:GJTKNvFQ
「ぶらっく、ぴーす!」

ミキ=サーマがさゆみと同じポーズをして、ゲラゲラ笑っている。効いていない!
さゆみはショックの余り、その場に崩れ落ちてしまった。

「いやいや、それくらいで戦意喪失するとかありえんし。」

一応つっこんでおいて、れいなが絵里に目配せして肯いて見せる。



「…なに?」

れいなもその場に崩れ落ちそうになるも、なんとか持ちこたえた。

「だーかーら、れいなが攻撃するけん絵里は補助頼むっちゃ!」
「ああ、はいはい」
9 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/01/10(水) 01:42 ID:GJTKNvFQ
普通は目配せだけで何したいか分かるやろ、と内心毒づきつつ、れいなが飛び出す。すぐに体中から力が湧き出るのを感じた。絵里が攻撃力倍増の呪文「バイキルト」を唱えたのだ。

「くらえっ!」

必殺技、正拳突き。

「ぐっ…」

今度は確かな手ごたえがあった。ミキ=サーマの表情が一瞬、苦痛で歪む。


「絵里!さゆ!」

すぐさま絵里と、いつの間にか絵里に慰められて復活していたさゆみが援護射撃をする。氷の刃で相手を貫く「マヒャド」。巨大な火の玉で焼き尽くす「メラゾーマ」。
標的のすぐ側にいたれいなも巻き添えになりかけて、急いでミキ=サーマから離れる。なんとか軽い凍傷と火傷で済んだ。
10 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/01/10(水) 01:43 ID:GJTKNvFQ
「やった…!」

れいなが思わず叫んだ。ミキ=サーマは大きなダメージを受け、今や立っているのがやっとの状態に見える。
れいなだけでなく、絵里もさゆみも勝利を、そして世界の平和を確信していた。






だから、誰も気付かなかった。爆発呪文「イオナズン」よりも、死の呪文「ザラキーマ」よりも、何よりも3人の戦意を喪失させるのに十分な呪文があろうとは。
11 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/01/10(水) 01:43 ID:GJTKNvFQ



12 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/01/10(水) 01:44 ID:GJTKNvFQ
「……ちゃん!田中ちゃん!」

誰かに体を揺すられて、れいなは目を開けた。



「大丈夫?すごいうなされてたけど。『べほまなんてヒキョーだ!』とかなんとか」

ちょっと人をバカにしたような笑顔を見て、れいなは顔を引き締める。
13 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/01/10(水) 01:44 ID:GJTKNvFQ
「くらえっ、ミキ=サーマ!!」
「げふっ!」

れいなの渾身のパンチが、左の頬をとらえる。


不運にもそこで、れいなは我に返った。

今いる場所は、今日これからコンサートがある会場近くのホテル。そして、今自分に背筋も凍るような視線を向けているのは、間違いなく「あの」藤本美貴。
14 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/01/10(水) 01:45 ID:GJTKNvFQ



15 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/01/10(水) 01:45 ID:GJTKNvFQ

れいなの悲鳴を聞いた者は、誰もいなかった。
16 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/01/10(水) 01:45 ID:GJTKNvFQ

17 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/01/10(水) 01:45 ID:GJTKNvFQ

18 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/01/10(水) 01:45 ID:GJTKNvFQ

おしまい

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