05 ままちゅ2
- 1 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/12/31(日) 14:16 ID:XcMJDxIY
- 05 ままちゅ2
- 2 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/12/31(日) 14:16 ID:XcMJDxIY
- それは美人ながらクラスでも目立たない存在だった
須藤茉麻が眠気を抑えて登校していたある日の朝。
「見つけたゆー」
呼ぶ声がした。
振り返るけど誰も居ない。すっごく近くで声がしたのに。
「上だゆー」
見上げると上空およそ2bの位置にぽっかりと穴。
いや、問題は穴よりもそこから上半身乗り出してる女の子。
何これ?
「ママぁーりしゃこだゆー」
リシャコと名乗った女の子は両手を広げて落ちるように
茉麻の胸に飛び込んでくる。
持ち前の体躯でがっしりと押さえ込みながらも茉麻は
たらこのようにぷっくらした口唇を半開きにしていた。
・・・何、これ?
- 3 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/12/31(日) 14:17 ID:XcMJDxIY
-
ママは中学2年生
- 4 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/12/31(日) 14:17 ID:XcMJDxIY
- 「何これ?」
朝の賑わったクラス。
茉麻の腰にぶらさがるコアラのような物体を指さし
夏焼雅はいぶかしげに目を細めた。
「学校来る途中にね・・・」
茉麻は手振りを交えて説明する。
「で、連れて来ちゃったと」
「だって離れないんだもん」
茉麻がぽんと手をりしゃこの頭に置くと、りしゃこは
嬉しそうにえへへへぇと笑った。憎めないなぁ。
「でもさぁ」
と雅の後ろ、雅の背中におっかぶさるようにしながら
もうひとりのクラスメイト、嗣永桃子が呟くように言う。
「幼稚園児とか赤ちゃんならまだ可愛いったって、
コイツふつうにおっきいじゃん」
確かに小学校高学年サイズ。
- 5 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/12/31(日) 14:18 ID:XcMJDxIY
- 「茉麻が言うから空から落ちて、
さらに未来からやって来たってのも信じるけど」
「これがももなら」「これがみやなら」
髪を引っ張ったりあごを掴んだりの小競り合いが
始まった隣で、茉麻はまだりしゃこの髪を撫でていた。
「りさちゃん、どうして来たの?」
「パパとママに教えたいことがあるんだゆー」
「パパ!?」
雅桃のケンカが止まった。ぴょん、って音が聞こえそうな
勢いでリシャコの視線に顔を揃える。
「パパってやっぱ熊井ちょー?ねぇ熊井ちょー?」
「熊井ちゃんなの?茉麻のパパ熊井ちゃん?」
「ちょっとやめてよー!」
茉麻のほっぺが真っ赤になる。
リシャコがきょとんとした顔で首をかしげるが、
雅も桃子も茉麻をからかうのに一所懸命で見ちゃいない。
- 6 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/12/31(日) 14:18 ID:XcMJDxIY
- とかやってるとホームルームの時間ぴったりにドアが開いた。
「あ、やべ」
クラス全員ががたごとと席に着く。
あ、りさちゃん!
一瞬考えた茉麻はありったけのパワーでリシャコを
引き離し、隣の席に置いた。
ちなみに本来隣の席のはずのキャプテン(=学級委員)は
しぶしぶ欠席した子の席に移りました。
入って来たのはイケメンのため茉麻を含め憧れてる生徒が
多いが細かいところにうるさい、身長1.76bの熊井先生。
さっそくチェックが入る。
「清水、お前。なんで平岡の席に居るんだ?」
ちなみに平岡君が休んだ理由は、今日お誕生日で
お母さんに産んでくれてありがとうって言うためだって!
毎年恒例、家族公認の理由。
- 7 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/12/31(日) 14:18 ID:XcMJDxIY
- 先生がキャプテン(=委員長)の席に視線を移すと、そこには
見たこともない子の姿が。
茉麻の顔が真っ白になり、代わりに慌てて雅が立ち上がる。
「あ、あの熊井ちゃん」
「熊井ちゃん?」
「先生…」
「先生ですよ、私は」
「細かいなぁ」
重苦しい雰囲気はそこで打ち切られる。立ち上がったリシャコが
とことこと熊井先生に近づき「パパ」と抱きついたから。
クラスは火のついたような騒ぎになった。
- 8 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/12/31(日) 14:19 ID:XcMJDxIY
- 場所は変わって屋上。
「わぁ。天気も良いし、風も爽やかで」
「早く学校から帰りたい状態だね。気分最高!」
楽しそうな雅桃の横でがっくりうなだれる熊井先生。
「最高過ぎて消えたいよ。それに」
「それに?」
「学校から家に帰りたい状態、だろ」
「細かいなぁ」
「そんなことよりこの子」と熊井先生の右手と、茉麻の
左手に絡みついて離さないリシャコを指さす。
「何これ?」
「あのですねー…」
「成程」
熊井先生は目を閉じしきりに頷いていた。
「これが須藤の話でなければ信じないところだな」
「例えばみやとか?」「例えばももとか?」
第2Round開始。
- 9 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/12/31(日) 14:19 ID:XcMJDxIY
- 「ねぇりさちゃん」
ふたりは放って置いて茉麻が聞いた。風に流れる髪を
空いている右手で抑えながら。
「あの、ふたり揃ったよ?言いたいことって、なぁに?」
パパとママって言葉を使わないのは恥ずかしいから。
リシャコの顔が真面目になった。熊井先生と茉麻の
顔をゆっくり見比べる。
「パパ、ママ」
「うん」
「今日あたしお誕生日なんだゆー」
「うん」
「平岡くんちではお誕生日にはお母さんに
産んでくれてありがとうって言うんだゆー」
「うん?」
「産んでくれてありがとうだゆー」
「それだけ?」
「そうだゆー。学校休んで来たんだゆー」
- 10 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/12/31(日) 14:19 ID:XcMJDxIY
- リシャコはふいにふたりの手を離すと、一歩前に進む。
胸の前で両手の人さし指をぐるぐる回転させると、
バチバチと電気の音が響いた。
やがて空中にぽっかり出来た黒い穴に、リシャコは
吸い込まれるように消えた。あっという間の出来事。
「平岡君は未来で有名人になるのかな?」
いつの間にケンカをやめていたのか、空を見上げて
桃子が呟く。
その横で雅が「でも楽しかったね」と笑った。
「そうだね。結局のところ」桃子も笑う。
「楽しければ良いと思うんですけど」
雅と桃子は校舎の中へと戻って行った。きっと気を
利かせたんでしょう。
- 11 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/12/31(日) 14:19 ID:XcMJDxIY
- ふたり屋上に残された茉麻と熊井先生は、
顔を見合わせてお互いに照れる。
沈黙の時間も、それほど悪いものじゃない。
「私たちも戻りましょうか?熊井ち…先生」
「いや、熊井ちゃんでも良いよ。でも」
「はい」
「屋上から教室に戻りましょう、だよ」
「細かいなぁ」
戻る途中でさり気なく茉麻は熊井ちゃんの手を
握ってみたけど、振り払われなかった。
熊井ちゃんは別のことに心を奪われていた。
自分の時代の両親に言えば良いだろうに、
何でわざわざこの時代まで言いに来たんだろう?
- 12 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/12/31(日) 14:20 ID:XcMJDxIY
- ちなこがつまらなさそうに雑誌をめくっている。
もう何度目か解らないあくびをかみ殺したところで、
カプセルのランプがグリーンからブルーに変わった。
「やっと帰ってきた」
カプセルの中にハエとかが居ないことを確認してから、
ちなこが何本かレバーを上下する。カプセルの中が
電気で満たされ、それがおさまると中から煙と一緒に
梨沙子が出てきた。
「たっ、ただいまだゆーゲホゲホ」
「おかえり…」
梨沙子は思い出す仕種をする。その結果悲しそうな
顔になる。ダメだった。伝わらなかった。
「あたし来年も行くゆー」
「梨沙子…」
潤んだ瞳をぐしぐしこすりながらまた言う。
「来年も行くゆー」
- 13 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/12/31(日) 14:22 ID:XcMJDxIY
- 未来の世界。
誕生日にのみ、親のいない子にのみ許された、
過去の両親に会う権利。
ちなみにこの権利の発案者は平岡くんのニックネームで
国民に親しまれている平岡初代地球国大統領(豆知識)。
今年離婚調停の裁判へ向かう途中に揃って事故死した
茉麻ママと友理奈パパを、
生前に死期死因を告げてはならないという
航時法を犯さないよう救うために梨沙子が考えた方法。
離婚しないようにずっと、ずっと前から仲良くさせれば良い。
今回は失敗だった(両親が死んだ記憶があるから)けど
きっといつか、また三人で暮らせる日を夢見て。
「ママ、パパ。来年も行くゆー」
- 14 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/12/31(日) 14:22 ID:XcMJDxIY
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- 15 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/12/31(日) 14:22 ID:XcMJDxIY
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- 16 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/12/31(日) 14:22 ID:XcMJDxIY
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