25 ツンデレごっこ

1 名前:25 ツンデレごっこ 投稿日:2006/05/05(金) 23:52 ID:7LVED4.6
25 ツンデレごっこ
2 名前:25 ツンデレごっこ 投稿日:2006/05/05(金) 23:53 ID:7LVED4.6
「ツンデレごっこしよう」

あっけらかんとひとみが言い放つ。
美貴はコンマ2秒あっけにとられるもとりあえずツッコミ、リズムが大事。

「何それ意味わかんないんだけど」
「いやー最近美貴ちゃんつれないし」
「関係ないじゃん。ていうか別につれなくないし」
「いやだってさ、この前一緒に花見しようって言ったのに結局しなかったし」

そんな約束した覚えないんだけど、と美貴は小首をかしげたものの、でもうっ
かり忘れてるだけかもしれないしと、ポチポチ携帯のカレンダーを確認する。
案の定そんな予定は入ってなくて、美貴は口をとんがらせた。
3 名前:25 ツンデレごっこ 投稿日:2006/05/05(金) 23:53 ID:7LVED4.6
「えーやっぱそんなこと聞いてないよ。スケジュール入ってないし」
「うんまあ、あたしの脳内だし」
「脳内かよっ!」

スパーンと小気味良く美貴の平手がひとみの後頭部に炸裂する。
ひとみはノオオオオと大げさに叫びながら頭を押さえていきなりヘッドバンギ
ングを始め、その間美貴は危うくツッコミを入れそうだった携帯の無事を確認
しながら表面をよしよしと撫でる。
やおら、ひとみの動きがピタリと止まり、大きくうんうんと頷いたかと思うと、
晴れ渡ったような顔で喋り始めた。

「そういや花見しますかっていうアンケートにしませんって超そっけないのが
美貴ちゃんとれいなで、風情を解さない哀れな子羊にいっちょ花見のイロハを
教えたろうかって一瞬自分の中で盛り上がったんだったっけか」
「そんなマイブームなんか知るかよ」
「うーんこれだから野蛮なベイベーは困ったもんだぜ、はっはっは」
「つーかよっちゃんだってしませんって4文字しか書いてないじゃん」
「あーそうだったねー」
4 名前:25 ツンデレごっこ 投稿日:2006/05/05(金) 23:53 ID:7LVED4.6
バカみたいに晴れてる日。
脳みそまでヤキが回ったようなひとみのたわ言を聞き流しながら、
美貴の頭にふとれいなの顔が浮かんだ。

「そういえば最近何かれいなに避けられているような気がする」
「何か悪いことしたんじゃないのー?」
「よっちゃんじゃあるまいし、そんなことしないよー」
「そうかなあ意外と美貴ちゃん色情魔だしなあ」
「誰が色ボケじゃボケ。美貴はこう見えても硬派な方ですから」
「そう言いながらコンサ中も色んなところベタベタ触ってんじゃん」
「いやっ、それは確かにそうだけど、だがしかし……」

そう、確かに最近のれいなは発育がいい。
一時期の痩せっぽちな体型からしたら格段の進化だ。
太ももといい腰周りといい、あろうことかあげくは胸までも……。
5 名前:25 ツンデレごっこ 投稿日:2006/05/05(金) 23:54 ID:7LVED4.6
美貴が妄想の海にゆうらりと浮かんでいると、いつの間にかひとみがにやにや
しながら手をわきわきさせている。

「どう美貴ちゃん。いつでも懇切丁寧に揉んであげるよ。十分たったの三千円」
「うっせーバカ殺すよ」
「おーだんだんツンデレっぽくなってきたねー」
「っていうかだからツンデレって何よ」
「よくぞ聞いてくれました!」

いきなりテンションのあがったひとみが、どこから仕込んできたんだか生き生
きとツンデレの解説を始めた。
簡単に言うといつもツンツンしている奴が、ふとした拍子にデレデレと甘えて
くることであるらしい。
タカビーなお嬢様が急にしおらしくなる美しさ、無口な一匹狼がいきなり心を
開いてくる喜びを切々と訴えるひとみを尻目に美貴はフンと鼻を鳴らした。

「そんな型にはまったようなのいるわけないじゃん。アホらし」
「いやあ美貴ちゃんとか結構そんな感じだと思うけどね。だって普段からおっ
かないし」
「ああんだって?」
「ほらほらその目。人を寄せ付けず見るものすべてを凍らせる魔性の眼差し」
「よっちゃんいっぺん死んでみる?」
「イヤマダ死ニタクナイデス」
6 名前:25 ツンデレごっこ 投稿日:2006/05/05(金) 23:54 ID:7LVED4.6
ぶるぶると身を振るわせるひとみを他所に、美貴は本格的にため息をつく。

「れいなさー、撮影とかで近くに寄ることがあってもさ、終わったらぱっと離
れちゃうし。コンサ中に寄っていってもいつの間にかどっか行ってるし」
「そりゃツンデレ様だよ。多分美貴ちゃんのことが気になって仕方が無いんだ
けど、ついつい冷たくしちゃうんだって。本心は美貴ちゃんにズキュンLOVEな
んだって。かーっ若いっていいなあこんちくしょうめ」
「いやもうツンデレはいいって」
「まあ気になるならやっぱ直接話してみるのがいいと思うけどね。同じグルー
プで何か反りが合わないってのも問題だし」
「急にリーダーらしい発言すんのやめろよな」
「でもグループ内恋愛は禁止だかんね」

無言でひとみに振り下ろされる拳骨一発。
ひとみは脳裏にちらちらと舞う赤やピンクの瞬きを見て今年ようやく花見をす
ることができた。やっぱり脳内で。
7 名前:25 ツンデレごっこ 投稿日:2006/05/05(金) 23:54 ID:7LVED4.6
そんなこんなでそれからはというもの、美貴はれいなをずっと観察していた。
というより、最初は観察する気など無かったのだが、あれだけ言われては気に
しないわけにもいかなかったのだ。

れいなは常にコロコロと表情を変え、見守る者を飽きさせない。
しかし美貴がさりげなくれいなと絡もうとすると、すっとスイッチが入ったか
のように表情が硬く触れてはいけないようなオーラを発しだす。
それはもうあからさま過ぎて、周りにだってバレバレだろうというような領域
に達していたが、不思議と周囲の人々はそれがさも当たり前であるようにごく
普通にふるまうのだ。

美貴はひとみが何かメンバーに吹き込んだんじゃないかと疑いつつも虎視眈々
とチャンスを狙っていた。
そんな感じでしばし膠着状態が続いた。
8 名前:25 ツンデレごっこ 投稿日:2006/05/05(金) 23:55 ID:7LVED4.6
均衡が破れたのはある昼休みの事。
さりげなさを装って美貴が渡した弁当を完全に無視して、れいなが自分で弁当
を取った時、美貴の中で何かが切れて気がついたら感情をぶちまけていた。

「つーか何、何か言いたいことがあんならはっきり言いなよ! 何も言わない
で完全無視とか超感じ悪いんですけど?」

れいなはびくっとしたように体を震わせて、一瞬美貴の目をはっきりと見たけ
れど、あっさり視線をはずすとしおらしく頭を垂れて、もごもごと謝りの言葉
を並べた。

「すみません……ぼーっとしてて気がつきませんでした」
「ぼーっとって、絶対気づいてるって! どう考えてもおかしいじゃん!」

れいなにつかみかからんばかりの勢いになっていた美貴を慌ててひとみが止め
に入る。
ヒートアップした美貴は中々収まりがつかなくなっていたが、当のれいなは絵
里に付き添われてとっくにいなくなっていたので、怒りの向け先が無く徐々に
おさまっていった。
9 名前:25 ツンデレごっこ 投稿日:2006/05/05(金) 23:55 ID:7LVED4.6
「ごめん、ついカッとなっちゃって」
「やっぱさー美貴ちゃん。早めにガツンと言ったほうがいいって」

美貴は別に喧嘩がしたいわけではないのだ。
れいながそこまで頑なになる理由が知りたいだけなのだ。
良くも悪くも今現在、美貴の頭の中の興味はれいなの事でみっちりと埋まって
いた。そしてどうにかして、二人で話す時間を作らなければ、という思いに囚
われていた。

とはいえ普段から顔を合わせるものの、いざ二人だけで話ができる状態という
のはそうそうない。
れいなはいつも一人でいるような印象があったのだが、実のところ美貴が気に
しだしてから、ほとんどの時間誰かと一緒にいた。
だいたい5期か6期の誰かと一緒のことが多かったが、特に絵里と一緒である
ことが多かった。
れいなが絵里と仲が良いというのは美貴にとっても意外な発見であったが、気
がつけば絵里がいるという状態は、正直絵里が邪魔しているのではないかと勘
ぐったりもした。
10 名前:25 ツンデレごっこ 投稿日:2006/05/05(金) 23:55 ID:7LVED4.6
そんな状況で、れいながヤンタンに出演する日になっても、まだ冷戦状態は続
いていた。
番組中美貴と愛がれいなを意識しすぎだという指摘があったが、実際には滅茶
苦茶意識していたのは美貴で、愛はその美貴の過敏な感情の煽りをくらってピ
リピリしていただけであった。
しかし結果として、収録はぐだぐだになり、最後までぴりっとしない結果に終
わってしまった。

何があっても仕事に影響が出てしまうのは良くない。
美貴は一向に態度を変えないれいなを恨めしく思いながらも、4月の最終週に
いたって、ついにどうにかする決意をした。

朝一で楽屋に陣取り、じっと来訪者を待つ。
れいな以外の人が来た場合、適当に言いくるめてしばらく時間をつぶしてもら
う。そんなこんなで彼是3人ほど送り返した後、絵里ときゃらきゃらしていな
がられいながやってきた。
あー藤本さんおはようっすと軽い口調で挨拶をしかける絵里をギロリと視線で
射すくめ、ちょっとれいな借りてくよと、れいなの手を強引に引っ張って部屋
を出る。れいなは文句も言わず黙ってついてくる。
11 名前:25 ツンデレごっこ 投稿日:2006/05/05(金) 23:56 ID:7LVED4.6
雑居ビルの屋上、いい天気ではあるものの、空は他のビル群に分断されてお世
辞にもいい風景とは言えない。
それでも無理やり連れてこられたにしては、全然嫌な顔もせずれいなはうーん
とひとつ大きな伸びをした。

一方美貴の方は、最初に何を話すべきか全然考えがまとまっていなかった。
単刀直入に切り出すべきか、社交辞令から始めるべきか、悶々としている中、
ガツンと言っちゃえよ、そんなひとみの忠告が美貴の頭をぐるぐるを回る。
こういう間合いって苦手なんだよなあとテンパった美貴の口から出てきた言葉
は本人にとっても意外なものだった。
12 名前:25 ツンデレごっこ 投稿日:2006/05/05(金) 23:56 ID:7LVED4.6
「田中ちゃん、今度花見しよっか」

れいなは呆気にとられてしばし10秒、視線をキョロキョロさせたり口をパク
パクさせたりした後にまあまあまっとうな答えを返した。

「えっ……っていうかもう4月も終わりですけど」
「いやそうだけど、北海道とかこれからがシーズンだし」
「いきなり、じじじ、実家行くとっ! そ、それはどういう……?」
「いやいや、実家とか言ってないし、べべ別に桜とは言ってないし……まあ花
見っつたら普通桜だけど……」

二人ともテンパリ過ぎて会話の方向が訳がわからなくなっていた。
突然美貴は無性におかしくなって、ケタケタ笑う。
そしたらすっと力が抜けてごく自然に本題を切り出すことができた。
13 名前:25 ツンデレごっこ 投稿日:2006/05/05(金) 23:56 ID:7LVED4.6
「そいえば最近田中ちゃん、私のこと避けてない?」
「いやっ、別に避けてない……ですよ。ただちょっと」
「ちょっと?」
「ちょっとあのその、何ていうかうまく言いにくいんですけど壁があったって
いうか」
「壁ねえ……」

美貴はここ最近の自分の態度と行動を回想する。
確かにれいなの事を気にするあまり、れいなから見れば美貴がぎこちない態度
を取っていたかもしれない。
しかし、そのきっかけを作ったのはやはりれいなの態度なのだ。
美貴はその原点を追い求めようとむむと考え込む。
14 名前:25 ツンデレごっこ 投稿日:2006/05/05(金) 23:57 ID:7LVED4.6
「美貴ねえ」

弾かれたように美貴はその呼び名に目を見開いた。
随分と昔に聞いたことのあるような呼び名、しかもれいな独特の発音の甘い語
感に美貴は自身のわだかまりがゆるゆると溶けゆくのを感じる。

「美貴ねえ」

二度目に確かにそう呼ばれた時、美貴の唇の端は完全に釣りあがっていた。

「れいなさあ、最近随分色っぽくなったんじゃないの、特にこの辺とか」

言いざまにれいなのホットパンツから勢い良く伸びた太ももに軽くタッチする。

「ちょっ、もおバカぁー。美貴ねえのヘンタイ」
「ふっふっふ、今まで散々無視した罰じゃ。うりゃうりゃ」
「うわあごめんなさいごめんなさい、もうしません」
15 名前:25 ツンデレごっこ 投稿日:2006/05/05(金) 23:57 ID:7LVED4.6
今まで降り積もった鬱憤を散々れいなの体で晴らして、美貴は満足げにフェン
スにもたれかかった。
れいなは、さんざんおもちゃにされた余波を肩で息をつく事でどうにか抑えよ
うとする。
美貴が眩しげに空を仰いで、ぐるりと見回してから戻ってくるとれいなは既に
呼吸を整えて、今まであんなに重かった口をすらすらと開く。

「美貴ねえ、いつか一緒に花見しようね。できれば美貴ねえの実家の方で」

ニヒヒと笑いながら美貴の目の前に突き出された小指。
美貴が一瞬握るべきか握らざるべきか悩む暇もあらばこそ、れいなはその手を
ぱっと引っ込めて満面の笑みを浮かべて美貴の耳に甘く囁きかける。

「そっちにいっていいと?」

聞くや否やおもむろに懐に飛び込んできたれいなを受け止めた美貴は自分の頬が
どうしようもなくデレデレと垂れ下がっていくのを実感していたのだった。
16 名前:25 ツンデレごっこ 投稿日:2006/05/05(金) 23:58 ID:7LVED4.6


「ほらあ、あたしのゆーとおりじゃん」
「ウソなのさゆは信じないの」
「でも結果オーライだし、絵里のツンデレ作戦はうまくいったっていうことで」
……さゆぅー約束覚えてるよね?」
「イヤなのさゆは昔のことを思い出すと頭が痛いの。負けた方が一ヶ月パシリ
なんてっ……あっ!」
「ふふーん、いい子だねえさゆは」
「あわわわわ」
17 名前:25 ツンデレごっこ 投稿日:2006/05/05(金) 23:58 ID:7LVED4.6
結局さゆはその仕事を小春に押し付け、小春はひとみに泣きついたので、リー
ダ命令でれいなにお鉢が回り、れいなはぶつぶつ言いながらも、買出しの品に
こっそりと美貴の好物を混ぜてにやにやしているとかしないとか。
18 名前:25 ツンデレごっこ 投稿日:2006/05/05(金) 23:58 ID:7LVED4.6
 
19 名前:25 ツンデレごっこ 投稿日:2006/05/05(金) 23:58 ID:7LVED4.6
 
20 名前:25 ツンデレごっこ 投稿日:2006/05/05(金) 23:59 ID:7LVED4.6
 

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