09 ピエロな2人
- 1 名前:09 ピエロな2人 投稿日:2006/05/01(月) 16:51 ID:Bl.KIxOM
- 09 ピエロな2人
- 2 名前:09 ピエロな2人 投稿日:2006/05/01(月) 16:51 ID:Bl.KIxOM
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がらっ、とドアがスライドして、見える制服。
「ごめん、れーな。今日用事できちゃった」
放課後の教室。
漫画の中で出てくるような、何か起こりそうなロマンティックな夕暮れ時ではない。
白く明るい太陽の光が、滑り込む教室内。
誰のか知らない机に座っていた私は、窓の外から彼女へ視線を向ける。
触らずも分かる茶色い柔らかな髪、優しい笑顔に口角の上がった口元。
あたしの好きなツボをついてる、としか思えないほどの理想の人。
なのに、なんで、なのかな。
- 3 名前:09 ピエロな2人 投稿日:2006/05/01(月) 16:52 ID:Bl.KIxOM
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乾かない、忘れられない、気付いてない。
- 4 名前:09 ピエロな2人 投稿日:2006/05/01(月) 16:52 ID:Bl.KIxOM
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「れーな?」
返事がないのを心配したのか、彼女が近づいてくる。
手を、伸ばして
腕を、捕まえて
「どしたの?」
捕まれた腕を見て、絵里が言いながら首をかしげる。
本当はもっと声が聞きたくて、話しかけて欲しくて。
でも素直になれなくて。もどかしくて。
近くもなくて、遠くもなくて。
言葉で表せる関係が欲しくて。傍にいたくて。
「べつに」
面白くもないものを批判するように、どうでもいいように、言葉を吐き出す。
ほんの少し開けられた窓の隙間から、風がふわりと滑り込む。
ゆらり、ゆれる白いカーテン。
- 5 名前:09 ピエロな2人 投稿日:2006/05/01(月) 16:53 ID:Bl.KIxOM
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絵里の腕を掴んだ手を離さない。
触れるだけのように力をほとんど入れてないそれ。
振りほどこうが、どうしようが彼女の勝手。
あたしを捨てようが、どうしようが彼女の勝手。
「すきだよ?」
あたしの手を数秒見つめて、絵里は首をかしげ、気の抜けたコーラみたいな、柔らかなキスを唇に落とす。
それは、甘くて、甘くて、仕方がなくて。
なのに、もっと、もっと、満たされたくて。
離れてく唇を繋ぎ止めたい、と思ってやめた。
- 6 名前:09 ピエロな2人 投稿日:2006/05/01(月) 16:53 ID:Bl.KIxOM
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「―――― 約束したよね?」
不意打ちの告白、キス。思わずの出来事に、口を滑らす。
約束をしよう、と言ったのは絵里で、破ったのも絵里。
だけど、あたしもとっくの昔に約束を破ってた事は1人だけの秘密。
本当は、ずっと喋らないつもりだった。
愛想をつかされて、嫌われて、別れて
あたしと出会ったことさえ、最悪なこととしてくれればいいのに、と思って、それが嫌だった。
好きだから、どうしていいのか分からない。
ただ、それだけ。
「…んー」
悩んでるような声を出しながら、絵里は口角を少し上げ、窓の外の校庭を目を細め見る。
ちゃんとした返事を促すように、絵里の頬に手をあて、横向きグラウンドを眺める顔を正面に向けさせる。
- 7 名前:09 ピエロな2人 投稿日:2006/05/01(月) 16:54 ID:Bl.KIxOM
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「れーなはだめでも、絵里はいーんだよ」
「何それ」
絵里の腕が、すっ、と離れ、あたしの力の入ってない手は重力に従い下へと落ちる。
それを、絵里の細い指先がふんわり、と自然な柔らかな仕草で絡め取る。
「れーな、すき」
「すき、すきすぎて、苦しいくらい、すき」
絵里がどれだけ心の内を透かしてくれたって、あたしは言わない。
好きだなんて、熱に犯されても言わない、言ってやんない。言えない。
辛いだけのこんな約束なんて、どうして守らなきゃいけないんだろ。
「だいじょーぶ。絵里がれーなの分、言うから」
心の中を見透かしたように、絵里がふにゃりと笑った。
「れーな、すき、すき、すき、すき、すき」
生まれて消えない微熱を何度も口移しで分け合って
お互いの熱が一緒になって、燃える炎が胸を焼く。
せつなくて、せつなくて、心はさみしくて死んでしまうウサギみたいだった。
- 8 名前:09 ピエロな2人 投稿日:2006/05/01(月) 16:54 ID:Bl.KIxOM
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ねぇ、絵里、いつからあたし達はこうなったんだろ。
放課後に待ち合わせて、どうでもいいくだらない話をして
たまにキスをして、笑って、怒って、お菓子食べて。
たまにさ、関係に名前がないと不安になるんだよ。
ねぇ、今のあたし達は何という関係に分類されるのかな。
恋人、友達、親友、幼馴染。
もっと曖昧なものなのかな。それとも、もっと別のものなのかな。
あの日、初めて絵里に嘘を付いた日から、きっとれいなはおかしくなった。
幸せで仕方がない。失いたくない。離したくない。
そんな気持ちにばかり支配されて、おかしくなった。
離れないように、と繋いでたのは君の指なんかじゃなく不安で
拭えないそれに、溺れて喘いでる。
- 9 名前:09 ピエロな2人 投稿日:2006/05/01(月) 16:54 ID:Bl.KIxOM
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「――― じゃあ、絵里用事あるから帰るね」
「……用事って、さゆ?」
「んー」
曖昧に笑う絵里の指を離す。
絡めていた指は、すぐに離れて、心地良い熱が一瞬にして消え去る。
「じゃね」
「うん」
バイバイ、なんて言わない。
また明日、なんて言わない。
確実な終わりも、確実な未来も分からない。
- 10 名前:09 ピエロな2人 投稿日:2006/05/01(月) 16:55 ID:Bl.KIxOM
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たった1人の教室。
金色の光は、オレンジ色に姿を変え、心に寂しさを連れて来る。
もう、帰ろう。
絵里は、帰ってこない。
1日ずつリセットして、明日を生きていく。
上手く彼女と過ごして行く為には、うざったい感情はいらない。
だけど、ただ1つ。
ねぇ、絵里。
「…………れなもすきだよ」
- 11 名前:09 ピエロな2人 投稿日:2006/05/01(月) 16:55 ID:Bl.KIxOM
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あの日、誓った約束は破られた。
君は、それを知らないまま。
あの日、君についた嘘は
今も、この胸を刺し続ける痛み。
- 12 名前:09 ピエロな2人 投稿日:2006/05/01(月) 16:55 ID:Bl.KIxOM
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『絵里のこと、好きになっちゃだよ?』
『……え?』
『じゃないと、絵里、れーなにキスできないもん』
『なんで?』
『浮気になっちゃうんだって、さゆが言ってた』
『―――― 大丈夫。れな、絵里のこと好きじゃないから』
- 13 名前:09 ピエロな2人 投稿日:2006/05/01(月) 16:56 ID:Bl.KIxOM
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あたしは、いつかのために、ただ、きみにさよならを言う練習をする。
- 14 名前:09 ピエロな2人 投稿日:2006/05/01(月) 16:56 ID:Bl.KIxOM
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川*^ー^)
- 15 名前:09 ピエロな2人 投稿日:2006/05/01(月) 16:57 ID:Bl.KIxOM
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从* ` ヮ´)
- 16 名前:09 ピエロな2人 投稿日:2006/05/01(月) 16:58 ID:Bl.KIxOM
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川*・-・)ノ<エンド♪
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