また明日

1 名前:- 投稿日:2005/09/21(水) 22:06
また明日
2 名前:- 投稿日:2005/09/21(水) 22:07
「うわ、まっるーい!」
「ほんとだ、満月だね」

外に出るともう真っ暗になっていて街灯やビルの照明、そして月明かりだけが辺りを照らしていた。
私と舞波は迎えに来てくれたお母さんたちの後をついて歩きながら、月がぽっかり浮かんだ夜空を見上げている。
流れる雲が時々じゃまをするけど、白いような黄色いような、空にはそれしかない、ってくらいの存在感を持った月。
雲もすごい速さで動く。雲の色、空の色、そして月の明るさのコントラストは見事なほどだった。

「ウサギがいるかな? 舞波見える?」
「うーん、ちょっとわかんない」

頭をがくんと後ろに倒して上だけ向いて歩いていたら、前を行っていたお母さんが振り向いて、
「桃子、ちゃんと前向いて歩きなさい」と怒られた。「はぁい」黙って聞くのが大人なのだ。

それから車を停めてある駐車場に着くまで、舞波は、「月は太陽の光を反射してるから光ってるように見える」とか
「昼間も月は出ている」とか「だいたい一ヶ月に一回は満月になる」ということを教えてくれた。
私は舞波よりひとつ年上だし、大人だからもちろんそんなことは知っていたけど、感心して頷きながら聞いた。

でも、それなら舞波と一緒に見る満月は今日で最後かもね。
言いかけて、やめた。思ったことをすぐ言ってしまうのはコドモの証拠だ。
それにまだ最後と決まったわけじゃない。私はぶんぶんと頭を振った。頭を切り替える。
3 名前:- 投稿日:2005/09/21(水) 22:07
「おだんご食べたいなぁ」

月といえばこれでしょう。実際に月を見ながら食べたことはないけど、きっとおいしいと思う。
舞波は頷いてから、ちょっと黙って、その後に「白玉なら簡単に作れるよ」と言った。

白玉。
確かにおだんごだ。

「えーっ、白玉食べたい!」
「……一緒に作る?」

私が白玉コールを始める前に、舞波からストップがかかった。
食べたい、ぜひ食べたい。「作る!」私は叫んでいた。

さすがに今日はもう遅いから今度ね、と約束をして私たちは手を振りあった。
それは、また明日、の合図だ。
4 名前:- 投稿日:2005/09/21(水) 22:08

5 名前:- 投稿日:2005/09/21(水) 22:08
「ねぇねぇ、次どうするの〜?」
「えーと、そこの説明通りにすると……」

あれから数日後、私は舞波の家で白玉作りをしている。当然ながら舞波と一緒に、だ。
前の晩に見た月はもう欠けてしまっていた。
それを見て、もう月見なんて言ってられないよね、と二人で笑いあった。
だから、今日は白玉を使ってフルーツポンチを作ることにした。ほら、あの給食に出てくるの。

粉に水をそそいで手で混ぜる。ひやりとした感触が気持ちよかった。
白玉を丸めているとき、初めのうちは小さく小さくしていたのを、だんだん大きく丸めていった。
大きいほうがオトク感あっていいじゃん、と私が言って、舞波も「そうだね」と頷いたから。
雪だるまを作る前の雪玉みたいに、大きさの違う白玉がどんどん出来ていく。
それを見ていると段々、あーなんか白玉が成長してるみたいだ、と思った。

お腹の中、一歳、二歳、幼稚園、小学校に入って、デビューして、一年、二年。それから。
6 名前:- 投稿日:2005/09/21(水) 22:08

7 名前:- 投稿日:2005/09/21(水) 22:08
フルーツポンチももう完成に近づいて、あとは、どばどばーっと缶詰フルーツを混ぜてしまうだけだった。
舞波の言うとおり、白玉は簡単に作れた。これなら一人でもできたと思う。
でも誰かと一緒に作るから、楽しくて、そしてきっとおいしいのだ。
だけどなんとなく、今日は他のベリーズメンバーを誘わなかった。
舞波も、私と白玉作りをすることは誰にも言ってないと思う。これもなんとなくだけど。

だばだばと混ぜるのは一緒にやった。
でも、おいしくなるから、って入れたサイダーがはねないようにゆっくりと。
それぞれお皿に取り分けて、ぷるぷるの白玉が逃げないようそっとスプーンで口に運ぶ。

「おいしーい!」
「うん、おいしい!」
8 名前:- 投稿日:2005/09/21(水) 22:09
いつもと同じようにはしゃぎあう。もちもちとした白玉。とてもおいしかった。
これからも「また明日」って手を振りあえればいいのに、ふと思った。

私は大人だからさ、ももはおとなだからさぁ。ぜったいに泣かないよ。
ずっとずっと笑っていたい。
それから、ずっとずっと、笑っていてほしい。
9 名前:- 投稿日:2005/09/21(水) 22:09
。。。。。。。。
10 名前:- 投稿日:2005/09/21(水) 22:09
。。。。。。。 。
11 名前:Max 投稿日:Over Max Thread
このスレッドは最大記事数を超えました。
もう書けないので、新しいスレッドを立ててくださいです。。。

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