中秋の名月
- 1 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/09/18(日) 21:49
- 中秋の名月
- 2 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/09/18(日) 21:55
- 「わーきれいだねえ、あさ美ちゃん」
夜空に浮かぶ満月を見上げ、麻琴が言った。
「そうだねまこっちゃん。もぐもぐ」
「もう、食べてばっかり」
月のことなどそっちのけ、あさ美は傍らの団子をひたすら食べ続け
ている。
「でも今日は晴れてよかったねえ。月もこんなに綺麗に見えるし」
「そうだねえ、むしゃむしゃ、もぐもぐ、ごっくん」
「……」
あさ美の食べっぷりを横目で見ながら、麻琴は聞こえぬようにじゅ
るりと涎を啜った。
- 3 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/09/18(日) 22:00
- 今日は中秋の名月なんだって、と言って麻琴を月見に誘ったのは
あさ美だった。月見と言えばお団子、というのはつきものであっ
て、今の麻琴には避けなければならないイベントではあった。
しかし、「そうだよね、最近まこっちゃんはのんつぁんとばっか
遊んでるもんね、そうだよね」という恨み節を何十回と聞かされ
仕方なくこの公園のベンチに座っているというわけだ。
それにしてもあさ美ちゃん、おいしそうに食べてるよなあ……
言葉で説明することなく、顔に浮かぶ満面の笑みで食べることの
幸せを表現するあさ美。それは見る人をも幸せにするだけでなく、
別の生理現象を催させることになる。
そう、彼女がにこにこして食べていると、こちら側の食欲が掻き
たてられるのだ。
- 4 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/09/18(日) 22:05
- 麻琴はその笑顔の最大の被害者だった。
あの顔を見てると、ついつい食が進んでしまう。相手のペースに
合わせて、食べてしまう。しかも当の本人は胃下垂女王なので、
まったく太らない。そのことに気づいた時には、麻琴の体はマシ
ュマロマンになっていた。
最近は本人の努力の結果(と事務所の指示)によってだいぶ持ち
直してはいるが、それでも少しでも気を緩めればゴール下のリバ
ウンド王になる可能性は限りなく透明に近いブルーだった。
というわけで、麻琴は嫌が上でも夜空に浮かぶ黄色い月に意識を
集中させなければならなかった。
- 5 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/09/18(日) 22:11
- それにしてもどこまでも黄色く真ん丸い月。
そしてむしゃむしゃという隣の音。
麻琴はその音を止めるために、
「もうあさ美ちゃん、せっかく二人でここにいるんだからさあ、食
べてないで何か話そうよ」
と話しかけた。そこでやっとカロリークイーンは団子を口に運ぶ手
を止める。
「そうだねえ。あのさあ、昔教科書に載ってた話でね」
「ふんふん」
「一匹のねずみが主人公なんだけど、そのねずみは空に浮かぶ月が
チーズにしか見えなくて、月をかじるために梯子を使って天に昇ろ
うとするんだよ」
結局食べ物の話かい。麻琴はがっくりしながら再び月を仰ぐ。
- 6 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/09/18(日) 22:18
- あさ美ちゃんのせいで、せっかくの月がチーズにしか見えなくなっ
たじゃん……
空に浮かぶのは、黄色い、丸いチーズ。
そう思えば思うほど、おなかがぐーと鳴る。
隣の団子を食べればそれで済む話なのに、それだけはできない。
食べたら内山君のように裸で雪原を走らされるような仕事が回って
くるかもしれない。というわけで、闇の中の月に集中する。
ああおいしそう、じゃあ隣の団子を、でもそれはだめ、じゃあ月に
集中、ああおいしそう、の無限ループ。
そうこうしているうちに、何だか空の月が大きくなっているような
気がした。自分の食い意地に思わず涙が出そうになる。
あれは月、あれは月、あれは月、あれは月、あれはつき、あれはつ
き、あれはちつき、あれはちーき、あれはちーず、あれはチーズ。
思わず首を振る。そして満月に目をやると月はさらに大きくなって
いるような気がした。脳が食欲に負けて幻覚でも見せているのか。
- 7 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/09/18(日) 22:28
- 「あさ美ちゃん、月ってあんなに大きかったっけ」
「もぐ、さあ、むしゃ、きっと、くちゃ、まこっちゃん、もぐ、
の、むしゃ、目の、くちゃ、錯覚だよ」
話す相手が間違っていた。麻琴はもう一度件の月を凝視する。
月は明らかにさっきよりも大きくなっていた。ソフトボール大に
見えていた月が、今ではストレッチで使う大きなゴムボールの大
きさになっている。
「やっぱりでっかくなってるって!あさ美ちゃんもお団子ばっか食
べてないで月を見なよ!!」
「うん、もぐもぐ、わかったよ、ぱくぱく」
「全然見てねーじゃん!」
あさ美たち以外の公園にいた人たちも、みな空を見上げていた。
不思議なことに誰も逃げ惑うものはなく、ただただ大きくなってゆ
く月を凝視している。
月が空を覆いつくしていた。月というよりも最早黄色い空だ。黄色
い空でブンブンブーンだ。あさ美はようやく目線を団子から月へと
視線を移す。それでもなお食べ続けている。
麻琴はこれだけ月が近づいたら、かじることはできるかもしれない
と思った。そしたらきっと月はチーズの味がするのだろう。あさ美
が昔教科書で読んだという話のねずみに自慢してやりたかった。
- 8 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/09/18(日) 22:29
- ごごごごごご
- 9 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/09/18(日) 22:29
- ごごごごごご
- 10 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/09/18(日) 22:29
- ぐしゃ
- 11 名前:Max 投稿日:Over Max Thread
- このスレッドは最大記事数を超えました。
もう書けないので、新しいスレッドを立ててくださいです。。。
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