イエロウ

1 名前:__ 投稿日:2005/09/18(日) 14:34
イエロウ
2 名前:__ 投稿日:2005/09/18(日) 14:34
「なんで春雨って食べ物はあるのに、秋雨はないんやろ」
「なんででしょうねぇ」

19歳になったばかりの愛ちゃんがどうでもいい疑問を口にして、わたしこと、亀井絵里はそれに軽く受け答える。
珍しく仕事が午前上がりで、わたしたちは家にはまっすぐ帰らずにぶらついていた。
今日は家にこもるにはもったいないくらいのすがすがしい秋晴れで、散歩したら気持ちよさそうだったから。
ちょうどわたしと同じように午後に暇のできた彼女を誘った。

ふとした思いつきからの散歩だったけど、またわたしは思いつきを口にだす。

「紅葉狩りに行きませんか?」
「ん? ええよ」

でも、紅葉狩りなんてどこですんの? との彼女の疑問に、わたしはしばし考える。
3 名前:__ 投稿日:2005/09/18(日) 14:35
結果。遠出はしないで近所の公園で。
というのも、紅葉狩りスポットを知らないから、ってだけでもある。

ほてほてと二人で歩いてたどりついた公園には、紅葉はなくて一面が黄色い葉っぱで埋め尽くされていた。
本当にぎっしり、といった様子で、公園の端々に落ち葉がたまっている。
入り口にもたっぷりと葉があって、一歩二歩と進むと、さくさくと軽い音がした。

「紅葉、なかったですね」
「ま、イチョウ狩りでもいいんじゃない?」
「じゃあ、できるだけ綺麗な葉っぱを見つけたほうが勝ちで」
「勝ち負けつけるの? スポーツだ」

彼女は楽しそうに声をたてて笑う。わたしも嬉しくなって口元をゆるませる。
4 名前:__ 投稿日:2005/09/18(日) 14:35

しばらく、離れてイチョウ探しに没頭する。
できるだけ綺麗なものを、といっても、踏まれていたり、虫に食われていたりしてなかなか見つからない。
葉っぱどうしが重なり合って、お互いに潰しあっているようにも見える。
もうお互いリタイヤかな、そう思って顔を上げ、視線で彼女を探す。

幼稚園帰りだろうか、小さな子どもたちの集団と一緒にいる彼女が目に入った。
遠目でよくわからないけど、どんぐりをもらったみたいだ。おおげさに喜んでみせる姿が可笑しい。
彼女も何かを得意げに見せている。黄色いイチョウの葉。
5 名前:__ 投稿日:2005/09/18(日) 14:35


子どもっぽいのか大人っぽいのか。
わたしの突然の提案についてきてくれたり、子どもと同じ視線で楽しんだり。

たぶんきっと、彼女は大人なのだ。


6 名前:__ 投稿日:2005/09/18(日) 14:36
わたしはまたしゃがんで、葉っぱの山を崩しだす。
少し影が差してきた。秋の天気は変わりやすいというけれど、いま降られちゃうのは嫌だな。

できるだけ、形のいい葉をつまんで立ち上がる。
彼女を見遣ると、イチョウの葉はあげてしまったようだ。
あーあ、勝負にはならないや。でも、いいか。

空を見上げる。
秋の枯れ草の甘い匂いに混じって、雨の気配がした。
7 名前:__ 投稿日:2005/09/18(日) 14:36
 
8 名前:__ 投稿日:2005/09/18(日) 14:36
おわり
9 名前:__ 投稿日:2005/09/18(日) 14:36
 
10 名前:__ 投稿日:2005/09/18(日) 14:36
 
11 名前:Max 投稿日:Over Max Thread
このスレッドは最大記事数を超えました。
もう書けないので、新しいスレッドを立ててくださいです。。。

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