リプレイ

1 名前:_ 投稿日:2005/09/18(日) 14:28
リプレイ
2 名前:_ 投稿日:2005/09/18(日) 14:29
りんりんりん。

ヨルでもないのに きこえるよ ムシのこえ

りん、りん、りん。
3 名前:_ 投稿日:2005/09/18(日) 14:30


『ガキさんへ(重要だから一人でこっそり読んで!)

 絵里ね、最近同じ夢ばっかり見るの。えーと、学校に行き帰りしてる夢。
 慣れた道だとさ考え事しながらでも歩けるの分かる? で、絵里はなんか考え事しながら、
 ぼーっと歩いてるの。早足で。でさ、ここからちょっと重要なんだけど真面目に読んでね。
 りんりんりん、って虫の声が聞こえるのね。その音にあわせて絵里は早歩きしてるみたい。
 で、あれ? って思うんだけど、だいたい夢の風景って朝か夕方で明るい時間なんだよね。
 なのに虫の声が聞こえる。ちょっとおかしくない? 虫の声なんて秋の夜しか聞けないよ。

 へんな感じがしてくる。りんりんりん、って。幻聴を聞いてるのかと思いはじめる。
 そしたら知らないうちになんか景色が違う。いつもと似てるけど、ちょっと違う。
 ぼんやりしてて道を間違えたのかな、って絵里は焦ってる、夢の中で。

 時間なくなったから続きは後で話すね。でもこの手紙の内容は誰にも言わないで。   絵里』
4 名前:_ 投稿日:2005/09/18(日) 14:30
授業中に回されてきたメモ用紙をポケットにしまい、新垣は亀井の席へ向かう。
亀井には似つかわしくない暗い表情をしている。メモの内容もいつものたわいない内容というよりは、
思いつめた感じで薄気味が悪い。新垣はそんな気持ちを振り払うように、亀井に話しかける。

「続きってなに? 夢の話とか聞いてもつまんないよ」
「え、ああ、ガキさん」

はっと我に返ったように亀井は返事をする。考え事でもしていたのだろうか。
秋の陽光が教室に差し込み、まぶしいくらいだった。新垣は思わず顔をしかめる。

「夏でもないのに怪談話はいらないよ」
「やっぱり真面目に聞いてくれないんだ……」

やはり、いつもと違い声の調子も沈んでいる。亀井は続ける。

「藤本さんしか、まだちゃんと聞いてくれた人いないんだ。
 みんな、たかが夢っていうけど、三日三晩だよ? この夢を見てるの」
「へえ、藤本さんって、珍しい人と知り合いなんだね」

藤本といえば五つほど年上の先輩だが、高校は中退している。今でも少し有名な人物だが、
どこに接点があって亀井は知り合いになったのだろう。新垣はいぶかるが、話を進める。

「まあいいや。夢って、それがなにか重大なの?」
「だから朝はいつも気持ち悪くなる。寝ないようにしてもいつの間にか寝ちゃってて。
 でもね、学校は出てこないの。これもおかしいでしょ? 登校も下校もしてるのに肝心の学校はないって」

話の流れにあっていない返答、そしていつになく真剣で、新垣は圧倒される。
それほど変な夢なのかと同時に思う。ただ、亀井が相当まいってしまっていることはわかった。

それからは何を訊いても、「なかったことにして」の一点張りで、新垣は困ってしまう。
藤本さんとやらにはどこに行けば会えるだろうか。新垣はこのことに考えを集中させた。
5 名前:_ 投稿日:2005/09/18(日) 14:30

藤本はこの学校では、中退して数年経ってしまった今でも、知る人ぞ知る、といった存在であった。
在籍期間は一年と少し。その間に成立したと思わしき学校絡みの怪談話には必ずといっていいほど、登場する。
単にモデルなのか、実話なのか。真偽のほどはつかめない。
それに嫌気がさして自主退学を申し出たという噂もあるほどだ。

あまりにおかしな亀井の様子を見て、その日のうちに、新垣は藤本の居場所を調べた。
幸いにして、その日は土曜日で授業は半日で終わり、午後は十分その時間にあてられた。
その実、そう時間をあてるまでもなく、それとなく教師に尋ねるだけで藤本のバイト先を知ることが出来た。
学校側も妙に藤本には気をかけているようだった。その事実にもまた、新垣は首をかしげることになる。
6 名前:_ 投稿日:2005/09/18(日) 14:31



「藤本さん煙草吸うんですか?」
「人間っぽいでしょ?」

そう言って藤本は力なく笑うと、律儀に携帯灰皿に吸殻を押し込んだ。
一見するとアイドルにもなれそうな容姿をした藤本だが、ふとまばたきのあとに見ると、
ひどく精彩を欠いた顔にも見える。頬がこけているように見えなくもない。

日曜日、さっそく新垣は藤本のバイト先に押しかけていた。
藤本には昼の休憩時間を割いてもらっている。
少し話をしたい、と新垣が亀井の話を持ち出すと、藤本はため息とともにあっさりとオーケーをくれた。
いきなり訪ねて、もっと邪険に扱われるだろうと予想していた新垣は拍子抜けした、というより驚くばかりだ。

「歴史は繰り返す、って言うけど、美貴的にはこれは繰り返してほしくないんだなぁ」
「だから何なんですか」
「新垣さん、イイヒトっぽいから気を付けたほうがいいかもね」
「だから何……」

不満をあらわにする新垣を手で制し、有無を言わさぬ様子で藤本は立ち上がる。
携帯を開き時間を確認したようだ。「時間切れ」藤本は言う。

「私はどうすればいいんですか?」
「まあ、亀井ちゃんの話をちゃんと聞いてやって。他にできることないからね」

疲れたように藤本は笑んだ。
新垣は結局、収穫なしのままだった。
7 名前:_ 投稿日:2005/09/18(日) 14:31

徒労に終わったように思える日曜日を思い返しながら、月曜日、新垣は学校へ向かっていた。
詳しい話はなにも聞けなかった。結局はなにが問題なのかも分からずじまいだ。
すべては亀井の妄想なのか、それとも藤本とぐるになって新垣で遊んでいるだけなのか。

新垣はとりとめなく考えながら、馴染んだ道を早足で進む。りんりんりん。
8 名前:_ 投稿日:2005/09/18(日) 14:31

あれ?

新垣は立ち止まる。知っている景色。の、はずなのに。
なにかが違う。気付いた時には、ひやりと背筋を冷たいものがはしった。

りん、りん、りん。

夜でもないのに、聴こえる。虫の声。

どちらへ向かえばいいのか分からず、新垣は立ちすくんだ。
9 名前:_ 投稿日:2005/09/18(日) 14:32

リプレイ
10 名前:_ 投稿日:2005/09/18(日) 14:36
 
11 名前:Max 投稿日:Over Max Thread
このスレッドは最大記事数を超えました。
もう書けないので、新しいスレッドを立ててくださいです。。。

Converted by dat2html.pl v0.2