12 れいなの通販生活

1 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/04/17(日) 18:04
12 れいなの通販生活
2 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/04/17(日) 18:05
( `.∀´)y-~~今日の目玉商品はわ・た・し(はぁと
3 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/04/17(日) 18:07

 「畜生ォォォ!!!」

 スレッドを開いた瞬間、
 矢口真里は怒りのあまり手に持っていたコップを地面に叩きつけて割った。
 大きな破壊音と共に硝子は飛び散り、同時にフローリングの床を深く傷つけた。
 しかしそんなものが気にならないほどに、
 矢口はこのヤススレに引っかかったことが気に食わなかった。

 ずっと探していた。
 名作小説について語るスレでその名前を目にして以来、ずっと。
 れいなの通販生活。
 これほどまでに美しい配列のタイトルはないと思った。
 オイラーの公式よりも遥かに美しいとさえ思えた。
 しかしそれは誰かがそう書き込んだのを見ただけで、矢口は別にオイラーを知らない。

 そのタイトルに心を奪われて以来、名前が出る度に矢口は情報を得ようと書き込んだ。
 しかし帰ってくる答えはよく分からないものばかり。
 遂には飼育の案内板、『総合質問スレ-part5-』に書き込んだ。
 それが2004年の11月のこと。
 その日のうちにレスがあったが、あった回答は
 「狼という噂。俺も拝んだ事はない。」「そんなものないという噂も。」の二つ。
 全く参考にならなかった。

 ふと我に返ってちりとりで床を綺麗に掃除する。
4 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/04/17(日) 18:08

 それ以来時たま名前を見かけはするものの、結局のところそれはデマで、
 誰かが捏造したものだという意見が当たり前になっていた。現に矢口も諦めた。
 見事に釣られてしまった自分に恥じながら、毎日狼を見て回った。
 それでもそのスレッド名を見た瞬間、矢口はクリックする衝動を抑えられなかった。

 「人の心を踏み滲みやがって…」

 矢口はまだ見ぬ『れいなの通販生活』を愛していた。
 それ以前矢口が読んできた娘。小説の中でトップだった作品は弾かれ、
 矢口の中でナンバーワンの娘。小説は『れいなの通販生活』だった。

 『シアター』よりも通販生活。
 『エスパー真希』よりも通販生活。
 四代名作よりも通販生活。
 田中れいなよりも通販生活。

 それほどまでに最初見たときのストーリーに心を奪われてしまった。
 そしてそれは初恋や一目ぼれの感覚とひどく似ていた。

 ノートパソコンのキーボードを弾く指達が加速していく。
 矢口はため息をついた。一体いつになったら出会えるのだろうか。
 それともやはり都市伝説、実在しない架空の小説なのだろうか。
 否。矢口は信じていた。『れいなの通販生活』が、実在することを。

 とりあえず矢口は『道重と亀井が楽屋でこっそりキス』というヤススレを立ててお気に入りに追加した。
5 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/04/17(日) 18:09

 来る日も来る日も狼を探した。
 時には検索エンジンを使い、様々なサイトやスレを渡り歩いた。
 それでも矢口はめぐりあうことが出来なかった。
 愛しのあの人は一体いずこ…?意味もなく焦燥感に駆られ、日に日にパソコンを弄る時間も増えていた。
 そしていつしか矢口は仕事が終わると真っ先に家に帰るようになっていた。
 彼氏も放って。

 そして今日。遂に発見した矢口の瞳は輝きに満ち溢れた。
 それはもう、娘。時代の保田くらいに。迷わずクリック。ヤスス。マジギレ。
 スレ立て人にキレるべきなのか。最初に言い出した人にキレるべきなのか。
 保田にキレるべきなのか。
 矢口は判断に困った。

 ある日矢口はいつものコースで飼育を徘徊しているとふと、企画相談スレ3に目が留まった。
 企画に特に興味のない矢口は、 
 書けない作者を装う程度にしか案内板では書き込みをしたことがなかったが、
 何故かその時矢口の手は止まった。

 「………同一タイトル企画?」

 誘われるように、貼られているリンクをクリックする。
 するとその先ではちょうどタイトル募集がされていた。
 
 「…………………」

 そして矢口は閃いた。
 自らの意見を書き込むと、その日は何も読まずに飼育を後にした。

 自作ヤススレでどれだけ人が釣れているかと思って見てみたら、人大杉で見られなかった。
6 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/04/17(日) 18:11

 書き込んでから一週間後、矢口が再び議論板を訪れると、
 自分が出したタイトルが7票獲得でタイトルに決定していた。無理もない。
 人海戦術は、ハロプロの十八番。
 最低でもあれのあと倍には増やせたが、それは大人気ないから自粛した。

 矢口はニヤニヤしながらディスプレイを眺めた。
 これで、遂に、『れいなの通販生活』が現実のものになる。しかしふと、思い返す。

 「短編…………15レスまで?!」

 それは矢口の望んだ形とは全く異なっていた。
 書かせることは成功したものの、
 15レスでは矢口が望んでいたビッグスケールでの物語を読むことが出来ない。
 矢口は頭を抱えた。

 「どうしよ………」

 決定稿だから覆ることは絶対にあり得ない。
 15レスの通販生活なんて生活と呼べるほどの長さとは思えないし、
 れいなを登場させないように、狼で書かれていたストーリーを外すように、
 あれこれやってくる作者が多いに違いなかった。

 「そんなの、おいらが望んでた通販生活じゃない」

 困った。完全な誤算だった。
 読むという目的は達成されたとはいえ、内容が内容。
 企画という性質のことを考えると、
 矢口の脳内で出来上がっているイメージを汚すものが現われるに違いなかった。
 ……脳内で?

 矢口は思わず立ち上がると、拳を突き上げた。

 「自分で投稿すりゃいいじゃん!」

 喜びのあまり狼の自分を応援スレ探したが、特に見当たらなかった。
7 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/04/17(日) 18:12

 矢口は早速作業に取り掛かるべく、メモ帳を開く。
 企画に投稿するのはおろか、
 飼育にスレを立てるのもはじめてだった矢口は下書きの段階で既に緊張していた。
 エロ小説スレしか小説を書いたことのない矢口には無理もないことだった。

 「えーっと、あーっと、どうしよー」

 独り言が多くなる。いざ書くとなると頭の中が真っ白になってしまった矢口は、
 その日は諦めて眠ることにした。
 服を脱ぎ、全裸になってベッドの中にその小さな体を潜ませる。

 「明日仕事早いしね……」

 なんとなくいいわけをしながら。

 次の日もまた次の日も、仕事が忙しく矢口はパソコンを触れる機会がなかった。
 そして気づいたら企画は始まっていて、気づいたら仕事が忙しくなくなり、
 投稿作品を読むことにした。
 ストーリーに沿って書かれた作品は当然のことながら一つとしてなく、矢口は悲しんだ。
 しかし同時に作品数の少なさに目をつけた。

 「これちゃんと書いて投稿したらおいら優勝で来ちゃうんじゃないの?」

 心踊る矢口。
 調子に乗っているなんて微塵にも思わないまま、一気に創作意欲が回復した。

 矢口は胸の鼓動冷めやまぬままに狼を覗いたが、
 脱退報道が大してサーバーに負担をかけてなく一気に冷めた。
8 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/04/17(日) 18:13

 作者サイトをいくつか巡ると矢口はプロットという言葉を知った。
 内容を要約した様な紙を用意すれば、どうやら名作が書けるらしい。
 相変わらず勘違い続行中の矢口は、記憶を呼び起こしながら紙にメモをした。

 1.序盤は通販に嵌るれいな、しかし届くもの届くものに痛い目にあうのがコメディチックに。
 2.ネタとしてもストーリーとしても中だるみ
 3.通販の業者が実は悪の企業で、序盤の全てが伏線となってハードボイルドな展開。ラストは圧巻。

 「…………プロット書くのって案外簡単じゃん」

 完璧すぎる。
 矢口は高笑いするとその紙を大事にしまった。
 明日は月曜、どうせずっとオフだけど。書いて投稿しよう。

 「彗星のごとく現われた新人作家。ハンドルは何にしようかな……可愛い奴にしないとな」

 矢口は胸の高鳴りを抑えられず、きっと寝付けないな、なんて呟いていた。

 「日ー曜日♪明日もやーすーみ♪」

 替え歌も弾む。何一つ疑うことも知らずに。
 田中が通販にのめり込む以上に、矢口はインターネットにのめり込んでいた。

 『道重と亀井が楽屋でこっそりキス』がどれだけ釣れてるか確認したら、
 dat落ちしていた。
9 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/04/17(日) 18:14
ごめん
10 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/04/17(日) 18:14
ごめんご
11 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/04/17(日) 18:14
めんご

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