4 れいなの通販生活

1 名前:4 れいなの通販生活 投稿日:2005/04/12(火) 04:33
4 れいなの通販生活
2 名前:4 れいなの通販生活 投稿日:2005/04/12(火) 04:34
れいなは通販が好きだ。三度の飯よりも、花よりも、団子よりも、通販が好きだ。
いや、正確には通販が好きというよりも、カタログを見るのが好きだ。
何かと言っては通販のカタログをペラペラと捲ってはドッグイアー、捲ってはドッグイアー。
犬の一年は早いからねニヒヒと笑いながらドッグイアーを繰り返す。れいなは英語が苦手だ。
この間なんかも、ロリーターってなんとやロリーターってなんとや、と繰り返すので、
見かねた友人達にそれは多分ロータリーの間違いだと思うよと忠告されていた。
それでも納得出来ないれいなはロリーターってなんとや、と言うのを止めなかった。
友人達は呆れ果てた。最近になってそれがフリーターの間違えだということが分かったが、
時はすでに遅かった。その頃にはれいなの周りには知り合いと呼べる人間は居ても、
友人と呼べる人間は居なくなっていた。しかし、れいなはそんなこと気にしちゃいなかった。
れいなは通販が好きだったからだ。
3 名前:4 れいなの通販生活 投稿日:2005/04/12(火) 04:36
昔かられいなはそういう女の子だった。小学生の頃から、雑誌や新聞を良く読む子だった。
れいなママは「この子ったら、漫画が好きねぇ」と思っていたのだが、実は違って、
れいなは漫画では無くて、広告をひたすらに読んでいた。ある時れいなはママに尋ねた。

「ねえおかーさん、エコルセって何?」

ママは困ってしまって「お菓子よ」と応えた。れいなは更に尋ねる「どんなお菓子?」
ママは冷や汗をかきながら「チョコのお菓子よ、甘くてとってもおいしいの」と応えた。
れいなは満足したのか「今度それ買って来てね、約束だよ」と言って、外へ遊びに行った。
ママはどうしましょうどうしましょうと焦って、とりあえずビックリマンチョコを買ってきた。
れいなは喜んで「おかーさん、エコルセありがとう!」と叫んだ。
横でご飯を食べていたれいなパパは変な顔をして、エコルセだ♪エコルセだ♪と言いながら、
嬉しそうにビックリマンチョコを食べる実の娘の顔を見つめていた。
4 名前:4 れいなの通販生活 投稿日:2005/04/12(火) 04:36
「れいな、それはビックリマンチョコだぞ。エコルセっていうのはだな」

ママはそれを遮る「あなた!」パパは「何だよ、本当のこと教えたっていいだろ」と少し怒る。
れいなはパパの言うことを聞いていなかったのか、まだエコルセだ♪エコルセだ♪と言いながら、
ビックリマンチョコを嬉しそうに食べていた。パパは娘のその顔を見て決意した。

「よし、お父さんがれいなに本当のエコルセを買って来てやる」

ママは「もうこうなったらこの人は止められないんだわ」と悟って、何も言わなかった。
れいなはまだエコルセだ♪エコルセだ♪と言いながら、ビックリマンチョコを食べていた。

そしてパパはエコルセを買ってきた。「れいな、これが本当のエコルセだよ」
そう言ってパパが差し出したのは、5250円もする大きな缶に入った洋菓子。れいなは喜んだ。
ママは赤面した。この場合、一番いやらしいのは真実を教えようとするパパではなくて、
エコルセを男性用仮性包茎改善器具のことだと完全に勘違いしていたれいなママだ。
れいなはパパの買ってきたエコルセを一口食べて「エコルセ美味しい♪」とかわいく笑った。

5 名前:4 れいなの通販生活 投稿日:2005/04/12(火) 04:37
そのような過去のことはともかくとして、
今日もまた家の中をひっくり返して探し出したカタログをペラペラと捲っていると、
れいなはとんでもないものを発見した。思わず商品名を呟く。

「ピンクローター?」

それはれいながかつて見たことの無い形状をしていた。ピンクで、丸っこくて、
コードが伸びていて、その先にはリモコンらしきものが付いている。れいなにはその用途が分からない。
宣伝文を読んでも要領を得ない。「3段階の切り替えが可能!プロも認めたその機能!夜のお供に」
なんかうさんくさかね、まいっか明日になったら絵里に訊いてみよっと。
れいなはそう思ってそのページを他のページよりもしっかりドッグイアーすると、
次のカタログに手を伸ばした。

次のカタログをペラペラと捲っていると、またしてもすごいものを発見してしまった。
その形状と名前の奇怪さに、れいなはやっぱり商品名を呟く。

「エネマグラ?」

6 名前:4 れいなの通販生活 投稿日:2005/04/12(火) 04:39
翌日、れいなは嬉々として知人の絵里に尋ねた。

「ねーねー、絵里、ピンクローターって知っとる?」

絵里はちょっと困った顔をしながら、隣のさゆみに「知ってる?」と尋ねた。
さゆみはニコニコと笑いながら「知ってるよ、かわいい奴でしょ?」
れいなは身を乗り出してさゆみに食いついた「それどういうもんなん?」
さゆみはちょっと恥ずかしそうな顔をして言った。

「れいなもそういうことに興味あるんだ?」
「そういうことってどういうこと?」
「ほら、なんていうか、よだれが出るっていうかトキメキっていうか」
「れいな良く分からん」
「じゃあ、今日家おいでよ、教えたげる」

その二人の会話を聞きながら絵里は混乱していた。ピンクローターで二人が盛り上がってるのだ。
対して親しくも無く、友人というよりもただの知人としての付き合いなのに、二人が、
よりにもよってピンクローターの話で、盛り上がっているのだ。絵里としては悔しい。
さゆみがれいなに取られてしまった。あのれいなに。ピンクローターの話で。
7 名前:4 れいなの通販生活 投稿日:2005/04/12(火) 04:40
「ダメ!何考えてんの二人とも!フケツ!」

れいなとさゆみはポカンとした顔で絵里を見て言う「なんで?」
「なんでもどうしても無いってば!フケツフケツ!」絵里は机をバシバシと叩きながら怒る。
さゆみは「ピンクとクロの組み合わせが好きな人達がどうしてフケツなの?」と尋ねる。
絵里は「えっ?」と言って固まる。れいなも「ん?」と言って固まる。
この場合、一番いやらしいのは明らかに絵里だ。

「違う違う、れいなが訊きたいのはコレのこと」

れいなは家から持ってきていたカタログのドッグイアーしてある部分をバッと広げた。
ピンクで丸っこくて線が延びててその先にリモコンがついているピンクローターの写真がある。
さゆみはその写真を見てやっとピンクローターってピンクローターの事か、と気付いて、
「さゆはそんなの知らないっ」と赤い顔してそっぽを向いた。絵里も絵里で黙り込んでいた。
れいなはこれどうやって使うんね?と二人に尋ね続けた。
二人はその問いかけを無視し「もう帰るね」と言って、それから以後れいなの相手をしなくなった。
れいなは結局、数少ない二人の知人を失うことになったのだった。
8 名前:4 れいなの通販生活 投稿日:2005/04/12(火) 04:40
通販が好きなれいなもさすがにこの事態にはシュンとして悲しくなった。
この二人だけはいつまでも友達だと思っていたさゆみと絵里に声をかけても無視されるのだ。
れいなは、分からないことがあるとすぐ人に訊いてしまう自分の性格がそうさせているのだ、
ということを薄々知ってはいたのだけれども、どうしても直すことができなかった。
だがこの機会にれいなは自分を改めることにした。ピンクローターを通販で頼んでみることにしたのだ。
9 名前:4 れいなの通販生活 投稿日:2005/04/12(火) 04:41
電話番号を押す。ピッピッピッ。れいなは通販のカタログを一年中見てはいるものの、
注文するのは実はこれが始めてだったので、ドキドキした。
プルルプルルという発信音の後、受話器が取られる。ガチャリ。

「はい、もしもし藤本で――」
「ピンクローター」
「はい?」
「ピンクローター、お願いします、あ、あとエネマグラ」
「はぁ?」
「ピンクローター、ピンクローターとエネマグラです、よろしくお願いします」
「もしもし?誰?田中ちゃ――」

ガチャンと電話を切って、心臓のドキドキを抑える。れいな大人になった、と思った。
れいなは安心してそのまますぐベッドに入って眠った。いつ届くんだろういつ届くんだろう。
明日かな?いやそれはないか、やっぱ一週間ぐらいかかるかな。楽しみだな。ワクワクするな。
れいなの心境はクリスマスを待ちわびる子どもの心境だった。
10 名前:4 れいなの通販生活 投稿日:2005/04/12(火) 04:42
しかし、待てど暮らせど通販は届かない、良く考えずとも当たり前のことなのだが、
れいなは住所を言っていないし、第一れいなが電話を掛けたのは通販会社ではなくて、
これまたれいなの数少ない知り合いの藤本美貴の携帯だった。れいなは緊張のあまり、
カタログに載っていた電話番号ではなくて、電話の前に貼ってある友人の電話番号表の番号を、
無意識に押していたのだ。もちろん、それ以後れいなは藤本からも相手にされなくなった。
これで知人と呼べる人も居なくなった。しかし、れいなは別にそんなこと気にしちゃいなかった。
れいなはやっぱり通販が好きだからだ。
11 名前:4 れいなの通販生活 投稿日:2005/04/12(火) 04:44
れいなは今日も通販のカタログを捲っていた。好きで好きでたまらなかったはずの通販のカタログだが、
最近はつまらない顔でカタログを捲っていた。その証拠にどのカタログにもドックイアーは無い。
れいなは手に持っていたカタログを最後まで見終わるとそれをポイと投げた。
そしてグシグシと乱暴に顔をこするとポツリと、誰に言うでもなく呟いた。

「どのカタログも友達は売ってなか」

やっぱりれいなは寂しかったのだった。
12 名前:4 れいなの通販生活 投稿日:2005/04/12(火) 04:45

 ◇おしまい◇
13 名前:4 れいなの通販生活 投稿日:2005/04/12(火) 04:46
ごめんなさい
14 名前:4 れいなの通販生活 投稿日:2005/04/12(火) 04:47
下ネタでごめんなさい

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