3 れいなの通販生活
- 1 名前:3 れいなの通販生活 投稿日:2005/04/09(土) 18:16
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3 れいなの通販生活
- 2 名前:3 れいなの通販生活 投稿日:2005/04/09(土) 18:18
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ガタンという物音を遠くで聞いて、れいなは目を醒ました。
枕もとの水色のカーテンが光を透過させてさわやかに揺れている。
れいなはゆっくりと体を起こしてカーテンを開けると、射し込む朝日に目を細めた。
目に映るのは鮮やかな一面の緑。
遠くの山々は新緑に包まれ、周囲を囲む草原にも鮮やかな緑が萌えている。
草原を横切る川は陽射しを浴びてきらきらと輝き、川辺にはほんわりと暖かい桜色も見える。
美しい朝だった。
れいなは目を閉じてぐーっと伸びをする。
その瞬間、はっと先程の物音の正体に気づいた。
- 3 名前:3 れいなの通販生活 投稿日:2005/04/09(土) 18:18
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パジャマのままベッドを飛び降りて、玄関へダッシュ。
サンダルをつっかけて勢い良くドアを開けると、目の前に山のような荷物が積まれていた。
やった! 届いとる!
れいなは小さく飛び跳ねてから、それを大事そうに抱えて家の中に運び込む。
30分後には合計50個ほどの荷物がリビングをほぼ占領していた。
れいなは床にどかっと腰を下ろし、ごそごそと梱包を解き始める。
まず最初の箱から出てきたのは、キャミソール、デニムスカート、ノースリーブニット、Tシャツ―――
おぉー! この赤いキャミ、あのモデルが着とったやつっちゃね!
名前なんつったっけ? 田中……田中なんとか。ダメだ、思い出せん。
ニットはこの緑色がなんとも。可愛いかー。
このスカートにはこっちの黄色いシャツが合いそうやねー。
服を手に取っては思案し、次の服を手に取っては楽しそうに笑う。
やば……これじゃ日が暮れると。
れいなはようやく次の箱に手を伸ばした。
- 4 名前:3 れいなの通販生活 投稿日:2005/04/09(土) 18:19
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出てきたのは、正体不明の丸や四角のいくつかの物体。
不思議に思って手に取ると『これであなたもなんちゃら兄弟!』のうたい文句が見える。
端末の情報チャンネルで見つけたマジックセットだった。
きゃーこれでれいなーにゃ! ってやるとやろ?
にひひ! 想像しただけでサイコー!
……あれ? れいなーにゃ、やったっけ?
まぁよか、次!
次の箱は色とりどりの布地で溢れていた。
ピンクのすべすべシルク、白地に真っ赤なバラ刺繍、金ラメ混じりの黒レース。
こりゃーまぎれもなく勝負パンツっちゃね。
れいなったらこれ履いてどうすると?
……いやーん、恥ずかしかー。
その一つ一つを体に当てて、れいなはニヤニヤと笑った。
- 5 名前:3 れいなの通販生活 投稿日:2005/04/09(土) 18:20
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四つ目の箱には色とりどりの小物がぎっしりと詰め込まれていた。
お、さゆに勧められた髪飾りも入っとぉ。
カガミ、カガミ。
鏡を引き寄せて、しゅっと髪を束ねて髪飾りをつけてみる。
にひひ、可愛かねれいなさん! 似合っとぉよ!
次にれいなが手に取ったのはレモンイエローのキャップ。
これはカタログで見つけて一発で気に入った物だった。
少し斜に被って、今度は鏡を睨みつける。
お、よかよか。相変わらずクールやねれいなさん!
くるくると表情を変え、きゃあきゃあ騒ぎながら、れいなは次々と荷物を解いていった。
- 6 名前:3 れいなの通販生活 投稿日:2005/04/09(土) 18:21
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10個目の箱を開け終わるまでに、たっぷり三時間はかかった。
ふぅっと息をついて、まだ手付かずの荷物を見上げる。
うー、さすがに疲れたっちゃ。
ちょっとキューケイ。
せっかくコレも届いたし。
開けたばかりの荷物の中からお茶の葉を取り出して、キッチンへ向かう。
このお茶は古代紅茶と甘露苔のブレンドで、れいなの最近のお気に入りだ。
カップにお湯を注ぎ、急須に乾燥した葉を入れる。
これは温度が肝心やけんね。
少し冷ましたお湯を急須へ。キッチンに甘くてさわやかな香りが広がる。
れいなはその香りをくんくんとかいで満足そうに頷いてから、お茶をカップに注いだ。
リビングに戻りお茶を一口、山積みの荷物を眺めてまた顔を綻ばせる。
やっぱ買い物は楽しかー!
- 7 名前:3 れいなの通販生活 投稿日:2005/04/09(土) 18:21
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飽きもせずに荷物を眺めていると、デスクの上で着信音がなった。
端末のチャンネルを切り替えて回線を開く。
一瞬のノイズの後、モニタにさゆみの顔が現われた。
「こんばんは、れいな」
「こっちはまだ昼」
れいなが訂正すると、さゆみは悪びれた様子もなく「ところでさ」と言った。
「届いた? ツーハン」
「届いた届いた!」
れいなは大きく頷いて、傍らの服をいくつか広げて見せる。
「これやろ、あとこれも。これなんか可愛いと思わん?」
「また原色ー?」
「悪か? どーせさゆもまたピンクやろ?」
「ぶー。正解は―――」
さゆみはそう言って画面からフレームアウト。
しばらくして戻ってきた彼女は、純白のドレスを身に纏っていた。
「白でしたー。あたしってば何でも似合っちゃうよね」
「そういや絵里はどんなん買ったんやろ?」
いつもの事だ、とれいなは歯牙にも掛けない。
「似合うと思わない?」
「うっさい。それよか絵里」
いつもならさゆみと先を競って可愛さアピールしてくる絵里からはまだ連絡がない。
「さぁ? ほら、あっち寒期だし」
頬を膨らませて、不満そうな口調でさゆみが答える。
「あーそっか。そうやった」
大方冬眠でもしてるんだろう。
こんな大事な日に寝ていられるのもマイペースの絵里らしい。
- 8 名前:3 れいなの通販生活 投稿日:2005/04/09(土) 18:22
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「それよりさ、次何買おう?」
画面の向こうで、さゆみがカタログをめくりだした。
「もう次?」
れいなが呆れたような顔で問い返す。
「次って言っても一年後でしょ。今からしっかり考えておかないと」
「まーそうやけど」
ここに通信販売の配送が回ってくるのは一年に一度。
今日がその日だったわけだから、次回の配送はまる一年後という事になる。
れいなも荷物の中から付属のカタログを引っ張り出してパラパラとめくってみると、
紙面から立体の美形モデルが飛び出して、セクシーなポーズをとった。
スタイルを強調したセレブ系。
たまにはこういうのもいいかな、とれいなは思う。
「なぁさゆ、こんなんどう?」
顔をあげると、さゆみが残念そうな顔で首を振っていた。
「れいなはぺったんこだから似合わない。
もうちょっと自分を客観的に判断したほうがいいよ」
「見た事ないやろ!」
れいなは胸を隠すような仕草をしながら、さゆみを睨みつけた。
- 9 名前:3 れいなの通販生活 投稿日:2005/04/09(土) 18:22
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れいなとさゆみが暮らす場所は比較的近所だけれど、二人が直接会った事はない。
それはれいなと絵里、さゆみと絵里も同じだった。
ネットワークを徘徊中にたまたま知り合っただけの関係。
それでもなぜか気が合って、仲良くなるのにさほど時間はかからなかった。
「それにキャッカンなんて意味なか」
「そうでもないと思うけど?」
さゆみが首を傾げる。
「とにかく! れいなは出るトコ出とるけん!」
噛みつくような勢いでれいなは叫んだ。
- 10 名前:3 れいなの通販生活 投稿日:2005/04/09(土) 18:23
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「はいはい、ナイスバディナイスバディ」
さゆみが軽く手を叩いて簡単にいなす。
「……なんかむかつく」
反論も虚しくなって、れいなは大きくため息をついた。
「それよりこっちのがいいよ。ぺったんこでも似合いそう」
「あ?」
「うそうそ。あ、これも可愛いなぁ」
「れいなはこっちが―――」
二人はあれこれと話しながら、ページをめくり続けた。
夕日が沈む頃、この星にたった一軒の建物に明かりが灯る。
- 11 名前:3 れいなの通販生活 投稿日:2005/04/09(土) 18:24
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ここはれいなの惑星。
明日も明後日も、れいなは日がな一日カタログをめくって過ごす。
- 12 名前:3 れいなの通販生活 投稿日:2005/04/09(土) 18:24
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- 13 名前:3 れいなの通販生活 投稿日:2005/04/09(土) 18:25
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一ヶ月後、数光年離れた場所で絵里がようやく目を醒ました。
「あっ! 届いてる!」
- 14 名前:3 れいなの通販生活 投稿日:2005/04/09(土) 18:26
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‐●おわり●‐
- 15 名前:3 れいなの通販生活 投稿日:2005/04/09(土) 18:26
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ヾ ) ノノハヽ /^)
ヽ 从 ´ ヮ`) /
丶_●‐●/
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(~~▼~|
> ) ノ
(_/ヽ_)
- 16 名前:3 れいなの通販生活 投稿日:2005/04/09(土) 18:27
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ノノハヽo∈
从*´ ヮ`)
/ つ‐●‐●‐
~UU~
- 17 名前:Max 投稿日:Over Max Thread
- このスレッドは最大記事数を超えました。
もう書けないので、新しいスレッドを立ててくださいです。。。
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