87 夜と蒼

1 名前:87 夜と蒼 投稿日:2004/12/28(火) 20:57
87 夜と蒼
2 名前:87 夜と蒼 投稿日:2004/12/28(火) 20:58
真夜中の月。
たるんだソラにぼんやりと佇む蒼い月。
その容量は既に限界のようで、歪んでいて、重力に逆らえ切れずに落ちてきそうだ。
ならば、いっそ。
いっそ、そうだ。私が、破裂させてあげよう。
この髪の毛一本で全てを解き放ってあげよう。
さすれば、夜は暗闇に染まるだろう。純粋な夜を迎えるのだろう。

「後藤さん、何を考えているのですか?」

『汝、己自身の如くに隣人を愛すべし』
私は彼女を愛しているのだろうか?
まず、私は私を愛せているのだろうか?

教室から見える月は、幻想。

「月を消したい。世界を夜に染めたい」

私の呟きは遠い昨日に飲み込まれた。
それでも紺野は今を生きる。

「じゃあ、こういうのはどうですか」

彼女はどこからか取り出した、銀色のジッポを空に向けて解き放った。
青い火が空気を燃やす。
私の眼と月の間に火が灯る。
遠くに見える月が燃える。

「月が燃えてる」

月が燃えてる。
それでも完全な闇は訪れない。なぜならば火が世界を燈すからだ。
朝は何度でもやってくる。
光は、また私を射す。
3 名前:87 夜と蒼 投稿日:2004/12/28(火) 20:59
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4 名前:87 夜と蒼 投稿日:2004/12/28(火) 20:59
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5 名前:87 夜と蒼 投稿日:2004/12/28(火) 21:00
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