81 心のスキマ
- 1 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/28(火) 16:35
- 81 心のスキマ
- 2 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/28(火) 16:36
- 朝、出かける前に着替えようと鏡の前に立って驚いた。わたしの心にぽっかりとした
スキマが出来ていたのだ。
なんだろうこれは? 原因は分からない。わたしは仕事もプライベートも充実してるって、
勝手に思っていたんだけど、こんなスキマの出来てしまう余地があったのか……。
仕事先へ向かうのは、気が重かった。着替えるときにこんなスキマを見られてしまったら、
絶対バカにされるに決まってる。わたしみたいにパーフェクトなアイドルは、そんな隙を
見せてしまうことが、命取りになってしまうのだ。
「愛ちゃんおはよー」
「おはよー」
よかった。とりあえず誰もわたしの異変には気付いていないみたいだ。
このままうまく隠し通していけば、そのうち心のスキマもいつしか消えてなくなるだろう。
- 3 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/28(火) 16:37
- 数日ほどが経った頃だった。
仕事を終えて帰宅して、ぐったりとベッドに倒れ込んだ。なんだか妙に身体が重い。
胸の当たりに違和感。わたしは立ち上がるとシャツを脱いだ。
心のスキマにすっぽりと亀ちゃんが入り込んでいた。
「うわあっ! なにやってんのあんた」
「えへへ」
笑ってる場合じゃないだろ。
「ちょうどいい感じだったんで入っちゃいました」
- 4 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/28(火) 16:37
- 結局追い出すことも出来ず、わたしの心のスキマは、亀ちゃんの隠れ家がわりに
されてしまった。
それもこれもこんなスキマが出来てしまったのが原因なんだ。
「ねえ亀子」
「なんですかぁ」
わたしの心のスキマから顔を出してお菓子を食べている。まるでカンガルーの親子だ。
「いつんなったら出てってくれるのよ」
「えー。だって居心地いいんだもん。高橋さんのスキマ」
話にならない。この子はそういう子なんだった。
- 5 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/28(火) 16:37
- こういう時には……そう、ポジティヴになるしかないって、誰かに教わった。
スキマの一つや二つ、可愛い後輩に貸してやったって、どうってことないだろう。
亀ちゃんは相変わらずマイペースで、いつしかわたしもそのペースに影響されてる
みたいだった。
いろいろ話すようにもなった、以前はどっちかといえば話す機会はすくなかったんだけど、
お互い顔をつきあわせてないせいかずっと自然に会話が出来た。
いつものわたしだったら、構えてしまって話さないでおくようなことも、いつしか
吐き出すようになった。心の中に向かって喋りかけてるようで、いろんなことが
楽になったみたいに感じた。
亀ちゃんはいい聞き役だった……ように思う。ただ寝てただけなのかもしれないけど。
そうして、わたしは、ストレスのたまってしまった原因が分かるようになっていった。
自分でも気付かないうちに、多くの不満を溜め込んでしまっていたんだ。
- 6 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/28(火) 16:38
- ある朝、とてもすがすがしい気持ちで目が覚めた。スキマの亀ちゃんはまだ寝てる
みたいだった。
カーテンを開けると、気持ちいい朝日が射し込んできた。
こんな晴れやかな気分になるのは、すごく久しぶりな気がする。
そのとき、わたしの心にあいたスキマが、音を立てて閉じた。
ああ、やっと気持ちのあれこれに整理が付いたんだ。わたしは笑った。
閉じるときにぷちゅっと変な音がしたのも、晴れ晴れとした気分のおかげで
気にならなかった。新しい朝のはじまりだ。……
おわり
- 7 名前:Max 投稿日:Over Max Thread
- このスレッドは最大記事数を超えました。
もう書けないので、新しいスレッドを立ててくださいです。。。
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