74 世界の中心でアイが叫ぶ

1 名前:74 世界の中心でアイが叫ぶ 投稿日:2004/12/28(火) 02:32
74 世界の中心でアイが叫ぶ
2 名前:74 世界の中心でアイが叫ぶ 投稿日:2004/12/28(火) 02:43
 写真集を撮影していた。
 波打ち際で水着を着ていた。
 太陽はまだ中空にあって鋭く肌をやいていた。
 レフ板がぎらぎらとしていた。
 カメラマンが右手を上げて、指を鳴らした。
 まるで合図であったかのように、ずっ、と海の表面が盛り上がった。
 津波だった。
 あたしの表情に、カメラマンは首を振ってダメ出しをした。
 Gショックがストップウォッチに見えた。
 死までのカウントダウンが始まっていた。
3 名前:74 世界の中心でアイが叫ぶ 投稿日:2004/12/28(火) 02:45
 あたしは逃げ出した。
 走った。
 誰かの叫び声が聞こえた。
 気にしなかった。
 逃げろ。
 逃げろ。
 逃げろ。
 周囲の人は皆走っていた。
 大人も子供も走っていた。
 この道はまっすぐでどこまでも平らだった。
 波の気配がした。
4 名前:74 世界の中心でアイが叫ぶ 投稿日:2004/12/28(火) 02:50
 心臓が跳ねた。
 足の裏が痛かった。
 肺が焼けていた。
 汗が頬をつたった。
 膝ががくがくした。
 もうだめだ。
 きっとあたしはここでしぬ。
 だったら最後にあたしを殺すやつの姿を見てやろうと振り返った。
 いやだ。
 いやだ。
 いやだ。
 あたしを殺す浪は大きく掌を広げ、威嚇するように唸った。
 そしてあたしを飲み込んだ。
5 名前:74 世界の中心でアイが叫ぶ 投稿日:2004/12/28(火) 02:55
 浪はあたしを包み込んだ。
 何もかもを引きずり込んだ。
 いろんなものが波の中で踊っていた。
 人や、車や、家や、犬や、ヤシの木や、魚や、岩や、救命ボート。
 あたしは救命ボートにつかまった。
 ボートはいろんなものにバウンドして、浮かび上がった。
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6 名前:74 世界の中心でアイが叫ぶ 投稿日:2004/12/28(火) 02:57
 気がつくとあたしは太平洋の推定ど真ん中にいた。
 
「誰か、誰か助けてくださいっ!」

 声を限りにして叫んだ。

 返事は、なかった。
7 名前:Max 投稿日:Over Max Thread
このスレッドは最大記事数を超えました。
もう書けないので、新しいスレッドを立ててくださいです。。。

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