71 猛スピードで雅は、

1 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/28(火) 01:44
71 猛スピードで雅は、
2 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/28(火) 01:45
猛スピードで雅は、自転車のペダルを踏む。冷たい風が顔にぶつかってきて、
肌がひりひりしている。後ろの梨沙子は必死に雅の腰にしがみついていて、
懸命に振り落とされないようにしている。二人のまたがった自転車はがたがたと
音を立てて、カーブを描く坂道を抜けて、小学校の横の道を通り過ぎて、一直線
につづく並木道を突き抜けていく。昨日ふった初雪が目にしみるくらい白く光り
輝いている。肌に吹き付ける風が切り裂かれるみたいに痛い。腰をぎゅっと
抱いている梨沙子の体温と鼓動に重みを感じる。真っ白く染まった街並みが
すごい勢いで通り過ぎていって、風景が刷毛で撫でたみたいに滲んで見える。
吐く息が白く舞い上がって、鼓動と同じリズムでせわしなく流れていく。登り坂
から長い下り坂へ。目指す場所まであと少し。ぎゅっとする梨沙子の力がちょっと
強くなったみたいに感じる。梨沙子は怖がっていて、雅は気分が高揚して今にも
飛び上がっていってしまいそう。ぴーんと一本張りつめた糸が切れるみたいに、
最後の数メートルを駆け抜ける。二人とも腰を浮かせて、空に浮かぶみたいに、
甲高い音を立てて自転車は滑り込む。
3 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/28(火) 01:45
「あーっ」
梨沙子が叫ぶ。ハンドルにもたれ掛かってはぁはぁと息を吐いている雅は、
ぐったりとした様子で目を上げる。
「どうかした?」
「やっぱ怖いの慣れないよぉ」
両腕で自分の身体を抱いてがたがたと震えている。
雅は溜息をついて額の汗を拭うと、のろのろと自転車を押し始めた。もう5周目だ。

明日のジェットコースターのロケまでに、間に合うかな、と半ベソ顔の梨沙子を見て、
不安になってしまった。
4 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/28(火) 01:45
おしまい

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