66 ゴーストレート
- 1 名前:66 ゴーストレート 投稿日:2004/12/27(月) 23:33
- 66 ゴーストレート
- 2 名前:66 ゴーストレート 投稿日:2004/12/27(月) 23:34
- 「おいしいケーキ屋さんがあるんだけど、ついでに寄ってきてくんないかなあ。二人の分もおごるからさ」
待ち時間の合間、コンビニに行こうとしていた道重と亀井を捕まえた矢口は、両手を合わせて二人を見上げた。
「ケーキ」と「おごる」という魅力的な言葉に、引き止められた二人もまんざらではなさそうだ。
お互い顔を見合わせたあと、笑顔で矢口に向き直った。
「いいですよ」「どこですか?」
声をそろえて快諾した二人に、矢口はいそいそと道筋を説明し始めた。
「えーっとね。ここから北に向かって…」
「北って、こっちですか?」
道重が窓の外を指差す。曇り空の下、長く伸びた通りにビルの影が薄く映し出されているのが見える。
「そうそう。この道をずっとまーっすぐまーっすぐ行ったら、すぐに見つかるから」
- 3 名前:66 ゴーストレート 投稿日:2004/12/27(月) 23:35
- わかった、と頷く二人を見送った矢口が再び手持ち無沙汰に待ち時間を過ごしていると、楽屋にノックの音が響いた。
もう帰ってきたのかと思ったが、顔を覗かせたのは飯田だった。
「あれ、亀井と道重は?」
「あ、ごめん。おつかい頼んじゃった。なんか用事?」
「いや、そろそろ出番だから呼びに来たんだけど…どこ行ったの?」
「ほら、前おいしいっつってたケーキ屋。妹に頼まれたんだけどさ、わざわざ出かけるのめんどくさくて」
矢口の言葉に、飯田は軽く首をかしげる。
「え? あのケーキ屋、確か移転したよ」
「うそ、まじで? うわー、わかるかなあ、あの二人」
「…まあ、わかんなかったら戻ってくるでしょー」
飯田はそう呟いて何気なく窓の方へ視線を移し、矢口もつられて外を眺めた。
弱々しい光に照らされた冬の街は空気の底にぼんやりと横たわり、例の道がその風景を真っ直ぐ貫いている。
それから数時間。淡い太陽がその姿を消しても、二人は帰ってこなかった。
- 4 名前:66 ゴーストレート 投稿日:2004/12/27(月) 23:36
- ◇
道重と亀井が行方不明になって一週間。
「体調不良で自宅療養中」の嘘にもいい加減疑いの目が向けられ始めた頃、彼女達は何の前触れもなくひょっこりと戻ってきた。
あの日楽屋を出た時の格好のままで、疲れきってはいたが特に怪我はないようだ。
小さな紙袋を抱えて、風邪でも引いたのか鼻をすんすんと鳴らしている。
たちまち大勢に囲まれ質問攻めにされていた二人だったが、矢口の姿を見つけると慌てて駆け寄ってきた。
「矢口さん、ごめんなさい」
「ケーキ屋さん、わかりませんでした」
「言われたところ、探したんですけど」
しもやけのできた手をさすりながら、二人はすまなさそうに頭を下げる。
「代わりと言っちゃなんですけど、これ、おいしかったんで食べてください」
二人はそう言って抱えていた紙袋をあさると、すっかり冷たくなったピロシキを矢口に差し出した。
- 5 名前:66 ゴーストレート 投稿日:2004/12/27(月) 23:36
- おわり
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