57 Road to Another Story

1 名前:57 Road to Another Story 投稿日:2004/12/27(月) 02:39
57 Road to Another Story
2 名前:57 Road to Another Story 投稿日:2004/12/27(月) 02:40
ゴトンと電車が一層大きく揺れたところで、藤本は目を覚ました。
隣を見ると吉澤はまだ金色の髪の毛をユラユラさせながら舟を漕いでいる。
カクンカクンとある一定のリズムをもって揺れる金髪と白い肌が、
リズミカルなコントラストを産み出していた。藤本はしばらくその横顔を見つめた。
そして、かわいいな、と口の中で含むようにして呟いた。

金髪からチラチラと覗く、黒子がちなその白い肌が、頬の部分だけほのかに上気していた。
視線を胸元の少し開けた部分に移すと、ほんのりと汗ばんでいるのか、キラキラと瞬いていた。
彼女が息をするたびに、割に豊かなその胸は上下する。藤本は、軽く下唇を噛むと、唾を飲み込んだ。
ゴクリと喉が鳴る。その音が、不快に藤本の鼓膜打って、ハッとした。

何変態親父みたいなことをしてるんだ私は、と思いながら、藤本は軽く頭を振る。
大きく伸びをして、深く息を吐いて、また吸った。まだ少し心臓が早く脈打っている気がして、
ため息を一つ漏らすとまた目を閉じた。目を閉じると、なんだか違和感があった。
目を開き、駅名を確認して、更に時計を見る。知らない駅名に、深夜零時を指すアナログの腕時計。
藤本は慌てて、吉澤の肩を掴んで激しく揺すった。身体の揺れに少し遅れてプルルとたわわに揺れる乳房が、
ちょっぴりエロイと思った。と、同時にかなり羨ましいとも思った。が、それどころでは無かった。

「ちょっと!起きて!」
「……うーん、……後五分寝かせて」
「待てない!待てないから!!それにここ家じゃないから!!」
「……何?……もうちょっと静かな声でお願い。……頭痛いから」
「あ。ごめん」

彼女は手で口を隠そうともせずに欠伸をした。そして、頭をバリバリと掻くと、
De 何?と少しエキゾチックな発音で応えた。藤本は少しイライラとする。

「で、何?っていうか、この状況見て気づかないわけ?私たち寝過ごしちゃったんだよ」
3 名前:57 Road to Another Story 投稿日:2004/12/27(月) 02:41
藤本の少し怒りを含んだその言葉に、彼女はあちゃー、とどうでもよさそうな口調で応えた。
右手の小指で鼻糞をほじくり返しつつ、そんな言葉を吐く彼女の姿が、藤本を尚更イライラさせた。

「あちゃー、ってそれだけ?ヤバイよ。私たち制服着てるし、こないだも補導されたじゃん。
 このままだとまた補導されちゃうし、今度こそ学校にも親にも連絡行っちゃうだろうし、
 そうなると停学、最悪で退学ってことにもなりかねないよ」
「なりかねないね」
「なりかねないね、ってまたそれだけ?あのさー、大体よっちゃんがさ、オレは今日は飲むぞ、
 とか言って学校帰りにそのまま居酒屋なんかに直行するからこういうことになるんだよ?
 私は嫌だって言ったのにさ、大体さ、大体よ、私は前から思ってたんだけど――」
「あー、はいはいごめんねー。まあとりあえず電車から降りようよ」

藤本は不満そうな顔をしながらも、彼女の言葉に従った。
彼女はまだアルコールが抜けきっていないのか、フラフラとした足取りで藤本の後を追った。
歩きながら、美貴ちゃーんおんぶしてよーとか、美貴あなた私を捨てるのね酷いわ、
私あんなにあなたにつくしたじゃないとか、演技がかった声で喋り掛けてくるのを、
藤本はことごとく無視した。

二人が人気のない寂れた駅を出ると、そこは意外に多くの人で賑わっていた。
それは二人にとって不都合なことだった。人が少なければ、制服が人目につくということも無いが、
こう人が多くては、これでどう?と手をパーに広げた心無い大人に声を掛けられて、
簡単にお金が欲しい学生としては、六万ならOKなどと受け答えをして、深夜零時のホテル街へ、
消えて行かないとも限らないわけであったからだ。

そう考えて困った藤本は、よっちゃんどうすると言いながら後ろを振り向く。
問い掛けられた彼女は、そんな質問がまるで聞こえなかったかのように、
デヘヘヘ美貴ちゃんエエケツしてまんな、と言いながら藤本の尻を撫で回した。
このような痴態を働く彼女の顔が、一瞬さっき考えていた援交親父の顔と被って、
藤本は深いため息をついた。
4 名前:57 Road to Another Story 投稿日:2004/12/27(月) 02:41
「死んじゃえばいいのに」

軽く言ったつもりだった。しかし、その言葉が中空に発せられると、
それはメタリックな鋭利さと重い響きを帯びた。それは藤本にとっても予想外のことだった。
慌てて場を取り繕おうとする藤本の耳に、ぞくっとするような吐息が掛かった。

「私が死んじゃったら、一番困るのはダレだ?」

藤本の足が震えた。彼女は藤本の髪を軽く掻きあげる。そして首筋に軽く、キスをする。
キスをされた所からジンジンと身体が火照り始める。やがて顔は一面真っ赤になる。

「やめてよ、こんなとこで、死んじゃえばいいのにって言ったのは謝るからさ」
「もう感じちゃったの?美貴ちゃん」

そう言って更に愛撫を加えようとする彼女の手を、藤本は必死に制した。
先ほどから、二人の傍を通る通行人の視線が痛かった。
中には、この制服を着たセクシャルな女同士のカップルを、
遠巻きにジッと見つめている人さえ居た。
しかし、彼女はそんなことは構わずに、今度は藤本の唇にキスをした。
嫌がる藤本の唇を割って、彼女の舌は藤本の口内をむしゃぶり尽くす。
濃厚で、一方的なキスだった。

「……やめて、人が見てる」
「人が見てたら感じちゃうんだ?美貴ちゃんって」
5 名前:57 Road to Another Story 投稿日:2004/12/27(月) 02:42
藤本はもはや、その身体のほとんどを彼女に預けていた。
足に力が入らず、腰周りがジンジンと痺れて、ここが外で無ければ、
とても理性を保っていられる状況ではなかった。

「ココも、触って欲しいんでしょ?本当は」

藤本は耳元でそうささやく彼女の顔をすがるように見つめる。
ただそれだけで、藤本は何も言わない。ただ、そうして彼女を見つめる。

「もーかわいいなー美貴ちゃんは」

彼女は笑ってそう言うと、藤本の額にそっとキスをして、ギュッと抱きしめた。
抱きしめられるこの瞬間に藤本は、今自分は本当に幸せだと感じる。

憎らしいけど愛しい吉澤の顔を見上げて、今度は藤本の方からキスを返した。
6 名前:57 Road to Another Story 投稿日:2004/12/27(月) 02:42


FIN
7 名前:Max 投稿日:Over Max Thread
このスレッドは最大記事数を超えました。
もう書けないので、新しいスレッドを立ててくださいです。。。

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