44 チキンライス
- 1 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/26(日) 02:55
- 44 チキンライス
- 2 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/26(日) 02:55
- 貧乏ってなんだろう、と最近よく考える。
小さな頃は、ずっと普通だって思ってた。狭くて細長い部屋に家族で暮らしている
ことも、みんなそうだって思ってた。
いつごろからか、そんな環境を憎むようになってきた。
親を責めたこともあった。お母さんはなにもいわないで、ただ私の手を握って、
美貴ちゃん、ごめんね、贅沢させてあげられなくて、というだけだった。
十代で芸能界に入った。つらいことも多かった。ソロからグループにいれられて、
売り上げが目に見えて落ちていったこともあった。
周囲の目が、あからさまに冷ややかになっていった。でも、私は負けなかった。
そんな強さは、やっぱりあの狭いアパートの一室で、口惜しさを噛みしめていた
ときに、作られたのかも知れない。
クリスマスは、家族で外食できる数少ない日のひとつだった。
お母さんは、特別な日なんだから、なんでも好きなものを頼んでいいよ、って
いってくれた。
でも、私はどうしても遠慮してしまうのだった。クリスマスなんだから、そんなこと
気にしなくてもいいのに。
いつもチキンライスを頼んでいたことを思い出す。
ちょっとでもクリスマスな気分になりたくて、チキンの入ってるささやかなものを
頼んでいたんだった。
私の今があるのも、そんな辛かった日の記憶が全部、生きているからだって思う。
だから、クリスマスの夜にはいつもチキンライスを食べているんだ。
貧乏だったあの頃の出来事を忘れないように。……
- 3 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/26(日) 02:56
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「よーし、締めにチキンライスいっちゃおうかー」
もう何本開けたか分からないワインをかぶ飲みしながら、私はゴキゲンでオーダー。
ここは貧乏人どもには一生縁のない高級レストランだ。
まあ一流芸能人の美貴には痛くも痒くもない。金はうなるほどあるのだ。
「おまたせしました。チキンライスです」
香ばしいかおりが食欲を刺激する。やはりクリスマスの夜にはチキンだろう。
パーティーの最後にこれをかきこむのが、私の一番の楽しみなのだ。
しかし、世界中に鳥インフルエンザが蔓延して、チキンが最高級食材のひとつに
なってしまうなんて、子供の頃には想像も出来なかった。
ふっ……いくら高くなったって美貴には関係のないことだけどね。
貧乏ってなに? とか。そんなの負け組に決まってるじゃん。チキンライス最高!
- 4 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/26(日) 02:56
- おわり
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