43 モーニング娘。は無血虫の陳列場

1 名前:43 モーニング娘。は無血虫の陳列場 投稿日:2004/12/26(日) 02:16
43 モーニング娘。は無血虫の陳列場
2 名前:43 モーニング娘。は無血虫の陳列場 投稿日:2004/12/26(日) 02:17
十二月の寒空の下、クリスマスイルミネーションで煌く街を一台の街宣車が走る。
それは妙にオンボロで、不思議と懐かしさを感じさせる車だった。サイドドアには、
色褪せた印刷で宣伝文句と、その主張の持ち主の名が記されている。

「モーニング娘。は無血虫の陳列場」 飯田圭織

街宣車はブベベベという調子の悪い音を響かせながら、道路を駆け抜ける。
この季節のこの街の名物、高さ百二十メートルのクリスマスツリーの下にその車は停車した。
停車すると同時に流れ出したのは、モーニング娘。のシングル「愛の種」だった。

車から、三十代半ばくらいの女が下りてくる。その女はアイタタなど言いながら、
街宣車の屋根によじ登ると、服についた埃をはたいた。女はパンツスーツ姿だった。
それが彼女のスタイルの良さと背の高さを余計に際立たせている。

女は何やら準備運動のようなことをすると、マイクを握りしめた。
そしてバックに流れる歌のリズムを身体で取りながら、喋り始めた。

――飯田、飯田圭織でございます。元・モーニング娘。おとめ組組長、飯田圭織でございます。
  現代社会は目まぐるしく、劇的に変化しております。今、一瞬を目を瞑ってしまうと、
  次に目を開けた瞬間には、さっきまで一緒におしゃべりしていたお友達が死んでしまっている。
  そんな有様でございます。実に怪しからん世の中でございます。人は人として扱われず、
  単なる一つの労働をする道具として、使い捨てにされてしまう。近代の憎むべき資本主義の、
  正しく、焼き直しでございます。人間は一体、歴史から何を学んだのでございましょうか?
3 名前:43 モーニング娘。は無血虫の陳列場 投稿日:2004/12/26(日) 02:18
女は身体で機械的にリズムを取り続けていた。ポマードでガチガチに固めた髪は揺れることもなく、
ただ機械的に女の頭に付着してた。ここで、曲が変わる。
次の曲は、モーニング娘。のシングル「モーニングコーヒー」だった。
女はまた身体でキチキチとその曲のリズムを取ると喋り始める。
  
――かくいう私、飯田圭織も、モーニング娘。という本来ならば、一生涯の職とすべき仕事を、
  辞任せざるを得ない状況に立たされたのであります。これは実に悲しむべきことなのであります。
  しかし!今、私が主張したいことは、他でもない、モーニング娘。は無血虫の陳列場である!
  という事実だけなのでございます。この主張に、私の感情的な戯れなどは不必要なのであります。
  実は、モーニング娘。のメンバーは、皆、機械なのであります!奴らの身体には、
  人間としての温かみである血液が、流れていないのでございます!これは人として、
  弾劾すべき事実なのであります。私は、一生を掛けて、この事実を全国に伝え、
  モーニング娘。の運営者に対して、一刻も早い道徳的制裁を加えねばならないのであります。
4 名前:43 モーニング娘。は無血虫の陳列場 投稿日:2004/12/26(日) 02:19
そこまで聴くといたたまれなくなって、遠巻きに様子を見ていた私はその女の下に走った。
その女は私を見ると酷く驚いた顔をして、口をパクパクとさせた。

「カオリ、もうやめて。こんなことしたって何にもならない。自分が辛いだけだよ」

圭織は手で耳を塞いで、子どもがそうするように、イヤイヤをした。
私も車の屋根に上がると、圭織の手を無理矢理引き剥がして、その耳に向けて言った。

「全部、圭織の妄想なんだよ」

圭織は目を涙で潤ませながら言った。

「なっちは何も知らないからそんなことが言えるんだよ」
5 名前:43 モーニング娘。は無血虫の陳列場 投稿日:2004/12/26(日) 02:20
私が手を掴んでいるのにも関わらず、圭織は車から飛び降りた。
バキンと音がして、私は反動で尻餅をついた。手に何か握っていた。見ると圭織の手だった。
私は呆然としながら、ふと思い立って、自分の耳を思いきり引っ張った。バキンと音がして、
耳が取れた。私はますます呆然として、手に持った圭織の手と自分の耳を見つめた。

―――なんで……?どうして……?

私は自然と、疑問を口にしていた。


「機械なのに、私は太っちゃうの?」
6 名前:43 モーニング娘。は無血虫の陳列場 投稿日:2004/12/26(日) 02:20
−了−
7 名前:Max 投稿日:Over Max Thread
このスレッドは最大記事数を超えました。
もう書けないので、新しいスレッドを立ててくださいです。。。

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