34 冬は寂かに

1 名前:34 冬は寂かに 投稿日:2004/12/25(土) 19:46
34 冬は寂かに
2 名前:34 冬は寂かに 投稿日:2004/12/25(土) 19:46
「正直、疲れない?」
石川さんは出し抜けに私に言いました。
珍しく石川さんにご飯に誘ってもらった、その卓上でのことでした。

「そのキャラ」
石川さんが言うからこそ、何かしら非常に重みのある言葉。

「或る意味疲れます」
私は半笑いで、そういつもの曖昧でバカみたいな表情で応えました。
石川さんはあまり笑ってはいませんでした。
私もあまり笑えませんでした。

私はいつの間にか石川さんのキャラを踏襲している、という風に
見られていました。
つまり、ナルシストで寒くてキショイキャラ。
さゆは本気でホンモノのナルシストなので、キャラとは言えません。
私は彼女のその性質を、素敵だなと思って取り入れたに過ぎません。
結果ピエロになることは何となく予想できていました。
それでもいいと思っていました。
3 名前:34 冬は寂かに 投稿日:2004/12/25(土) 19:47

私がそんなキャラを踏襲してから、良くも悪くも私の露出は増えました。
実際に私のことをキショイと思っていそうな人も増えました。
それは私が始めの頃よりか、有名になったとか、人気が出たのだとか
そんな風に考えるべきなのですが
それでもあまりいい気分にはなれませんでした。

私には本当に自分を表すようなキャラがありませんでした。
石川さんは長い下積みと努力と研鑽をもって件のキャラを作りました。
他の皆は、だいたい地のままを出すことで、
それがいつの間にかキャラクターに昇華されていったようでした。

だからかしら、私は最近浮いていました。
上辺は得意のバカみたいな笑い顔でよろしくやっていても
皆は私のことをどこかで疎ましく思っているように感じました。
4 名前:34 冬は寂かに 投稿日:2004/12/25(土) 19:48


「私ってウザイですか?」
いつものバカみたいな笑い顔で、バカみたいに縺れさせた舌で尋ねました。
卑怯な質問だと思いました。
石川さんはやっとちょっとだけ笑ってくれました。

「そんな泣きそうな顔しないの」
ちょっとだけ笑って石川さんは言いました。
そんなことを言われると返しようが無いので、そう思ったとき
ああ、石川さんも卑怯なんだと思いました。

「私って石川さんと似てると思いません?」
同じ調子で言ったつもりが、少し声を震わしてしまいました。
石川さんの卑怯な応えのせいだと思いました。

「スープが冷めるわよ。早く食べなさい」
石川さんはまた、ちょっとだけ笑って言いました。

さっきから会話がぜんぜん噛みあってないなと思って
私も少しだけ、普通に笑いました。

「石川さんって意外とラーメンのスープ全部飲むんですね」
私は少しだけ可笑しくなって、見たままを言ってみました。
「普段は飲まないわよ」
石川さんは余裕で応えました。
5 名前:34 冬は寂かに 投稿日:2004/12/25(土) 19:48

店のおじさんが、店内を掃除機で掃きだしたので、私は慌ててラーメンを
かっ込んで、石川さんと二人店を出ました。
外はすっかり冬の夜の様相で、冷たい風が肌をぴりぴりと打ちました。
私は前を歩く石川さんの少し後ろを縮こまってついていきました。

石川さんが立ち止まって振り向いて
「こっち来たらいいのに」
と言って私の手を引きました。
私の手を握ってくれた石川さんはまたちょっとだけ笑っていました。

石川さんはやっぱり卑怯だと思いました。
それでもその温かい手に掴まって歩いていると、不思議
少しだけ寒さが和らいだ心地がしました。

6 名前:34 冬は寂かに 投稿日:2004/12/25(土) 19:49

それだけ
7 名前:Max 投稿日:Over Max Thread
このスレッドは最大記事数を超えました。
もう書けないので、新しいスレッドを立ててくださいです。。。

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