26 だいのじ

1 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/25(土) 01:22
26 だいのじ
2 名前:  投稿日:2004/12/25(土) 01:23
夜中学校に忍び込んで、空き教室の黒板いっぱいに、チョークの色全部
使って四人で協力して『メリークリスマス!!』と書いた。
書き終わって教室の真ん中あたりから満足げにそれを眺める四人の
中からふいに不満の声があがる。

「絵里の誕生日おめでとうも入れてよ!」

それを聞いたさゆみはすぐに黒板に戻って、二つ並んだ
エクスクラメーションマークの真下に赤のチョークで書き加える。
『ハッピーバースデー えりりん★』

食料調達係の愛が定番のパーティバーレルを机の上に置き、
飲み物調達係の里沙がその隣にビニール袋をどん、と置いた。
さゆみは肉の匂いに鼻をひくつかせ絵里はビニール袋の中を
覗く。カラフルなデザインの缶がわんさか入っている。
だがそのどれもが見慣れないものばかりだったので、試しに
絵里は一つ手に持ってみた。…缶チューハイだった。ビニールの中身、全て。
それが発覚した時、愛と里沙は揃って叫んだ。

「本日ぶれーこう!!」
3 名前:  投稿日:2004/12/25(土) 01:23
国道に繋がる脇道から数百メートル歩いてやっと辿り着く
学校だった。しかもその道は田んぼに囲まれている。だから夜も八時を
過ぎればほとんど人が通らない。四人は十二月のひんやり澄んだ空気の中、
車の通らない車道のど真ん中を堂々と歩いていた。
と、急に駆け出した人物が一人。絵里だった。

「キャメッスルキャメスル〜ぅうへへへへ〜」
「酔っ払いや」
「酔っ払いだね」
「わたし以外みんな酔っ払いだよ」

四人の中でさゆみだけは直接アルコールを飲んでいないが、
雰囲気には酔っていた。駆け出した絵里の後に続いてスキップしたく
なるくらいの酔い加減だ。けれど両手にさっきの酒盛りで発生した
ゴミの入った袋を持っていたので寸でのところで留まった。
愛と里沙は手を繋いで歩いている。気が付いたらそうなっていたので
ゴミは自分が持つしか無いと思った。

缶チューハイを二本飲み干した絵里は道路を駆ける足音が聞こえなく
なりかけたところで徐々に失速して行き、やがて立ち止まる。

「あ、止まった」

里沙が言うと愛も止まったね、と相槌を打つ。
と思ったら、彼女は突然ぱったりと道路のど真ん中で大の字に
ひっくり返った。
三人は勿論驚き、さゆみなどはゴミを放り投げて一目散に絵里の
ところへ駆け寄る。愛と里沙はさゆみのその瞬発力にも驚かされ
冷静な判断力を失い、放り投げられたゴミを拾おうとした。実際
きちんと拾った。
4 名前:  投稿日:2004/12/25(土) 01:24
「絵里!」

ひっくり返った絵里の元へ人命救助犬の如く駆け寄ったさゆみは
焦りまくって道路に跪いて仰向けの絵里の顔に自分の顔を思いっきり近づける。
近づけすぎて愛と里沙の位置から見たら百合の世界だった。たまたま街灯の
真下にいてスポットライトのように二人を照らしているので尚更だ。
だが、さゆみの不安とは裏腹に絵里はこれ以上無いと言うほどの極上の笑みを
湛えていて、小さい声でうぇへへへへと笑っている。しかも両目を閉じたまま。
不気味だった。

「…絵里だいじょうぶ?」

別の意味で不安になったさゆみはおっかなびっくり絵里に尋ねた。
絵里はそれに歌って答えた。

「サンタのガキさんはぁ〜 い い まっしった〜♪」
「誰がサンタやねん!」

絶妙のタイミングで突っ込みがあったと思ったら後ろの二人が
追いついていて、里沙が手刀を作って絵里に振り下ろしている。

「あ〜もう絵里ねむねむ〜だからおやしゅみ〜…」

コロリ。
絵里は絶命したかのように首を傾けてしまった。
5 名前:  投稿日:2004/12/25(土) 01:24
「……寝ちゃったんか?」

愛が里沙と手を繋いだままさゆみと同じように膝をついて絵里の
様子を伺い、やがてすぅすぅという寝息を確認した。
マジで寝てるわ、と愛が里沙に苦笑いを向けた時、目が合った。
合って、アルコールで潤んでいる二人の視線が互いに何かを
受信し合った。同じタイミングでニヤリと笑う。


「重さんちょっとどいて」

愛は立ち上がり里沙から手を離す。財布しか入っていない小さな
手提げ鞄を開けて何かを取り出した。暗がりの中でそれは白い
カタマリだということしかさゆみにはわからない。

「こういう非常識かつ迷惑極まりない行為はきちんと記録しとく
 必要があるのであーる」

愛がカタマリの正体を明かそうとした時、里沙が笑いを噛み殺してそう言った。
6 名前:  投稿日:2004/12/25(土) 01:25
「ボス!作業完了であります!」
「うむ」

座り込んで白いチョークで絵里の体の周りをかたどり終えた愛が
立ち上がって里沙に敬礼し、里沙は腕組みしてそれに頷いた。
次の瞬間二人は同時にぷっと噴き出して大声で笑い肩を叩き合う。
夜の飲み屋街でよく目にする光景だった。

「起きねぇ!里沙ちゃんこいつ起きねぇ!」
「本気で寝てんだ、ハ、腹痛い…!」

アルコールも手伝って二人はなかなか笑いを治めることが出来ずにいる。
傍観していたさゆみは、はあ、と大きな溜め息を付き、

「もう、駄目でしょ二人ともー」

そう呆れ混じりに言った後、コートのポケットから何かを取り出して

「絵里はこうじゃないと起きた時きっと怒るんだから  ひっく」

としゃっくりをしながら絵里の頭をかたどった白線の上に大きい
キティちゃんリボンを赤チョークで書き足した。
7 名前:Max 投稿日:Over Max Thread
このスレッドは最大記事数を超えました。
もう書けないので、新しいスレッドを立ててくださいです。。。

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