16 うたたね
- 1 名前:16 うたたね 投稿日:2004/12/24(金) 15:10
- 16 うたたね
- 2 名前:16 うたたね 投稿日:2004/12/24(金) 15:11
- なかなか寒くならない今年の冬は過ごしやすい。殊に今日は日差しが暖かい。
こんな日には、Y氏は自慢の藤椅子を窓際に引き寄せて、ひなたぼっこをする。
ストーブに掛けたやかんがチチチチと鳴るのを聞いているうちに、Y氏はまどろみ始めた。
そこへ、前々からY氏の生活振りに目をつけていた一人の強盗が忍び込んだ。
窓にはカギが掛けられていなかったので、簡単に進入することが出来た。
「おい、起きるのれす」
強盗に乱暴に肩を揺さぶられてY氏は目を覚ました。
「やや、お前はだれだ。何でここに居る。ここは私の部屋だ」
「うるさい、静かにするのれす。有り金を全部出せ、なのれす」
そう言うと、その小柄な強盗は、ナイフをY氏に突きつけた。
Y氏は正義感が強く、ちょっとやそっとのことでは動じない精神力を持っている人間だった。
強盗の目をキッと見つめると言った。
- 3 名前:16 うたたね 投稿日:2004/12/24(金) 15:11
- 「こんなことをしていいと思っているのか」
「うるせーのれす。てめーに説教される筋合いは無いのれす。さっさとするのれす」
「もし私が嫌だと言ったらどうする」
「てめーを殺して、この部屋中を探すのれす。この部屋の中に秘密の金庫があることを、
ののは知ってるのれす。腕の良い強盗は用意周到なのれす」
強盗が殺すなどという物騒なことを言っても、Y氏は顔色一つ変えなかった。
逆に、強盗を憐れむかのような顔をして、言った。
「あれは金庫なんかじゃない。全くお前の思っているようなものとは違うんだ」
「いいからさっさと金をそこから出すのれす」
「分かった分かった。じゃああれが金庫じゃないということが分かったら、
満足して帰ってくれるな」
「約束するのれす」
- 4 名前:16 うたたね 投稿日:2004/12/24(金) 15:12
- Y氏はやれやれと言いながら、カーペットの一部を剥がした。
するとそこに金庫のようなものが見えた。強盗がピストルを突き付けて早く早くと急かすと、
Y氏はその金庫のようなものに触れた。途端に、ビービーと喧しく警報が鳴り始めた。
「ほら、これは金庫なんかじゃなくて、警報機のスイッチなんだ」
「だ、だましたのれすね」
「だから言ったじゃないか、これは金庫なんかじゃないって」
「うるさいのれす、うるさいのれす」
「まあ、こうなったからにはもう逃げられんよ、覚悟を決めた方がいい」
そういうY氏に向けて、逆上した強盗はナイフを突き刺した。Y氏はその場に倒れる。
倒れたY氏に向けて強盗は、腹立ち紛れに言い放った。
「ウソツキは泥棒の始まりなのれす」
しばらく強盗はその場で緊張のあまり硬直していたが、何も起こらなかった。
いつのまにか警報も止んでいた。強盗ははたと気づいて、Y氏の懐からずっしりと重い財布を
抜き出すと、そのまま窓から逃げて行った。
- 5 名前:16 うたたね 投稿日:2004/12/24(金) 15:12
- その部屋の外では、Y氏に雇われた二人の用心棒がこんな会話をしていた。
「保田さん今何時ですか」
「そろそろ午後二時ね」
「そっか、いつもよりちょっと早いっすね」
「まあ、たまにはこんな日もあるんじゃないのかしら」
「そっすよねー」
「それにしても会長にも困ったものだわ。ここ最近毎日これだもの」
「もういい加減慣れましたけどね」
「よっすぃーは最近入って来たからそうかも知れないけど、昔はこの警報が鳴ったら、
もう本当に一大事だったのよ。やっぱり、いくら会長が昼寝で寝ぼけて警報を鳴らしてるんだと
分かってても、心臓に良くないわ。会長の身に、何かあったんじゃないかって」
「そういうもんっすかねー」
「そういうものよ」
- 6 名前:16 うたたね 投稿日:2004/12/24(金) 15:13
- −了−
- 7 名前:Max 投稿日:Over Max Thread
- このスレッドは最大記事数を超えました。
もう書けないので、新しいスレッドを立ててくださいです。。。
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