JOY to the WORLD

1 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/27(火) 23:34
9 JOY to the WORLD
2 名前:JOY to the WORLD 投稿日:2004/07/27(火) 23:35
冬の亡日。
それが訪れたとき、たとえば――東京では午後三時の雪が降っていた。
空は一面、灰色の雲。朝のテレビニュースによれば今年一番の冷え込みである、その日。
天蓋を覆う雲を貫き、幾筋もの虹色の光線が地上に射した。
陽光ではない。不思議な現象である。
舞い散る雪が光の破片のように煌き、虹色の光の柱の周囲で妖精のように踊る。
それは幻想的で美しい光景だった。
神の微笑、祝福ともいえる荘厳な光景の訪れと共に、天上から鈴の音のような高周の音波が
降りてきた。
それは音楽のようであった。歌のようであった。
それは理性による理解を求めるような音ではなかった。
それは音楽的ではあるが、確かに音楽と呼べるようなものではなかった。
それは、耳と脳に聴こえてくるのではなく、そう、魂に響いてくるような――
やがて、地上が、人々の魂が、その音に満ち満ちたとき、
天上に怒濤のような喇叭の大音響が轟き渡った。
同時に、虹の光の柱が一斉に白く輝き、地上に立つ光柱の降下点が音も無く膨れ上がり、
周囲数キロメートルの存在すべてを飲み込み、消えた。
3 名前:JOY to the WORLD 投稿日:2004/07/27(火) 23:36




JOY to the WORLD



 
4 名前:JOY to the WORLD 投稿日:2004/07/27(火) 23:37
「灯りだ」
油絵の具で真っ黒に塗り潰したような濃密な夜闇の中、氷になりかけている雪の融水に
足元を濡らして凍えそうになりながら歩く吉澤ひとみの目に、赤い、暖かい火の光りが
映っていた。ほうと吐き出した息が白い。
「梨華ちゃん、ほら、見て」
吉澤が呼びかけた先では、コートの上に重ねて、ひまわりがプリントされているボロボロの
カーテンをマントのように身に纏った石川梨華が、うつむき、あえぎ、カチカチと鳴る歯の
隙間から何度も何度も白い息を吐き出していた。
吉澤の声に応えて上げたその顔には、打ちひしがれたような疲労が色濃く表れている。
目には生気がなく、唇も死人のように青い。
無理もない。
この数日間、朝から夜まで、人のいる場所を求めて廃都と化した冬の東京をさまよい続けて
いたのだ。
そのあいだ、まともな食事も摂っていない。
「行こう、梨華ちゃん」
いたるところが裂けて傷ついたライダースジャケットとブラックジーンズ姿の吉澤は、
ピンク色のハンカチをバンテージのように巻きつけいている右手を差し出し、
「行こう」
強引に石川の右手を握った。
5 名前:JOY to the WORLD 投稿日:2004/07/27(火) 23:37


二十日前――
大消滅が訪れたあの日、石川梨華は、見舞ってくれる者もなく、ひとりの部屋で、
朝からひどい頭痛と吐き気、高熱に苦しんでいた。東京の大学へ通うことを口実にして、
神奈川の実家を離れて一人暮らししていた、オートロックのマンスリーマンションの
一室でのことだ。
激しく鋭い頭痛は薬を服用しても解消されず、痛みのために眠ることさえできなかった。
ベッドにうずくまってただひたすら死にそうになるほどの苦痛に耐え続けていた石川は、
やがて、気絶することで苦痛から逃れられたのだが。
再び目覚めた、というよりは、気がついたのが、午後三時過ぎ。
世界は、虹色の光柱とその膨張による大消滅の直後にあったのだが、石川はそんなことは
知らないし、気づきもしなかった。石川だけではなく、大消滅から逃れることのできた
多くの人が、その瞬間には何も知らなかったのである。
気絶から復帰した石川は、泥のようにまとわりつく汗をシャワーで流し、鈍く続く頭痛に
顔をしかめながら、空っぽの胃にインスタントのたまごスープを流しこんだ。朝に較べると
さすがに体調は回復してきてはいたが、あっさりしたスープでさえ口にするのも苦しかった。
まともな食事は摂れない。
熱は下がり、吐き気はほとんど治まっていた。頭痛は鈍く残っている。
6 名前:JOY to the WORLD 投稿日:2004/07/27(火) 23:38
少し落ち着いたところでテレビをつけた。
ザーッという耳障りなノイズに音量を絞る。民放の某局にチャンネルを合わせる。
テレビ画面は白黒の砂嵐を映す。ノイズ。ひとつずつ順にチャンネルを変えていく。
砂嵐以外の映像を見せたのは民放の二局のみ。テレビの故障か、何かのトラブルか。
ちゃんとした映像がきている二局のうちのひとつにチャンネルを戻す。
バタバタした騒音。ヘリコプターのローター音だ。テレビ画面にはインカムをつけた
三十代くらいの男が映っていて、何事かをまくしたて、わめいている。大人気なくて
みっともないと感じた。少しだけ音量を上げる。こめかみに鋭い痛みが走り、
手にしていたリモコンを落としてしまった。目を閉じ、ベッドにうずくまる。
瞬間的な鋭い痛みが去ると、先程までの鈍い痛みが頭を覆う。耐えられないほどではない。
慣れた。
目を開けてテレビを見ると、画面には一面の茶色が映っていた。ヘリからの俯瞰映像なのだろう。
その茶色は、土の色だった。広範囲にわたって深くえぐれた地面。爆心地のようだと思った。
何の中継だろう? どこかの国の戦争だろうか。それにしてもクレーター化している範囲が
広すぎるように思う。
インカムの男が大声で状況を説明している。やがて、石川は理解する。今の映像は日本の、
東京の、渋谷の映像だということを。いや、つい数十分前までは渋谷だった場所、だ。
そんな、地面がえぐれて街や人が残らず消えてしまった場所がいくつもあるらしい。
戦争ではない。爆弾ではない。空から射してきた光の柱のせいだという。
わけがわからなかった。わかるはずがない。
7 名前:JOY to the WORLD 投稿日:2004/07/27(火) 23:38
再び鋭い頭痛に襲われた。今度は頭が割れるような痛みが三十秒ほども続いた。
頭を抱えて悶絶し、歯をくいしばり、激痛の嵐に耐える。痛みが退き、ぐったりと脱力する。
しばらくは指一本動かすことができなかった。
部屋の外の世界がどうなっていようとも、どうでもいい気持ちになっていた。
そんなことよりも、この頭痛だ。
頭痛薬を飲んでベッドに横たわる。何やらうるさいと思うと、テレビだった。
すっかり忘れていた。
テレビ画面は慌しい報道フロアをバックに女性アナウンサーが状況を説明している。
石川はベッドの脇に転がっていたリモコンを拾い上げ、テレビの電源を切った。
外の世界との繋がりを遮断する。そんなのはどうでもいいのだ。
今日という最悪の日さえ乗り切れば、また明日からは平凡で平穏な日常に戻ることができる。
それを信じて疑うことなどない。疑う理由など何もない。
今までずっとそうだった。これからだってそうに決まっている。
似ているようで似ていない、似ていないようで似ている毎日を、明日からもまた繰り返すのだろう。
信じる必要さえない、あたりまえのこと。そのはずだった。
8 名前:JOY to the WORLD 投稿日:2004/07/27(火) 23:39


門の内側にはドラム缶の焚き火がふたつ。火のまわりには魂を抜かれたような表情の男女が
群れ集っている。
果たしてこんなもので寒さがしのげるのかどうか。もしも彼らがこの状態で朝まで過ごさなければ
ならないのだとしたら、凍死者のひとりやふたりは出るかもしれない。
とはいえ、やはり火は暖かく、身体の芯まで冷えきっていた吉澤と石川のふたりにとっては、
さながら天国にたどりついたような心持ちだった。
吉澤は、ドラム缶の焚き火を前に建つ西洋建築物に目を向けた。
キリスト旧教会――カトリックの聖堂である。
ここで火にあたっている人たちは、聖堂内に入れずあぶれてしまったのだろうか。
満員なのかもしれない。
だとしたら、自分たちも今夜は屋外で過ごさなければならなくなるかもしれない。
それは、きつい。
吉澤は、隣で寒さに震えている石川に目を戻す。
自分自身はともかく、石川が心配だった。かなり弱っている。
一人くらいならば何とかならないだろうか。
「梨華ちゃん」
吉澤は石川の肩を抱き、閉ざされた聖堂の扉へと足を進めた。
9 名前:JOY to the WORLD 投稿日:2004/07/27(火) 23:39


大消滅の翌日。
体調の回復した石川は、朝、コップ一杯の牛乳を飲みながらテレビをつけた。
画面にはノイズ。
そこで、昨日は何か大変な事が起きたらしいと思い出した。現実的な危機感はない。
まだ状況がよくわかっていないのだ。
放送が生き残っていたもうひとつの局にチャンネルを合わせる。
光の柱が地上の半分近くを消滅させてしまったあと、空から白い天使の群れが降りてきたらしい。
空から降りてきた天使たちは、地上の多くの人々を殺し、あるいは消滅させたらしい。
人々は逃げまどい、あるいは戦ったらしい。
そうらしい。
まだ、石川には危機感がなかった。世界が未曾有の危機にさらされている実感などなかった。
光の柱? 天使? 世界の破滅? 人類の終焉?
馬鹿らしい。
ありえない。
窓から見える外の景色は昨日までと何ら変わりない。
石川は服を着替え、身のまわりの支度を整え、コートを羽織り、
いつものようにあたりまえのように学校へ行こうとした。
10 名前:JOY to the WORLD 投稿日:2004/07/27(火) 23:40
オートロックの玄関を抜けて、丸一日ぶりに冬の外気を浴びた。
まったく人けはないが、静かなのはいつものことだ。
通りに出る。
道路には一台の自動車もバイクも走っていない。
歩道には人ひとりとして歩いていない。自転車も走っていない。
それどころか、目の前に横たわる道路の向こう側には――
何もなかった。
部屋の窓からは見ることのできなかった方角。あるはずの建物群が消えていた。
ゆるやかに円形を描く崖。何もない、土色の、巨大な穴が広がっていた。
昨日テレビで見たような、あのクレーターが、すぐそこにあった。
石川は声もなく、ただ呆然と立ち尽くす。
夢を見ているようだ。不思議な世界に迷いこんだようで、現実感に乏しい。
広い空が見えた。灰色の雲に覆われた空。世界に蓋をしているかのような。
眩暈がした。
血の気が引くというのはこういうことか。
石川は、冷たい舗装路にぺたんと座りこんでしまった。
11 名前:JOY to the WORLD 投稿日:2004/07/27(火) 23:40
それからしばらくして気を取り直した石川は、数十分ほどうろうろと周辺をさまよい歩いた末に、
やがて、マンションからすぐ近くの小学校にたどりついた。
校庭に人の姿が見えた。サッカーをしている子どもたちもいる。
校門脇の金網フェンスには『地域避難所』の赤いペンキ文字。
世界から見放されたように思っていた石川は、思わず涙を流して喜んだ。
駆け出そうとした。
と、サッカーをしていた子どもたちが急に騒ぎたて、石川のほうを指差し、逃げはじめる。
大人たちも悲鳴をあげながら校舎へと逃げていく。
何事だろうか? まさか、自分の存在が拒否されたのだろうか。
最上の喜びも一転、石川は絶望的に悲しくなった。
まるで化け物をみたように、あんなふうに。ひどすぎる。あんまりだ。
背後で、大きな鳥がばさりと羽ばたくような音が聴こえた。
振り返る。
二、三メートルほどの近距離。頭上、少し見上げたところに、真っ白な人が浮かんでいた。
金色の巻き毛。彫刻のような白い肌。碧い瞳。背中には大きな翼。
まただ。
また現実感に乏しい映像だ。
何だ、これは?
12 名前:JOY to the WORLD 投稿日:2004/07/27(火) 23:40
翼の生えた真っ白な人は、空中を滑るように石川のほうへと近づいてくる。
思い出した。
今朝のテレビでその情報を耳にした。
天使だ――
石川は悲鳴をあげようとしたが、声が出てこなかった。
逃げようとしたが、足がすくんで動けなかった。
天使は悠々と石川に近づき、やがてふわりと目の前に降り立った。
二メートル以上はある。翼のせいか、実際の全長以上にさらに大きく見える。
威圧的に、そして優雅に地上に立つ天使は、無表情に石川を見下ろす。
感情のかけらもない、機械のような、人形のような。
殺される――
テレビの情報によれば、地上の半分近くを消し去った光のあとに空から現れた天使たちは、
容赦なく次々と人々を虐殺していったという。
ならば、今ここで天使と出会ってしまった自分も、殺されなければならない。
なぜそうなるのか、なぜ殺されなければならないのかはまったくわからないが、それは必然なのだ。
圧倒的な恐怖と己の無力さに、石川は天使を見上げたまま、嗚咽を漏らし、とめどもなく
大量の涙を溢れさせた。
その場面に、
「よう」
金色の金属バットを手にして現れたのが、吉澤ひとみだった。
13 名前:JOY to the WORLD 投稿日:2004/07/27(火) 23:41


玄関ロビーを抜けて聖堂内陣の扉を開けると、そこには、祭壇に灯る蝋燭の乏しいあかりに
照らされた幾人もの人たちが、肩を寄せ合い、息を潜めるように着席し、あるいは横たわっていた。
床に寝そべっている人もいる。
ぱっと見た限りでは満員ではないらしい。ならば、なぜ、屋外に人がたむろしているのだろうか。
風雪をしのげるとはいえ、聖堂内も寒く、暖房のようなものは見当たらない。
ここで火を焚くわけにはいかないだろう。もしかすると、外にいる人たちは、火にあたり
暖をとるために外出しているのだろうか。火の暖かさを得るために、風の冷たい屋外に
出なければならないとは、なんとも悲しい皮肉だ。
訪問者に気づいたらしい、白い司祭服の少年のような影が、吉澤と石川のもとへ歩み寄ってくる。
「お困りですか?」
女の声だった。少年ではない。ショートカットの髪型。優しげな微笑。
童顔だが、吉澤と石川のふたりよりも年齢は上のようだった。
「ええ、まあ」
吉澤が答える。困っているに決まっている。
少年のような少女のような司祭服の女は、ピンク色のハンカチが巻かれている吉澤の右手を
見下ろし、続いて、吉澤に肩を抱かれてぐったりとしている石川に目を向けた。
じっとみつめ、やがて何事か得心したような顔つきになり、ひとつ小さく肯いた。
「どうぞ、こちらへ」
女はふたりをうながし、祭壇のほうへと歩いていく。
「あの――」
「だいじょうぶ。安心してください」
すべて心得ているような女の微笑みに、吉澤は言葉を継げず、飲みこんだ。
14 名前:JOY to the WORLD 投稿日:2004/07/27(火) 23:41


人間とは思えなかった。
吉澤は金属バット一本で天使と格闘し、叩きのめし、消滅させてしまったのだ。
吉澤に気づいた天使が口を開くと、キィィィンッという高周の音波が石川の耳をつんざいた。
直後、開かれた天使の口から虹色の光線が吐き出され、吉澤が立っていた校門前の地面をえぐり、
切り裂いた。
光線をかわした吉澤は吠え声をあげながら天使に襲いかかる。
天使は吉澤の襲撃を避けるためか空中に浮き上がろうとしたところで、吉澤に片足をつかまれ、
背中から地面に叩きつけられた。
すぐに反撃しようと再び口を開いたところで、吉澤の金属バットに顔面を叩き潰された。
血のように、光が飛沫いた。
潰された顔面から光を漏らしながらもなお動こうとする天使は、右腕を延ばして吉澤のライダース
ジャケットの裾をつかんだ。
吉澤はその腕をからめとって両腕で挟み、躊躇なくへし折ると、天使の金色の巻き毛を
引っ張り上げて上半身を起き上がらせ、金属バットのフルスイングで頭部を打ち砕いた。
石川は目を閉じ、顔をそむける。
肉体を破壊する凄惨な音が続き、やがて、静かになった。
「ケガはない?」
声に目を開けると、すぐそばに、金髪に白い肌の、天使のできそこないのような吉澤の姿があった。
足元を見ると、襤褸切れのようになった天使が全身を光の粒子に変えながら、
消滅しようとしているところだった。
15 名前:JOY to the WORLD 投稿日:2004/07/27(火) 23:41


「で、その小学校には十日くらいいたんですけど、なんか総攻撃くらっちゃって」
木製の椅子に座って、司祭服の――安倍なつみと名乗った女と対面していた吉澤は、
そこまで話したところでふっとため息を吐き出し、
「あたしと梨華ちゃん以外、全滅」
と肩をすくめた。
安倍にうながされて入室させられた、祭壇脇の控え室である。
石川は掛けと敷きの二枚の毛布に挟まれて眠っている。苦しそうな寝顔だ。
「それだけの襲撃を受けて、なぜおふたりだけが助かったのか、わかりますか?」
安倍は、当事者でもないのにまるでその質問の答えを知っているかのように問う。
「さあ」
再び、吉澤は肩をすくめた。
「わかりませんね。あたしはひたすら、片っ端からあいつらをぶん殴っていただけだし。
 そのうちあいつらが引き上げて、気がつけば、学校の中に生き残ってたのは、あたしと
 梨華ちゃんだけだった」
「あなたは、なぜ、戦えるのですか? あの天使たちと」
「さあ。なんかいきなり異常に強くなっちゃって。身体が勝手に動く感じなんすよ」
「不思議ね」
「まったくです」
「右手、ちょっと見せてもらえます?」
唐突に、安部は脈絡のないようなことを口にした。
が、吉澤はいつかそのことに触れられるだろうと覚悟はしていたので、驚きはしない。
16 名前:JOY to the WORLD 投稿日:2004/07/27(火) 23:42
「やっぱわかります?」
「ええ」
「なんでもお見通しって感じですね」
「ええ」
「さっきの言葉、安倍さんにも返したいですね。なんでわかるんですか?」
「わからないけど――わかるの」
安倍は目を細め、微笑む。
「そうですか」
言いながら、吉澤は右手に巻かれたハンカチを、スッと解く。
覆いのとれた右手の甲には、血で書かかれたような緋色の文字――同じ数字が三つ並んでいた。
「これ、どっちに見えます?」
吉澤は薄い笑いを浮かべながら、窺うように安倍の目を見る。
「ロク」
安倍は即答した。
「やっぱりかぁ〜」
吉澤は両腕を上げて、椅子の背もたれに体重をあずけた。
「銀河鉄道のほうだったら良かったのに」
吉澤の右手の甲には『666』のアラビア数字。見ようによっては『9』にも見えるが、
おそらくは、『6』で間違いない。
「これって、悪魔の数字ですよね?」
吉澤は体勢を戻し、膝の上に腕を置いて両手を組む。
「正確には、獣の数字ね」
「ケモノですか」
「黙示録の十三章に記されている限りは」
「ふ〜ん。やっぱり、そういう、聖書とかに書かれてるのって、憶えてるもんなんですか」
「いいえ。つい最近、読んだだけ」
「なんだ」
「それと、私はべつにキリスト教者でもないし、この教会の人間でもないのよ。たぶん、
 勘違いしてると思うけど」
「えぇっ? だって、その服」
「これは、ここにあった物を拝借しているだけ」
と、安倍は部屋の中を見まわす。
17 名前:JOY to the WORLD 投稿日:2004/07/27(火) 23:42
「私も逃げてきたのよ。あなたたちのように、天使の攻撃を受けて」
「え、じゃあ」
吉澤ががそこまで言いかけたとき、床の毛布に眠る石川が、うなされている様子で
苦しげな声を漏らした。
吉澤と安倍のふたりは、顔をしかめながら身をよじってうなる石川を見下ろす。
「私はね――」
石川を静かにみつめたまま、安倍が口を開く。
「わかるの」
吉澤は、安倍が何を言おうとしているのかを察しようとしたが、結局はわからずに、
「はあ」
とだけ返して、先を促そうとした。
「彼女――石川さんは、選ばれている」
安倍は吉澤に目を戻す。
何か言葉を返さなければならないように思い、吉澤は安倍の目を見返し、
「選ばれているって、何に?」
「それはわからないけれど。選ばれているということだけは、わかるの」
「神様とか、そんなんですか?」
安倍は小さく首を横に振る。
「わからない」
「なんすか、それ」
「まわりの人がみんな殺されていく中で、私だけは、天使を目の前にしても、殺されなかった。
 石川さんもそうだったはず。だから、あなたが石川さんと初めて出会ったとき、そこにあなたが
 いなくても、石川さんは天使に殺されることはなかった。あなたが石川さんを助けたとか、
 石川さんがあなたに助けられたとか、そう思っているなら、それは違います」
一度、安倍は言葉を切る。
吉澤は少し不機嫌そうな顔になる。
18 名前:JOY to the WORLD 投稿日:2004/07/27(火) 23:43
「むしろ、あなたがそばにいることで、石川さんは余計な危険にさらされてしまう。
 ここまで自分が石川さんのことを守ってきたと思っているなら、それは違うと思い直して。
 ――私の言っていること、納得できる?」
「納得とかじゃなくて、まずはあなたの言ってることを信じるかどうかだと思うんですけど」
「それはそうね。――それで、信じる? 信じない?」
信じる。なぜか最初から疑うことなどなかった。吉澤は、安倍の言葉はすべて真実だと、
最初から、一目彼女を見たときから、そう思っていた。理由はわからない。
雰囲気にやられたわけでもない。これもひとつの、わかる、というやつなのだろうか。
右手の甲を見る。『666』の緋色の刻印。獣の数字。
大消滅のあの日以来、浮き上がり、拭い去ることのできない。
「今日の安息日も、明日の夜明けとともに終わります。また天使たちが、選ばれざる人々を
 滅ぼしに、空から降りてくるでしょう。あなたが私の言葉を信じるか信じないかにかかわらず、
 夜明けまでには、あなたにはここから立ち去ってもらわなければなりません。そのときに、
 石川さんを連れて行くかどうかは、あなたたちおふたりの意志に任せます。それは私が
 強制することではありませんから」
安倍の顔に、最初に吉澤と石川を出迎えたときの優しげな微笑は、ない。
「ただ、私は、ここに残ったほうが彼女のためになると、そう思います」
吉澤は右手の甲をみつめつづけている。
「その、選ばれてない人っていうのは、死んでもしかたないんですか」
そんなわけはない。そんなことはわかりきっている。
それでも、吉澤の口からは、とどめることのできない言葉がこぼれ出てしまった。
安倍は悲しげな目になる。
ふたりのあいだに言葉がなくなる。
「う……ん……」
部屋に満ちかけていた重い沈黙を、石川の寝言が撹拌した。
見下ろした吉澤の目に、つい先程まで苦悶の表情を浮かべて寝返りをうっていた石川の、
えへえへとした笑い顔が映った。
「よっすぃ……」
吉澤は、強く歯を噛み、目をそらす。
19 名前:JOY to the WORLD 投稿日:2004/07/27(火) 23:43


翌日、久しぶりの深く長い眠りから目覚めた石川は、ぱっちりと目を開いた途端に
「いたたたた……」と肩や背中に手を添えた。固い床に毛布を敷いただけの寝床だ。
しばらく身体中の痛みと格闘したのち、首を左右に振って部屋を見回す。誰もいない。
きゅるきゅるきゅる、と腹が鳴った。
石川は軽く腹を押さえながら立ち上がり、扉を開け、部屋を出る。
「あの……」
内陣にも、誰もいなかった。
寒い。屋内であるにもかかわらず、吐いた息が白くなる。
祭壇の壁には、十字架に磔にされたイエス・キリストの銅像。
周囲は、大きな透明ガラス窓が採り入れる、冬の朝のまばゆい光に満たされていた。
「よっすぃ」
小声で、かくれんぼをしているトモダチをさがすように。
急に心細くなった。とてもとても不安になる。怖くなる。心臓が泣き出しそうに震える。
「よっすぃ!」
大声で、吉澤を呼び求めた。
みんな死んでしまったのではないか。自分以外はもう誰も生きていないのではないか。
天使たちは七日に一度休むらしい。六日間の攻撃と、一日の休み。
三週間前もそうだったらしい。二週間前もそうだったらしい。先週もそうだったらしい。
昨日はまったく天使を見かけなかった。
その傾向が今週にもあてはまるのだとしたら、今日からまた、天使たちの攻撃が始まる。
いや、すでに始まっているだろう。
「よっすぃ!」
祭壇の前に立ち、石川はヒステリックに叫ぶ。
パニックになりかけていた。不安で不安でどうしようもない。死にそうになるほどの不安だ。
つ、と石川の両目から涙がこぼれ落ちた。
世界にひとりぼっちで取り残されたような。
あの日の、あのときの、あんな思いはもうたくさんだ。もう、いやだ。
ギィッ――
軋み音をたて、内陣の扉が開かれた。
石川は、はっと息をのむ。
20 名前:JOY to the WORLD 投稿日:2004/07/27(火) 23:44
扉を開いて現れたのは、白い司祭服を着た童顔でショートカットの女、安倍なつみ。
「おはようございます」
開かれた片側の扉をおさえ、まっすぐに石川と対面している。
石川がパニックに陥るようなことなど何もなかったのだ、とでもいうような、
穏やかな笑顔だった。
「おはよう……ございます……」
「食事の用意ができたので起こしにいこうと思っていたのですが、ちょうどよかった。
 ずいぶん眠りが深かったので、もう起きてこないのではないかと心配しましたよ」
安倍の軽い冗談にも、石川の表情は不安をひきずって硬くなったまま。
訊きたいことも、声になって出てこない。
「今日はお天気がよくて、風もないので、前庭で食事をすることにしています。
 あなたも――落ち着いたら、どうぞ、外のほうへいらしてください」
言い残して、安倍が扉を閉じかけると、
「あ、あの!」
恐怖心の縛を解くように、石川は必要以上に大きな声で安倍を呼び止めた。
「はい」
「よ……吉澤さんも、あの、外に?」
両の拳をぎゅっと握り、すがるようにみつめてくる石川に、安倍はゆっくりと首を横に振る。
「彼女は、もう、ここを発ちました」
「え?」
「どうぞ、前庭のほうに。くわしいお話しは、食事をしながらにしましょう」
ここでの会話は終わりだとばかり、安倍は石川の応答を待たずに扉を閉め、姿を消してしまった。
「あっ……!」
石川の頭の中に、またじわじわとパニックが広がっていく。
吉澤が行ってしまった? なぜ? なぜ? なぜ?――
置いていかれてしまった。見捨てられてしまった。そう思った。
いいかげん、足手まといになってしまったのだろうか。
確かに自分は何の役にも立っていない。
ただ守られているだけで、吉澤のためになるようなことなど何一つできなかった。
でも、それでも――守ってくれると言ったのに。信じていたのに。
勝手に、信じていた。
石川は立ちくらみそうになる身体を気力で支える。
安倍は、くわしい話、と言っていた。何かある。何かそれなりの理由があるのではないか。
ならば、それを聞かなければならない。
理由を。置いていかれた理由を。吉澤が一人で行ってしまった理由を。その理由を。
21 名前:JOY to the WORLD 投稿日:2004/07/27(火) 23:44


石川は祭壇のある内陣を出て、玄関ロビーを抜け、聖堂の外に出た。
外気に少し身をすくめる。寒いと思ったのは一瞬のことだった。
安倍の言うとおり風はなく、数日ぶりの陽射しのためか、気持ち暖かく感じる。
聖堂の外、前庭には、ブロックで挟んだ焚き火を囲む数人のグループが、いくつかあった。
ドラム缶の焚き火のまわりにも数人が集まっている。
昨夜、聖堂内外にいた人数よりも半分ほどに減っているように見えた。
それぞれの焚き火のそばには鍋が置かれ、各人の手には椀や丼。
一番手前の焚き火に、安倍がいた。木製の椅子に座り、隣で同じく椅子に座っている
小学生くらいの女の子と、笑いながら話しをしている。
安倍の対面には、空の椅子が一脚。
椅子があるのはそこだけで、他のまわりの人たちは、立ったり屈んだりしている。
「あの……」
石川の声に、安倍が笑顔のまま振り向く。
「あ、石川さん。どうぞ、そこに座って」
自分たち以外の全員が立ったり屈んだりしている中で着席するのはどうにも気が引けた。
それでも、結局は、座る。
「お米と薩摩芋の雑炊。あんまりおいしくできなかったけど、我慢してね」
と、安倍は手にしていた椀を隣の女の子に預けてから、焚き火の脇に置いてあった鍋を
持ち上げ、火の上にかける。そして、預けてあった椀を「ありがとう」と女の子から
受け取ると、石川に向き合う。
「菅谷梨沙子ちゃん。かわいい子でしょう」
「はぁ……。あの――どうも、石川梨華……です」
石川はとまどいながらも、安倍が菅谷梨沙子と紹介した女の子に名前だけの自己紹介をする。
返答はない。女の子は、おびえる小動物のように石川をうかがっている。
気まずい。落ち着かない。
「この子も――」
安倍が、鍋の中身をゆっくりとおたまでかき回しながら言う。
「あなたと同じように、選ばれている人です」
それから、安倍は昨夜吉澤にしたのと同じようなことを、石川に話して聞かせた。
22 名前:JOY to the WORLD 投稿日:2004/07/27(火) 23:45
安倍の直感が知らせる『選ばれている』人間のこと。
真偽の程はわからないが、少なくとも安倍自身は信じていて、吉澤も信じたこと。
天使に襲われたときに安倍だけが無傷で助かったこと。
これは、石川も同じ体験をしていた。天使を目の前にしても、自分だけは殺されなかった。
そして、吉澤の右手の数字のこと。
もちろん、そのことは知っていた。吉澤の右手にハンカチを巻いてやったのが石川なのだから。
まわりの人たちに不審な目で見られないために。あれはあまりにも不吉すぎるから。
最後に、石川が選ばれている人間だと安倍が直感したことと、それを吉澤に告げたこと。
「あなたは、ここにいたほうが安全です」
吉澤は三時間ほどの仮眠をとったあと、夜明け前に一人で聖堂から立ち去った。
石川の身を危険にさらさせないために。
「どうして私には何も言ってくれなかったんですか。私の意志は――」
「あなたはついていくと言うに決まっている。そう思ったのでしょう、吉澤さんは」
安倍の話を一通り聞き終えた石川は、途中に渡された椀とスプーンをもったまま、唇を噛み、
うつむいた。
「ここにいれば、あなたは安全です。保証はできないけれど、たぶん、だいじょうぶ」
「吉澤さんがここを発ったのは、どれくらい前ですか」
「石川さん。吉澤さんがどういう思いで一人で出て行ったのか、考えて」
「教えてください」
かたくなな表情でうつむきつづけている石川を見て、安倍は目を細める。
「三時間ほど前です。どこへ行ったのかは、わかりません」
「私は――吉澤さんをさがしに行きます。あの人のところへ、行きます」
安倍は、こうなることは最初からわかっていた。
吉澤は一人で去るだろう。石川はそれを追うだろう。
自分の言葉によって、ふたりがどのように行動するか、わかっていた。
「石川さん。ひとつだけ約束してください」
安倍の呼びかけに、石川はわずかに顔を上げる。
「もしも今日、吉澤さんに出会うことができなかったときは、夜にはここに戻ってきてください」
石川の顔が少し、険しくなる。
「そして、吉澤さんをさがすのは、また翌日としましょう」
安倍は微笑んでいる。
その隣の女の子は、椀の向こうから石川の顔をうかがっている。
「憶えておいて。あなたには、帰ってくる場所があるということを」
23 名前:JOY to the WORLD 投稿日:2004/07/27(火) 23:45


朝食を済ませると、石川は早急に身支度を整え、安倍に見送られながら聖堂をあとにした。
手には、安倍に持たされたスーパーのビニール袋。
中身は水の入った五〇〇ミリのペットボトル二本と、乾パン一袋、缶詰一缶に、缶切りとスプーン。
石川は、聖堂周辺の家屋、建物に片っ端から足を踏み入れ、吉澤の名を呼んだ。
吉澤はただ聖堂を離れただけで、すぐ近くにいるかもしれない。
そう願った。そうであればいいと思った。
人の姿を見かければ、吉澤の特徴を伝え、見かけなかったかと問うた。
当たりはひとつもなし。誰も知らない。
昼前には、吉澤の姿を見たという中年の男性に出会ったが、嘘だった。
情報の交換条件にビニール袋の中身を要求され、袋ごと手渡した瞬間に逃げられた。
余裕もなく、嬉しさのあまり、疑うことなどできなかったのだ。
ほとんど休むことなくしらみつぶしに吉澤をさがしまわって、やがて夜になる。
一日分の飢えと渇き、足の痛みと全身の疲労、先の見えない絶望感に、何度となく涙を流した。
もう、吉澤は近くにはいないのかもしれない。遠く離れてしまったのかもしれない。
吉澤が行きそうな場所は思い当たらない。
元いた小学校はどうだろうかと思うが、たぶん、もうあそこへ戻ることはないだろう。
石川はアスファルトの路上に座りこみ、夜空を見上げる。黒雲に覆われ、月も星もない。
うつむき、しばらくじっと静寂の中に身を置いていた。
吉澤に会いたいと強く思うほど、絶望感はより増していった。
やがて立ち上がる。ふらつき、倒れそうになった。
歩き出す。足元がおぼつかない。長い休みのために、足がうまく動かなくなっていた。
そして、ふらふらと二時間ほど歩いた末に、聖堂にたどり着く。
ここに戻って来たくはなかった。戻るつもりなどなかった。
しかし、あまりにも疲れきり、あまりにも心細く、他に行くあてなど、どこにも。
倒れかかるようにして聖堂の扉を開き、玄関ロビーを抜け、内陣に入る。
蝋燭の暗い灯りの中、静かに夜を過ごしていた人々が振り返る。
やがて、安倍が迎えに出てきた。
「おかえりなさい」
石川は子どものように安倍の胸にすがりつき、泣きじゃくった。
24 名前:JOY to the WORLD 投稿日:2004/07/27(火) 23:45


翌朝、石川は昨日と同じように、朝食を済ませると、手早く簡単に支度して、
聖堂の玄関扉の前に立った。
見送りに出てきた安倍の手には、これも昨日と同じ内容のビニール袋。
「吉澤さんと出会えることを願っています」
「はい。ありがとうございます」
「それでは、お気をつけて」
石川は、がさっと音をたてるビニール袋を安倍の手から受け取ると、深く頭を下げてから、
振り返り、門のほうへと向かった。
その表情には厳しさがある。不安と戦う、決意が表れていた。
必ず会える。会わなければならない。
石川にとって吉澤は、壊れかけた世界を生き抜くための羅針盤だ。
ただ安全の中にうずくまっていることが、生きるということではない。
不意に――
空気が重くなったような気がした。粘りつくような圧迫感に呼吸が苦しくなる。
石川は門を前にして足を止め、灰色の曇天を見上げた。
雪だ。
わずかに雪が降りはじめている。
灰色の雲とちらつく雪の空に、ひとつ、雪とは違う白い色が見えた。
徐々に、徐々に、白い色はこちらへ近づいてきて、大きくなっていく。
天使――
「安倍さん!」
石川は振り返り、叫んだ。
安倍も気づいていたらしい。全身に緊張がみなぎっているように見えた。
早く逃げなければ。聖堂の中の人たちを逃がさなければ。
安倍に「選ばれている」とは言われても、本当の本当に、絶対に安全なのかどうかはわからない。
「選ばれていない」人ともなれば、なおさら。
逃げなければ。
しかし、わかっていた。
もう、こうなっては、逃げることなどできない。いまさら、逃げようとしても無駄なのだ。
それでも。
25 名前:JOY to the WORLD 投稿日:2004/07/27(火) 23:49
「安倍さん!」
石川は、もう一度叫ぶ。
安倍は動かない。じっと空を睨みつづけている。
「早くみんなを――」
ブオンッ、と上空を通り抜けていく音。
すでに天使は聖堂にたどり着き、石川の上空を抜け、安倍を眼下にしてひとつ翼を
羽ばたかせると、ゆっくり、静かに、地上へと降下していく。
石川は恐怖に身体が動かなくなる。声も出ない。
やがて、音もなく、天使は安倍の目の前に降り立った。
石川からは、天使に隠れて安倍の姿が見えなくなる。
と、急に、天使はわずかに足を浮き上がらせて、くるりと回転し、石川のほうに身体を向けた。
瞬間、石川はびくりと身体を震わせ、息を詰めた。
そうしていれば見つからないのではないかというように。
そこへ――
「はぁ〜い」
背後から、場にそぐわない、気楽な声が聴こえた。
石川は目を見開き、振り返る。
涙が浮かび、こぼれた。
金髪。白い肌。ボロボロのライダースジャケットとブラックジーンズ。
右手にはピンクのハンカチと鉄パイプ。
吉澤ひとみ。


______________________________________(了)
26 名前:JOY to the WORLD 投稿日:2004/07/27(火) 23:50




 
27 名前:JOY to the WORLD 投稿日:2004/07/27(火) 23:51
主は
28 名前:JOY to the WORLD 投稿日:2004/07/27(火) 23:51
主は
29 名前:JOY to the WORLD 投稿日:2004/07/27(火) 23:51
来ませり
30 名前:Max 投稿日:Over Max Thread
このスレッドは最大記事数を超えました。
もう書けないので、新しいスレッドを立ててくださいです。。。

Converted by dat2html.pl v0.2