47 タブー
- 1 名前:47 タブー 投稿日:2004/03/21(日) 22:56
- 47 タブー
- 2 名前:47 タブー 投稿日:2004/03/21(日) 22:57
- その名を出してはいけません。
- 3 名前:47 タブー 投稿日:2004/03/21(日) 22:59
- そう言われたときあたしは
いわゆる「大人の事情」ってやつね。
そう思っただけだった。
圭ちゃんとかやぐっつぁんたちは抵抗してみたいだけど、あたしの前でことさら話題に出すようなことはなかった。
あたしの方から話題に出すことはなかったし、新加入した同世代。よっすぃーとか梨華ちゃんたちといる時間の方が長くなり意識しなくてもそのヒトの話題に触れることはなかった。
それでも歌番組とかで過去の映像が見ていてそのヒトが映ると無意識に身体がビクッとした。
その反応をメンバーから横目で見られているのを感じ、なんか悔しくて…出て来そうな場面では画面を見ないようにしていた。
- 4 名前:47 タブー 投稿日:2004/03/21(日) 23:00
- ずっとそんなことをしていたら次第に意識しなくても顔も声もハッキリ頭に入ってこなくなった。
昔の記事とか見てもそこの部分だけスッポリと抜けている。
見えないわけじゃなく目から入っても脳に届くまでにフィルターがかかるみたいな感じ。
ユウキに話してみる。
「真希ちゃんそれは心の保護回路が働いているんだよ」
頭が悪い癖に偉そうなことを言ったからお礼と一緒に一発殴っておいた。
鼻血を出しながら抗議している弟を無視して、あたしはその理屈に納得していた。
- 5 名前:47 タブー 投稿日:2004/03/21(日) 23:02
- 記憶というモノは反芻しないとだんだん薄れて行くモノらしい。
あたしは段々こう思い始めていた。
本当にあのヒトは存在していたのだろうか?
番組でその話題が出ても圭ちゃんとかがフォローしてくれたしインタビューでとんちんかんな受け答えをやっても雑誌に載るときには適当な発言に差し替えられていた。
不都合がなければ無理に思い出すこともない。
辛さを伴う儀式を放棄したあたしは何かから解放される心の軽さを感じながら、同時に大事なモノを一緒に失ってしまうような恐れをを感じていた。
だがその恐れさえも毎日押し寄せてくるスケジュールという波に押し流され、考える時間を奪われ、心の奥底に不安を押し込め日々の仕事に忙殺されていった。
気がつくと、いつのまにか「娘。」を卒業していたあたしは先の見えない道を一人で走っていた。
- 6 名前:47 タブー 投稿日:2004/03/21(日) 23:05
- ◇◇◇
(こいつ、いつまで寝てるんだ?)
(ほんと大物だわこの子。アハハ)
(笑ってる場合?あたし達には後がないのよ)
(圭ちゃん怖いってその顔)
(生まれつきなんだから、ほっといて!)
(まだ子供なんだから仕方ないって……)
布団の上から背中を撫でられる感触
(でも……)
(ぎりぎりまで寝かせてやろう。ほら、あたしらで朝食の用意しちゃおうって)
側から二人の気配が遠ざかっていった。
あたしが早起きして二人以上にしっかりやってたら番組的に美味しくないじゃん。
これも「大人の事情」ってやつよ。
寝顔までカメラにサービスする気にならなかったから、すっぽり頭まで被った布団の中であたしは悪態をつく。
台所からガチャガチャ聞こえ始めた。
リズム感0の包丁の音
手順で言い争う声
その中にも楽しげな空気。
布団の隙間から流れ込んできたお味噌汁の匂いとともにウトウトし始めた意識の中で多少の後悔が生まれていた。
あたしが仕切ってもある意味、美味しかったかな……
◇◇◇
- 7 名前:47 タブー 投稿日:2004/03/21(日) 23:06
- 「……はい、わたしは会っていません……はい……連絡がついたら事務所まで……わかりました……」
後藤が布団の中で目が覚めたとき、耳に入ったのは保田の声だった。
ゴソゴソと布団から頭を出すと携帯で話す保田の姿が後藤の目に入った。
窓の外はまだ薄暗い
起きた気配に気がついた保田はチラッと目をやると携帯をとじる。
「おりゃー、いつまで寝てる!」
布団から蹴り出された後藤は慌てて抗議する。
「カメラカメラ!」
「カメラ?」
怪訝な顔になる保田。
「それにノーメークじゃん。マズイって……」
「カメラ、ノーメーク?……なに!もしかしてドッキリ!えー!!!」
慌てて部屋を駆け回る保田。
意味なく走り回るその姿を見ながら後藤は違和感を覚える。
「あれ?ここどこ?」
- 8 名前:47 タブー 投稿日:2004/03/21(日) 23:07
- 辺りを確認するが、見慣れない光景。
部屋の一角を占領するパソコン机と周辺機器。
無造作に置かれた一眼レフカメラ。
ビニール袋に放り込まれて積み上げられたビール缶の山。
自らの存在を主張する巨大なピンク色の冷蔵庫。
部屋のど真ん中に敷かれた布団の上にボンヤリとしている自分。
「あれ?夢?」
相変わらず窓の外はまだ薄明るい。
「ごーとーおー!」
気がつくと保田が目の前に仁王立ちしている。
「あはっ」
「あはっ。じゃないって言うの!」
「圭ちゃん顔怖いから……」
「生まれつきだから、ほっとけ!」
――デジャビュー(既視感)――
- 9 名前:47 タブー 投稿日:2004/03/21(日) 23:09
- 突然固まった後藤を不審そうに見つめながら保田が尋ねる。
「どうかした?」
「んんーなんでもない。でも昔に比べたら圭ちゃん優しい顔になったよ」
「それって、おばさんになったって遠回しに言ってるんじゃないでしょうね?」
不審感満載な保田に後藤は笑いながら否定する。
「まあいいけど、起きたなら布団上げなさい。食事にするわよ」
部屋には味噌汁の匂いが溢れていた。
- 10 名前:47 タブー 投稿日:2004/03/21(日) 23:10
- ズズッー
「あ」
「なに?髪の毛でも入ってた?」
「ううん」
ズズッー
突然何かを思い出したようにニヤニヤし始めた保田に後藤は何事か尋ねる。
「ううん、斜陽みたいな会話だなって……」
「シャヨウ?」
はてなマーク付きで言葉を返す後藤に保田が切り返す。
「斜めの太陽で斜陽。あんたこんな有名な小説知らないの?」
「えーっと……あくたがわりゅうのすけ……かな?」
「……あんたそれしか知らないでしょ」
「うん」
悪びれずに頷く後藤の反応に突っ伏す保田。
「なんでこんな子に負けたのよ……」
いまだ某クイズ番組の敗戦をブツブツぼやく保田に後藤は楽しげに聞かせる。
「あれのおかげで、いがいに文学少女だったんじゃないかって、もっぱらの評判なんだ。エヘヘ」
バッと顔を上げると保田が突っ込む。
「そんなことは名前を漢字で書けるようになってから言えっての!だいいち羅生門ってどんな話だか知ってるの?」
「ヒトはみんな嘘つきって話」
「……」
ズズッー
- 11 名前:47 タブー 投稿日:2004/03/21(日) 23:11
- しばらくして思い出したように保田が尋ねる。
「あんた本当に読んだの?」
曖昧に笑うだけの後藤。
「誰から聞いたのそれ?」
「……紺野」
ズズッー
「ねえ、シャヨウってどんな話なの?」
「女は逞しいって話」
「ふーん」
ズズッー
「で?」
「……かおり」
「あはは」
ズズッー
- 12 名前:47 タブー 投稿日:2004/03/21(日) 23:12
- 「ごっちん痩せたね」
保田がポツリと呟く
「そう?」
モグモグ頬張りながら後藤は不思議そうに答える。
「食べる量はかわんないんだけどなぁ。ほら、お肉も食べられるようになったし」
箸で具を摘んで口に入れる後藤。
「いわゆるお年頃ってやつじゃない?ごとーも、もう大人だから」
「お年頃で痩せるんなら、あの子のお年頃はいつなのよ……」
共通の友人を思い浮かべて苦笑いをする二人。
「三人でやってた頃が懐かしいね…」
「そうね、あんたには苦労させられたわ」
よっすぃーもじゃん…その言葉を後藤は汁と一緒に飲み込む。
ズズッー
- 13 名前:47 タブー 投稿日:2004/03/21(日) 23:13
- 「でどうよ?保田特製ミソスゥープのお味は」
「マルコメ製ダシ入り味噌「料亭の味」普段398円の所を特売で298円」
「……」
「ウチのお店でも使ってるよ。若い人なんかお袋の味なんて涙ぐむ人がいるくらい、あはっ」
「……おかわりは?」
「いる」
お椀を手渡す後藤。
- 14 名前:47 タブー 投稿日:2004/03/21(日) 23:14
- 「まだ英語のレッスンしてるんだ」
保田が発したミソスープの発音を思い出し後藤は聞いてみる。
「してるわよ。いつ謙さんみたいにハリウッドからオファーが来るかわからないじゃない。英語くらい喋れないとチャンスを逃しちゃう」
冗談めかして話す保田にボソッと後藤は呟く。
「……圭ちゃんはもう歌いたくないの?」
言ってしまってから後藤は俯いてしまう。
その頭を優しく撫でる感触。
顔を上げると悟ったような微笑みを浮かべている保田と目があった。
「忘れてるわけないでしょ。役者の仕事だって表現力を磨くには良いチャンスなんだから。歌の為にとって無駄な経験なんてないわよ」
黙って頷く後藤。
「だから、あたし達の思いがつまったミソスゥープもっと飲みなさい」
- 15 名前:47 タブー 投稿日:2004/03/21(日) 23:15
- 無言で食べ続ける二人。
里芋、人参、タマネギ、ゴボウ、お肉……内容は、ほぼ豚汁状態。
「あれ?」
後藤がふと窓を見ると外が真っ赤に染まっている。
「どうしたの?」
「今って朝じゃなかったの?」
保田は呆れたような顔をすると説明し始めた。
「あんたね、今日昼過ぎに真っ青な顔をしてウチへやってきたの。なんだかボーっとしてるからとりあえず寝かせて、今さっきやっと目を覚ましたところ。家に連絡したとき今日はオフだって聞いたから、寝られるだけ寝かせておいたけど何か問題あった?」
「ふーん」
必死に記憶を探る後藤。
部屋の片隅にあるでっかいボストンバック。
「あれは?」
「あんたが持ってきたんじゃない。最初家出でもしてきたかと思ったわよ」
保田が笑う。
- 16 名前:47 タブー 投稿日:2004/03/21(日) 23:16
- ボーっと視線の定まらないまま後藤が独り言のように話し始める。
「やぐっつぁん実家を出たんだよね……」
「なによ急に。そうみたいね」
久しぶりの休日
驚かそうと思って突然訪問したマンション。
最初は戸惑っていたやぐっつぁんの顔。
でもすぐにイタズラっぽい微笑みを浮かべると部屋へ入れてくれた。
- 17 名前:47 タブー 投稿日:2004/03/21(日) 23:17
- 「あたし遊びに行ったんだ」
「今日会ったの?」
黙ってうなずく後藤。
「さっき事務所から連絡があって矢口と連絡が取れないって……」
「でさ手料理をごちそうするって……しばらくしたらインスタントラーメンが出てきた」
「ふーん」
「普通と違うっていったら具にお肉が入っているだけ……でさやたらニヤニヤして気持ち悪いんだ」
じっと手元のお椀を見つめている保田。
「ねえ、圭ちゃんこれ何の肉?」
保田は視線を上げないまま答える。
「……ウミガメよ」
「やぐっつぁんと一緒に捕まえたんだ」
「……」
「同期がいるって良いよね。ごとーは、いつも一人だよ」
「……」
- 18 名前:47 タブー 投稿日:2004/03/21(日) 23:18
- 「でね、仕方ないからあたしが何か作ってあげるって言ったんだ」
部屋の片隅で低い音をたてて唸っている独身の部屋に不釣り合いなほど巨大な冷蔵庫に視線を向ける。
「同じのがやぐっつぁんの家にもあった。お揃いで買ったんだね」
いつの間にか睨み付けるようになっている保田の視線を正面から受け後藤は話し続ける。
「ごとーも欲しいなウミガメの肉。ごとーの方が料理上手いし、それに……」
保田に対して挑戦的に微笑むと後藤は続ける。
- 19 名前:47 タブー 投稿日:2004/03/21(日) 23:19
-
「それにごとーの方がウミガメの思いを果たせると思う」
- 20 名前:47 タブー 投稿日:2004/03/21(日) 23:19
- END
- 21 名前:47 タブー 投稿日:2004/03/21(日) 23:20
- ( ´ Д `)<タンタカタンタン タンタンタン♪ タンタカタンタン タンタンタン♪
- 22 名前:47 タブー 投稿日:2004/03/21(日) 23:20
- |.∀´)<ちょっとだけよ〜
- 23 名前:47 タブー 投稿日:2004/03/21(日) 23:21
- (〜^◇^)ノ<キショ!てか古!
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