40 落日バラスト

1 名前:40 落日バラスト 投稿日:2004/03/20(土) 22:18
40 落日バラスト
2 名前:40 落日バラスト 投稿日:2004/03/20(土) 22:18
「魂をうばいにきました」

私の目の前に立ち尽くした悪魔は、
それはそれは可愛い笑顔で私にそう言いました。
突然の事に私はきょとんとしたまま、その姿を眺めていましたが、
悪魔はただニコニコと首を傾げて微笑むばかりです。

「カオリは死ぬの?」

魂を奪う、ということはそういうことなのでしょうか。
不安にかられた私はおそるおそる尋ねました。
頭をよぎる恐ろしい想像に、私は思わず自分の身体を抱き締めます。
ところが悪魔は、そんな私を安心させるかのように可愛い笑顔のままで、
肩をすくめてふるふると首を振りました。
3 名前:40 落日バラスト 投稿日:2004/03/20(土) 22:19
「わたしがうばいにきたのは、モーニング娘。の魂です」

なんてことを、と思いました。
自分の身体も心配でしたが、
私が大事に大事にしてきた娘。に手をかけようとしているのですから。
だいたいそんなものを奪うことができるはずがありません。
私はきっぱりとした声で悪魔に向かって言い放ちました。

「あげないよ」

悪魔は私の拒絶の言葉に特に驚くこともなく、
相変わらずほんわりとした笑顔で微笑みかけてくるのです。
なんだか調子が狂ってしまいます。
私はしばらく無言でそんな悪魔を睨みつけていましたが、
悪魔の姿は次第に空気の中へと溶けていってしまいました。
4 名前:40 落日バラスト 投稿日:2004/03/20(土) 22:20

「…へんなゆめ」

私は頭をかきながら、ソファからゆっくり身を起こしました。
早く来すぎたせいでしょうか、ついうとうとしてしまったようです。

今日は朝からダンスレッスンです。
どれくらい眠ってしまったのかはわかりませんでしたが、控え室にはまだ誰の姿もありません。
そんなに時間は経っていないのでしょう。


それにしても。
おかしな夢でした。娘。の魂を奪うなどと。
何か深い意味でもあるのでしょうか。
心理学を勉強したとうそぶく圭ちゃんに聞いてみるのもよいかもしれません。
私はひとりでニヤニヤしながら、先ほどの夢に思いを馳せました。
5 名前:40 落日バラスト 投稿日:2004/03/20(土) 22:21
モーニング娘。が始まってもう7年。
つらいこと、楽しいこと、悲しいこと、いろんなことがありました。
長い間にたくさんのことを学び、様々なものを作り上げ、
微力ながら、娘。を支えてきたつもりです。
私達が培ってきたものを、次の世代へきちんと教え、伝えてゆく。
そうしてモーニング娘。の魂は受け継がれてゆくのです。
たとえ―――たとえ、私が娘。をやめたとしても、
私の心意気がずっとずっと残るのならば、私は喜んで礎になろう。

穏やかな気持ちでそんなことを考えていると、
静かな部屋にノックの音が響きました。
6 名前:40 落日バラスト 投稿日:2004/03/20(土) 22:21
「おはようございます」

入ってきたのは道重でした。
桃色のスカートをひらひらさせて、とてもご機嫌な様子です。
最近彼女とはおとめ組で一緒になることが多いのですが、
娘。に加入して早1年、この世界にも慣れてきたのでしょう。
ずいぶん余裕が感じられるようになりました。

私は彼女に気を配りながら、会心の笑みで挨拶を返します。
だって私は彼女達を導いていかなければならないのですから。
7 名前:40 落日バラスト 投稿日:2004/03/20(土) 22:21
「おはよう、道重。練習してきた?」
「いいえ。してません」

道重は事も無げにそう言って、それはそれは可愛い笑顔で微笑むのでした。
8 名前:40 落日バラスト 投稿日:2004/03/20(土) 22:22

9 名前:40 落日バラスト 投稿日:2004/03/20(土) 22:22
10 名前:40 落日バラスト 投稿日:2004/03/20(土) 22:22
Ω

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