20 メール差出人

1 名前:20 メール差出人 投稿日:2004/03/16(火) 04:39

  20 メール差出人

2 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/16(火) 04:39

「ふう……」

自分の家に帰り、靴を脱いだ途端にため息がもれた。
大所帯のリーダーなんて、疲れるばかり。
最近は自分の頑張りが空回りしているのをどこかで感じてた。

だからと言ってわざわざ落ち込んだりなんかしない。
そんな暇はないんだから。
予定は次から次へと埋められていて、今の私にはその忙しさが救いだった。

肩にかけてたバッグからケータイを取り出す。時間は2時12分。
それだけ確かめるとバッグと一緒にドレッサーの上に置いた。
その時だった。

ブブブ……とケータイが短く震えた。メールかな。
こんな時間に来るなんて、また出会い系とかどうでもいい迷惑メールなんだろうけど。
思いながら、新着メールをチェックする。
3 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/16(火) 04:40

件名は飯田圭織さんへ。メール送信者は見たこともない名前だった。
『あなたが大好きです』
メールはこの一行だけ。
文面を何度も見直しても、下のキーをずっと押してもそれ以外のことは何も書いてなかった。

これは迷惑メールでも、間違いメールでもない……。
ちゃんとこのアドレスが飯田圭織のものだって、私のものだって知ってる。
ケータイのメールアドレスなんてメンバーとごく近しい人にしか教えていない。
知ってて、こんなメールを送るなんてどういうことだろう。イタズラだろうか。

考えるのが面倒になって『誰?』とだけ返信した。
知ってる子だったら、これでイタズラの種明かしをしてくれるはずだと思った。
『どう、驚いた?』なんてメールが返ってくるだろう、と思ってとりあえず着替えを始める。

服を脱ぎながら、これから何時間眠れるか頭の中で計算してみた。
最近、なかなか寝つくことができなくて、まとわりつくような疲れを感じている。
電気を消して暗闇の中、妙に頭の中がごちゃごちゃした考えでいっぱいになってしまうのだ。
なっちが卒業してからというもの、それがまたひどくなったように思う。
――別になっちのせいっていうわけじゃないけどさ。
4 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/16(火) 04:41

着替えが終わり、化粧を落としているとまたケータイの振動が聞こえた。
メールが返ってきたのだろうか。 すぐにそのメールに目を通す。

『あなたは僕を知らないでしょう。
 けれど僕はあなたのことを誰よりもよく知っている』

期待していたものとは違う文面に胸がざわりと騒ぐ。
僕っていうことは男の人だろうか?
もしかしてストーカー……? いやな連想ばかりが思い浮かんだ。
もう返信しないほうがいいのかもしれない、とも。
けれど、どうしても気になった。
この意味ありげなメールには何かがあるんじゃないかと思った。

『どういうことですか』とそれだけを返信した。
何がしたいんだ、こんな夜中に。
少し苛立っていたのかもしれない。

『あなたの知らないことを教えてあげます』

メールはすぐに返ってきた。 またも思わせぶりな一文。
けれど、今度は一通だけじゃなかった。
続いて次のメールが届いた。
5 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/16(火) 04:41

『圭織さんはモーニング娘。をやめさせられるんです』

「うそ……!」

思わず声が出る。そんなことは少しも聞いていない。
まさか、ありえない……ありえないでしょう。
だってモーニング娘。としての予定はこれからもぎっしり詰まっていて。
辻と加護の卒業だってあるのに。
そうだよ、こんなのってあるわけないんだ。
頭の中にはメールを打ち消す反論が次々と出てくる。

適当なことを言って、手の込んだイタズラなんだ。
きっと明日にでもなれば誰かが「嘘ですよ。そんなこと
あるわけないじゃないですかー」と笑って白状してくれるだろう。
嘘のメール。イタズラのメール。送ってきたのはメンバーの誰か。
そう決めてしまうと私はさっさとベッドに潜りこんで眠ってしまうことにした。
6 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/16(火) 04:42

寝不足のまま朝が来て、いつものように仕事のことだけを追いかける一日が始まる。

けれどその日はいつもと違っていた。
私のモーニング娘。卒業が言い渡されたのだ。
私は辻加護と同時期に卒業するらしいけど、コンサート上で卒業するのではなく
新たな道を探して留学するとかいう目的のために、電撃的に卒業するんだとか。
だからメンバーはそれまで私の卒業を知ることはないのだという。
余りのことに、それって卒業なのかどうかすら考えられない。

バカみたいだ。
あのメールは正しくて。メンバーの誰もがイタズラなんか白状してこなくて。
それだけが事実だった。

その日から私はその謎のメール差出人とメールのやり取りを始めた。
彼は必要以上のことはしゃべらなかった。
自分の正体やどうして私のアドレスを知ってるのか、ということは一切教えてくれなかった。
けれど、こちらに何か要求してきたり、変なことを聞いてきたりはしなかったので、
メールの交換は続いた。
7 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/16(火) 04:43

『でもね、圭織はこのままでもいいかなって思ってるんだ。
 もうリーダーも疲れてきたし。寂しいけどね』

何日かしてだいぶ彼にも心を開いてきたとき、私のほうから自分の心情を話し始めた。
しかし彼から返ってきたメールはいつものそっけない短いものとは違っていた。

『ねえ、圭織さん。このままっていつまで続くと思ってるんですか?
 あなたの卒業なんて誰が送ってくれるというんですか?
 みんなから疎まれ、それでもなおモーニング娘。であるという
 一応の体裁を整えるためだけの道具としてあなたは用いられてきたというのに』

ざくりと心が痛む。
分かってたけど気づいてないふりをしてた。
もう私は変わりつづけるアイドルグループがちゃんと『モーニング娘。』であることを
示すためのラベルみたいなものだってこと。
私を送ってくれる人なんて誰もいなくって、
私の全てを見てくれてた人なんてどこにもいなくって。
もう必要じゃないってそういわれてるんだってこと。

すぐに返事を送ることなんてできなくて、私はずっとそのメールを読み返してた。
数分そうしていただろうか。
そんな私になんか気づかず、無神経に次のメールがやってきた。
8 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/16(火) 04:43

『あとは落ちるだけですよ。もう普通の人になんか戻ることはできません。
 なまじ成功しただけに人から妬まれ、現状を揶揄され
 常に晒し者にされていきていかなければならないのです。
 僕はこんなことは許せないのです。
 圭織さん、いいんですか。本当にこのままでいいんですか?
 あなたとずっと活動してきた安倍さんは早々と人気がなくなったモーニング娘。
 をやめました。ファンには惜しまれつつ、マスコミにも大きく取り上げられ華々しく。
 けれど安倍さんにしてみれば、やっと卒業、というところでしょう。
 安倍さんはソロでも活動できる人気があるんですから。いつまでも落ち目のグループに
 とどまって足を引っ張られることなどないのです。
 圭織さんはずっとモーニング娘。を引っ張り、そして支えてきました。
 そのグループが今やあなたを追い出そうとしているんです。僕はこんなことを許せない。』

ケータイの小さな画面いっぱいに文字が並ぶ。
抑揚のない声。
頭の中で自動的に音に変換されていくのがわかる。
9 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/16(火) 04:44

私は、一体なんだったんだろう。
この数年間を何に費やしてきたというのだろう。
今更無駄だったなんて、思いたくないよ……。
悔しい、寂しい、辛い、苦しい……、いっぱいの感情で頭が変になりそうだった。
とりあえずメールを受け取ったことを知らせるために私は返事を書いた。

『明日、ハロモニの収録なんだ』

意味のない情報だった。頭の中に残ってた文字はそれだけだった。

『圭織さん、8327という数字を覚えておいてください』

返事もよく分からない文だった。
けれど私はその4桁の数字を呟いて、覚えようとした。
明日までにこの4つの数字を覚える、ずっと涙を流してる私でもどうにかできそうなことに思えた。
10 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/16(火) 04:46

翌日。ハロモニの収録。
台本を眺めながら、楽屋でメイクをしてもらってる私がいた。
いつもと違って今日はバッグにナイフを忍ばせた。
別に何に使おうと思っていたわけじゃない。
ただこうでもしないと誰かに八つ当たりしちゃいそうで。
いつものリーダーやってる飯田圭織になんかなれないと思って。
苛立ちとか悔しさなんかはナイフに込めてさ、バッグに隠しておこうってそう決めたんだ。

けれどそんな決意も無駄で鏡の中の私は、疲れた顔をしてた。
くたびれて見える、みすぼらしい私。
メイクさんにつけてもらった高そうなクリームも全然効き目が感じられない。
寝ていないのだから当然なのかもしれないけれど。
メンバーも集まって、裕ちゃんやごっちんや圭ちゃんなんかもハロモニの収録だということで
みんなの中に加わって話に盛り上がっている。

遅れて、なっちがやって来た。
なっちは私を手招きして呼び出した。
スタジオの廊下で二人並んで紙コップのコーヒーを飲む。
よりによって、今日は一番話したくなかったなっちと二人きりだなんて。
居心地の悪さといったらなかった。
11 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/16(火) 04:47

「ねえ、圭織。圭織さあ、モーニングやめたらどうするの?」

いやな汗がじわりとにじむ。なっちは知ってるんだろうか。
私のみじめな卒業を。その詳細を。

「え?なんで? なんで、そんなこと聞くの?」
「いやぁ、だってさ、圭織だけがモーニングまだやってるってなんか変な感じがしてさ」

照れたように頬をかくなっち。
それはどういうこと? 
あなたより人気のない私がまだモーニング娘。にいるのがおかしいっていうこと?
違うよね。
ずっと一緒に活動してきて、一緒に頑張ってきたから、だから、だよね。
だから一緒にモーニングやってないのが変に感じてるだけだよね。
自分を必死で慰める。
こんなんじゃ、だめだ。会話を続けないと。
12 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/16(火) 04:48

「なっちはどう? やめてどんな風に感じてる?」
「うん、そうだね。少しね、寂しい気もするんだけど……」

少し? 少し寂しいだけなんだ、と意地悪く心の中で相づちをしてしまう。
あちこちでモーニング娘。として出向く度に『なっちがいないと物足りない』
なんて言われているのに。当のなっちは少しの寂しさしか感じていないのか。
――『けれど安倍さんにしてみれば、やっと卒業、というところでしょう』
嫉妬めいた感情を全てあのメールのせいにしてる私がいる。

「自分でも驚くほど落ち着いてるんだ」

言ってこちらに向かってなっちはにこりと微笑みかけた。
蛍光灯みたいなあからさまな明るさに思わず目をそらしてしまう。

「充実してるっていうのかな」

やめて。そんなこと言わないでよ。
声に出してそう言ってしまいそうだった。
のどが渇いて、コーヒーを飲み込む。
13 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/16(火) 04:48

「ドラマもね、忙しいけど新鮮でさ努力しがいがあるっていうか。
 役では、なっちピアノとか弾けちゃうんだよー。あは、すごいっしょ。
 こういうのがお芝居のいいところだよねー。自分とは違う自分になれちゃうの」

楽しそうに話を続けるなっち。
なんでそんなになっちだけ楽しそうなの。なっちだけ、ずるいよ。
圭織、聞いてる?と確認してきたなっちに、私は聞いてるよとだけ返事をした。

「今までずっとモーニングだったけど、これからは違うからね。頑張らなくちゃって」

そう言って、なっちは楽屋に戻ろうとした。
けれど最後に一言付け加えた。

「圭織だって、いつまでもモーニングじゃいられないんだよー」

じゃあね、またね。なっちは笑って手を振った。
許せないと思った。
どうしようもない怒りがなっちに向かっていくのが分かる。
多分、なっちは知ってたんだ。
私がいらない邪魔者に成り下がっていたこと。
14 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/16(火) 04:50

楽屋に戻ってバッグを手にすると、なっちを呼び戻した。
不思議そうに首をかしげるなっちをだれもいない部屋へと連れ込む。
私はバッグからナイフを取り出した。
デザインが気に入って買ったバタフライナイフ。
ケースを取り現れた大きく鋭い刃に私は今日はじめて笑みをこぼす。

「圭織、何、やってんの……?」
「うるさいよ……、知ってるんだからね!私、知ってるんだから」

ナイフを構えた私になっちはさすがに笑顔を保てない。
ドアをしっかりと閉めた。あとはもう逃すことはない。

「どうしたの?変だよ、圭織……。ねえ、とにかくそれしまって!」
「バカにして!私のこと、バカにして! みじめだって笑えばいいでしょ!」

ナイフを振りかざすと、なっちはしゃがみ込んだ。
が、そのせいでなっちは立ち上がるタイミングを逃した。

「許せない!なっち……!」
15 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/16(火) 04:51

ひっ……となっちは小さく悲鳴をこぼして、血を流した。
ナイフが深く差し込まれていてそこからどんどん溢れてくる。
血がたくさん流れていく。
やがて、ぴくりとも動かなくなった。

なっちの胸に突き刺さったナイフをぐっと抜きとった。
反動でずるりとなっちの体が倒れる。

がちゃりとなっちの服から携帯電話が出てきた。
なんだろう、と思いメニューボタンを押すとロックされていた。
ロックを解くには暗証番号が必要だと少したって気づく。
4桁の数字を押さなくちゃ使えない。

「はちさんにいなな……」

昨日、おまじないのようにずっと口にしていた数字。
まさかと思いつつ、それを入力する。ロックが解除された。
嘘。なにこれ。
血だらけの手でメールのメニューを選ぶ。
すぐに送信ボックスを開いた。
そこには一通だけ未送信になっているメールがあった。
16 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/16(火) 04:52

『圭織へ。ごめんね。
 ずっとメール出してたのなっちなんだ。
 ねえ、圭織。もしこのメールを読むようなことがあるっていうことは
 そのときはなっちが死んでるときだね。
 なっちが仕向けたんだ。圭織が殺してくれるように。
 なっち抜きでモーニングが活動してるのなんて耐えられなかったの。
 その上、圭織までいなくなるって知って、もう許せなくなった。
 そんなのにモーニングだなんて名乗ってほしくないって思っちゃったの。
 圭織、巻き込んでごめんね。キツイこと書いたね。
 でもこれでさ、もうモーニングの活動も全部できなくなるよね。
 ねえ、そしたらさ、なっちも最後までずっとモーニングのメンバーでいられるかな。』

画面が揺れる。文字が読めない。嘘だ。
全部読みきって、なっちの声がちゃんと聞こえた。
うそだ、うそだ。
こんなの違う。
17 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/16(火) 04:53

目を画面から逸らして、なっちに向けてみた。
ぐったりと衣装を血に染め、倒れこむなっちがいた。私が、殺した。
ナイフで私がなっちを殺した。刺して、殺したんだ。
嘘じゃない、うそじゃない、うそじゃな……。

「いやぁーーーーーーっ!」

自分にナイフを突き立てた。

ぐっと差し込んで、絶対、これで終わらせなくちゃと思った。
私だけが生き残ることのないように、なっちと一緒に。
これでちゃんと終わるように。

手を探した。なっちの手を探して、掴んだ。痛みで手に力が入る。
これなら、大丈夫だよね。なっちの手、離すことないよね。
そう思うと、ようやく安心できた。

目の前がぐらぐらする……。

なんだか久しぶりにゆっくり眠れそうな気がして、私はそのまま目を閉じた。


18 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/16(火) 04:54
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「里沙ちゃん、ねえどうしてる?」
「うん……」

あさ美ちゃんからの電話だと分かって、久々に安心して電話を取った。
ここのところ、取材だとか言って知らない人からの電話が相次いでいたからだ。

「きたよ、警察。うちにも」
「あ、きたんだ。どうだった?」
「どうって、特に……。一通り飯田さんたちのことについて聞かれただけだよ」
 どういった事件だったかなんて詳しく教えてくれないし」
「いきなりだったもんね……」

二人が血だらけで倒れてる、死んでる、病院へ、警察へ……。
全部人から聞いたことだった。
私たちは訳もわからずハロモニ収録の中止を聞かされ、
実家に帰って指示を待つことといわれた。
警察の人から二人について聞かれても、いつものアンケートとかインタビューとか
そんなのと同じようなことしか言えない自分が情けなかった。

「また、みんなで会えるのかな」

あさ美ちゃんがぼそりと言った。
事件から数日経った今でも指示らしい指示なんてない。
家にはマスコミの人も来るけど、事務所はきっとこんな程度じゃないんだろう。
少し考えて、私は答えた。
19 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/16(火) 04:56

「あさ美ちゃん、もうみんなで会うのは無理だよ……。だってあの二人がいないんだもん」
「そう、だよね……。もう、無理だよね。あんなことがあったんじゃ、どうにもならないよね……」
「テレビ、見てる?」
「うん、見てる。ずっと見てるよ。やんなっちゃう位、ずっと流れてるね。このニュース」

一日中同じニュースが流れてる。
『飯田圭織、安倍なつみ謎めいた死!殺人、自殺?国民的アイドルの表と裏!』
事件の特別番組のテロップが日に日に長く変わっていく。
飯田さんが安倍さんを殺して、自殺というのが警察から発表からされた事実だ。
当然、それだけでは納得できない。
様々な憶測を加えて、下世話にモーニング娘。の人間関係について根も葉もない噂を流してる。

「すごく疲れてくるよ……。もう、こんな毎日が嫌でさ……」
「私も。みんな同じだと思うよ」

あさ美ちゃんとの会話は5分ほど続いた。
お互い疲れていて、それを慰めるための会話だった。
似たような電話が他にもかかってくることはある。
しばらくこの生活は続くのだろう。ふうと一つため息をつく。

電話を切ると、消音にしておいたテレビの音を上げた。

『どうやら、メールで安倍なつみが自分を殺すように仕向けたという情報がありましてですね。
 警察はまだそのことを発表していませんが、どうやら現場にその携帯電話が落ちていたそうです。
 ずっとメールを出していた携帯電話、それに安倍なつみの指紋もあったようで……』
20 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/16(火) 04:57

警察も事務所もバカだ。
あれは安倍さんが仕向けたものじゃないと分かっているくせに。
これ以上オオゴトにしたくない、なんて。
今まで散々話題作りとして勝手にあれこれ壊してきたくせに。
いざ私がきちんと大きな話題を提供してあげると、オオゴトにしたくないだなんて。
証拠だっていくつか残してあるのに。どうして逮捕しないんだろう。
私が逮捕されちゃえば、もっともっとキレイに終れるのに。


あの日、私は楽屋に入る前の安倍さんを捕まえて、携帯電話を渡した。
ずっとメールを送っていたプリペイド式のやつ。
これどうしたの、と不思議がる安倍さんに用意しておいた嘘をついた。

何時かは教えられないけど素敵なメールが届きますから楽しみに
待っていてください、と。
それだけで安倍さんは分かったと微笑んでくれた。

その日飯田さんが行動を起こさなかったら、またメールで追い詰めるだけだった。
安倍さんには間違えました、とか何とか言って携帯を返してもらえばいい。

別に焦る必要なんかなかった。
安倍さんと一緒に仕事をする機会はまだまだあった。
21 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/16(火) 04:58

モーニング娘。が大好きだから。
偶然知った飯田さんの卒業が許せなかった。
安倍さんも飯田さんもいないのにモーニング娘。だなんて、許せないに決まってる。

こんな事件があれば元メンバーだってノコノコ出てもこられないでしょう?
数年後に醜く老いてしまったアイドルの行く末を晒すこともないでしょう?
私が大好きなモーニング娘。のかたちは誰にも崩されなくて済むんだから。
ラブマシーンが最大のヒット曲で、国民的アイドルグループでASAYAN出身で。
安倍さんが笑ってその隣には飯田さんがいて矢口さんももちろんいて、
そんな当たり前のモーニング娘。のままでとどまっていてくれる。


馬鹿みたいに同じニュースをループしているテレビ。
ラブマシーンのPVなんかやコンサート映像が流され、
その上に悲壮感あるナレーションが付け加えられている。
他にも流すべき映像はあるというのに、センスがないなぁ。
ふふっと笑ってみる。
22 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/16(火) 04:59

こんなもんじゃないんだよ、モーニング娘。はね。
ピッとビデオ再生のボタンを押した。
BSで放送されていた、中澤さんが卒業するときの特別番組が流れ出す。

さあ 出かけよう
きっと 届くから
髪を切って、夢をみがく
好きな空を、めざすために


始まりの歌を歌う、最後の三人。なんて幸せな光景なんだろう。
淡いピンクをバックに歌う中澤さんと飯田さんと安倍さん。
ああ、これがモーニング娘。だ。
私の好きだったモーニング娘。だ。
23 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/16(火) 04:59

ベージュのカーテンから夕日がにじんで、テレビの光がその色に溶け込んでいくのが分かる。
光に紛れて、画面がぼやけた。

邪魔しないでよね、と私は部屋のあかりを全てつけた。
歌の途中に入る矢口さんの泣き顔が、私の特にお気に入りのシーンだった。
何回もこのビデオは大事に見てる。
どうしてこの映像を使わないのだろうか。もったいない。
鮮明になったテレビに映りだす最高のアイドルグループ。


私は大好きなモーニング娘。をずっと見つづけていた。



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*/


// ―― おわり ――
[EOF]
24 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/16(火) 05:00
   
25 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/16(火) 05:00
   
26 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/16(火) 05:00
   

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