オレンジの向こう側
- 1 名前:11 オレンジの向こう側 投稿日:2004/03/14(日) 16:02
- 11 オレンジの向こう側
- 2 名前:11 オレンジの向こう側 投稿日:2004/03/14(日) 16:03
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この向こうに何がある?行ってみたいとは思わないか?
見たことも無い楽園が私を待っているかもしれないぞ?
行ってみたいとは思わないか?全てを投げ出して行ってみたいとは・・・
逃げちまえよ。
こんな世界から逃げちまえ。
この世は敵だらけだ。油断するとすぐに食われちまう。
あぁ、もう手遅れみたいだ。私は半分食われちゃったよ。
笑いながらハイエナどもが私を食べつくす。
ギャラリーは笑いながらそれを見ている。
奴らにとっては、この上なく楽しい出来事なのかもしれない。
- 3 名前:11 オレンジの向こう側 投稿日:2004/03/14(日) 16:06
- 「せーのだよ。ちょっと待ったは無しだからね」
「わかってる」
オレンジ色に染まる町を見下ろしながら、二人は笑った。
手を繋いで、靴を脱いで、足を投げ出して名前も知らないビルの屋上でお喋り。
ビルの下には人間と言う名の蟻がうじゃうじゃ這い回っている。何が楽しくてそんなに早く歩いているのか?一体何処へ向かうのか?そんな事、どうでもいい。
今は横にいる絵里だけを見つめていればいい。一分一秒が惜しい。
「れいな、怖くない?」
「怖い?何が?」
「だったらいい」
心配してくれたのだろうか?それとも絵里自身が怖くなったのだろうか?
この、オレンジ色に吸い込まれることが。私は恐怖なんて感じていない。むしろドキドキしている。
今からする事に胸が躍っている。人は私を見て狂っていると指すだろう。自分でも思う。狂っていると。
好きな人とずっと一緒に居れるんだ。喜んであたり前だろう。
世間が認めてくれないのなら、認めてくれる所へいってやる。
そんな場所が無いのなら自分で作ってやる。誰の邪魔もない新しい世界を。
「私達、親不孝者だね」
「親を喜ばせる為に生きてんじゃなか。自分がしたい事をして何が悪い?」
「れいなは強いね」
「絵里の方がずっと強い」
細い体を抱き寄せた。きっと、この先絵里はもっと美人になるだろう。今は子供っぽい体だって・・・。
そんな希望を摘み取った。いや、絵里が自ら捨てた。
- 4 名前:11 オレンジの向こう側 投稿日:2004/03/14(日) 16:07
- 私は背負っている名前に負けたくなくて我武者羅に頑張っていた。その頑張りは届かない。悪質な手紙が何通も届いた。
毎日『死ね』の二文字ばかりが目に入ってくる。何通も何通も私の元へ。そして誰かがそれを売った。
テレビや新聞はすぐに喰らいつき『狂ったストーカー』と報道した。私の断りも無く好き勝手に。
この体じゃ支えきれない程に重く苦しい現実を捨てたい。
だから死にたいって弱音を吐いた。
絵里は止めてくれると思っていたから。
優しく慰めてくれると思っていたから。
だけど、絵里は私が思っている以上に強く、狂っていた。
『れいなが死ぬなら私も死ぬ』
その時の絵里の顔が脳裏に焼きついて離れない。
絵里は―その言葉待っていました―と言わんばかりの笑顔だった。
- 5 名前:11 オレンジの向こう側 投稿日:2004/03/14(日) 16:07
- 知らない間に戻れない所まで全力疾走で二人で走ってきた。
走っている間に、私も狂ってきた。今から始まるのはこの世で一番楽しい出来事なのかもしれない。
好きな人と永遠の契りを交わして二人だけの世界へ行けるんだ。最高の出来事ではないか?
何物にも怯える事はない場所へ。
- 6 名前:11 オレンジの向こう側 投稿日:2004/03/14(日) 16:08
- オレンジ色の街は色を濃くしていく。
もうすぐ街が闇に染まる。その前に出かけてしまおう。
「絵里」
「うん。手、離さないでね」
「わかってる。ずっと握ってるから」
手を握りながら、二人で立ち上がった。オレンジの塊が眩しすぎて目を細める。
足の裏からコンクリートの冷たさが直に伝わってくる。
握りしめた絵里の手が、とても温かい。
「ねえ、れいな」
「ん?」
「私、凄く嬉しいよ。れいなが死にたいって言った時、凄く嬉しかった。だって、れいなをずっと独り占め出来るって思ったから」
絵里は無邪気な笑顔を私に向ける。だけど、その言葉に無邪気と言う文字は似合わない。
狂っている彼女の口は止まらない。甲高い声が脳に響く。
オレンジ色に染まる絵里の顔は、この上なく幸せそうで全身に寒気が走った。
「この先、れいなが私だけの物になるんだって。私もれいなだけの物になるんだって」
「そんなに嬉しい?」
「うん!今までしてきた事が報われた瞬間だから!」
「良かったね」
オレンジの眩しさとと絵里の笑顔に再び目を細める。
「じゃあ、せーのでジャンプだからね」
「分かってる」
「いくよ」
「「せーの」」
二人の足が冷たいコンクリートから離れる。
- 7 名前:11 オレンジの向こう側 投稿日:2004/03/14(日) 16:09
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狂った絵里と狂ったふりをしていた私はオレンジの世界へ
- 8 名前:11 オレンジの向こう側 投稿日:2004/03/14(日) 16:09
- お
- 9 名前:11 オレンジの向こう側 投稿日:2004/03/14(日) 16:10
- わ
- 10 名前:11 オレンジの向こう側 投稿日:2004/03/14(日) 16:10
- し
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