8 右手に銃を 左手に君を
- 1 名前:8 右手に銃を 左手に君を 投稿日:2004/03/14(日) 02:56
- 8 右手に銃を 左手に君を
- 2 名前:8 右手に銃を 左手に君を 投稿日:2004/03/14(日) 02:57
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走った。
夢中で走った。
右手にはよく刑事ドラマで見るような短銃が握られていた。
左手には亜依ちゃんの右手があった。
なぜかあたし達は走っている。
いや、逃げていた。
何からだろう?
わからない。
何かがあたし達を追いかけてきていた。
「のの!もうダメ!」
あたしより体力のない君は、かなり息切れていた。
もう足が止まりそうだった。
- 3 名前:8 右手に銃を 左手に君を 投稿日:2004/03/14(日) 02:58
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「ダメじゃない!頑張って!」
あたしは君に言い、左手をより強く握る。
たとえ、誰かに捕まったとしても、君の手だけは絶対に離さない。
でも、誰かは確実にあたし達に追いついてきている。
足音がどんどん大きなっているのが分かる。
それでもあたし達は走った。
逃げるんだ、逃げるんだ。
あたし達しかいない楽園へ行こう。
誰にも邪魔されない、君と二人だけの世界へ行こう。
もし、それを阻む者がいるならば。
あたしは右手にあるこの銃の引き金を引く。
君が止めたとしても、あたしは撃つ。
たとえ、それが親や友人であったとしても、あたしは撃ち殺してみせる。
- 4 名前:8 右手に銃を 左手に君を 投稿日:2004/03/14(日) 02:59
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さあ、出口はどこだ。
どこまで走れば二人だけになれる。
まだだ。
でも、もうすぐだ。
足元に黒い影が映った。
誰かがもうすぐ後ろまで来ている。
「もうダメだよ…。私を置いて逃げて!」
「ヤダ!」
君を置いて逃げるなんて考えられない。
君がいなくちゃ意味が無いんだ。
一人で逃げ切れたとしても、楽園にはたどり着けないんだ。
君がいない未来を選ぶくらいなら、あたしは君といる地獄を望む。
- 5 名前:8 右手に銃を 左手に君を 投稿日:2004/03/14(日) 02:59
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「大丈夫だから!絶対に二人で生きるんだよ!」
あたしは振り返って、君に言った。
心細そうな顔をしていた君が、にこっと笑ってくれた。
一回だけ大きく頷いてくれた。
もう大丈夫。
さあ、行こう。
君の笑顔がもっと見たい。
君ともっと笑い合いあっていたい。
そんな想いだけが、今のあたしを突き動かす。
友達じゃない、恋人じゃない、だけど君じゃなきゃダメなんだ。
君じゃなきゃいけない理由。
そんなものはない。
君を求める理由なんて、頭の悪いあたしの脳内のどこを探したって見つかりっこないんだ。
- 6 名前:8 右手に銃を 左手に君を 投稿日:2004/03/14(日) 03:00
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………なのにどうして邪魔をする。
あたし達は立ち止まった。
そこは行き止まりだった。
「どうして…」
巨大な巨大な壁だった。
天高くどこまでも伸びている壁だった。
左を見ても右を見ても、はるか地平の先まで伸びている壁だった。
そして…
地面には無数の死体が転がっていた。
全てあたし達と同じような年頃と思われる死体だった。
みんな壁にすがりつくようにして倒れていた。
- 7 名前:8 右手に銃を 左手に君を 投稿日:2004/03/14(日) 03:00
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君が座り込んだ。
目が潤んでいた。
でも、あたしはまだ左手を離さない。
離すつもりなんて全く無い。
「絶対にあきらめないからね…」
「のの…」
さあ、来た。
あたしの知らない何かが来た。
いや、嘘だ。
あたしは知っている。
その姿を知ってしまったからあたし達は逃げているんだ。
- 8 名前:8 右手に銃を 左手に君を 投稿日:2004/03/14(日) 03:01
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テレビで見たように、親指で安全装置を外した。
さあ、来い。
もうあたしは逃げないぞ。
撃ち殺してやる。
あたしは引き金を引いた。
物凄い衝撃があたしの体中をめぐった。
思わず倒れそうになるけれど、踏ん張らなくちゃいけない。
誰かはまだあたし達の方に向かって来ていた。
まだだ。
あたしは、また安全装置を外して、引き金を引く。
また外して、引く。
弾倉が空になるまで撃ちつくしてやる。
あたし達の行く手を阻む者を誰だろうと許さない。
足元に転がる無数の死体のような無残な最期を遂げるわけにはいかない。
- 9 名前:8 右手に銃を 左手に君を 投稿日:2004/03/14(日) 03:02
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右手に銃を、左手に君を。
あたしはいつまでも握り続けるだろう。
あたしは戦い続ける。
君を守るため。
あたしと君は何者にも染められない。
End
- 10 名前:8 右手に銃を 左手に君を 投稿日:2004/03/14(日) 03:02
- C
- 11 名前:8 右手に銃を 左手に君を 投稿日:2004/03/14(日) 03:02
- VS
- 12 名前:8 右手に銃を 左手に君を 投稿日:2004/03/14(日) 03:03
- A
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