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30 闇。或いは、闇。
- 1 名前:30 闇。或いは、闇。 投稿日:2004年02月08日(日)23時45分13秒
- 30 闇。或いは、闇。
- 2 名前:30 闇。或いは、闇。 投稿日:2004年02月08日(日)23時45分46秒
あたしが意識を取り戻したのと、口の中に鉄の味を感じたのは、ほぼ同時だった。
- 3 名前:30 闇。或いは、闇。 投稿日:2004年02月08日(日)23時47分15秒
- 体の節々が、まるで激しく点滅するように痛む。
自分が何をされたのか確かめようにも、両手を後ろ手に縛られているようで身動き一つ取れない。ただ、自分の貞操を危なくするようなことはされていないのは確かだった。
肌と密着しているコンクリートのようなざらざらした感触が嫌で、何度か態勢を変えようとしたけど、それも無駄だった。
- 4 名前:30 闇。或いは、闇。 投稿日:2004年02月08日(日)23時48分16秒
- あたしの視界を支配しているのは、闇。
きっとあのスプレーのせいだ。
襲われた時の状況を、少しずつ思い出してゆく。
ぴりぴりと、目が痛むのを感じた。
- 5 名前:30 闇。或いは、闇。 投稿日:2004年02月08日(日)23時48分50秒
- とにかく今自分が置かれている状況について、考えてみる。
あの子たちと三人で街中を歩いている時に、軽そうな男にナンパされた。男の車に乗り込むや否や、暴行され、そしてこの冷たい部屋に放り込まれた。
何故、と考えるより先に、得体の知れない不安が押し寄せる。
- 6 名前:30 闇。或いは、闇。 投稿日:2004年02月08日(日)23時49分18秒
- 不安は恐怖に変わりそれは叫びとなってあたしの口を出たけれど、掠れた不明瞭な声しか出なかった。どういう風にしたのかはわからないけれど、喉が潰されているようだった。
闇が、あたしの心をがっちりと掴んで離さない。
絶望はやがて嗚咽となって、壊れた器官を通り過ぎていった。
すると、周りにも似たような呻き声が、二つ。
もしかしたら、彼女たちかもしれない。
長い間闇に晒された心は、温もりに飢えていた。
だけど、身動きも出来ず、声も出せない。彼女たちも同じ状況に置かれているのかもしれない。
- 7 名前:30 闇。或いは、闇。 投稿日:2004年02月08日(日)23時50分08秒
- 不意に訪れる光。
でもそれは決して希望の光なんかじゃなかった。
「おまえら、おとなしくしてたか?」
どこかで聞いたことのある声。たぶん、あたしたちを攫った男の一人だ。
ごつごつした、岩肌のような感触が顔を襲う。男の手だった。男はあたしの髪の毛を鷲掴みすると、薬臭い息を吐きかけながらこう言った。
「これからお前らは売りに出されるんだ。性の奴隷ってヤツだ」
頬に、気持ちの悪い濡れたものが押しつけられる。それは、まるで蛞蝓のようにあたしの顔を這い回った。不快感と嫌悪感、恐怖感が一体となるけれど、ヒキガエルのような声しか出せなかった。
「おっと、商品には手を出さねえ取り決めだったな。ここで止めておくか」
男は立ちあがり、部屋を去った。
再び、闇が訪れた。
- 8 名前:30 闇。或いは、闇。 投稿日:2004年02月08日(日)23時50分52秒
- 涙が次々と溢れてくる。
でも、あたしの憎悪は男には向けられていなかった。
「ねえ、今度のオフ、渋谷に遊びに行こうよ」
「ナンパとか言ってはじめてなんだけど。面白そうだし、行ってみようよ」
- 9 名前:30 闇。或いは、闇。 投稿日:2004年02月08日(日)23時53分50秒
- 軽率な二人の言葉。
彼女たちさえ、こんなことを言わなければ。
憎かった。
こんな打ちっぱなしのコンクリートの部屋に押し込められた原因を作った、彼女たちが。
あたしには、何の非もない。
なのに。
吐き気がするような感覚。それをどうにかしたくて身を捩るけれど、どうすることもできない。
偶然が、答えを教えてくれた。
あたしの足が、彼女達のどちらかにぶつかったのだ。
これだ。あたしの求めていたものは。
自由になる足で、彼女たちのいるであろう方へ思い切り蹴りを放つ。
つま先に感じる、柔らかな衝撃。
- 10 名前:30 闇。或いは、闇。 投稿日:2004年02月08日(日)23時54分52秒
心の中に、何かが広がっていくような気がした。
- 11 名前:30 闇。或いは、闇。 投稿日:2004年02月08日(日)23時55分31秒
- 闇。
- 12 名前:30 闇。或いは、闇。 投稿日:2004年02月08日(日)23時55分45秒
- 闇。
- 13 名前:30 闇。或いは、闇。 投稿日:2004年02月08日(日)23時55分56秒
- 闇。
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