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えしゃりゅりょねーあ
- 1 名前:えしゃりゅりょねーあ 投稿日:2004年02月01日(日)04時51分24秒
- 01. えしゃりゅりょねーあ
- 2 名前:えしゃりゅりょねーあ 投稿日:2004年02月01日(日)04時52分48秒
本当にどうでもよかった。
私はただ、今が今であることにたまらなく嫌気が差していただけなんだ。
訳もわからずに苛立って、それが何故だかもどかしくて。
みんながするように受験して、当たり前に高校を卒業、短大でも入って適当に就職して、誰かと恋愛をして子を産み、お母さんになる。
そんな鬱陶しいだけ安全が、私の未来に一直線に伸びているだけのような。
普通の女の子にはなりたくない。
意味もなく疲れていて、どうしようもないくらいにウンザリしていた。
そんな感じ。
きっかけなんてないようなもので、ほんのはずみだった。
受験勉強をしているのか、夕食の後片付けをしていたお母さんに聞かれただけ。
気がついたらお母さんに喚き散らしていた。
その言葉がお母さんの心を抉るだろうかは知っていたけど、その意味まではわからずに。
呆然とし、やがて泣き崩れたお母さんを見て、お兄ちゃんが言った。
「ほっときなよ。年頃なんだから」
その目が妙に大人ぶってて冷めていて、それがまた私の神経を逆撫でた。
持っていた私のお気に入りのマグカップを床に叩きつけると、その勢いで家を飛び出した。
絵里!!
お母さんの呼ぶ声が聞こえたが、振り返らなかった。
- 3 名前:えしゃりゅりょねーあ 投稿日:2004年02月01日(日)04時55分10秒
- 家を出た時には容赦なく肺を突き刺した冷気も、息が上がるに連れて心地よく感じるようになっていた。
暗い青に染まった見慣れた町並みを一気に駆け抜けると、後悔が私の心を引っ掻いたが、それ以上に開放感があった。
地元からほとんど出たことのない私の、ちょっとした冒険。
私は駅から吐き出された、家路へ急ぐ人波を掻き分けるようにして改札まで進むと、息を整えながら祈るような気持ちでポケットを探った。
五百円玉が一枚、百円玉が二枚に、十円玉が数枚。
この前、おつかいに行った時、お母さんに返し忘れたおつり。
券売機に二百円入れて券を買い、出てきたおつりの四十円をしっかり数えた。
そして、電車が早く来るほうのホームに向かった。
電車の中は座れるほどではなかったけど、混んではいなかった。
私はドア脇に陣取ると、大きく息を吐いて、そのまましゃがみこむ。
車内灯がチッチと音を立てて揺らめき、窓ガラスには疲れて無関心な乗客の顔が映った。
みんな、それぞれに自分の世界に入り込み、一切の干渉を許さない。
時折、誰かが新聞や雑誌を捲る音と、車内は咆哮に似た唸りをあげる以外は、淀んだ沈黙が当たり前のように居座っている。
観察に飽きた私は静かに目を閉じた。
- 4 名前:えしゃりゅりょねーあ 投稿日:2004年02月01日(日)04時56分54秒
- 相変わらず轟音が轟く中、表参道、というアナウンスが私の妙に心をくすぐった。
痺れて思うように動かない足に力を込めると、ゆっくりと立ち上がる。
まだ足先の感覚が鈍く、電車が止まった慣性でよろけてしまうも、電車を降りると、人の流れに任せてエスカレーターを上がった。
何も考えずに改札に切符を通すと、急に進路が塞がれてしまう。
精算してください、とアナウンスがして、私はハッとする。
私のすぐ後ろで人が詰まってしまい、誰かの舌打ちする音が聞こえた。
列は隣に流れるが、迷惑そうな視線から隠れるように俯き、すごすごと精算機に向かった。
無事に精算を済ませて地上へ出ると、地下へ吸い込まれるような強風が髪を巻き上げ、私は反射的にスカートを押さえた。
冷たい風が私を吹き付ける。
思えば、部屋着のまま来てしまった。
厚手の白いパーカーの下はTシャツ一枚。
ここには、私が期待したロマンティックは何ひとつなく、車のヘッドライトとテールランプで溢れた道路、もう閉まって暗くなっているブティック、飲食店がわずかに開いているだけで、ポツポツと人が歩いているだけだった。
- 5 名前:えしゃりゅりょねーあ 投稿日:2004年02月01日(日)04時57分36秒
- 私は身を小さくして寒さに耐え、人の足元を見ながら歩いた。
次の行き先は決めている。
街路樹が電飾に飾られた坂を下ると、徐々に人が増え出し、まもなく渋谷の駅が見えた。
冬休みに友達と服を買いにきたばかりだったが、一人では酷く心細い。
体の震えも限界に達してきていた。
ガチガチ鳴る歯を食い縛りながら、自分が他人の好奇の目に晒されぬよう、普通に振舞ってみる。
ふっと道端の露天から甘い匂いが立ちこめてきて、一瞬、心が奪われた。
緊張が解けた瞬間、人の流れから外れてしまった。
震えて固まっている体では再び人の流れに乗るのは難しく思え、立ち尽くしてしまう。
信号の替わり目まで待ち、わりと人が少なくなってきたタイミングを見計らって、また歩き出す。
今度はどうにか人波に乗ることができ、上手くスクランブル交差点を渡りきる。
すぐ右手にはセンター街があったのだが、何となく煌々としたネオンと人と茶褐色の道路に気圧され、通り過ぎてしまう。
そのまま109の前を過ぎ、道玄坂を登っていくと、ようやく人通りが少なくなってきた。
もう閉まっているビルの前で腰を下ろすと、パンパンに張り詰めた足を揉み解した。
これからどうしようか。
そんなことを考えている間にも、坂を登って暖まった体はどんどん冷えていく。
早く家に帰って、お風呂に入って眠りたい。
だけど、家に帰ってからを思うと、帰りたくはなかった。
終電はあるのだろうか。
時間を確かめようとして、携帯を家に置いてきたことに気付いた。
誰かに時間を聞きたくても、目の前を往来するのはサラリーマンばかりで声を掛けられない。
たぶん、お母さんは真っ先に私の携帯に電話しただろう。
お母さんは私の部屋から漏れる着信音を聞いて、携帯を見つけるかもしれない。
見られたくないメールもあったはず。
そんなことも気になっていた。
- 6 名前:えしゃりゅりょねーあ 投稿日:2004年02月01日(日)04時58分02秒
「お嬢ちゃん、一人?」
不意に声が聞こえ、顔を上げると、おじさんが立っていた。
安っぽいよれよれのダブルのコートに、酔っているのか、赤い顔が無精髭でくすんでいる。
私は尋ねられるままに頷くと、おじさんは厭らしい笑みを浮かべたが、すぐにそれを隠して話を続ける。
「そっか。一人なんだ。歳いくつ?」
「あの、今、何時ですか?」
「今?えっと・・・11時ちょっと前。もうそろそろ終電なくなる頃じゃない?外、寒いからさ、おじさんとホテル行かない?ほら、すぐ近くにあるし」
ここで初めて、おじさんが声を掛けてきた意味を知る。
私はどうしようもなく迂闊だった。
こんな時間に、こんな場所で、しかも一人で。
恐怖を感じるよりも先に、走り出していた。
「ちょっと!」
おじさんが私の肩に手を掛けてきたが、思い切り振り払った。
全速力で坂を下り、ギシギシいう足の痛みを堪えながら、ただ走った。
うっすらと涙が零れてくるのがわかったが、きっと風のせい。
人にぶつかっては謝りながら坂を下りきると、私はセンター街の入り口にいた。
私はぐっと息を止め、煌々とした異世界へと足を踏み入れた。
- 7 名前:えしゃりゅりょねーあ 投稿日:2004年02月01日(日)04時58分46秒
- 夜気が足元で渦を巻くが、街全体が酒やタバコや油や生ゴミの匂いで咽返るようだ。
車の音は遠のき、人ごみ特有のざわめきがビル群に反響して降ってくる。
終電に間に合わせようと駅へ向かう群れに流されないよう、道の端を歩く。
擦れ違った女の人の濃い香水の匂いに顔を顰めると、そのすぐあとから来た人にぶつかってしまう。
すいません、を言う前に、その人は何も言わずに進んでいた。
ネオンが覆いかぶさるように迫ってきて、ひっきりなしに人が往来する。
そんな中、私はあてどもなく通りを彷徨う。
明るい道を選び、人が途切れるのを恐れ、光の薄い区画は避けた。
何度も同じ道を行ったり来たりと繰り返してるうちに、体が疲れきって、考えることも面倒になっていた。
もう終電の時刻が過ぎたのか、人がめっきり減り、帰るつもりのない私のような子供と、始発まで時間を潰さなければならなくなった感じの若者が、所在なげにフラフラしているだけだった。
私は怖くないくらいに人目につかない一角で膝を抱える。
歩き疲れて暖まった体が冷めないうちに、眠ってしまいたかった。
ウトウトしていると、頭の悪そうな声が私の所で止まり、話しかけてくる。
「ねぇ。一人で寂しくない?」
私よりも2、3年上だろうか、バンダナを巻いた、いかにもお調子者といった風の男がそう言い、同意を求めるように仲間の顔を見る。
「そうだよ、寒いしさ。カラオケでも行かない?なんなら、牛丼でもいいし。今は豚丼だけどね」
別の男、頭を丸めた白ダウンの、ブクブクに太った男が大仰に笑い、最初の男と肩を組む。
「人生、一回しかないんだしさ、もっと楽しもうよ」
三人目の男、もう見る気にもならなかった、個性の埋没した男が、下らない陳腐を吐きやがる。
私は完全に興味を失っていた。
- 8 名前:えしゃりゅりょねーあ 投稿日:2004年02月01日(日)04時59分11秒
- ただ黙って座ったまま、男達を透かして向こう側を見ていた。
私と同じくらいの年の二人組が、咥え煙草で大笑いしている。
男達は無視されていることがわかると、卑屈に表情を崩して、何か負け惜しみのようなことを言って去っていった。
見ていた二人組が、こっちに来る。
「これからクラブ行くんだけどさ、あんたも来ない?」
色の黒い、金髪の巻き髪が、私と目線を同じにして言う。
「どうせ帰るとこ、ないんでしょ?」
タバコを持った方の女が、興味なさそうに吐き捨てた。
私はただ曖昧に笑って、この場をやり過ごそうとしている。
家を出た瞬間は、一人になりたかったのだと思う。
でも、一人が寂しくて、こんなとこにいる。
二人は私に背を向け、何やらごそごそと相談し始める。
かろうじて、アヤさん、という言葉だけは聞き取れた。
そして、かしこまって携帯で誰かと話し出すと、そのまま離れていった。
- 9 名前:えしゃりゅりょねーあ 投稿日:2004年02月01日(日)04時59分38秒
まもなく、先程の二人がぞろぞろと仲間を引き連れて、私を囲んだ。
そして、へりくだった口調で、その中心にいる女に話しかける。
「アヤさん、こいつです」
猿を思わせるような可愛らしい顔立ちだったが、色素の薄い瞳は感情が見えず、どこか薄ら寒い印象を受ける。
黒いミニスカートに、黒いへそまで見えるキャミソール。
黒いマフラーを巻いて、黒いロングのコートをつっかけるように着ている。
寒そうに見えるが、そんな素振りは微塵も感じさせない。
冷淡な無表情まま、私に手を伸ばす。
「・・・ふ〜ん。なかなかいい顔してるのね」
私の肌の質感を確かめるように、無遠慮に頬を撫でる。
「アヤさん、っていうんですね。寒くないんですか?」
私がそう言うと、金魚の糞のような女が声を荒げる。
「お前!アヤさんになんてこと言うんだ!!」
「黙りな」
黒づくめの女が、低く短く言うと、金魚の糞は怯えたように口を閉ざした。
「私のこと、アヤ、って呼んで。亜種の亜に、弥勒の弥。あなたは?」
「亀井絵里」
「そう・・・」
亜弥は柔らかく微笑むと、私の髪にそっと指を通す。
「私ね、あなたみたいな子が好き。でもね、いちお、みきたんに聞かなきゃならないの」
亜弥は一方的に自分の事情を言うと、
「困ったことがあったら、これ出してみて。この辺の大体は私が仕切ってるし、下っ端の警察くらいなら余裕でどうにかなるから。あと、気が向いたら電話してね」
名前と携帯の番号だけ書いた名刺を握らせると、私のおでこに軽くキスをして、鼻歌を歌いながら去っていった。
亜弥の取り巻きも、ぞろぞろとその後を追う。
中には私を睨んでくる女もいたが、別にどうでもよかった。
- 10 名前:えしゃりゅりょねーあ 投稿日:2004年02月01日(日)04時59分58秒
- 私を守ってくれそうな人ができたからといって、現状が改善するわけでもない。
眠いし、寒いし、始発の時間まではまだまだあるだろう。
言葉通りに亜弥に電話するのも、甘えているようで何となく嫌だった。
きつくきつく膝を抱える。
身を小さく縮め、どうにか寒さを凌ごう、と。
さらに、顔を膝に埋める。
始発が出る時間になったら、まっすぐ家に帰ろう。
もし気まずかったら、そのまま何も言わずに部屋へ直行すればいい。
今はただ、太陽の光が、朝が待ち遠しかった。
時折、へらへらした若い声が私の頭上で聞こえたが、全て無視した。
私が黙って顔を隠していると、男達はすぐに何か一言罵ってから去っていく。
- 11 名前:えしゃりゅりょねーあ 投稿日:2004年02月01日(日)05時03分09秒
「大丈夫?震えてるよ?」
か細く、夜の静けさにすら消されてしまいそうな弱い声だったが、まっすぐ私に届いた。
「さゆ、ほっときな」
つっけんどんで遠慮ない声が、最初に声を掛けてきた方を嗜める。
私が顔を上げたのは偶然だった。
首が疲れていたからでも、二人の動向に興味があったわけでもない。
ただ自然に、体がそう動いた。
それだけのこと。
「ほら、やっぱりぃ」
「なにが」
「絶対この子、わたしたちと同じ匂いがすると思ったもん」
声の細い方、綺麗に整った顔だったが、ぷっくりとしたほっぺが実に可愛らしく、純粋な、何も知らされていないような無垢な目をしていた。
「まあ、さゆが言うんなら、そうかも」
眉毛が細く吊り上り、意志に満ちた目が、どこか近寄り難い雰囲気を醸し出している。
我の強そうな感じだが、傲慢なイメージはなく、こちらも可愛い。
「でしょ?れいな。いいよね?」
「寒いんなら、ついてくれば?」
そう、れいな、と呼ばれた方は、そのまま歩いて行ってしまう。
大きなビニール袋一杯の荷物を、両手で抱えて。
「こっちの勝手な好意だから、受ける受けないは好きにして。でも、来てよ」
さゆと呼ばれた方は、言ってることとは裏腹に私を引き起こし、先を歩く少女を追う。
- 12 名前:えしゃりゅりょねーあ 投稿日:2004年02月01日(日)05時03分44秒
さゆと呼ばれた少女に連れられるがまま、まっすぐに繁華街を抜け、開いてるのか閉まっているのかわからない、うらぶれた飲食店街を過ぎると、ホテルが密集した所に辿り着く。
角を左に曲がり、坂を登り、右に折れて細い小道を奥へ進む。
さらにもう一度右に曲がり、幾度が方向を帰ると、私はもう道順を覚えていられなくなった。
「あ、そうだ。名前は?」
「亀井絵里」
「私は道重さゆみ。さゆって呼んでね。で、あっちがれいな。絵里って呼んでいいでしょ?」
「うん」
そう言うと、無邪気に私の手をぶんぶん振る。
しばらく歩くと、街の喧騒が遠く、建物の窓から漏れる明かりが、暗闇の中、ひっそりと佇んでいるだけとなる。
道がなくなるまで進むと、れいなが立ち止まり、私達を待つ。
突き当たりの罅割れた看板に、「ホワイト」と素っ気なく黒字で書いてある。
その建物の入り口は薄暗く、狭い。
さゆが声を欹てる。
「ここね、売春宿なの」
「──?」
声が喉に突っかかり、逆に空気を飲み込んでしまう。
その様子に、さゆは面白そうにへへっへと笑う。
「さゆね、絵里のこと、騙したの。じゃ、頑張ってオヤジ相手に稼いできて」
「下らないこと言って怖がらせるんじゃないよ」
れいながすぐに打ち消し、唇を尖らせたさゆからは、罪の意識は微塵も感じられない。
- 13 名前:えしゃりゅりょねーあ 投稿日:2004年02月01日(日)05時04分45秒
- 相変わらずれいなが先を行き、私とさゆが付いていく。
れいなは何も言わずにエントランスを抜けるが、ホテルの人間も何も言わない。
そのまま、三階の一室に入る。
れいなはベッドに荷物を放り投げると、その脇に寝転がる。
「あ〜、ホント、東京はしんどい」
これまでとは正反対の、緩い表情。
「れいなね、実はまだ東京が緊張するんだって」
さゆが私に耳打ちし、含み笑いをする。
「あ、絵里やったっけ。なんであんなとこにいたん?」
れいなが身を翻し、私を見る。
やっぱり可愛い目をしている。
「私?ただ、家を出てきただけ。れいはとさゆは?」
「私達は東京に来てみたかっただけ」
さゆがすかさず答える。
- 14 名前:えしゃりゅりょねーあ 投稿日:2004年02月01日(日)05時05分04秒
- 「絵里は東京の人?」
すっかり打ち解けた様子のれいなに、私は黙って頷く。
「そうなんだぁ。私達なんて、わざわざ飛行機でここまで来たんだよ?私が福岡で、さゆは山口から」
「でも、あんまりこっちの方、来たことなくて」
「そんなおんなんだ」
「福岡と山口って、近いけど離れてるよね?」
「よく知っとるね。結構遠いんだけど。れいな、天神って駅前の公園でストリートミュージシャンやってて、偶然、家族と福岡まで遠出をしていたさゆが、いきなり話しかけてきたの。一生の友達になれそうだって。自信満々のさゆに押されるがまま、しばらくれいなの家にいたのね。さゆの家は放任主義みたいで、毎日お姉ちゃんに連絡すれば、それでいいんだって。そうこうしてるうちに、一度、夢のために東京を見ておこうって。れいなが言ったんだけど。で、二人のお年玉と貯金を合わせて上京」
「この子、慎重なくせして向こう見ずなのよ」
さゆが笑いながら、ポンポンとれいなの頭を叩いている。
「なによ、空港行くなり自動券売機で伊丹空港行きのチケット買おうとしたクセに」
「違うよ。あれは、れいなが気付くかな、って思って、わざとやったの」
「うそ〜。さゆ、ニコニコして自信満々だったくせに」
そんな二人に、私は中々入っていけない。
「でも、わたしの笑顔のおかげで、こうやってホテルに泊まれちょぅ?」
「まあ、そうだけどね。あ、さゆね、てきとーに汚いオヤジと話し合わせて、中学生でも泊まれるホテル聞きよっとよ」
れいなが説明してくれるが、当然あるべき疎外感は消えない。
「・・・ちょっと待って。二人とも、中学生?」
二人は、不思議そうな顔を揃えて、黙って頷く。
- 15 名前:えしゃりゅりょねーあ 投稿日:2004年02月01日(日)05時05分46秒
- 「そういえば、絵里は?」
「私も中学生。3年」
「そうなんだ。れいな達、2年。でも、別に敬語とかじゃなくていいでしょ?」
「え?ああ、うん。もちろん」
二人は安心したように、というか、当たり前のように笑顔でいる。
「いつまでこっちにいるの?」
「ホントは明日か明後日にでも帰ろうと思ってたんだけど。東京にいても意味ないってわかったし」
「わたしよりかわいい人いなかったし」
ねぇ、と二人、顔を見合わせる。
「でも、絵里に会ったから、どうしようか、って思ってる」
さゆが恥ずかしいくらいに、私の目を見つめる。
その黒目がちの瞳は微動だにせず、私の心までを捉えている。
- 16 名前:えしゃりゅりょねーあ 投稿日:2004年02月01日(日)05時06分39秒
「・・・・・・二人とも、夢ってなに?」
「れいなは歌手になる」
「わたしはかわいいのをみんなの見せてあげるの」
そして、れいなが力強く言う。
「こっち来てまだ2,3日やけど、もうわかったけん。ここにいる奴ら、ただふわふわ生きてるだけのクソ人間ばっか」
「だよね〜」
さゆがほんわかした笑顔で同意し、そして。
「絵里は?なんか夢とかないの?」
- 17 名前:えしゃりゅりょねーあ 投稿日:2004年02月01日(日)05時07分53秒
私にはきっと・・・
「何もない」
ふわふわ生きているだけかもしれない。
でも・・・
「探してる。いつも」
とびっきりのワクワクを。
そんな私だけど・・・
「もう少し、二人と一緒にいても、いいかな?」
- 18 名前:えしゃりゅりょねーあ 投稿日:2004年02月01日(日)05時08分54秒
本当はどうでもよくなんかない。
私はただ、今日とは違う明日のある今を生きたいだけなんだ。
- 19 名前:えしゃりゅりょねーあ 投稿日:2004年02月01日(日)05時26分49秒
- 没にした話の第一話のような、短編のような。
その後、絵里の憧れの人となるなつみ、腰抜けチンピラのジョニー加護とトニー辻、知的障害者のマコ、繊細で脆い秀才のあさ美、部活熱血少女の里沙、家庭教師の子を腹んでしまった愛と出会う。
そして、亜弥や美貴も加わり、若さゆえの熱を吐き出し、振り回され、仲間と笑う。
純粋な衝動は大人の圧倒的な力に潰されてしまうが、それでも感情に正直であろうと社会を飛び出すという、破滅的な青春群像ストーリー。
とあるドラマが元ネタであり、今更書くまでもないと思い断念。
趣旨から外れてたら、ごめんなさい。
- 20 名前:えしゃりゅりょねーあ 投稿日:2004年02月01日(日)05時27分01秒
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- 21 名前:えしゃりゅりょねーあ 投稿日:2004年02月01日(日)05時27分07秒
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- 22 名前:えしゃりゅりょねーあ 投稿日:2004年02月01日(日)05時27分26秒
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