インデックス / 過去ログ倉庫
15 AN ANECDOTE OF COMETS
- 1 名前:15 AN ANECDOTE OF COMETS 投稿日:2003年06月24日(火)00時37分39秒
- 15 AN ANECDOTE OF COMETS
- 2 名前: 15 AN ANECDOTE OF COMETS 投稿日:2003年06月24日(火)00時38分35秒
- 夏の夜の、都会とも田舎ともつかない広い通り。
夢に敗れた少女達が歩く。
とぼとぼ、とぼとぼ。
月は影を潜めて、降るような星。
遠くの派手なエンジンの音に遠慮がちに路肩の叢から虫の声。
満天を覆い尽くす星。
ちらちらと、誘蛾灯のそれのように煌く星の光に
少女の一人が立ち止まり、やがてつられて、十や、もっといる少女達の全員が立ち止まった。
「星になりたかったな」
少女達のうち、二番目に背の高い少女が呟いた。
みな一様に天を見上げ、それから感傷して、あるものはすすり泣いた。
「なってみようか」
また、別の気怠げな少女が言った。
その時、どこかの空でヒュー、ドンと大きな音が鳴った。
あまり大きな音で、天が揺れ、おどろいた星の幾つかが流れ星となって落ちた。
- 3 名前:15 AN ANECDOTE OF COMETS 投稿日:2003年06月24日(火)00時40分07秒
「ロケツト花火で夜空を飛べるかな?」
「星になれるでしょうか?」
「ロケットは月にしか行かないって聞いたわ」
「ロケットじゃなくて花火だから星だって飛べるんじゃない」
少女達はいつしかお喋りに花を咲かせた。
そうして、また歩き出し、川原へやってきた。
「決まった。ロケット花火で飛べるわね。でも、星になれるかどうかはわからないわ」
一番背の高い少女がそう結論を出した。
少女はお豆と呼ばれた小柄な少女に、花火を買ってくるように命じた。
お豆は、川原の土手の影にひっそりと佇んでいた橙色の花火屋で
たくさんのロケット花火を買った。
さて、川原で少女達は語り合った。
どうしたら飛べるだろうか。
川は嘲るように、にび色の畝をたゆらせている。
花火を背負えばよいだろうか。
火傷しないだろうか。
しかし、どうにも上手い方法が思い当たらないので花火を背負うことに決着した。
誰から飛ぼう、というところで皆躊躇したが、
年の順ということになった。
- 4 名前:15 AN ANECDOTE OF COMETS 投稿日:2003年06月24日(火)00時41分47秒
- まずはじめに一番背が高く髪の長い少女だ。
ひととおりと握手を交わしてめいいっぱいに背中に担いだ花火に火をつけた。
キャ、と短い悲鳴の後少女の身体は天に舞い上がった。
くるくると旋回しながらどんどんと空に上ってゆくうち
その長い髪はキラキラと光り、尾のように棚引いた。
次に柔らかい笑顔の少女が、同じように舞い上がった。
二人は眩い光を放ちながら天に上った。
それから一番丈の小さな少女、おかっぱの少女、甲高い声の少女、
二番目に背の高い少女、けだるげな少女が次々と舞い上がった。
もの凄い音と光とを放つ。
花火で飛び立った少女達はいつしかほうき星になって漆黒の天空を舞い踊った。
- 5 名前:15 AN ANECDOTE OF COMETS 投稿日:2003年06月24日(火)00時42分31秒
- 続けて、田舎訛りの少女が、
頬のふくらとした少女が、
ハキハキとした少女が舞い上がる。
十ものほうき星がどんどんと遊び交錯しながら天へ上ってゆく。
街の、疲れたビジネスマンやテレビジョンに夢中であった子供達や
鍋と格闘していた若いお母さんや、
みんなみんな、その光景に圧倒された。
犬も猫も残業のお父さんも電車もビルも草も木も。
すべての視線は彼女達に釘付けとなった。
双子のような可愛らしい少女達が手を繋ぎながら一緒に飛び立つと
その阿吽の息と華やかさに気後れしてか、ポリュデウケス、カストルも山際に隠れた。
それからお豆が飛び立つ。
大空の舞台でスターとなった彼女達は夜気に抱かれ最高のステージを見せた。
- 6 名前:15 AN ANECDOTE OF COMETS 投稿日:2003年06月24日(火)00時43分17秒
さて、まだ飛び立てない少女が3人。
困ったことにあれほどあった花火がいつの間にか無くなってしまったのだ。
それでまた買い足そうと橙の店を探すのだがどうにも見つからない。
3人は途方に暮れた。
3人は本当に幼い少女達だった。
仕方なしに3人は川原に腰掛けた。
いまや世界中の視線の先にあるであろう、3人にとって先輩である少女、コメット達を見上げる。
車も走るのを止め、虫も騒ぐのを止めて見上げる空からは火花の弾ける轟音が、それだけが辺りを包んだ。
3人はその光景に、時折涙を流しながら見惚れた。
そしていろんな話を、ずっとずっと続けた。
やがて朝が来て、静けさとざわめきが街に戻った。
3人の少女は身を寄せて、心地よい深い深い眠りについていた。
コメット達は夢幻の宇宙へと旅立った。
- 7 名前:15 AN ANECDOTE OF COMETS 投稿日:2003年06月24日(火)00時45分20秒
- お
- 8 名前: 15 AN ANECDOTE OF COMETS 投稿日:2003年06月24日(火)00時46分03秒
- わ
- 9 名前: 15 AN ANECDOTE OF COMETS 投稿日:2003年06月24日(火)00時46分44秒
- り
Converted by dat2html.pl 1.0