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しりとり

1 名前:55しりとり 投稿日:2002年12月16日(月)00時15分14秒
 収録の日だった。しかし、生憎の雨。
私達は雨が小降りになるのを待ちながら、
日テレの控え室で居眠りをしていた。
そう、彼女が提案するまでは……

「雨が降ったら、弱い翼は折れてしまう」

安倍は古臭い歌を歌いながら、窓から外を見ていた。
この歌は1970年代、安倍の父親の青春時代の音楽である。
そんな古臭い音楽を口ずさむのなら、このピッグちゃんも、
そろそろ終わりの気配を感じさせていた。

「まったく! なっちは井上陽水かっての! 」

私の目の前の席には、モー娘をクビになったばかりの後藤がいた。
弟が歌舞伎町の遊説者になったからって、連帯責任でクビはひどい。
それなら加護はどうなる? 塩をかけられた安倍はどうなる?
そんなことは、どうだっていい。
問題なのは乳首を見せた矢口だろう!
キスした矢口だろう! どうなんだゴルァ!
2 名前:55しりとり 投稿日:2002年12月16日(月)00時16分06秒
「どうでもいいけどよー、腹へんねえか? 」

私は水槽の中を泳ぐランチュウと楽しそうに話をする後藤に聞いた。
後藤は意味も分からねえ魚語で、優等生である私の話の腰を折る。
ヤキを入れてやろうかと思ったが、一応は先輩なのでやめておいた。

「紺野ー、この子、何って言ってるの? 」

後藤はランチュウを指差しながら言った。
ふざけんな! いくら金魚顔だからってなー!
金魚語なんか習ってねえんだ!

「知るかってんだ! てめえも魚なら、直接聞いてみな」

私は少し気を使って、後藤に敬語を使いながら言った。
この魚女は、てめえの言語を標準語と勘違いしてやがる。
アジやキスには通じるかもしれねえが、
サバやカツオ、マグロやブリになると、
通じるかどうか分からなかった。
3 名前:55しりとり 投稿日:2002年12月16日(月)00時16分33秒
今日は安倍、後藤、辻そして私の四人が収録だった。
まともなのは私くらいであり、単に安倍や辻は胃拡張のブタである。
半魚人後藤は他人のことなど構わずに、ひたすら自我の境地へと瞑想していた。

「ねえ、みんなでハンカチ落しでもやろーよ」

辻の一言は、私の気持ちを高揚させた。
どうせやるなら、バトルオブハンカチ落し。
つまり、闘うハンカチ落しが望ましい。
そうだ。我々は闘いの中から這い上がって来た。
私をモー娘にゴリ押しで加入させたつんく♂Pは、
自分の感性を信じていたのである。
タレントとしては頭のいい矢口も、
男の前では跪いてしまう憐れな女だった。
だが、私は違う。男どもに跪かせる立場の存在である。
4 名前:55しりとり 投稿日:2002年12月16日(月)00時17分09秒
「てめえ一人でやってろ! このガキ! 」

後藤は吐き捨てるように言った。
辻くらいバカな存在であれば楽である。
ガキを通して、都合が悪くなれば泣けばよかった。

「ハンカチ落しをするほどの時間はないべさ」

安倍のピッグちゃんは、何かと仕切りたがるが、
正直なところ、かなり迷惑なことだった。
一度壊れた女に仕切られても、フォローする人間の身にもなれってんだ。
薄痴者は薄痴者らしく、黙ってメロンでも食べていればいい。

「安倍さん、ホットドッグは好きですか? 」

私は効果的な皮肉を言ってやるが、ピッグちゃんには理解不能だろう。
案の定、室蘭の偶蹄目は、後ろ足で頭を掻き始めた。
5 名前:55しりとり 投稿日:2002年12月16日(月)00時17分41秒
「ねえ、ごまっとうってどう思う? 」

魚女はテメエのユニットの自慢をしたいらしい。
ふざけんじゃねえっての! 不細工三人組の話を聞くために、
こんな空気の悪い部屋にいるわけじゃねえってんだ。

「ごまっとうがどうした? このマグロ! 」

「ろ―――ロバなのれす」

「ば―――ババロアだべさ」

「あ―――アイスクリーム」

しまった! いつの間にか、しりとりになっていた。
油断したぜ。くそっ!
6 名前:55しりとり 投稿日:2002年12月16日(月)00時18分15秒
「む、む―――無論」

「紺野の負けだべさ」

しまった! 教養が邪魔してしまった。
『無残』にすれば良かったか?
だめだ! 溢れる教養が邪魔をしてしまう。

「あさ美ちゃん、負けたから脱ぐのれすよ」

脱ぐ? 何で脱がなきゃいけねえんだ?
いつの間にか野球拳になっていたのか?
私は中学生だっての。脱がしたりしたら犯罪じゃねえか。
7 名前:55しりとり 投稿日:2002年12月16日(月)00時18分45秒
「辻、何で脱がなきゃいけないの? 」

魚女は不思議そうに辻を見た。
そうだ、そうだ。
何で脱がなきゃいけねえんだ。

「脱がなきゃ雨で洋服が濡れるのれす」

「外に行くんだべか? 」

「そうなのれす。雨の中、正面玄関前で、前方回転の受身練習なのれす」

―――知らなかった。
いつの間に、そんなことが決まっていたのだろう。
私は、そんなことを論議した記憶がなかった。
8 名前:55しりとり 投稿日:2002年12月16日(月)00時19分19秒
「誰が決めたんだよ! このガキ! 」

「たった今、ののが決めたのれす」

ふざけやがって。
この子豚には、お仕置きが必要みてえだな。
チュン・リー並の連続キックでも入れてやるか?

「だったら仕方ないべさ」

何が仕方ねえんだよ。
この偶蹄目は、考えるってことができねえのか?
モー娘の紺野が全裸で前方回転なんかできるかっての。
そんなことしたら、ブブカが黙っていねえんだよ!
9 名前:55しりとり 投稿日:2002年12月16日(月)00時19分48秒
「そうだね。紺野、脱ぎなよ」

オイオイ! テメエは鱗があるからいいだろうけどな。
私は脱いだらポロンだぞ。ポロン。
この場合、唯一の成人であるピッグちゃんが捕まるんだろうな。
まあ、モー娘に偶蹄目は必要ねえワケだし。

「なっちは沖縄で水着撮影したんだよ」

それがどうしたってんだ!
偶蹄目が水着着たらコスプレじゃねえか!
少しは考えろっての。

「そうれすね。パンツは勘弁してあげるのれす」

そういった問題じゃねえだろう!
中学生で乳首を晒したのは、小林聡美くらいだっての!
あれ? 栗山千明もそうか?
10 名前:55しりとり 投稿日:2002年12月16日(月)00時20分32秒
「だったら魚! テメエの見せブラ貸せっての」

「そうだべねえ。さすがに裸じゃまずいっしょ」

まずいも何も、犯罪なんだよ! は・ん・ざ・い!
まだ子豚が素っ裸になっても、ギリギリの線で平気かもしれねえがな。
おっと、この魚女! 本気で見せブラ持って来やがった。
そうかよ! 分かったよ! 玄関前の広場で前方回転すりゃいいんだろ!

「げげっ! で、でけー! 」

魚のくせに、胸だけはでけーな。
まあ、モー娘のホルスタインよか小せえけどよ。
あのホルスタインは、カン娘に移籍したんじゃなかったか?
まあ、あのヴォケ女は、花畑牧場で家畜として生きて行けばいい。
11 名前:55しりとり 投稿日:2002年12月16日(月)00時21分00秒
「オウ! これでいいのか? この子豚! 」

「さあ、前方回転れすよ」

私は仕方なく玄関前の広場へ行き、
雨の降る中、完璧な前方回転を決めてやった。
最後に右手が濡れたタイルをピシャリと打ち、
誰が見ても内股で投げられた時の受身だ。

「紺野、何やってんのや? 」

うわっ! つんく♂さんじゃねーか。
いいからテメエはスタジオに篭ってろよ。
最近じゃ行き詰まってるみてえじゃねえか。
そろそろエイトビートで勝負してみろよ。
いつまでも『ラブマ』を引き摺ってんじゃねえ。
12 名前:55しりとり 投稿日:2002年12月16日(月)00時21分33秒
「いえ、勝負に負けて―――」

「勝負? アホなことやらんと、歌の勉強せえよ」

歌? テメエ、誰に口きいてんだっての。
私はこの一年で素晴らしい進歩を見せたろ?
ホルスタインと比べたらどうだっての!
そりゃ、保田ガメラやチビ、偶蹄目に比べたら、
ちょっとは落ちるだろうけどよ。

「つんく♂さん、ロックンロールみたいなのがやりたいですねえ」

「タンポポ。で我慢せえや」

このアフォは意味分かって言ってんのか?
16信奉主義者に何言ってもダメだろうけどな。
13 名前:55しりとり 投稿日:2002年12月16日(月)00時22分04秒
「やって来たぞゴルァ! 」

「まさか、本当にやるとはねえ」

テメエ、見せブラまで貸しといて、何だ! その言い方は!
こうなったら、偶蹄目大小と魚に同じ思いをさせねえとな。

「雨が冷たかったぞ! 」

「ゾンビダンス。だべさ」

「すいか。なのれす」

「か―――牡蠣」
14 名前:55しりとり 投稿日:2002年12月16日(月)00時22分37秒
牡蠣だ? 魚らしく海の生物で来やがったな。
こうなったら、想像上の生物で行ってやるぞ。

「麒麟―――あっ! 」

しまった! 詭弁とでもしとけば―――ダメか。
こんな頭の悪い連中と、しりとりなんかしたくねえ!
『ゾンビダンス』? 『すいか』? 『牡蠣』?
何で『属性』『淫靡』『微細』といかねえんだ。
そうすりゃ『慰安』と行ける―――ダメか。

「紺野はしりとりが弱いべさ」

そうかよ! しりとりなんかガキの遊びだっての!
今度は何すりゃいいんだよ!
15 名前:55しりとり 投稿日:2002年12月16日(月)00時23分07秒
「今度は―――そうだべねえ。せっかく雨が降ってることだし」

オイオイ! 雨の中でシャンプーなんてやめてくれよ。
家にはちゃんとバスルームがあるんだからよ。

「そこの雨といが詰まって、雨水が流れ落ちてるべさ。紺野、滝に打たれて来る? 」

この偶蹄目が! 
何を言うかと思ったら、滝に打たれろ?
何で私が真言宗の荒行をしなけりゃいけねえんだ。
だいたい、水温は3℃くらいしかねえぞ。
3℃っていったら、金魚も活動停止する温度じゃねえか!
16 名前:55しりとり 投稿日:2002年12月16日(月)00時23分41秒
「しょうがねえなあ。よし! 見てろよ! 」

私は仕方ないので、1階に走り、玄関から外に出ると、
勢い良く流れ落ちる雨水の下へ飛び込んでみた。
氷のように冷たい雨水が脳天に当たり、
私は寒さに心臓麻痺を起しそうになる。

「紺野―――偉い! 精神修行やな? 姐さんは、あんたの根性、見届けたで! 」

誰かと思えば中澤のババアかよ。
根性じゃねえっての。
勝負に負けたんだよ。
くそっ! 冷てーな。
17 名前:55しりとり 投稿日:2002年12月16日(月)00時24分15秒
私は寒さに震えながら部屋に戻った。
タオルで体を拭いても、冷え切った体は温まらない。

「さ、寒かったぜ! 」

「ぜ―――是正だべさ」

おおう! いい感じじゃねえか!
こういった大人のしりとりがしたかったんだよ。
次は子豚か―――期待できねえか?

「移譲なのれす」

ナイス! 子豚もやればできるじゃねえか!
問題は魚だよな。こいつもかなりのアフォだからよ。

「烏合」

キターーーーー!
よっしゃー!
18 名前:55しりとり 投稿日:2002年12月16日(月)00時24分46秒
「胡散―――あれ? 」

しまった!

「紺野は本当に弱いね。さてと―――」

『さてと』じゃねえ!
これ以上、体が冷えたら凍死しちまうっての!

「紺野、これは何か分かるかな? 」

―――シュノーケルじゃねえか。
何で魚がシュノーケルなんか持ってんだよ。
魚はエラで呼吸するんじゃねえのか?
19 名前:55しりとり 投稿日:2002年12月16日(月)00時25分17秒
「あそこに鯉のいる池があるじゃん」

ま、まさか、あそこで泳げってのか?
寒中水泳なんかする気候じゃねえだろ!
すぐに熱い風呂に入らねえと、本当に死んじまうぞ。

「鯉と一緒に泳いでみよう」

やっぱりかよ―――
簡易保険に一千万、民間生保に五千万は入ってるけどよ。
十中八九、死ぬぞ。
15歳で死ぬのかよ。
しかも、ホームレスでもねえのに凍死かよ。
20 名前:55しりとり 投稿日:2002年12月16日(月)00時25分46秒
「あさ美ちゃん、行くのれす! 骨は拾ってあげますよ! 」

あたりめーだろうが!
死んでも骨を拾われねえのは、
隠密同心だけだっての!

「さあ、行くべさ! 」

他人事だと思いやがって!
テメエみてーに皮下脂肪がついてりゃいいけどよ。
こっちは皮下脂肪も血糖値も、偶蹄目の半分だっての!
―――分かったよ! 泳げばいいんだろ?
死んでくればいいんだろ?
この人殺しどもが!
21 名前:55しりとり 投稿日:2002年12月16日(月)00時26分30秒
「てめえら! 紺野あさ美の意地を見せてやろうじゃねえか! 」

私はシュノーケルを装着すると、外へ飛び出し、
30匹くらいの鯉が泳ぐ池へ飛び込んだ。

「ぐあっ! し、心臓が―――」

このまま死ぬのか?
明日の朝刊の一面に、
『モー娘。紺野、鯉の池で溺死』
なんて見出しが出るのかよ。
サイテーじゃねえか。
アイドルだってのに―――
22 名前:55しりとり 投稿日:2002年12月16日(月)00時27分05秒
「紺野! その『恋レボ』は完璧だよ! 」

誰だ? 夏先生じゃねえか。
餞の言葉としては粋じゃねえか。
そうさ。私は永久の旅に出る。
もう心臓が微細動を起してるっての。

「やればできる! 紺野! 飯田を越したよ! 」

オイオイ、あのパルプンテと比べないでくれ。
こっちは正統派で勝負してるんだからよ。
ダメだ―――意識が―――ぐらっ―――
23 名前:55しりとり 投稿日:2002年12月16日(月)00時29分44秒
紺野あさ美、低体温症で緊急入院!
一時は危篤状態!
所属事務所担当が緊急記者会見!
警視庁、安倍・後藤・辻から事情聴取!
いじめが原因?

「紺野も人がいいんだべさ」

「さすがに本当にやるとはね」

「根っからの世間知らずなのれす」


すげえサイテーだぜ。ちくしょう!


END
24 名前:55しりとり 投稿日:2002年12月16日(月)00時30分15秒
25 名前:55しりとり 投稿日:2002年12月16日(月)00時30分42秒
26 名前:55しりとり 投稿日:2002年12月16日(月)00時31分15秒

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