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ずっとずっと
- 1 名前:23 ずっとずっと 投稿日:2002年12月05日(木)19時09分35秒
- いちーちゃんが死んだ。
なんでごとーより先にいっちゃうんだよ。
神様、ごとーもいち―ちゃんのところへ行ってもいいですか。
『後藤も市井のところへおいで。』
- 2 名前:23 ずっとずっと 投稿日:2002年12月05日(木)19時12分03秒
- よし、終電まで間に合うな。
市井さんの死は、私達メンバーにとっても、もちろん大変なことだった。
そのニュースを聞いたとき、矢口さんは呆然としていたし、圭ちゃんは泣き
ながらマネージャーに市井さんの病院を問いただしていた。その顔は、一度見
たらきっと忘れられない。その他のメンバーは、ほとんど会ったことの無い
五期メンバーでさえ、泣き崩れていた。
でも、私は、冷たいと思われるかもしれないが、市井さんが死んだ悲しみよ
り、そのニュースを聞いたであろう、ごっちんの心配のほうが大きかった。
保田さんが、マネージャーから聞いてきた、市井さんの病院に行きたい人は
行こう、と言ったら、私以外みんな行きたい、と言った。
みんなの少し軽蔑が混じった視線を感じながら、私は、ごっちんの家に向か
うため、楽屋を出た。
- 3 名前:23 ずっとずっと 投稿日:2002年12月05日(木)19時14分14秒
- 『おまえを後藤のもとには行かせないよ。』
私は、そんな声を聞いた気がした。
しかし、周りには怪しい人は誰もいなかったので、気のせいだと考え、駅に
向かって歩いていった。
行く途中、ごっちんの携帯に電話してみたが、電源を切ってあるようだった。
ごっちんの家の電話にも誰も出なかった。
私は妙な胸騒ぎを感じた。
もう少しで駅に着こうかというとき、今まで、雲一つ無い青空だったのに、い
きなり黒い雲が出てきて、雨が降り出した。
- 4 名前:23 ずっとずっと 投稿日:2002年12月05日(木)19時16分16秒
- すぐ目の前が駅だったので、私は走った。
駅に着いた。
すぐやむと思っていた雨は、ますます強くなり、雷までなりだし、外は大型の
台風が上陸しているかのような状況になっていた。
ピンポーン
「お客様に申し上げます。
ただいま、全路線、大雨強風のため、運行を見合わせています。
現在、運行再開のめどは立っていません。
まことに申し訳ありません。」
私がそんな駅内放送を聴いていると、またさっきと同じ声がした。
『これで、おまえは間に合わないだろう。後藤を市井のところに連れていく。後
藤もきっとそれを望んでいる。悪く思うなよ、吉澤。』
私はその声の主を思い出した。市井さんだ。
ごっちんが危ない、そう思った私は、迷わず、タクシー乗り場のほうへ飛び出し
ていった。
- 5 名前:23 ずっとずっと 投稿日:2002年12月05日(木)19時20分14秒
- だめだ、人が多すぎる。
待つだけで、1時間もかかってしまう。
バス乗り場
同じだ、何十人も並んでいる。
電車はだめ、タクシーもだめ、バスもだめ。
どうしよう、考えている間にも、ごっちんが死んでしまうかもしれない。
そんなのヤダ。
周りを見渡していると、私は見つけた。
バイク屋だ。
今年、事務所には黙って、私は、バイクの免許を取っていた。
それを知ってるのはごっちんだけだったけど。
私は、バイク屋にかけ込んで、店員に一番速いバイクはどれかと、聞き、そ
の場で、カードで支払った。
- 6 名前:23 ずっとずっと 投稿日:2002年12月05日(木)19時22分17秒
- 私はバイクに乗りこみ、ごっちんの家に向けて飛ばした。
雨のせいで、視界がはっきりしない中、私はフルスピードで飛ばした。
後から考えたら、私のほうこそ危なかったかもしれない。
二度ほど白バイに追いかけられそうになった。
端から見れば、こんな雨の中飛ばすなんて、自殺行為だと思われていただ
ろう。
しかし、私の頭の中はごっちんのことでいっぱいで、自分の死とか、つかま
れば、芸能生活の終わり、とか全然考えてなかった。
私は、ふと思い立って、あるところに電話した。
- 7 名前:23 ずっとずっと 投稿日:2002年12月05日(木)19時24分08秒
- 三十分後、
私はごっちんの家の前に着いた。
すぐに、玄関に向かう。
玄関のドアは開いていたが、人のいる気配は無い。
思いきって、私は家の中に入り込んだ。
「ごっちーん、いるのー?いるなら、返事して。」
何度か呼びかけたが、家の中はひっそりと静まったままだ。
廊下を静かに歩いていると、何か音がしたような気がした。
私は耳を澄ました。
突然、その声の発信源に気づいた。
風呂場だ。
気づいたと同時に、私は走り出していた。
- 8 名前:23 ずっとずっと 投稿日:2002年12月05日(木)19時26分39秒
- ガチャ
風呂場を開けた私の見たものは、想像していた最悪の状態だった。
ごっちんは左腕を水の入っている浴槽に突っ込んでいた。
そして、浴槽の水は赤く染まっていた。
さらに、ごっちんの右腕には血のついたナイフが握られていた。
この状況を理解できないほど、私はバカではなかった。
「ごっちーん!」
私はごっちんに手をかけた。
まだ温かい。
もしかして、と思って、右腕の脈をとる。
とても弱かったが、脈が動くのを感じた。
- 9 名前:23 ずっとずっと 投稿日:2002年12月05日(木)19時28分24秒
- 『へえ、結構早かったな。』
私が後ろを振り返ると、半透明の体をした市井さんが私を見下ろしていた。
「残念でしたね、ごっちんを連れていけなくて。」
『本当に後藤が助かると思うのか。まだまだ甘いな、吉澤。今から救急
車を呼んでも、私が降らせた雨のせいで、渋滞に巻き込まれて、どんなに
早くても、四、五十分はかかるぜ。そして、後藤のほうは後二十分も持た
ないだろう。』
「・・・ひとつ教えてください。何でこんなことをしたんですか?」
- 10 名前:23 ずっとずっと 投稿日:2002年12月05日(木)19時30分38秒
- 『・・・市井は後藤の悲しむ顔なんか見たくなかった。後藤を泣かすようなや
つがいたら、許さないと思っていた。・・・でも、市井が死んで、後藤は泣い
た。仕事場でも、泣き出し、マネージャーにもっとプロとしての自覚を持て
と、怒られていた。そうすると、さらに泣き出した。そのとき、後藤の悲し
む顔を見て、市井も悲しくなった。そして、どうすれば、後藤を泣かさずに
済むか考えたら、市井は馬鹿だから、こんな方法しか思いつかなかった。後
藤を市井のところに連れて来るという方法しか・・・。』
「市井さん、そんなの間違ってます。市井さんはこんな血だらけのごっちんを
見たかったんですか?それに、私が市井さんの立場だとしても、絶対そんな
ことしません。だって、ごっちんには生きて欲しいから。私の分まで。ごっ
ちんの泣き顔を見るのはつらいけど、もし死んでしまったら、ごっちんの家
族やメンバー、その他にも、たくさんの人が悲しむと思います。市井さんの
ところへ行ったら、悲しむ顔を見ないで済むと、言ったけど、絶対そんなは
ずありません。ごっちんは家族やメンバーの悲しむ顔を見たいなんて、思う
わけありません。」
- 11 名前:23 ずっとずっと 投稿日:2002年12月05日(木)19時33分11秒
- 「市井さんがごっちんの悲しむ顔を見て、悲しいと思ったように、ごっ
ちんも家族の悲しむ顔を見たら悲しくなるはずです。それでも、市井
さんは、ごっちんを自分のところに連れて行きたいと、思いますか?」
『・・・・・・・もう遅いよ。いまさら後悔してしまっても、もう遅いんだ。
ごめん、ごめんよ、後藤。本当は、後藤と離れたくない私のわがま
まだったんだ。私のせいで後藤は、後藤は・・・・』
- 12 名前:23 ずっとずっと 投稿日:2002年12月05日(木)19時36分38秒
- 「まだ大丈夫ですよ、まだ生きてます、ごっちんは。私は最後まであき
らめません。」
『無理だよ、後藤の命はもう消えかかっている。後十五分も持たないよ。』
その時、ピーポーピーポーという救急車のサイレンが聞こえてきた。
『え・・・、どうしてこんなに早く・・・』
「よく言うでしょう、『備えあれば憂い無し』って、駅から出発してす
ぐに、救急車をごっちんの家に向かわせたんです。もし、ごっちんに何
も無かったら悪いとは思ったけれど、電話しといて良かったなと、思いま
す。後は、ごっちんの生命力にかけましょう。」
- 13 名前:23 ずっとずっと 投稿日:2002年12月05日(木)19時39分30秒
- 『そっか、・・・よかった。もし後藤が目覚めたら、謝っといてくれ。
そして、市井の分まで生きろって、伝えといて。・・・それと、吉澤。後
藤のことは任せた。後藤が悲しんでたりしたら、なぐさめて、力になって
やってくれ。本当に後藤にも吉澤にも悪いことをしたって思ってる。じゃ
あな。」
「はい・・・」
私の返事と同時に、市井さんが笑いながら消えていくのを見た。
救急隊員が入ってきた。すぐに応急処置を施す。
ごっちん、がんばれ!
ごっちんは無事意識を取り戻した。
- 14 名前:23 ずっとずっと 投稿日:2002年12月05日(木)19時43分40秒
- 後五分救急隊員が来るのが遅かったら、間違い無く間に合わなかったそうだ。
ごっちんの運ばれた病院は偶然、市井さんの遺体を安置していた病院だっ
たので、すぐに知らせを聞いたメンバーたちが集まってきた。
飯田さんや圭ちゃんは、
「本当なら自分たちが一番にごっちんを気遣うべきだったのにと」
私に謝ってきた。
他のメンバーやごっちんの家族も次々と、
「よっすぃ―のこと冷たい人間だと思ってごめん」
とか、
「真希を助けてくれてありがとう」
とか言ってきてくれた。
私は意識の戻ったごっちんに最初に面会した。
- 15 名前:23 ずっとずっと 投稿日:2002年12月05日(木)19時47分00秒
- 「よしこ、ありがとう。よしこが助けてくれたんだってね。・・・後
藤、いち―ちゃんに会ったんだ。いちーちゃんがね、『市井の分まで、
後藤は生きろ。後藤を巻き込んで本当にごめん。後、目覚めたら、吉
澤によろしく言っといて。』だって・・・。なんかあったの、いち―
ちゃんと?」
私は迷ったが、本当のことを話すことにした。
私の話を聞いた後、ごっちんは笑って、
「そうなんだ・・・もちろん、いち―ちゃんの事なんか恨んでないよ。
でも、本当に助かって良かったよ。死んだら、よしこと話す事もでき
ないもんね。いちーちゃんに会えないのもつらいけど、よしこと会え
なかったらもっとつらいもん。」
- 16 名前:23 ずっとずっと 投稿日:2002年12月05日(木)19時48分51秒
- それから、私達は、いつものように、一緒に笑ったりして、楽しく過ごした。
途中、私が先に窓の外に見える、大きいきれいな虹に気づいた。
「ほら、ごっちん、見てよ、きれいな虹。・・・きっと市井さんが笑って
いるんだよ、ごっちんの楽しそうな顔を見て。」
「ほんと、よしこ、きれいな虹だねえ・・・。後藤、もう泣かないから
ね。泣いても、よしこに慰めてもらうから・・・だから、安心しててね。
いちーちゃん。・・・・バイバイ」
『じゃあな、後藤』
- 17 名前:23 ずっとずっと 投稿日:2002年12月05日(木)19時53分55秒
- ―――F―――
- 18 名前:23 ずっとずっと 投稿日:2002年12月05日(木)19時55分34秒
- ―――I―――
- 19 名前:23 ずっとずっと 投稿日:2002年12月05日(木)19時56分59秒
- ―――N―――
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