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すべては彼女の気分次第。
- 1 名前:16 すべては彼女の気分次第。 投稿日:2002年12月04日(水)15時15分48秒
- こないだ、あたしと亜弥ちゃんは珍しく喧嘩をした。
原因は何だったかな、確かお風呂に入ろうという誘いを、あたしは先に入っていた為断わったからだったかな。
喧嘩というよりも、一方的に亜弥ちゃんが拗ねた感じ。
それを必死で宥めて、丸一日オフの日が一緒の時に、何処かへ遊びに行こうと亜弥ちゃんを誘った。
今度断わったらミキたんに猫パンチしてやるという、キツイのかユルイのか意味の判らない条件をつけられて。
そして、その日がやってきたんだけど。
……予想してなかった。
外は、雨。
「…ミキたんのせいだ」
「えええ。なんであたしのせい?!」
「ミキたん、雨女でしょ!」
………。
指摘された事について、考えてみる。
…いや、思い当たる節はない。
どちらかというと、晴れ女気味なのに。
自称他称も晴れ女という称号を得ている彼女の前では、あたしは雨女に決定されてしまったみたい。
- 2 名前:16 すべては彼女の気分次第。 投稿日:2002年12月04日(水)15時16分33秒
- 「ひっどーいよ、あたしに天気まで変えれる力あると思う?」
「ミキたんならやるね、あたしと遊びたくないっていう呪いの力でやるね」
「誰が呪いだ、誰が」
何気にすごい事を言ってくれる亜弥ちゃん。
どうやら、この前の機嫌が少ししか治ってないみたいで。
…っていうか、お風呂一緒に入らなかったくらいで怒ることないじゃん?
まったく、あたしよりワガママだ。
「……ミキたん今、あたしのことワガママとか思ったでしょ」
「へっ?! い、いや全然」
「ミキたん目が泳いでる」
「気のせいだよ〜」
「…ミキたんにはワガママ度負けるもんね〜」
い〜っだ、とお手本通りのあかんべーを見せてくれる。
だけど、亜弥ちゃんは憎たらしいどころか、何やっても可愛く見えてしまうのは、もう罪だろう。
それをあたしがしてみたら、様になってるよ、と言われそうなんであたしはやらない。
そんなしょうもない事を考えてると、出かける用意をして後にしようとしていた家に亜弥ちゃんはまた戻ってしまった。
「ちょっと待ってよ亜弥ちゃ〜ん」
あたし、絶対負けてるよ。亜弥ちゃんにはワガママ度。
だってほら、完璧に亜弥ちゃんのペースだし。
- 3 名前:16 すべては彼女の気分次第。 投稿日:2002年12月04日(水)15時17分08秒
- 部屋に戻っても、胸にクッション抱いてあたしに隙を見せてくれない亜弥ちゃん。
これはちょっと、手強い。
「あ〜やちゃん?」
「………」
「あやっぺ〜」
「………」
「…はしのえみ」
「違うよ!」
「あ、反応した」
「………」
はしのえみさん、感謝。
「ねえねえ、どうしてそんなに膨れてんのさ〜」
「…だって外に出かけられないもん」
「それだったら家で遊ぼうよ。いつも遊んでんじゃん」
「家は、ヤダ」
「………」
だんだん、困り果ててきました。
困って窓に目をやってみる。
外は、さっきより、雨の勢いが強くなってる気がする。
亜弥ちゃんの機嫌の悪さも、どんどん強くなってる気がする。
- 4 名前:16 すべては彼女の気分次第。 投稿日:2002年12月04日(水)15時17分55秒
- 「せっかくさ、今日はどこ行って何しようとか、色々考えてたのに…」
「それだったら、傘差して行こうよ」
「傘は邪魔になるもん…」
「ん〜……」
亜弥ちゃんのワガママに、フォローが追いつかない。
どうしよう、と考えてた時に、亜弥ちゃんがポツリと呟いたのをあたしは聞き逃さなかった。
「……だって、せっかくミキたんと丸一日のオフなのに……家で遊んだら、いつもと同じじゃん…」
「亜弥ちゃん……」
いつもは、どちかが仕事で、遊びに行く時間もなかなか合わせられない。
だからいつもあたし達の遊び場所は、家の中で。
たまーに、近くにあるプリクラを撮りに行って。
丸一日亜弥ちゃんと外で遊んだ記憶なんて、そうはない。
あたしだって、いっぱい亜弥ちゃんと色んなとこ行きたいよ。
クレープ食べながら歩いたりしたいよ。
朝から暗くなるまで、遊んでみたい。
家の中で喋ったりじゃれたりしてるだけでこんなに楽しいのに、外に出たらもっと楽しいことだろう。
外で遊ぶなら確かに、行動派のあたし達にとっては、傘は邪魔だ。
かといって差さずに出かけたら、服も髪型も台無し。
風邪なんかひいたら、どんなに怒られるか。
- 5 名前:16 すべては彼女の気分次第。 投稿日:2002年12月04日(水)15時18分40秒
- ようするに、雨を止ませればいいわけね。
すると、亜弥ちゃんの機嫌も治って外にも出かけられるわけだ。
よーし。藤本美貴様の力、見せてあげようじゃん。
……呪いの力じゃないけどね。
「…………」
「………?」
「…………」
「………???」
「…………」
「………ミキたん。何してんの…?」
「見てわからない?」
「…ちっとも」
「何言ってんの、雨止めって願ってるんだよ〜」
「……嘘でしょ?」
「大マジなんだけど」
ベランダに立って、手を空に突き上げて。
「雨よ…雨よ、止んでください!」
「…………」
ちょ、ちょっと待ってよ。なんで亜弥ちゃん喋ってくれないの?
あたし、亜弥ちゃんの為にやってるのに。
だんだん、恥ずかしくなってきた。
トドメは、マンションの一番下から男の子の「変な人がいるー」の声。
…ちょっと待ってよ。変な人って、あたしの事?
いや、変な人って。あたし、芸能人。藤本美貴だよ。
ミキティー、とか言ってよ。変な人って。
- 6 名前:16 すべては彼女の気分次第。 投稿日:2002年12月04日(水)15時19分14秒
- 「……プププ」
「………」
「あははははっ、ミキたんめっちゃウケる〜!!!」
「………おいおい」
カッコ悪く部屋の中に出戻ったら、大笑いの亜弥ちゃんのお迎え。
「あはっ、あははは……そんなんで止むハズないよ〜、あー苦しい」
「止むよぉっ!」
ちょっとムカついて、大人げなく反論してみる。
……したら、本当にその言葉通りになっていた。
「……や、止んでんじゃん、雨……」
……あたしって、芸能人になるより、天気操縦士にでもなった方がよかった?
でも、あたしが手をかざしてた時は、止む気配一向になかったんだけど……。
――そうか。
目の前には、笑顔の亜弥ちゃん。
有り得ないけど、根拠もないけど、もう、そうとしか思えない。
亜弥ちゃん、すごいよキミ。
自分が一番可愛いけど、亜弥ちゃん尊敬するよ。
ヲタを操るだけじゃなくって、天気まで操れんなんて。
亜弥ちゃんが笑顔になった途端、晴れやがった。
あたし、そりゃ敵わないよ。
ベランダ出て手をかざしてお願いしてたのは、ただの恥さらしだったけど、
それで亜弥ちゃんの機嫌が治ってくれたから、結果オーライにでもしておこう。
- 7 名前:16 すべては彼女の気分次第。 投稿日:2002年12月04日(水)15時19分49秒
- 「すごい…ミキたんのお願いが効いた?」
「ま、まあね」
ベランダに出て、雨が止んだのを確認してる亜弥ちゃん。
…うん、まあ、そういうことにしておこう。
これであたしの株ももうちょっと上がるかな。
実際は、亜弥ちゃんの力なんだけど。
「これで出かけられるね!」
にこにこ。ウキウキ。
亜弥ちゃんの気分が最高潮になるに比例して、どんどん晴れてくる天気。
そして、あたしの心も晴れてくる。
「そうだね」
「やったー! ねえねえ、最初、どこ行く?」
「そうだなぁ……あ、ちょっと待って」
行き先を思案してたところに、携帯の着信のお知らせ。
ゴソゴソカバンを漁って、ピッと出る。
「はいもしもしー、あ、マネージャー?……うん、うん……え!」
「何? どったの?」
「は、はい……わ、判りました…」
「何々?」
晴れた心が、どんどん曇りになる。
そして、晴れた空も、また曇り空。
「……あはは。急に、仕事入っちゃった♪」
「………」
それはもう、すっごく可愛く言ったのに。
……亜弥ちゃんはやっぱり、拗ねてしまった。
- 8 名前:16 すべては彼女の気分次第。 投稿日:2002年12月04日(水)15時20分27秒
- 「いいもん…ミキたんはあたしの事が嫌いなんだ…だからわざと仕事入れたりするんだよ……」
「そーんなことするハズないじゃあん! 嫌いだったら遊ばないってぇ!」
「いいもん、別に……ミキたんだけじゃないもん…あいぼんとかと遊ぶもん……ミキたん入れてやんないから!」
「あ、あのねぇ……」
あたしより2つ年下の彼女は、やっぱりあたしよりも子供で。
そして、あたしよりもワガママで。
………悔しいけど、あたしより、可愛いかもしれない。
ただ…ちょっと……気分屋なのが、たまに傷、でしょうか。
外は、いつのまにかまた雨。
晴れるのも雨が降るのも、すべて彼女の気分次第。
- 9 名前:16 すべては彼女の気分次第。 投稿日:2002年12月04日(水)15時21分19秒
- 10 名前:16 すべては彼女の気分次第。 投稿日:2002年12月04日(水)15時21分56秒
- 11 名前:16 すべては彼女の気分次第。 投稿日:2002年12月04日(水)15時22分56秒
- 終わり。
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