インデックス / 過去ログ倉庫 / 掲示板

雨のち笑顔

1 名前:15 雨のち笑顔 投稿日:2002年12月04日(水)04時30分19秒
「ええ〜!?クリスマスは一緒に過ごそうって言ったじゃん!!」
「ゴメンねぇ〜…。急にバイトが入っちゃって…。
 店長にさぁ、お前、カレシいないだろーって。アハハ、彼女はいるけどねぇ」

う、嘘だぁぁ…。
付き合って最初のクリスマス、もう1ヶ月も前から気合十分だったのに。
…それなのに、それなのに〜〜〜!!!
クリスマス当日に〜〜!!!
しかも、待ち合わせ場所に来て急にそんなコト言われたって〜!!!

「………そんなコト、聞いてないよ………」
「あいぼん?」

「バカ真希ッ!!糞ったれ!魚魚魚〜!!!」
「ごふっ」
私は、“大好きな”真希ちゃんの顔面に、右ストレートを決めると、
後ろを振り返って、猛ダッシュで走り去りました。

うぁぁぁん…。
もう、みんな大っ嫌いだぁぁぁ〜〜!!!

…結局、真希ちゃんは追いかけて来てくれなかった…。
2 名前:15 雨のち笑顔 投稿日:2002年12月04日(水)04時31分22秒
* * * * *

部活の先輩と後輩という関係。
その、なんでもない関係が、私たちの最初の関係だった。

真希ちゃんは、美人で、人気者で、よく笑う。
マジメかと思ったら、部活中に爆睡してみたり、
起こされていきなり暴れ出したり。
そんな姿が、また、後輩みんなの憧れになって、
もちろん私も、真希ちゃんに憧れを抱くようになった。

初めは遠目で見てるだけだった。
ううん、それも良かったの。
別に、憧れの先輩ってだけだから。

でも、そんな想いを覆すように、いきなり仲良くなるきっかけができた。

あれは、梅雨の頃だったなぁ…。
その日は雨が朝から降っていて、夕方になっても止まなかった。
3 名前:15 雨のち笑顔 投稿日:2002年12月04日(水)04時31分59秒
宿題を忘れて居残り勉強させられてた私は、
昇降口に置いておいた自分の傘がないコトに気づいた。
どうやら、誰かに盗まれたらしかった。
苛立ちを抑えて、誰か友達の傘に入れてもらおうと人を探したけれど、
すでに校舎も薄暗くなっていて、人気もない。
…そうなっては仕方がないから、ずぶ濡れになって帰ろうと諦めた。
靴を履き、カバンを頭の上にかざしながら、猛ダッシュで走る。
水溜まりがピチャピチャ跳ねて、白いルーズソックスに水玉模様を彩った。

あぅぅ…。冷たいよォ…。

「ねー、どーしたの?傘ないの?」
突然、後ろからそんな声が聞こえた。
私は、ビックリして足を止め、振り返った。
髪から、雫が滴り落ちる。

その声には、聞き覚えがあった。
ううん、聞き忘れるハズなんかない。

「後藤先輩…」
私がポツリと呟くと、真希ちゃんは眉をピクン、と跳ね上げた。
「あれ、うちの部のコだよね…?」
と、困惑したような曖昧な表情で言った。
私は、ちょっとガッカリしたけれど、話ができただけで満足だった。
憧れの後藤先輩が、話しかけてくれただけで。
4 名前:川o・-・)ダメです… 投稿日:川o・-・)ダメです…
川o・-・)ダメです…
5 名前:15 雨のち笑顔 投稿日:2002年12月04日(水)04時33分17秒
「加護です。加護亜依です」
私は、少し緊張しながら言った。
いつもなら、「イェーイ!加護チャンデス!」とか、ノリノリな自己紹介をするけれど、
その少しの緊張のせいで、言葉遣いも震えながら、丁寧になってしまった。
「加護ね。じゃ、傘入れてあげるから、一緒に入りなよ」
「えぇ!?で…でも…」
「いいからいいから〜。ゴトーを信じて〜」
「……あ、お願いします」
私は、震える胸を押さえながら、真希ちゃんのさしたピンク色の傘の下に入り込んだ。

緊張して、何を話していいかわからなかった。
いつものお調子者な私が出せずに、真希ちゃんの質問に、
ただ「ハイ、ハイ」と答える以外、何もできなかった。

「ねえ、加護」
「あ、ハイ…」
「問題。雨があがると、何が晴れるでしょーか」
「え?…空が晴れるんですよ…ね?」
不安気に私が聞き返すと、真希ちゃんは静かに首を振った。
そして、悪戯っぽい笑みを浮かべるとこう言った。

「表情が晴れて、笑顔になるんだよ」
6 名前:15 雨のち笑顔 投稿日:2002年12月04日(水)04時33分58秒
私、すっごい感動したの。
ただ憧れてただけじゃなくて、めっちゃ好きになっちゃった。
その瞬間から。
だから、ちょっとだけ勇気を出して言ってみた。

「後藤先輩、今度遊びましょうね」
「…あ〜うん。いいよ〜」
返ってきた返事は、実にあっさりしていた。

それから、二人の仲は急接近した。
最初のデート(?)はカラオケに行ったし、
学校でもよく話をするようになった。
お互いに家に泊まり合うようにもなって、
夏休みが終わるくらいには、
みんなから「姉妹みたい」って言われるくらいに仲良くなっていた。
一緒にいられるだけで、嬉しかったし、
一緒にいるのが幸せだった。
もう、女だからとか、そんなの関係なしに、真希ちゃんが好きだった。

だから、真希ちゃんから、
「加護をごとーの彼女に任命する」
とか言われた時は、少しだけ戸惑ったけれど…。
そりゃあ、突然だったし、女同士で?って思ったけど…。
すぐに、OKしちゃった。
めっちゃビックリしたけどネ。
7 名前:15 雨のち笑顔 投稿日:2002年12月04日(水)04時37分41秒
* * * * *

「はぅぅ〜…うそつき真希ィ…ひっく…」
カップルだらけの駅前の道を、私はしくしく泣きながら、
独り寂しく歩いていた。
道行くカップルたちは、そんな私を哀れむような目で見てたから、
ちょっとだけ恥ずかしくって、泣くのは止めた。
でも、相変わらずブルーなままだったけど。

あーあ…。みんな幸せそうでいいなぁ…。
クリスマスに一人ぼっちなんて、寂しいすぎるよぅ…。

友達とかに電話しても、みんなカレシと一緒にいるし。
私だって、クリスマスくらいは大好きな人と一緒にいたかった。

そう思うと、また涙が出てくるよぉ…。くすんくすん…。

真希ちゃんは、いつも優しい。
それに、ちょっとだけ、私よりオトナ。
そんなトコが好き。
でも、ずぼらだし、計画性がないし、やる気ないし、
いつも寝てるし、だらだらしてるし…。
…そんなトコも、好き…かも。

あ〜あ…。もういいや。家帰って、一人で寝るもん。ぷーん。
8 名前:15 雨のち笑顔 投稿日:2002年12月04日(水)04時38分19秒
ポツリ、ポツリ。
頬や、手の甲に何かが当たる冷たい感覚。
まさか、これは…。
「んげっ…うそ!?雨〜!?やだぁ〜」
ついてない〜…。クリスマスに一人で、しかも雨〜!?
クリスマスくらい、雨じゃなくて雪が降れよー!バカ〜!

雨は次第に強くなり始めて、私の体はずぶ濡れになった。

「あーあ…バッカみたい」
雨の中、裏路地を一人歩く。
これ以上、ブルーな展開ってないと思わない?

家まで、ここから歩いて20分もある。
はぁ…。しょうがないな。
明日は、風邪引いてお家でゆっくり寝てなきゃね。
それもこれも、真希ちゃんのせいだね。大っ嫌い。

本当なら今ごろ、真希ちゃんのお部屋でまったりしてるハズだったのにさ。
バカバカバカ…。

ズルッ、ベシャッ。
……最悪ぅぅぅ……。
すべって、お気に入りのコートが泥だらけ。
ついでに、今日はスカートだから、膝も擦り剥いた。
もう〜!!雨も真希も、カップルもクリスマスも大っ嫌い!!
9 名前:15 雨のち笑顔 投稿日:2002年12月04日(水)04時38分52秒
「ほら、大丈夫?」

「え?」
後ろ頭上から差し出された、ピンク色の傘。
私はワケがわからず、地面に膝をついたまま、思いっきり見上げた。

「もー。さっきから呼んでるのに、気づかないから」
「…なんでいるのさ〜…」
「なんでって…。約束したじゃん」
「…自分で破ったくせに〜…」
「そうだね。ゴメンね。ほら、手貸して」
「バカ真希…。嘘つき」

私は、差し出されたその手を握りしめ、
そして、その身体に飛びついた。
10 名前:15 雨のち笑顔 投稿日:2002年12月04日(水)04時39分44秒
「うわっと…。なんだよ〜いきなり〜!?」
「…バカァ…うわぁぁぁん…」
「ほらぁ、こんなとこで抱き合ったまま泣かないでよ〜。
 ゴメンね、ね?」
「…うん…」

真希ちゃんは、とっても温かかった。
あーあー。嫌い嫌い思ってても、結局こうなっちゃうんだなー。
もういいよーだ。私だって、子供じゃないもんね。
ちゃんと戻って来てくれたから、怒らないの。

その代わり、今日はめちゃめちゃ甘えてやるんだから。
用意したプレゼントも、すぐには渡さないもんねーだ。
11 名前:15 雨のち笑顔 投稿日:2002年12月04日(水)04時40分15秒
「でもなんかこう、ホワイトクリスマスもいいけど、
 雨のクリスマスっていうのもいいもんだねぇ?」
「亜依は雪の方が好きだけど」
「かぁ。オコチャマだねぇ。
 それにほら、あたしらって、いつも雨ってカンジじゃん?」
「……。知〜らない。覚えてな〜い」
「あーとぼけるなよ〜コイツ。アハハ」

一本の傘の下に、繋いだ手と手。
最悪だけど、ハッピーエンド…かな?

気がつけば、雨は止んでいた。
そして、私の顔もとびっきりの笑顔になっていたのでした。
雨が止めば、笑顔になれる。
その通りだね、真希ちゃん。

メリークリスマス☆
12 名前:15 雨のち笑顔 投稿日:2002年12月04日(水)04時40分48秒
4レス目、間違いですので削除依頼出しました。。。
ごめんなさい。
13 名前:15 雨のち笑顔 投稿日:2002年12月04日(水)04時41分19秒
14 名前:15 雨のち笑顔 投稿日:2002年12月04日(水)04時41分52秒
15 名前:15 雨のち笑顔 投稿日:2002年12月04日(水)04時42分41秒

Converted by dat2html.pl 1.0