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五光

1 名前:14 五光 投稿日:2002年12月04日(水)01時38分30秒

最近、5期メンバーの中で小さな争いが絶えない。
仲が良い時は良いのだけど、ふとした瞬間に小さな喧嘩が起こってしまう。
特に、私は他の三人と別行動の仕事が多くなってきてコミュニケーションを
とりづらくなっていた。

――そんなある日。

2 名前:14 五光 投稿日:2002年12月04日(水)01時39分35秒
収録が終わって、次々に先輩たちが楽屋を後にして行き、残ったのは
いつの間にやら5期メンバーのみになっている。

気が付くとそれはコートのポケットに入っていた。

「……なんやろ……これ。カルタ?ちがうな」

少し小さくて固めのカード。見たことはあるんだけど思い出せない。
お正月とかのイメージがあるやつだ。
純日本風な桜の絵が綺麗に描かれている。

「どした?」

着替えを終えたらしい麻琴が後ろから覗き込んできたと思ったら、
次から次へと5期メンバー全員が私の周りに集まってきた。
3 名前:14 五光 投稿日:2002年12月04日(水)01時40分38秒
「ポケットに入ってた」

「あ、あたしも入ってたよ!ほら」

「私もー」

「私も、入ってたみたい……」

みんなが口々に言い、同じようなカードを出す。
絵柄はそれぞれ違っていた。
麻琴は月の絵で、里沙ちゃんは鶴。あさ美ちゃんは派手な背景に鳥が飛んでいる。

「花札だね」

そうそうそうそう!それ!花札!!
あさ美ちゃんが確認するようにもらした言葉にうんうんと頷く。

「派手派手だから、多分それなりに力の強い札だね」

どんな役があるとかは、よく知らないけど。
そう言ってニコニコしているあさ美ちゃんに里沙ちゃんが続くように口を開く。
4 名前:14 五光 投稿日:2002年12月04日(水)01時41分35秒
「それより、このカードどうするの?」

確かに。
五期メン全員の私服に入っていたということは、誰かが何か目的を持って
やったとしか考えられない。
でも、何のためだろう?
みんなで首をかしげて話し合う。
とりあえず、一番こういうのに詳しそうな人のところへ行ってみようと
いう事になった。

あさ美ちゃんだけは、なぜか確信めいた含みを持って何か言いかけていたけれど。
5 名前:14 五光 投稿日:2002年12月04日(水)01時42分09秒
幸い、その人はまだ建物の中にいた。自販機の前でジュースを選んでいる所を
話し掛け、その出来事を話した。

「で?私にどうしろっての?」

「保田さんが仕掛けたんだと思ってきました」

なんの前置きもなく、突然あさ美ちゃんが話し始める。

「……あー、紺野は本当にマイペースだね。みんなにも自分の考えを言ってから
 発言しないと……」

どういうことだろう。仕掛けたってなに?
あさ美ちゃん以外の三人が顔を見合わせる。
それを見た保田さんが仕方がないなという表情で説明をはじめた。
6 名前:14 五光 投稿日:2002年12月04日(水)01時43分07秒
「あのね、最近あんたらが仲違いしてるのがあまりにも目に付くように
 なったから、メンバー全員から相談されてたの」

なんとかしてくれ、と。
で、ちょうど部屋にあった花札が目に付いたそうだ。
箱に入った札を机に置く。

「あんたらにはまだ早いけど、結構燃えるわよ。これ。
 役ってのがたくさんあってね。その中で二番目強い役がそれなんだ」

そう言って私たちの持っている札を見た。
ルールとかがたくさん小さな字で書いてある紙を広げて指を指す。

「……よん、ひかり?」

「しこうって読むの。まぁ、これでも全然素敵なんだけど……ちょっと来て」
7 名前:14 五光 投稿日:2002年12月04日(水)01時44分03秒
私たちは保田さんに言われるままについて行く。

「なんですか、ここ?」

何かのセットみたいだ。
どっかで見たことあるなー。最近記憶力なくなってきたかな。
考え込んでいると、いきなり水が私たちの頭上に降り注いできた。

「うあぁっ!?」
「「「きゃーっ!?」」」

あ、いま一人だけ「キャー」じゃなかった……
いやいやいや、そんなことはどうでもいい。
水音に混じって保田さんの笑い声が響いてきた。

「高橋、よっすぃーより男前だなぁ。はははっ」

「なにするんですか!止めてください!!」

私の叫び声を「はいはい」と軽く受け保田さんが水を止めた。
8 名前:14 五光 投稿日:2002年12月04日(水)01時44分44秒
楽屋に毛布とヒーターあるから、風邪引かないようにね。
そういい残して『幸せですか?』をやけにノリノリで歌いながら
スタジオを出て行く。

「わけわがんねぇ……あさ美ちゃん、わかる?」

私の問いかけに合わせて麻琴と里沙ちゃんもあさ美ちゃんを見る。
その視線に曖昧な笑顔で答えて、とりあえず楽屋へ戻って話すよと
水をたっぷりと吸い込んだ服を絞り、4人揃ってスタジオを出た。

楽屋に戻ると、すでにヒーターが作動していた。
きっと保田さんの仕業だろう。

大き目の毛布が畳んで置いてある上に、一枚のカードがあった。
垂れ下がった葉っぱの下に、傘をさした人が描かれている。

「五枚目の札……さっきの水はそれを意味してるんだよ」
9 名前:14 五光 投稿日:2002年12月04日(水)01時45分40秒
あさ美ちゃんが床に保田さんが見せてくれた紙を広げた。
四光の上にある役を指差して読む。

「私たちの持ってる四光にこの『雨』の札を足すと、五光になる」

一番強い役。
雨の札の裏には、サインペンで先輩メンバーの名前が全員分書かれていた。

「だから、そういうこと、じゃ、ないかな……は、っ」

   ――ハクションッ

4人が同時にくしゃみをして、その後に笑い声が続く。
ひとしきり笑った後に、わたしたちはそれぞれの札の裏に名前を書いて
『雨』の札の横に置いた。
10 名前:14 五光 投稿日:2002年12月04日(水)01時46分39秒


あれから、私たちの中で何かが変わった。
余裕が出来たのかもしれない。乾いてひび割れていた地面に雨が降って
その日々が修復されたのだろう。

それでも、愛のある喧嘩はしょっちゅう起こっているけれど。
うん。メンバー愛だよメンバー愛。


 あの5枚の札はいつも楽屋の机の上に置かれている。
11 名前:14 五光 投稿日:2002年12月04日(水)01時47分23秒
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12 名前:14 五光 投稿日:2002年12月04日(水)01時48分20秒
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13 名前:14 五光 投稿日:2002年12月04日(水)01時48分56秒
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