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お天気雨

1 名前:08.お天気雨 投稿日:2002年12月03日(火)13時45分12秒

あの時、ののは夢を見ていたんでしょうか?
それはきっと、きつねさんにしかわかんないのです。


2 名前:08.お天気雨 投稿日:2002年12月03日(火)13時46分11秒


その日はとっても天気がよくて、ののはお隣の飯田さんといちばんの友達のあいぼんと
いっしょにピクニックに行ったんです。
ののはちょっと前にこの村に引っ越してきたばっかりなんですけど、2人ともすっごく
やさしくて、すぐになかよくなれました。

飯田さんたちが連れて行ってくれたのはおっきな神社でした。
「すっごいでしょ。ここは毎年紅葉が綺麗なんだよ」
って飯田さんは言ってました。

「あれ?何ですかこれ?」
神社の前に行くときつねさんの像が置いてありました。
なんで神社にきつねさんなんでしょうか?
「ああ、これはお稲荷さんやな」
おいなりさん?ますますわけがわかんないです…
「のんちゃん、食べるやつじゃないよ。ここを守ってくれてるお狐様をお稲荷さんって
言うの。この村は狐を信仰してる村だからね」
「へー。お稲荷さんってきつねさんのことなんですかぁ」
飯田さんたちはののにいろんなことを教えてくれます。
3 名前:08.お天気雨 投稿日:2002年12月03日(火)13時47分10秒

神社の中は鳥居がいっぱいあって、紅葉もいっぱいで真っ赤でした。
「すっごいですねぇー!こんなの初めて見ました!」
「この村は神社だけはおっきいから…しかも、この神社にはたまにお狐様が出るんだって」
「ええっ!?きつねさんに会えるんですか!?」
すっごいのです!ふつうのきつねさんものの見たことないのに、村を守ってるきつねさん
に会えるなんて…
「アホかのの、迷信や迷信。神様なんて簡単に出てくるわけないやろ」
「なんであいぼんはいっつもそーゆーこと言うんですかぁ!」
あいぼんはこういうことを信じてません。
この前もののがサンタさんはいるって言ったら「絶対おらへん」って言ってました。
こういうことは、あいぼんと話してもおもしろくないです。

4 名前:08.お天気雨 投稿日:2002年12月03日(火)13時48分26秒

「飯田さん、どんな人がきつねさんに会えるんですか?」
「そうだねー…のんちゃんみたいに心が綺麗な人ならきっと会えるよ」
ののみたいな人ですか!?ますますわくわくです。
「でも、気をつけてね…お狐様はそんな心が綺麗な人が大好きで、たまに連れて
帰っちゃうんだって…神様の世界に行ったら戻れなくなっちゃうよ」
「ええっ!?きつねさんに会うと帰れないんですか!?」
「飯田さーん、のの怖がらせちゃだめやろ」
「ああ、ごめんのんちゃん。絶対連れてかれちゃうわけじゃないからね」
飯田さんは笑って言ってましたけど、帰れなくなっちゃうんですか?
さっきまできつねさんに会うのは楽しみだったのに、なんだか怖くなっちゃいました。
5 名前:08.お天気雨 投稿日:2002年12月03日(火)13時49分01秒

そういえば…飯田さん、さっきからちっちゃい包みを3つ持っているのです。
なんなんでしょう、これ?
「飯田さん、これなんですか?」
「え?あ、そうだ。お弁当のんちゃんとあいぼんに渡そうと思って忘れてたよ」
お弁当!飯田さんのお弁当です!!
「今日は神社に行こうと思ってたからおいなりさんを作ってきたんだー。はい、ちゃんと
落とさないように持っててね」
飯田さんのおいなりさん、おいしいんだろうなぁ…
「ありがとな、飯田さん」
「ありがとうございます!」
あいぼんも飯田さんのお弁当はうれしいみたいです。
飯田さんのお料理はおいしいですからねぇ…

6 名前:08.お天気雨 投稿日:2002年12月03日(火)13時49分43秒

「ここからはいっぱい道が分かれてるから、迷子にならないよう手をつなごっか」
飯田さんはそう言って、ののとあいぼんに手を差し出してくれました。
「こんなんはずかしいわ!まったく…」
あいぼんは文句を言いながらちゃんと飯田さんと手をつないでいます。
ののも、飯田さんと手をつなぎました。
飯田さんの手はおっきくてあったかくて安心します。

ポッ、ポッ…

雨、ですね…お空は晴れてるのに…
「あっ、珍しいー。お天気雨だ」
「お天気雨…」
きれいです…雨がキラキラ光ってます。
前に住んでた所ではお天気雨もなんともおもわなかったんですけど…
「ののー、お天気雨に感動しとるのもいいけど、早く雨宿りせんと風邪ひくで」
「あっ、そうでした!飯田さん、あいぼん行きましょう!」
あいぼんの言うとおりですね。だんだん雨が強くなってます。
ののは、飯田さんの手を握って急いで走りました。

7 名前:08.お天気雨 投稿日:2002年12月03日(火)13時50分18秒


その時です。ののよりもちっちゃい子が…ののたちと反対の方に走っていました。
あ、れ?なんか、着物を着ているような…



「あの、飯田さん…」
あれ?
ふっと飯田さんのほうを見ると、飯田さんもあいぼんもいません。
どこいっちゃったんでしょう?ちゃんと、手をつないでいたはずなのに…
「のの、迷子になっちゃったんでしょうか?」
手、離れたの気付きませんでした。
またあいぼんに「ののはドジやなぁ」って言われちゃいますね…
とにかく、飯田さん達を捜さないといけませんね。
雨も弱くなってきたし、飯田さんたちきっと心配してます。

8 名前:08.お天気雨 投稿日:2002年12月03日(火)13時50分59秒

「飯田さーん!あいぼーん!どこですかぁー!?」
おかしいです。1本道なのにどこまで走っても飯田さんたちが見えません。
飯田さんたちって、こんなに足早かったでしょうか…
のののこと待っててくれないんですか?
それに、なんだかずーっとおんなじ道を走ってるような…

9 名前:08.お天気雨 投稿日:2002年12月03日(火)13時51分30秒

ひた、ひた…

「あれ?」
なにか、足音がします。
「だれか、いるんですか?」
返事は、ありません。
「飯田さん?あいぼん?」
後ろを見ても誰もいません。
「気のせいですかね…」

ひた、ひた、ひた…

やっぱり、気のせいじゃないです!
だれか、のののあとをついてきます!
『この神社にはたまにお狐様が出るんだって』
飯田さんが言ってたことを思い出しました。
まさか…きつねさん?
『お狐様はそんな心が綺麗な人が大好きで、たまに連れて帰っちゃうんだって…
神様の世界に行ったら戻れなくなっちゃうよ』
のの、帰れなくなっちゃうんですか?
怖いです…帰れなくなるの嫌です!

10 名前:08.お天気雨 投稿日:2002年12月03日(火)13時52分01秒

ののは、もうわけがわかんなくて走ってました。
飯田さんに、あいぼんに早く会いたいです!
「ひゃあっ!!」
急いでいたら、石につまずいて転んでしまいました。
のの、どうなっちゃうんですか?

シャン、シャン、シャンッ…

鈴の音、ですか?
どこから聞こえてくるんでしょう…あっ!
向こうから、人がいっぱい歩いてきます…鈴も、その人たちが鳴らしてます。

11 名前:08.お天気雨 投稿日:2002年12月03日(火)13時52分32秒

ののは最初、助けてって言うつもりでした…
でも、言えなかったんです。
だって、だって…歩いてきた人たちは、きつねさんだったんです!
すっごくいっぱいで、きれいな着物を着たお嫁さんもいました。
みんな、ののの方を一回じーっと見て…そのまま行ってしまいました…

ぽんっ
「はっ、はいいいいっ!!」
びっくりしました…いきなり肩を叩かれちゃったんです!
そこにいたのは、ののよりもちっちゃいきつねさんの男の子でした。
男の子はののに向かって手を伸ばしています。
どうしましょう…ののに、いっしょに行こうって言ってるんでしょうか…
『神様の世界に行ったら戻れなくなっちゃうよ』
い、嫌です!帰れなくなっちゃうのは嫌です!
でも、どうしましょう…この子、帰ってくれなさそうですし…

12 名前:08.お天気雨 投稿日:2002年12月03日(火)13時53分07秒

ののは、迷いましたが…飯田さんのおいなりさんをその子にあげました。
これで、ののは連れて行かれないんでしょうか…
その子は、じーっとおいなりさんを見て…そのままきつねさんたちの中に入って
いきました。
その子はずーっとののに手を振っていて…

ざあっと、風が吹いた瞬間に消えてしまいました。





ののはその時『ありがと』って声を聞いた気がしました。

13 名前:08.お天気雨 投稿日:2002年12月03日(火)13時53分47秒



「あ、のんちゃーん!あいぼん、のんちゃんいたよ!!」
向こうから飯田さんが走ってきます。
「ののっ!何してたんや!心配したわ!」
あいぼんも、泣きながらこっちに走ってきます。
「いっ、飯田さん!のの、きつねさんに会っちゃいました!!」
「えっ!?ホントに!?」
「はいっ!飯田さんのおいなりさん持ってっちゃいました…」
そうです、そういえば飯田さんのおいなりさん持ってかれちゃったんです…
のののお昼ごはんが…
「そっかぁ…お狐様はあぶらあげ大好きだからね…のんちゃんが連れてかれなかった
のもおいなりさんのおかげかも」
おいなりさんのおかげで連れてかれなかったんですか?
なら、よかったのかもしれませんね。飯田さんやあいぼんに会えないのは嫌ですし。
「でも、おいなりさん…」
「ああ、泣かない泣かない。カオリのおいなりさんわけてあげるよ」
「うちのもわけたるから、泣くなののっ!」
「ホントですか!?わーいっ!」
飯田さんもあいぼんもやさしいのですっ!
「さっき泣いとったのに…食べもんがあると立ち直り早いなぁ」
「ホントだよね」




いつの間にか、雨はあがっていました。

14 名前:08.お天気雨 投稿日:2002年12月03日(火)13時54分13秒

「そういえばのんちゃん、お狐様ってどんな感じだったの?」
休憩所でおいなりさんを食べていると、飯田さんがののに聞いてきました。
「すっごかったですよ!みんな綺麗な着物着て…お嫁さんもいました!」
「へぇー…そっか、それでお天気雨が降ったのかもしれないね」
「はぁ?何で嫁さんがおるとお天気雨になるんですか?」
あいぼんが聞くと、飯田さんは笑って教えてくれました。

「お天気雨の別名はね、『狐の嫁入り』って言うんだよ」

15 名前:08.お天気雨 投稿日:2002年12月03日(火)13時54分47秒

帰り道、入り口のきつねさんを見ると、飯田さんにもらったおいなりさんの入れ物が
ありました。
中身は…なくなってます。
…もしかしたら、きつねさんはおいなりさんが欲しくてのののあとについてきてたん
でしょうか?
だったら、ののといっしょですね。ののもおいなりさん欲しいですもん。
そうだったら、怖がったりしてごめんなさい。
飯田さんのおいなりさん、おいしかったでしょ?

16 名前:08.お天気雨 投稿日:2002年12月03日(火)13時55分12秒


今日はずーっとののが怖がっちゃって遊べなかったけど。
またお天気雨の日に飯田さんのおいなりさんを持って神社に行きたいな。
今度は、ちゃんといっしょにおいなりさん食べましょうね。
のの、今度は怖がりませんから。




でも…神様の世界には連れてかないでくださいね?
ね、きつねさん。
17 名前:08.お天気雨 投稿日:2002年12月03日(火)13時56分29秒
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18 名前:08.お天気雨 投稿日:2002年12月03日(火)13時57分17秒
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19 名前:08.お天気雨 投稿日:2002年12月03日(火)13時58分02秒
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