49　愛してるから殺してほしい

1 名前：名無飼育さん 投稿日：2008/05/04(日) 23:01

たしの未来は，産まれた時から決まっていた。

父親は村の長。
男であれ女であれ，１番目の子供が継がなくてはいけない。
そして、甲斐の国のために死ぬこと。

それが、武田家に仕える隠密の家柄。
吉澤家。

戦国のこの世の中，全ては武田家の天下統一のため・・・。


私の未来は，産まれた時から決まっていました。

父親は村の長。
男であれ女であれ，１番目の子供が継がなくてはいけない。
そして、越後の国のために死ぬこと。

それが、上杉家に仕える隠密の家柄。
石川家。

戦国のこの世の中，全ては上杉家の天下統一のため・・・。

2 名前：名無飼育さん 投稿日：2008/05/04(日) 23:01

「私が甲斐の国へ？」
「梨華。お前ももう20歳。男であれば元服している歳だ。そろそろ敵国へ潜伏し、親方様の天下統一をお助けしなくてはならない」
「そこで何を？」
「まずは城下へ潜入し、武田信玄の動向を探るのだ」

3 名前：名無飼育さん 投稿日：2008/05/04(日) 23:02

あたしは、最近町にやってきたという旅芸人一座を見に行った。
そこにすばらしい踊り手がいるという。
これは一度拝んでおかないと。。。

って、あたし女だけどね。

最近、自分の性別がわからなくなってきた。
だって、産まれた時から男として育てられてきたから。
今だって，ほら、武士の格好してるし。

まあ、親方様のお側付きのお役をいただいてるからしょうがないけどさ。

一度くらいは恋ってものをしてみたいと思うんだよね。
きっと、近いうち戦で落とす命だから・・・。

4 名前：名無飼育さん 投稿日：2008/05/04(日) 23:02

そんなの、あり得ない・・・。
あの、旅の一座が越後の隠密たちだなんて。
そして、梨華ちゃんは，敵国の隠密の長の娘。

あたしの敵・・・。

5 名前：名無飼育さん 投稿日：2008/05/04(日) 23:02

「梨華ちゃん，あたしたち、出会っちゃだめだったんだ」
「そんなこと、言わないで・・・」
あたしの頬をなでる梨華ちゃんの目には，涙があふれている。
けど、あたしにはどうすることもできない。

「ねえ、よっちゃん。私は出会えてよかったって思ってるよ。今までは、越後の国のために死ぬことしか考えなかった人生だったの。でも、よっちゃんに会えて、初めて生きることを考えたんだよ」

6 名前：名無飼育さん 投稿日：2008/05/04(日) 23:03

「じゃあ、梨華ちゃん。次に会う時は敵同士だ。戦で会おう」
梨華ちゃんの顔をまともに見ることができない。
涙を見せないように，馬に鞭を入れて駆け出した。

7 名前：名無飼育さん 投稿日：2008/05/04(日) 23:03

平坦でだだっ広い土地。
川に囲まれたこの地で，これから戦が始まる。
きっと向こうの軍勢の中には，梨華ちゃんがいる。

親方様の号令とともに，武田軍が一斉に上杉軍へと走り出す。

梨華ちゃん・・・
あたし、梨華ちゃんに出会えて、やっと自分の人生を生きれたよ。

8 名前：名無飼育さん 投稿日：2008/05/04(日) 23:03

落馬したあたしへ、梨華ちゃんの刃が向けられる。
一瞬ためらった梨華ちゃんの表情。

「刺せっ！いいから、刺せっ」
「でも・・・」
「他のやつに刺されるなら、いっそ・・・」

9 名前：名無飼育さん 投稿日：2008/05/04(日) 23:04

「ねえ、よっちゃん、私のこと好き？」
「なに恥ずかしいこと言ってるの？」
「だって・・・」
久しぶりに町の外で会った梨華ちゃんは，普通の町娘の姿をしている。
こんな格好もかなりかわいい。

「もうすぐ会えなくなるんだよ？言葉で確認したいじゃない」
「言葉じゃなくて・・・」

あたしはそっと、梨華ちゃんに口づけた。

「どう？確認できた？」

10 名前：名無飼育さん 投稿日：2008/05/04(日) 23:04

どうせなら、愛する人に殺されたい。
あたしの小さな夢だった。

11 名前：Ｍａｘ 投稿日：Over Max Thread

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