42雅の腕

1 名前:42雅の腕 投稿日:2008/05/03(土) 11:45


「……もしもし?」



「え……っ、事故!?」



「右腕が……」



「じゃあ、もう……。はい……はい。わかりました。すぐ行きます」



「佐紀ちゃん!?なんだって?」



「雅……卒業だって」





2 名前:42雅の腕 投稿日:2008/05/03(土) 11:45

雅は事故に巻き込まれ右腕を失い、私たちのグループを去った。

―――今後は、ソロの歌手として活動していきます

白々しい説明。事故の話はみんな知っていたのに……。

誰も彼女を、元通りにはできない。

ファンから届く手紙も、私たちのメールも、押しかける取材陣も

彼女を焦らせ、責め立て、絶望させるだけだった。

もう、手だてはない。時間の流れが、彼女を癒してくれるのを待つしか……。

私は願った。

どうかもう一度、雅の笑顔が見られますように。

しかし、私たちの時間は忙しく過ぎ去り

いつしか彼女がいないという喪失感をも、ぬぐい去り始めていた。

しかし……

3 名前:42雅の腕 投稿日:2008/05/03(土) 11:46
「ニューロ・プラクティティック?」

謎の言葉とともに、私の耳に衝撃が届く。

夏焼雅、ソロデビュー

「実際の義手では不可能だけど

 映像上でなら雅の腕は……復活する」

コンピューターによって腕を再現された雅。

メンバーは複雑な思いでそれを見せられていた。

「この腕は彼女の脳波と同期してある。

 画面上でなら彼女の思い通りに腕が動かせる」

脳で動かす3Dゲーム。そう、説明された。

そう。

雅は、復活した。

画面の中で、あのときと同じ生き生きした顔で、両腕を自由に操りながら踊っていた。
4 名前:42雅の腕 投稿日:2008/05/03(土) 11:46
センセーショナルなこのビデオは異例の好売り上げを記録。

映像でしか見られない彼女の「美しさ」に日本中が再び熱狂した。

メンバーのとまどいをよそに、夏焼雅はリリースを重ねていく。

そしてついに、私に一通のメールが届いた。



「来春、ライブをやることになりました」




5 名前:42雅の腕 投稿日:2008/05/03(土) 11:46
壮大に歪んだ「プロジェクト」が

 「雅……みんなで、雅のとこに行こう!」

圧倒的な力で、私たちの運命をもねじ曲げていく。

 「リハーサル……いなかったって?」

私たちの思い出を、……私たちの友情を、

 「どうしたの?」

 「怖い……」

生きている雅を、

 「みんなが見ているのは、画面の中の私で

  ここにいる私は、偽物なんだ……」

平たい画面の中へと閉じこめる。

 「バックモニターには、腕のついた私が映し出される。

  ねぇ、みんな……そっちを見て」

かつての仲間たちの絆は

 「私を見ないって、約束して……」

まだ、残っているだろうか。
6 名前:42雅の腕 投稿日:2008/05/03(土) 11:46
「Berryz工房集合」

私の声にみなが集まる。

「雅を励ましてやれるのは、うちらだけだ」

輪になって、小声で

私はその作戦を告げた。

仲間たちの心を

雅の存在を

スクリーンではなくこのホールで

証明するために。


7 名前:42雅の腕 投稿日:2008/05/03(土) 11:47
 
8 名前:42雅の腕 投稿日:2008/05/03(土) 11:47
comming soon
9 名前:42雅の腕 投稿日:2008/05/03(土) 11:47
おわり

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