白壁の向う側〜Soak in Bleach〜

1 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/05/02(金) 23:59







起きた時、世界は真っ白だった。





 
2 名前:Soak in Bleach 投稿日:2008/05/03(土) 00:00
シーツが、壁紙が、窓枠や、ベッドの枠も、真っ白だった。
天国に来たのかと思うくらい、白い世界。
自分の着ているパジャマだけがストライプで、自分が生きている事を証明していた。
痛みが少しあるのを感じた。
驚く事に、真っ白なのは世界だけじゃなかった。

自分の頭の中すらも、真っ白だったのだ。

目の前には、泣きそうになっている女性がいた。


「よっすぃ、やっと起きた?」
「君は誰?」
「貴方の恋人よ。り、か。梨の華って書くの」
「……梨華、さん?」
「梨華さんは恥ずかしいわ」

文字は分かった。物事は理解できた。
3 名前:Soak in Bleach 投稿日:2008/05/03(土) 00:01
でも、彼女を知らない。

彼女だけじゃない。昼に来た両親も、夜にきた親友すら、覚えていなかった。
自宅に帰るまでの間、かなり長い事人間関係を整理している自分がいた。



 
4 名前:Soak in Bleach 投稿日:2008/05/03(土) 00:01
自宅に戻ると、そこは二人の愛の園だったと彼女から聞いた。
二人分の歯ブラシ、二種類のシャンプー、二人分のお皿やお箸。

「シャンプーはどっちのを使っていたの?」
「貴方はシャンプーにこだわらない人だったから」

「どっちがどっちのお皿?」
「小さい方が私でいいわ」

過去は全て曖昧な形で扱われた。
大事な思い出すら、あまり語られなかった。

「どうして誰も私の過去に触れてくれないの?」

自分の記憶は真っ白だった。まるで漂白剤につけられたかの様に。
5 名前:Soak in Bleach 投稿日:2008/05/03(土) 00:01
洗濯が下手な梨華を愛しく感じるのと同時に違和感を覚える。
ガサガサしたTシャツで肌が痒い時に自分はどうやって痒みを抑えたのだろう。
少し美味しくない梨華の食事を可愛く感じるのと同時に違和感を覚える。
この味を食べて本人が顔をしかめてる時、自分はこうして笑ったのか。



 
6 名前:Soak in Bleach 投稿日:2008/05/03(土) 00:01
思い出したシチューの味は、梨華の作ったそれとは違った。
だが、それが母のものなのか、
どこかのレストランのものなのか、
それとも他の誰かが作ったものなのか。
それすら、記憶の手がかりはない。

「ねぇ、私は過去を思い出したいよ。このままじゃ嫌だ」
「……そのままじゃ、私を、愛せない? 一緒に未来を歩いていくのは不安?」
「そうじゃないけど……」

私は本当は誰なのだろう。
7 名前:Soak in Bleach 投稿日:2008/05/03(土) 00:02
夢を見る様になった。見た事のない女性が、何か言いたげな顔をしていた。
一体誰なんだろう。映画のワンシーンの様に、鮮明に覚えているあのシーン。

『子供が欲しいの。だから、別れて』

その人は言いにくそうに、そう言った。
それは私に言われた言葉なのか、まさしく映画なのか。
どうしてだろう、その言葉を思い出す度に、涙が出そうになる。
何かが恋しくてたまらなくなる。
梨華を抱き締めて、少し中和されるそれは、一体なんの感情なんだろう。
8 名前:Soak in Bleach 投稿日:2008/05/03(土) 00:02





記憶の扉はまだひらかない。






 
9 名前:Soak in Bleach 投稿日:2008/05/03(土) 00:03



  白壁の向う側
〜Soak in Bleach〜


10 名前:Soak in Bleach 投稿日:2008/05/03(土) 00:04



























                                              Coming Soon
11 名前:Max 投稿日:Over Max Thread
このスレッドは最大記事数を超えました。
もう書けないので、新しいスレッドを立ててくださいです。。。

Converted by dat2html.pl v0.2