29 柔らかな檻

1 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/11/05(月) 23:56
29 柔らかな檻
2 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/11/05(月) 23:56
薄暗い部屋の中、ぼんやりと愛理は目を覚ました。
何時ぐらいだろうか、
寝直そうと寝返りをうつ。
なんとなく手を伸ばして隣を探るといるはずの栞菜がいない。
トイレかな。
さっきと変わらないのにベッドの中が寒く感じられた。
3 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/11/05(月) 23:57
少しうとうとしたが帰ってこない。
どうしたんだろう。
身を起こそうとしたら足元の方に膝を抱えて座っている栞菜が見えた。

「栞菜、起きてるの?」
「あ、愛理、起こしちゃった?」
栞菜が顔をあげる。
「なんか目が覚めちゃった。どうしたの」
「んーちょっと考えてたら眠れなくなっちゃって。でも明日も早いしやっぱり寝る」
隣にごそごそと入ってくる。抱きついてくる手足が少し冷たい。
手足が暖かくなるように撫でていたらいつの間にか眠りに落ちた。
4 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/11/05(月) 23:58
次の日の栞菜は少し眠そうだったけど変わらなかった。
ただ少しだけ舞美ちゃんにまとわりつかなくなっていた。
気のせいとは思ったけど栞菜が寂しくないように手を繋ぐ回数を増やした。
5 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/11/05(月) 23:58


6 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/11/05(月) 23:58

時々舞美ちゃんは栞菜と距離を置こうとする。
栞菜が間違えないように、傷つかないように。
それは絶妙の距離感。
嫌がってはいないことを伝えつつの拒絶。
舞美ちゃんはあんまり器用ではないから、どこかで一回失敗したのだろうか。
太陽のような舞美ちゃん。
柔らかく柔らかく、栞菜が傷つかないように。
7 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/11/05(月) 23:59
いつか栞菜が言ったことがある。
「好きになるって言うのは、人間が楽に能力を手に入れたいと思う事の現われなんだって」
「なにそれ」
「さあ。本の受け売りだったりして」
そう言って少し笑った。
8 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/11/06(火) 00:00
えりかちゃんが栞菜を笑わせている。
えりかちゃんは最近人を笑わせることに熱心になってる。
仲がいい。
さりげなく、ハグするのもうまい。

それは
舞美ちゃんから守るように。
舞美ちゃんからほんのちょっと遠ざけるように。
栞菜が寂しくならないように。
そういう風に見えた。
最初は舞美ちゃんと話したのかなと思ったけれど、
多分違う。
あれはえりかちゃんの優しさ。
9 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/11/06(火) 00:00

10 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/11/06(火) 00:00
空き時間に携帯の小説を読んでいると栞菜が覗き込んできた。
「あー、愛理、エッチな小説読んでるー」
「え、ち、ちがうよ、舞美ちゃんも読んでるし」
ちょうどキスしている場面だった。
携帯を栞菜は取ってスクロールして読んでる。
恥ずかしくて顔が赤くなった。
あーきっとからかわれる、そう思ったけど違った。
11 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/11/06(火) 00:01
「ねえ。キスとかその先って手を繋ぐよりいいものだと思う?」

何気ない風を装った真剣な声に、からかわれないよう背けた顔を戻して栞菜の顔を見る。
「えっと。きっといいもの…だと思う。わかんないけど」
「そっか」

うつむいた栞菜の顔が見えない。
手を取って繋いで揺らしてみる。
栞菜の手は暖かい。
手を繋ぐと少し暖かい気持ちになれる。
それだけじゃだめなのかな。
12 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/11/06(火) 00:01
繋いでいる手を栞菜は見つめる。そして話し始めた。
「少しでも触れていたくて、全部欲しくなって。でもそんな感情欲しくなかった」
「ああいうの。あれは何だろう、なんなんだろうね。
 どうしてその人じゃないといけないのか」
繋いだ手を揺らしてみる。
13 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/11/06(火) 00:02
「その人に触れただけで気持ちいいなんてきっと何かの間違いだと思う」
泣いている栞菜を優しく抱きしめる。
それが間違いならどんなに良いだろう。
でも、世の中の様子を見る限りそうではなくて。

愛理はただただ栞菜を優しく抱きしめていた。
14 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/11/06(火) 00:02

15 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/11/06(火) 00:02

16 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/11/06(火) 00:02


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