08 アイノカタチ

1 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/10/28(日) 04:23
08 アイノカタチ
2 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/10/28(日) 04:26
伝えるべきことを伝えずにいた。
けれどそれは伝えたくないからではなく、伝える為に必要な言葉が思い浮かばなかったからだ。
いくつもある言葉の中からぼんやりと思い浮かぶのは単純なもの。
多分、それを口にすればいいのだと思う。
そして、それを望まれている。

いつだって。
それを伝えたいと思っていた。
だが、それでは足りない気がする。

言葉に出来ない想いというものが確かにあって。
それを伝える方法をいつも考えていて。
けれど。
自分の気持ちにぴたりと当てはまる言葉は見つからなかった。


だから、あの日。
桃子は雅に触れた。
誰に触れるときよりも優しく、そして深く。

抵抗されなかった、と言えば嘘になる。
荒っぽいことをした覚えはないが、半ば強引に境界線を飛び越えた。
あの日から桃子は、雅とずっとこんな関係を続けている。



3 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/10/28(日) 04:27
「みーやん」


薄暗い部屋。
ベッドの中に二人。
お互いの体温を感じることが出来る距離で横になっていた。
闇に慣れたせいか、薄暗い中でも相手の顔が見える近さ。
桃子は自分の方を見ている人物の名を口にした。


「やだ」
「もも、まだ何も言ってないよ?」


雅に冷たい声で即答される。
名前を呼んだだけで嫌だと言われる筋合いはないと言いたいところだが、今まで桃子が雅にしたことを考えれば仕方がない。
桃子自身もそれをわかっているし、雅がこんな対応をするのもいつものことだ。
だから桃子は雅の態度を気にすることなく手を伸ばす。

雅の首筋に触れる。
触れた手をすっと肩まで下ろして、指先が触れた部分をなぞるようにして唇で追いかけた。


「さっきしたじゃん!」


肩を撫でる桃子の手を雅が払い除ける。
そして不満げな目で桃子を睨み付けてくる。


4 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/10/28(日) 04:30
「でも、またしたくなったんだもん」
「ちょっと、もも。やめてよ」
「みーやんがいけないんだよ?そんな顔してるからまたしたくなる」
「そんなって」
「ももが欲しいって顔、してる」
「ばっかじゃないのっ!」


口調は荒いが、いつもより少し高い声に早口。
その声に雅が怒っているわけではないことがわかる。
桃子が確かめるように雅の頬に触れると、そこが少しだけ熱を持っていた。
薄暗い部屋の中、目には見えなくても雅の頬が赤くなっていることが感じ取れる。


もう一度、雅の首筋に唇を押しつける。
ゆっくりと唇を這わせていく。
今度は冷たい声の変わりに、雅の口から熱を帯びた吐息が漏れる。


「いいよね?」


駄目だと言われても止める気はない。
そして雅が嫌だと言うとも思えない。
形だけの確認に返事はない。
けれど、いつものように背中に腕を回された。


5 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/10/28(日) 04:32
服を脱がせる必要はない。
少し前にしていた行為のせいでお互い何も着ていなかった。
薄く開いた唇にキスをしてから、桃子は雅の肩を押す。
横を向いていた雅の身体を仰向けにさせて、その上へ自分の身体を乗せる。

桃子が雅に覆い被さると、触れあう部分が多くなる。
お互いの肌が持つ体温のせいで触れあった場所が心地良い熱を持つ。
その熱さを誤魔化すように耳へキスをすると、雅の身体がびくりと震えた。

いくつものキスを雅の身体に落としていく。
首に。
肩に。
鎖骨に。
唇で触れるだけ。
雅の肌に軽く唇を押しつけるだけの行為を何度も繰り返す。


「もも、や…だ」


背中に回された雅の腕が桃子の肩を掴む。
肩を掴まれた桃子が顔を上げると、雅が身を捩って桃子から離れようと抵抗を試みる。


6 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/10/28(日) 04:34
「ほんとはやじゃないでしょ?」


唇から逃れようとする雅の脇腹を指先でゆっくりと撫で上げる。
肩を掴む雅の手から力が抜けて、吐息混じりの声が桃子の耳に届く。


「嫌に、決まっ…てる」
「ふーん。じゃあ、キスしかしてないのになんでここ、こんなになってるんだろうね?」


まだ触れていない胸に手を伸ばす。
胸の先端。
一番敏感なその部分に指先を這わせる。

キスだけ。
それだけの刺激で硬く立ち上がっているそこを桃子は指先で摘む。
桃子が指先に力を入れると雅の身体が硬くなった。
背中に回された腕がきつく桃子を抱きしめてくる。


7 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/10/28(日) 04:37
「あっ。はっ、んっ」


唇を寄せて、硬くなったそこを口に含むと雅から漏れる声が大きくなった。
舌先で突いて甘噛みを繰り返す。
胸に触れていた手を滑らせて肋骨を辿る。
しなる雅の身体を抱き寄せて桃子は囁いた。


「みーやんが嫌でもいいよ。ももは嫌じゃないから」


首筋に噛みつく。
強めに歯を立てると、雅の喉の奥が鳴るのが聞こえた。


「それに、ほら。みーやんの身体は嫌がってないもん」


雅の口から吐き出される荒い息。
不規則な呼吸音は苦しげで、その身体も桃子の下で小さく震えていた。
けれど、それは苦痛とは違う何かによって引き起こされたものだとわかる。
その証拠に肋骨を撫でていた指先で胸の先を押し潰すと、雅の口から湿った声が漏れる。


8 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/10/28(日) 04:39
「さっきしたばっかりなのに。……みーやんてほんと」


言い終わる前に言葉が途切れた。
笑いを含んだ桃子の声は雅の手によって遮られる。


「もも、うる…さい」


乱れた呼吸を整えながら雅が口を開いた。
その手は桃子の口を塞いだまま離さない。

ぐっと力の入った雅の手を桃子は力ずくで引きはがす。
そして、ゆっくりと言い聞かせるように雅に告げる。


9 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/10/28(日) 04:44
「えっちだね」


雅の顔を引き寄せて耳元で囁いた。
小さな声で。
でもはっきりと。
言葉の最後に息を吹きかけると、雅の肩がびくっと震えた。
しかしそれも一瞬のことで、すぐに桃子は雅に押し返される。


「ももだってそうじゃん!」
「だってももは、えっちな気持ちでみーやんに触ってるから」
「なっ!?……あっ、やあっ」


雅の閉じられている足を割って桃子が太ももの間に手を忍び込ませると、雅が甲高い声を上げた。
そのまま内腿を緩やかに撫でる。
膝から足の付け根にかけて指先を這わせていく。

声にならない声が雅から聞こえてくる。
腰を撫で上げると焦れたように雅の足が桃子に絡みついた。


10 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/10/28(日) 04:46
「自分の身体、どんなことになってるかわかってる?」


触れるか触れないか。
指先というよりは爪の先を足の付け根に向けて走らせる。


「ももに少し触られただけで、やらしい声出して……」


太ももに這わせていた手を足の間へと滑り込ませる。
濡れた感触が指先に伝わる。
桃子はぬるりとしたそこにゆっくりと指を這わせていく。


「んっ、はあっ」


溢れ出す体液を掬い取るように指先を動かすと、桃子の指にまとわりついた液体が音を立てる。
その音にあわせるように雅が甘い声を上げた。


11 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/10/28(日) 04:47
「みーやんはももがいないとだめなんだよ」


言い聞かせるように。
まるで呪文のように囁きかける。
首を横に振って桃子の言葉を聞こうとしない雅に無理矢理その言葉を聞かせる。


「いなく…ても……いい」
「そうかなあ。ももがいなかったら、誰がこんな風にみーやんに触るの?誰にも触られなくても我慢出来るの?」
「でき…る」
「いいんだ?触らなくても」


12 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/10/28(日) 04:49
本当は。
触れることが出来なくて耐えられないのは自分だ。
一日中、雅に触れたいと思っている。
その身体に触れることが出来なくなることなど考えられない程に雅が欲しいと思っている。
触れれば触れる程、その想いは強くなっていく。

同じように。
桃子が雅がいないことに耐えられないように。
雅も桃子がいなければ耐えられないようにしてしまえばいい。

その身体に口づけて。
指先を這わせて。
自分が与える快感がなければいられないように変えてしまえばいい。

今こうして雅の身体に触れている手を止めればどうなるか。
雅が知らないのなら教えてやればいいだけの話だ。


桃子は足の間にあった手を雅の太ももの上に置く。
雅の体液で濡れた指先がそこを汚していく。
それを押し広げるように太ももの上で指先を遊ばせる。


13 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/10/28(日) 04:51
「や、もも」


雅が小さな声を上げた。
桃子が与える快感に慣れた雅の身体が言葉を裏切る。
雅の腰が桃子の身体に擦りつけられる。


「違うよ、やじゃないでしょ?」


太ももを撫でていた手を止めて雅に声をかける。
雅の頬に手を添え、自分の方を向かせてその目を見る。


「みーやん」


強く名前を呼ぶ。
瞳で答えを促す。


14 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/10/28(日) 04:53
「……やめ…ないで」


求められる声に身体が溶けそうに熱くなった。
吐く息が乱れる。
話しかける声が上擦りそうになるから、返事は返さない。


桃子は黙って指先を雅の足の間へと戻す。
さっきよりも濡れているそこを強く擦る。
雅の身体の中へと指を一本押し込む。


「あっ、んっ」


今までよりも大きな声が雅の口から上がって、指が締め付けられた。
もっとその声が聞きたくて、桃子は雅の身体の中にある指をゆっくりと動かす。
桃子の手の動きにあわせて雅から掠れた声が聞こえてくる。
雅の顔を覗き込むとすっと顔をそらされる。
指先に力を入れて中を擦り上げる。
だが、雅の声はそれ以上聞こえてこない。
顔がそらされているせいでよく見えないが、多分、唇を噛んでいるのだろう。
絶えず上がっていた甲高い声の変わりに、押し殺したような吐息が雅の喉の奥から漏れてくる。


15 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/10/28(日) 04:56
「だめだよ。声、聞かせて」
「だっ…て、聞こえ…ちゃう…よ」
「いいよ、聞こえても。……隣に聞かせてあげれば?みーやんがどんな声で鳴くのか」


雅はおそらく気がついていない。
耳元で囁く桃子の声がいつもより掠れたものになっていることに。
声を抑えることだけに意識がいっている雅には、今、桃子がどうなっているかきっとわからない。


そらされていた雅の顔が桃子の方を向く。
呼吸を整えることの出来ない雅にきつく睨まれて、動かしている手を掴まれる。
けれどその手に力はなく、桃子の動きを止めることは出来ない。
桃子は雅の身体の中で指を緩やかに動かし続ける。
部屋に響く濡れた音が少しずつ大きくなっていく。



16 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/10/28(日) 04:57
雅の中で遊ばせている指のテンポを変える。
指の動きを少し早くすると桃子を睨んでいた目は閉じられ、また掠れた高い声が聞こえてきた。
桃子の手を握っていたはずの雅の手はいつの間にかシーツを掴んでいた。


一度、絡みつく身体の中から指を引き抜く。
雅の身体が小さく震えた。
今度は二本の指を雅の中へ押し入れる。
シーツを掴む雅の手に目をやると指先に力が入っているのがわかる。


「あぁっ、はぁっあっ」


吐き出される雅の息が熱い。
胸にキスを落とす。
硬くなったそこに歯を立てると、雅の中が桃子の指をぎゅっと締め付けてくる。
柔らかく何度も噛んでは舌先でそこを転がす。
そのたびに体液が流れ出る。
雅の身体から溢れた液体が桃子の指を濡らしていく。


17 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/10/28(日) 04:59
静かな部屋に響くのは、雅の足の間から聞こえる濡れた音と喘ぎ声。
そしてベッドの軋む音。


桃子の指を絡め取るように雅の身体が動く。
それと同じように雅の甘い声が桃子の身体を絡め取っていく。
締め付けてくる雅の身体の中を押し広げるように指を動かしていると、自分の指先と雅の身体が混じり合うような気がしてくる。


「みーやんがイクところ、ももが見ててあげる」


桃子の指を締め付ける力が強くなる。
わざと雅の中にある指を緩慢な動きに変えると、催促するように雅の腰が跳ねた。
それに応えるように中を強く擦り上げると、シーツを握りしめていた雅の手が桃子の腕を強く掴んだ。


18 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/10/28(日) 05:00
「だ、めっ。…み、あっ、ない…で」
「だめだよ。もものこと見て」


桃子の肩に押しつけるようにして顔を隠す雅の身体を引きはがす。
その頬にキスを落としてから桃子は雅を見つめる。
熱くとろける雅の身体の中をかき混ぜていく。
雅の身体の中が小刻みに震える。


「やあっ、ん。ふっ、あっ」


途切れる声を聞きながら「イっていいよ」と囁くと、雅の身体に力が入った。
ぬるぬるとした液体が桃子の指を包み込んでいく。
びくりと跳ねる身体を抱きしめて、指を奥まで押し込む。
ぐっと今まで以上の力で指を締め付けられる。
一際高い声が耳元で聞こえて、抱きしめていた雅の身体から力が抜けていった。





19 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/10/28(日) 05:02

桃子は荒い呼吸を繰り返す雅を力一杯抱きしめる。
自分の腕の中にいる雅を愛しいと思う。
だが、それが雅に伝わっているのかは知らない。
口にすることが出来ないものを、ただ抱きしめることで表す。
そんな行為で形にならない気持ちを伝えられるのかわからない。
だが、それしか自分に出来ることがない。


絡み合う視線。
きっと雅が求めていることはこんなことではない。


それでも。
桃子は雅が欲しいものを探し出すことが出来ない。
言葉を紡ぎ出すことが出来ない。
どんなに探しても見つからないものを一つの形にするなど無理な話だ。

桃子が出来ることはただ一つ。
雅が望まない言葉で雅を縛り付ける。
毎晩のように触れる手で雅の身体を自分から離れられないようにする。


20 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/10/28(日) 05:03
それしか知らない。
それしか考えられない。


いつか伝えるべきものが見つかる日が来るまで。
誰よりも優しく、深く。
桃子は雅を抱きしめる。





21 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/10/28(日) 05:03

22 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/10/28(日) 05:03

23 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/10/28(日) 05:03


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