04 日本青年館

1 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/05/03(木) 16:22

04 日本青年館
2 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/05/03(木) 16:23
ステージに立つ見知った顔たちは、どれもみな笑顔。
まばゆいばかりの光を浴び、全力で歌い踊った彼女たちに、
会場からは惜しみない歓声が送られる。

彼女たちが腰を折るのを見届けると、
私は目深に被った帽子を更に深くして、静かにその場を後にした。
3 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/05/03(木) 16:25
会場を出てすぐ関係者通路に入り、裏口を目指す。

ここを通るためのスタッフパスは、舞美が上に必死に頭を下げて用意してくれたとえりに聞いた。
脱退してからも、えりや千聖は心配してか度々メールをくれる。ありがたいことだ。

帽子をとり、すれ違うスタッフさんたちに頭を下げながら足早に歩く。
事情を知っている人たちばかりとは言え、後ろめたいのは変わらない。


『辞めるなんて言わないでよっ』


脳裏に甦るのは、あの日のえりの言葉。
耳に痛くて優しい言葉に、悔やまないと言ったら嘘になる。
でも、悔やんでも過去は変わらない。

「………」

思考を振り払い、歩く速度を更に速める。

誰もが立てるわけではない場所。
私が立てたかも知れない場所。

一秒でも早く、そこから離れるために。
4 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/05/03(木) 16:27
出口まであと十数メートル。

「いたっ!ちょっとめぐ!どこ行くのさ!」

背後から聞こえた声に逃げようとした時には、もう遅かった。
あっと言う間に距離を詰められ、手首を掴まれる。

「舞美……」
「ありがと、やっぱ来てくれてたんだ」

恐る恐る顔を上げると、汗だくの舞美が笑っていた。

時間的に考えて、ステージが終わってすぐ走ってきたに違いない。
掴まれた手首が熱かった。

「MCの時に見えたんだよ、ほら、あたし視力いいからさ」

黙り込む私を気にせず、舞美は手を引いて歩き出す。

「ちょ、ちょっと舞美っ」
「顔くらい出して行きなよ。えりもそう言ってたし」
「でも!」
「さぁ、走るよぉ!」

有無を言わさず、引っ張られる形で走らされた。
私が走らなかったら、舞美はどうするつもりだったのか。
引き摺ってでも、連れて行くつもりだったのか。

さしも長くない廊下で、すぐに控え室が迫ってくる。
5 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/05/03(木) 16:29
「ただいまー!」
「あ、舞美!いきなり走ってどこ行っ!」

飛び込んだ控え室で、メンバーは目を丸くした。
真っ先に舞美に声をかけたえりまで、口を開けている。

「めぐ!」
「あー、タンマタンマ」

年少組が飛び付こうと踏み出したのを舞美が制した。
千聖が不満げな顔をしている。

「ほら、やっとみんな揃ったんだからさ、まずはやっぱこれじゃん?」

おもむろに手を出して舞美は笑った。

「舞美!」
「っ!えりか!」
「早貴!」
「愛理!」
「千聖!」
「舞!」
「栞菜!」

あっと言う間に出来上がった円陣。
その中に、舞美に肩を抱かれた私もいた。

「……ほら、最後言ってよ」
「め、めぐみ……」

上手く声にならなかった。
それでも、私の肩を強く抱いて舞美は声を張り上げた。

「8人揃って!」
「「「「「「「弾けるぞぃ!」」」」」」」
6 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/05/03(木) 16:30
7 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/05/03(木) 16:31
8 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/05/03(木) 16:32

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